

- 裁判離婚をするには離婚原因が必要
- お金に関する価値観の違いは離婚原因になりうる
- お金に関する価値観の違いで離婚する場合の注意点
【Cross Talk 】夫とお金に関する価値観があまりにも違いすぎて離婚を検討しているのですが…
夫と離婚を考えています。子どもがいて、私は将来のことを考えて貯蓄などを検討しているのですが、夫は「自分で稼いだ金だ!」と自分はゴルフや旅行三昧で、我慢の限界です。お金に関する価値観が違うようなのですが、離婚は可能でしょうか?
相手が離婚を拒む場合には、最終的には離婚裁判を提起しなければならないのですが、離婚裁判の提起には離婚原因が必要です。もし、お金に関する価値観の違いが「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する場合には、離婚原因となります。
そうなんですね、私の場合はどうでしょうか?詳しく相談に乗ってもらえませんか?
お金に関する価値観が違いすぎて、共同生活を営むのが難しい場合に、離婚をすることは可能なのでしょうか。離婚は相手が拒むと最終的には離婚裁判を提起して離婚を請求することになるのですが、離婚裁判をするためには民法770条1項各号所定の離婚原因があることが必要となります。お金に関する価値観の違いは、民法770条1項各号所定の離婚原因となるのか、離婚できる場合にはどのような注意が必要かについてお伝えいたします。
お金に関する価値観の違いで離婚はできる?

- 離婚裁判を起こすには離婚原因があることが必要
- お金に関する価値観の違いが「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる場合には離婚原因になる
お金に関する価値観の違いは離婚裁判の提起をするのに必要な離婚原因ですか?
お金に関する価値観の違い自体は離婚原因ではないのですが、お金に関する価値観の違いが原因で夫婦関係が破綻しているような場合には離婚原因となります。
お金に関する価値観の違いは、どのような場合に離婚原因となるのでしょうか。
離婚裁判を提起するのに離婚原因が必要
離婚には、当事者の協議で離婚する協議離婚、離婚調停で離婚する調停離婚、離婚裁判で離婚する裁判離婚があります。
協議離婚・調停離婚は当事者が合意しなければできないので、合意できなければ離婚裁判の判決によって離婚する裁判離婚でしか離婚できません。
この裁判離婚の提起には、民法770条1項各号に規定する離婚原因があることが必要とされています。
離婚原因となるもの
離婚原因を定める民法770条1項は次のように規定しています。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
1号から4号で具体的な事情を定めながら、夫婦関係が実質的に破綻している場合にも離婚裁判の提起ができるように5号で「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と定めています。
お金の価値観の違いは離婚原因になることがある
お金の価値観の違いについて、上述の民法770条1項各号で直接定められてはいません。
ただ、家にお金を入れない、という場合には、2号の悪意の遺棄にあたることはあります。
また、お金に関する価値観が違うため、婚姻関係が破綻しているような場合には5号の「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と評価されうる場合があります。
この場合には離婚裁判の提起が可能となります。
婚姻を継続し難い重大な事由があるかどうかは夫婦関係の破綻を様々な事情から総合的に判断するものなので、お金に関する価値観が違うだけではなく、そこから言い争いが耐えない・DV・モラハラといった事情がある場合には、これらも考慮されます。
婚姻を継続し難い重大な事由があるかどうかは、案件ごとに具体的に検討する必要がありますので、弁護士に相談してみてください。
お金に関する価値観の違いで離婚する場合の注意点

