
- 離婚に際して兄弟姉妹を分離することはできる?
- 離婚時に兄弟姉妹を分離できる場合とは?
- 兄弟姉妹を分離せずに問題を解決する方法とは?
【Cross Talk 】離婚に際して兄弟姉妹を分離することは可能ですか?
離婚に際して兄弟姉妹を分離することは可能でしょうか?
兄弟姉妹不分離の原則があるため、同一の親権者となることが原則です。
離婚で兄弟姉妹を分離できる場合について、詳しく教えてください。
未成年の子どものいる夫婦が離婚する場合、現行法では父母のいずれか一方を親権者に指定する必要があります(法改正により共同親権の制度が作られましたが、まだ施行する日は確定していません。)。それでは、子どもが複数いる場合には、例えば、兄の親権は父親が持ち、弟の親権は母親が持つといった兄弟姉妹の分離は可能なのでしょうか?兄弟姉妹の分離が許容されるのはどのような場合なのでしょうか?本コラムでは、これらの疑問点と併せて、兄弟姉妹を分離せずに問題を解決する方法についても、弁護士がわかりやすく解説していきます。
離婚に際して兄弟姉妹を分離できる?

- 離婚に際して兄弟姉妹を分離できる?
- 兄弟姉妹不分離の原則とは?
兄弟姉妹を引き離して離婚をすることはできるのでしょうか?
ここでは、離婚に際して兄弟姉妹を分離することの可否について解説していきます。
離婚の際には、父母の一方を親権者に指定する
離婚は、夫婦の関係を解消するだけでなく、子どもが複数いるご家庭においては、親権者をどちらにするかという重要な問題を伴います。
離婚の際、未成年の子どもがいる場合には、父母のどちらか一方を親権者と定めなければなりません。
なお、2024年5月の民法改正で、共同親権の制度が新設されましたが、まだ施行日は確定していません。
これは、子どもが安定した環境で成長するために、責任を持って監護・教育を行う親を明確にする必要があるためです。親権者は、子どもの身上監護(身の回りの世話や教育など)と財産管理の両方を行う権利と義務を負います。
原則として、父母が協議して親権者を決定しますが、協議が整わない場合は、家庭裁判所が審判や調停の手続きを経て親権者を指定することになります。
関連記事:親権者とは?親権者になる方法や権利についてわかりやすく解説
兄弟姉妹不分離の原則とは?
親権者を決定するにあたっては、様々な要素が考慮されますが、その一つに「兄弟姉妹不分離の原則」という考え方があります。
これは、共に生活してきた兄弟姉妹は、精神的・情緒的な結びつきが強く、無理に分離することは子どもたちの健全な成長にとって好ましくないと考えられるため、できる限り同じ親権者の下で養育されるべきであるという原則です。
長年共に過ごしてきた兄弟姉妹を引き離すことは、子どもたちに大きな精神的な負担やショックを与える可能性があり、人格形成にも悪影響を及ぼすと考えられています。
子どもの意思も尊重される
親権者を決定する上で重要な要素の一つに、子どもの意思の尊重があります。
特に、ある程度の年齢に達している子どもについては、どちらの親と暮らしたいのかという意向が重視されます。これは、親権者の決定が子ども自身の生活に直接的な影響を与えるため、その意見を無視することは適切ではないという考えに基づいています。
ただし、子どもの年齢や発達段階によっては、自身の意思を十分に表明できない場合や、一方の親の意向に過度に影響を受けてしまう可能性も考慮しなければなりません。
離婚の際に兄弟姉妹を分離できる場合とは?

- 離婚の際に兄弟姉妹を分離できるのはどのような場合?
- 元々別々に暮らしていた場合や、子どもらが分離を希望している場合
兄弟姉妹を離婚の際に引き離すことができるのはどのような場合でしょうか。
ここでは、離婚に際して例外的に兄弟姉妹を分離できる場合について解説していきます。
父母が話し合いによって親権者を分ける場合
離婚の方法には、夫婦間の協議によって合意に至る協議離婚と、協議が整わない場合に家庭裁判所が関与する調停や審判離婚があります。このうち、協議離婚においては、親権者の決定は原則として夫婦の自由な合意に委ねられます。
したがって、父母双方が兄弟姉妹を別々の親権者の下で育てることに合意しているのであれば、裁判所の判断基準に縛られることなく、兄弟姉妹を分離する親権者の指定も可能です。
もっとも、親権者を決める際には、親の都合だけでなく、子ども一人ひとりの気持ちや将来への影響を十分に考慮することが重要であることは言うまでもありません。
長期間の別居で兄弟姉妹が別々に生活していた場合
夫婦が長期間にわたり別居しており、その期間中、兄弟姉妹がそれぞれ一方の親と安定した生活を送っていたような場合、「兄弟姉妹不分離の原則」よりも「継続性の原則」が重視されることがあります。
「継続性の原則」とは、現状の養育環境をできる限り維持することが子どもの福祉に繋がるという考え方です。長年の別居により、兄弟姉妹が既に別々の生活基盤を築いている場合、無理に一方の親の元に集めることが、かえって子どもたちに混乱や精神的な負担を与える可能性があります。
このような状況においては、それぞれの監護状況や子どもの適応状況などを考慮し、別々の親がそれぞれの兄弟姉妹の親権者となるのが適切である、と判断がなされることがあります。
子どもが分離を希望している場合
親権者の決定においては、子ども自身の意思も重要な要素として考慮されます。
特に、ある程度の年齢に達し、自分の意見をしっかりと表明できるようになった場合、どちらの親と生活したいかという意向は尊重される傾向にあります。
家事事件手続法では、15歳以上のお子さんについては、親権者を指定する際に必ずその意見を聴取しなければならないと定められています。また、15歳未満の子どもであっても、発育状況によっては意見が聴取されることがあり、10歳前後であれば、その意思が尊重されることも少なくありません。
兄弟姉妹がそれぞれ異なる親との生活を強く望んでおり、その意思が成熟したものであると判断される場合には、兄弟姉妹を分離する親権者の決定がなされる可能性もあります。
兄弟姉妹を分離せずに解決する方法

