親権と監護権を分けるメリット・デメリットについて解説いたします。
ざっくりポイント
    >親権は「身上監護権(監護権)」と「財産管理権(親権)」に分けることができる
  • 親権を分けることで、親権争いの早期決着が期待できるが、両親の意見が分かれた場合に子どもに悪影響を及ぼす可能性があるなどのデメリットがある
  • 親権について両親の意見がまとまらない場合は弁護士に相談

目次

【Cross Talk 】親権と監護権を分けられるって本当?

離婚の親権で相手と揉めています。親権と監護権を分けられると聞いたのですが、本当でしょうか?

本当です。親権を分けると相手と揉めている場合に早期解決に繋がるかもしれませんが、デメリットもありますので慎重に検討しましょう。

詳しく教えてください!

親権と監護権を分けるメリット・デメリット、養育費について解説していきます。

子どもの財産管理をする権利(親権)と身の回りの世話をする権利(身上監護権)は両親で分けることが可能です。親権と監護権を分けることで親権争いの解決が見込めるなどのメリットがありますが、両親の意見が合わず子どもに悪影響を及ぼす可能性や苗字の変更や財産管理で親権者の同意が必要となるなどのデメリットも生じます。今回は親権と監護権とを分けるメリット・デメリット、親権と監護権を分ける流れや手続きを解説していきます。

親権と監護権とは?分けるメリット・デメリット

知っておきたい離婚のポイント
  • 親権は身上監護権(監護権)と財産管理権(親権)に分けることができる
  • 2022年に調停や審判を経て親権を分けた両親の割合は0.54%

そもそも親権と監護権とは何でしょうか?

子どもの身の回りの世話などをする身上監護権(監護権)と、財産を管理する財産管理権(親権)を合わせて親権といいます。

親権と監護権の違いとは?調停や審判を経て分ける両親の割合は0.54%

民法820条で「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と定められています。

親権には「身上監護権」と「財産管理権」があります。
身上監護権とは、子どもと同居し身の回りの世話や教育をする権利です。財産管理権は子どもの財産を管理し財産に関す法律行為(契約・相続など)を代理人として行う権利です。

親権が争われたときには、身上監護権(監護権)と財産管理権(親権)を分けることが可能です。
裁判所の「2022年司法統計年報」の「『離婚』の調停成立又は調停に代わる審判事件のうち『子の親権
者の定め』をすべき件数」によると子の親権と監護権を分けた実例は合計93件です。

親権者数の合計は17,128件(1件の終局事件について複数の未成年者がいる場合に、定めた親権者が異なることがあるため、総数以外の合計と総数は必ずしも一致しない)ですので、全体の0.54%が親権と監護権を分けていることになります。

親権と監護権を分けるメリット

親権と監護権を分けるメリットは、両親が親権をめぐり争っている場合に早期解決できる可能性があることです。また、子どもと一緒に住んでいない親が財産管理権を持つことで「子どもと切り離されていない」と安心感がもてる可能性もあるでしょう。

親権と監護権を分けるデメリット

親権と監護権を分けると、監護権者と親権者の考えが対立したときに子どもに悪影響を及ぼすおそれがあります。
また、監護権者が離婚で苗字を旧姓に戻しても子どもの苗字の変更は親権者の同意が必要となります。
子どもが銀行に預金口座を開設する、財産に関する契約をするなどの場合でも、親権者の同意が必要です。親権と監護権を分けると、上記のように許可が必要なことがあり離婚後も両親は連絡を取らなくてはいけません。
親権と監護権を分けることを検討している場合は、まず「子どもにとって最善の方法であるか」を検討しましょう。

親権と監護権を分けた場合、養育費はどうなるのか

親権と監護権を分けた場合、子どもと同居し養育するのは監護権者ですので親権者から養育費をもらうことが可能です。
監護権者は子どもの食費など衣食住にかかわる費用を負担していますので、請求する権利を持っています。
養育費の目安は裁判所の「養育費・婚姻費用算定表」を参考にしましょう。

親権と監護権を分ける手続き

知っておきたい離婚のポイント
  • 親権を決める際には、2人で話し合い合意できたら書面化する
  • 話がまとまらない場合は調停を検討する

親権と監護権を分けるとデメリットもあるのですね。でもお互い親権が譲れずに話がまとまらなくて困っています。

まずは弁護士に相談することをおすすめいたします。法律的な観点からのアドバイスをもらえますし、調停に発展する前に代理人として交渉してもらうことも可能です。

2人で話し合う

親権をどちらが持つか、親権と監護権を分けるかなど2人で話し合いましょう。
親権と監護権を分けることを検討している場合は、親権と監護権の違いを把握しどちらが何を決めるのかを事前に話し合っておきましょう。
親権は、子どもの利益や福祉のために行使されますので子どものことを第一に考え話し合いましょう。

話がまとまった場合は合意書・公正証書を作る

話がまとまった場合には、決めた内容を合意書もしくは公正証書に残しておきましょう。
公正証書は公証役場で公証人立ち会いのもと作成する必要がありますが、例えば養育費を支払う義務を負う人の支払いが滞った場合には強制執行を受けることを認諾する「強制執行認諾文言」を入れることが可能です。文言を入れることで、家庭裁判所で調停・審判などをせずに、強制執行の手続きが可能となります。

話がまとまらない場合は調停・訴訟の手続きを

親権や監護権について話し合いがまとまらない場合は、まず調停で話し合う流れが一般的です。
弁護士に依頼すると代理人として、自分自身の代わりに相手と話し合いをしてもらえます。

調停や訴訟に発展することなく、問題が解決できる可能性がありますのでお困りの方はまず弁護士への相談を検討してみましょう。

まとめ

親権と監護権を分けると、離婚後も連絡を取らなくてはいけない、親権者と監護権者の意見が分かれた場合に子どもに悪影響を及ぼす可能性などのデメリットがあります。
親権と監護権を分ける際には、子どものことを第一に考え慎重に検討しましょう。
親権について意見がまとまらない、相手と揉めているなどの場合では、弁護士に相談することをおすすめいたします。法律的な観点からの対処法を聞くことができ、代理人として交渉を依頼することも可能です。