- お金に関する価値観の違いで離婚する場合の注意点
- 証拠や相手の財産を把握する・金銭に関する取り決めは公正証書で行うなど
お金に関する価値観の違いで離婚する場合の注意点を教えてください。
いくつかあるので順番に検討しましょう。
お金に関する価値観の違いで離婚する場合の注意点には次のようなものがあります。
離婚原因となる証拠をしっかり集める
お金に関する価値観の違いで離婚する場合の注意点の1つ目は、離婚原因となる証拠をしっかり集めることです。
裁判所に「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と判断してもらうためには、その基礎となる様々な事実を認定してもらう必要があります。
例えば「金遣いが荒い」と主張しても、それが収入のうちのどれくらいの金額を使っているのか、生活を圧迫しているのかなどが分からなければ、婚姻を継続するのが不適切なほどの金遣いの荒さであるかを判断できません。
お金に関する価値観の違いおよびそれによる夫婦関係の破綻を客観的に示すことができる証拠の収集は、離婚を進めるのに不可欠であるといえます。
相手の財産をしっかり把握する
お金に関する価値観の違いで離婚する場合の注意点の2つ目は、相手の財産をしっかり把握することです。
相手の財産がわからない状態だと、財産分与として受け取ることができる財産が少なくなってしまう可能性があります。
また、相手が慰謝料・財産分与・養育費を渡してこない場合の強制執行の際にも、相手にどのような財産があるかの把握が必要です。
本人にへそくりなどの隠れた預貯金がないかなど、相手の財産をしっかり把握しましょう。
相手の勤務先をきちんと把握する
お金に関する価値観の違いで離婚する場合の注意点の3つ目は、相手の勤務先をきちんと把握することです。
2)と関連することなのですが、強制執行をする際に有力な資産として、相手の給与が挙げられます。
給与は、その一部を強制執行で差し押さえることができます。
差し押さえられると、その分は債権者に渡されることになり、全額の支払いが終わるまで、毎月差し押さえることが可能です。
養育費のように長期間にわたって支払うべきものが滞った場合には、相手の給与の差し押さえを行うことが多いので、相手の勤務先をきちんと把握しておきましょう。
慰謝料・財産分与・養育費の取り決めは公正証書で行う
お金に関する価値観の違いで離婚する場合の注意点の4つ目は、協議離婚の際の慰謝料・財産分与・養育費の取り決めは、公正証書で行うことです。
お金に関する価値観が異なるために離婚する場合、協議離婚で決めたこれらの金銭の支払いなどをしない、途中で滞るということがあります。
このような場合には相手の財産に強制執行をすることが可能なのですが、執行受諾文言付きの公正証書があれば裁判を起こすなどしなくてもすぐに強制執行をすることが可能です。
なお、調停離婚の際には調停調書が、裁判離婚の場合には判決書(裁判上での和解をした場合には和解調書)が作成され、これで強制執行が可能です。
養育費が滞ることを想定して行政に相談しておくなどしておく
お金に関する価値観の違いで離婚する場合の注意点の5つ目は、養育費が滞ることを想定して、行政に相談しておくなど、生活を守るのに必要な行動をいつでも行えるようにしておくことです。
子どもがいる場合に養育費の支払いがあるのを前提として生活していると、養育費の支払いがされなかったときに、生活に困ることになります。
このような場合に備えて、住んでいる地域の市区町村で、ひとり親の保護の制度がないかなどの相談をしておきましょう。
ひとり親の保護の制度を知ることができることはもちろん、いざとなった場合に必要な保護を受けるにあたって、役所が状況を把握していると、審査などがスムーズに行われるからです。
相手が自己破産した場合でも養育費は請求可能
お金に関する価値観の違いで離婚する場合の注意点の6つ目は、相手が自己破産をしても養育費の請求は可能なので諦めないことです。
相手がギャンブルや浪費が激しく借金がある場合には、慰謝料・財産分与・養育費の支払いができないまま自己破産してしまうことがあります。
慰謝料・財産分与については、自己破産で免責されてしまう可能性がありますが、養育費については免責の対象ではないとされています。
そのため、養育費の請求は可能です。
まとめ
このページでは、お金に関する価値観が違う場合に離婚原因となるかを中心にお伝えしてきました。
お金に関する価値観の違いそのものは離婚原因ではないのですが、お金に関する価値観の違いなどで夫婦関係が破綻してしまっているような場合には、離婚原因になりえます。
離婚を請求していく場合には、証拠の収集などが欠かせませんので、弁護士に相談しながら行うことをおすすめします。