- 兄弟姉妹を分離せずに問題を解決する方法とは?
- 親権者と監護者の分離や、面会交流の適切な実施を検討する
離婚で兄弟姉妹を分離せずに済む方法はありますか?
ここでは、兄弟姉妹を分離せずに問題を解決できる方法について解説していきます。
親権者と監護権者を分ける
通常、親権者は子どもの身上監護(生活や教育など)と財産管理の両方の権利義務を負い、監護権も親権に含まれるため、親権者と監護権者は同一人物となるのが一般的です。
しかし、法律上、親権者と監護権者を別々の親に指定することも禁止されていません。
この方法を選択すれば、例えば、一方が親権者として子どもの進路決定などの重要な事項に関わり、もう一方が監護権者として子どもと共に生活するという形をとることができます。「離婚しても子どもとの繋がりを保ちたい」という希望がある場合に、兄弟姉妹を分離することなく、その思いを叶える選択肢となりえます。
関連記事:親権と監護権を分けるメリット・デメリットとは?養育費はどうなる?
充実した面会交流を実施する
「子どもと一緒に暮らしたい」という気持ちの裏には、「離婚によって子どもと会えなくなるのではないか」という不安があることも少なくありません。しかし、離婚は夫婦の関係を解消するものであり、親子の関係が断たれるわけではありません。離婚後も、お子さんと継続的に交流を持つための「面会交流」という方法があります。
面会交流では、会う日時や頻度、方法などを具体的に取り決めることができ、子どもとの繋がりを維持することが可能です。兄弟姉妹を分離する方法は子どもに与える影響も大きいため、親権を譲歩する代わりに、面会交流の条件を充実させる方向で協議することを検討してみてください。
関連記事:面会交流の頻度が多い場合の対処法!統計結果からわかる平均回数合わせて紹介
跡継ぎ問題などは別途話し合いの機会を設ける
家業を継がせたいといった「跡継ぎの問題」が、兄弟姉妹の分離を検討する理由の一つとなる場合があります。しかし、誰が親権を持つかということと、子どもが将来跡を継ぐかどうかは、本来別の問題として捉えるべきです。
子どもには自分の将来を選択する権利があり、親の意向だけでその進路を決定することは適切とは言えません。どうしても跡継ぎについて考えたいのであれば、離婚の親権者を決める場面ではなく、子どもが成長してから、お子さんの意思を尊重したうえで話し合いの機会を設けるようにすべきでしょう。
兄弟姉妹のいる離婚は弁護士に相談すべき

- 兄弟姉妹のいる離婚を弁護士に相談すべき理由とは?
- 有利な条件での離婚成立や、紛争の蒸し返しの防止が図れる
兄弟姉妹のいる離婚問題については、弁護士に相談すべきなのでしょうか?
ここでは、子どもが複数いる夫婦の離婚を弁護士に相談するメリットについて解説していきます。
親権獲得のためのアドバイスを受けられる
離婚において、子どもの親権をどちらが持つかはもっとも重要な争点の一つです。弁護士に相談することで、ご自身の状況において親権を獲得するためにどのような証拠を準備すべきか、どのような主張をすべきかなど、具体的なアドバイスを受けることができます。
弁護士のサポートを受けることで、親権獲得に向けて適切な準備を行い、有利な状況を作り出すことが期待できます。
有利な離婚条件で相手と交渉できる
離婚に際しては、親権だけでなく、養育費、財産分与、慰謝料など、様々な条件について夫婦間で話し合い、合意する必要があります。兄弟姉妹がいる場合、養育費の算定や、子どもたちの将来のための財産分与など、より複雑な交渉が必要となることがあります。
弁護士は、これらの離婚条件について、法的な知識や過去の事例に基づいて適切な相場を把握しており、あなたの代理人として相手方と有利に交渉を進めることができます。
ご自身の希望や正当な権利を主張し、不利な条件で合意してしまうことを防ぐためにも、弁護士の交渉力は非常に頼りになります。
離婚後に紛争が蒸し返されないように対処できる
離婚協議が成立し、離婚が成立した後も、養育費の不払いや面会交流を巡るトラブルなど、元配偶者との間で新たな紛争が生じる可能性は十分にあります。
弁護士に相談することで、離婚協議の段階で、これらの将来的なリスクを予測し、紛争を未然に防ぐための取り決めを行うことができます。例えば、養育費の支払い方法や面会交流の具体的なルールなどを明確に定め、公正証書を作成しておくなどの対策を講じることができます。
これにより、離婚後の不安定な状況を回避し、お子さんたちが安心して成長できる環境を整えることが期待できます。
まとめ
未成年の子どもがいる夫婦が離婚をする場合、民法改正の施行前のもとでは、父母のうち一方を親権者と定める必要があります。子どもが複数いる場合には、できる限り同じ親権者の下で養育されるべきであるという兄弟姉妹不分離の原則があります。
ただし、例外的に兄弟姉妹を分離して離婚することが許容されることもあるため、お悩みの場合は弁護士に相談されることをおすすめします。
当事務所には、親権問題を含む離婚事件に詳しい弁護士が在籍しておりますので、お気軽にご相談ください。






