離婚原因である「悪意の遺棄」とはどのようなもの?
ざっくりポイント
  • 悪意の遺棄とは
  • 悪意の遺棄の具体例
  • 悪意の遺棄を理由に離婚を請求する場合に必要なこと

目次

【Cross Talk 】「悪意の遺棄」として離婚を請求できますか?

夫と離婚をしたいです。夫は数年前から「もっと自由に暮らしたい」と家から出ていってしまい、別の場所で暮らし始めています。生活費を入れてくれるわけでもないので、私は必死に働いてますが、離婚には応じてもらえません。「悪意の遺棄」として離婚を請求できませんか?

離婚を請求できる可能性は高いと思います。どれくらい前からそのような状態が続いていますか?詳しく状況を教えてください。

はい、相談に乗ってください。

離婚原因である「悪意の遺棄」とはどのようなものか?

相手が離婚に応じない場合には、離婚調停を経て離婚裁判を起こす必要があります。離婚裁判を起こすには、民法770条1項に規定されている、離婚原因が必要なのですが、その中にある「悪意の遺棄」とはどのようなものでしょうか。このページでは、悪意の遺棄の該当例と、悪意の遺棄があると主張して裁判を起こす場合に必要なことについてお伝えいたします。

離婚原因である「悪意の遺棄」とは?

知っておきたい離婚のポイント
  • 悪意の遺棄とは婚姻関係が破綻することを知りながらする法律上規定されている夫婦の同居・協力・扶助義務に違反する行為
  • 悪意の遺棄の具体例

悪意の遺棄とはどのようなものなのでしょうか。

婚姻関係の破綻を意図し、またはそれを認容しながらする、夫婦の協力義務等に違反する行為のことをいいます。具体例とともに確認しましょう。

「悪意の遺棄」とはどのようなものなのでしょうか。

悪意の遺棄とは?

悪意の遺棄とは、民法770条1項2号に規定されている離婚原因で、婚姻関係の破綻を意図し、またはそれを認容しながらする、夫婦の同居・協力・扶助義務に違反する行為のことを言います。

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

離婚をする場合にはまず、話し合いで離婚する協議離婚を試みます。
相手が離婚を拒む場合には、まず離婚調停を行い、それも成立しない場合には離婚裁判を行います。
この離婚裁判を提起するためには、離婚原因が必要で、悪意の遺棄はその中の一つです。

ここでいう「悪意」という言葉は、婚姻関係の破綻を意図し、またはそれを認容する態度を意味します。
「遺棄」という言葉は、夫婦の同居・協力・扶助義務に違反する行為のことをいうとされています。
民法では婚姻した夫婦には、同居・協力・扶助の義務があると規定しています。

(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

遺棄とは、この民法752条にある同居・協力・扶助に違反する行動のことをいいます。

悪意の遺棄の具体例

悪意の遺棄の具体例には次のような例が挙げられます。

単身赴任などの理由なく別居すること
仕事をしているのに家に生活費を入れない
配偶者を家から追い出す
配偶者を家に居られない・帰宅できないような状況にする
健康状態に問題がないにもかかわらず働こうとしない
愛人の家に入り浸って帰ってこない

愛人の家に入り浸っているような場合には民法770条1項1号所定の不貞行為がある可能性もありますし、DVなどで家に居られないような行為をする場合には、770条1項5号所定の「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する可能性もあるので、併せて検討しましょう。

悪意の遺棄を理由として離婚を請求するときの注意点

知っておきたい離婚のポイント
  • 悪意の遺棄に関する証拠をしっかり集める
  • 離婚準備は念入りにすすめる

悪意の遺棄を理由として離婚をする場合にはどんなことに注意が必要ですか?

しっかり証拠を集めること、離婚の準備は念入りに行うことですね。相手との交渉を弁護士に依頼することも離婚を有利に進めるコツの一つです。

悪意の遺棄を理由として離婚を請求するときの注意点を確認しましょう。

悪意の遺棄についての証拠を集める

悪意の遺棄をされていることについての証拠をしっかり集めましょう。
悪意であることは、相手の心の内のことになるので、直接証明しようがありません。
しかし、離婚を請求するに至るまでの経緯をしっかり証明できれば、悪意であるということを推認してもらうことが可能になります。
遺棄に該当する事実については、悪意の遺棄の態様に応じて、必要となるものを集めます。

・相手のメール・SNSのメッセージ
・相手が住所を移している場合には現在の相手の住民票
・生活費の送金に関する通帳の記録

また、直接証拠を確保するのが難しい場合でも、経過を詳細に日記に記載していれば、証明できる事実と突き合わせて、間接的に証拠にすることができる場合があります。
より立証しやすい不貞行為などがある場合には、その事実の証拠を収集するのも良いでしょう。

証拠の有無は、離婚請求ができるかどうかの判断のみならず、慰謝料の額にも影響します。
また、しっかり証拠が揃っているような状況で、離婚を拒絶して離婚裁判まで粘るのは、労力や費用の面でもつりあわないと考えれば、交渉・調停の段階で離婚に応じてくることも期待でき、全体的に離婚を有利にすすめることができます。

離婚の準備は念入りに

離婚の準備は念入りに行いましょう。
特に注意なのは、別居をする際の別居後の生活や、離婚後の生活に支障をきたさないように、住む場所・仕事・預貯金・周りの協力体制などの準備をしっかり整えておきましょう。
もし、周りに助けてくれる方がいない場合には、行政に相談をしておき、必要な支援を受けるようにしましょう。

弁護士に依頼する

悪意の遺棄をしており、離婚に応じないような人物の場合でも、弁護士に依頼すれば交渉にも応じることもあります。
証拠収集や、慰謝料・財産分与の調査、法律的な問題についての判断などにおいても、もちろん弁護士は強い味方です。

さらに、弁護士が出てくることで、相手も弁護士に相談し、「不利であるので交渉で離婚に応じた方が良い」というようなアドバイスを受けることも期待できます。
悪意の遺棄をするような相手との交渉・調停を一人で戦い抜くのには大変な精神的負担がかかります。
弁護士に依頼することで、精神的負担も大きく和らげることが可能です。

まとめ

このページでは、悪意の遺棄がどのようなものなのかについてを中心にお伝えしました。
悪意の遺棄には、様々な行為が該当するので、ある行為が実際に悪意の遺棄に該当するのかジャッジするのが難しいこともあります。
まずは弁護士に相談してみて、悪意の遺棄にあたるのかを確認してみてください。