嫁姑問題が原因の離婚について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 嫁姑問題に限らず、双方が合意している場合には離婚ができる
  • 姑の言動により個人の権利・利益を侵害された場合には慰謝料を請求できる
  • まずは話し合い、合意に至らない場合には調停を検討、弁護士にも相談を

目次

【Cross Talk 】嫁姑問題で離婚できる?

姑と折り合いが悪く離婚を考えています。嫁姑問題で離婚できますか?

夫婦が合意すれば離婚は可能ですが、どちらかが拒否している場合には「法定離婚事由」が必要となります。

詳しく教えてください。

嫁姑問題と離婚、慰謝料請求について解説していきます

嫁姑問題など「義家族と折り合いが悪い」という方は少なくありません。
2021年の司法統計年報によると、婚姻関係事件における申立人の動機で「家族親族と折り合いが悪い」と回答したのは4,871人でした。
夫婦が合意すれば離婚は可能で、相手が拒否している場合には長期間の別居など「法定離婚事由」が必要です。嫁姑問題と離婚の可否、慰謝料や離婚の流れについて解説していきます。

嫁姑問題など親族と折り合いが悪く離婚する夫婦は少なくない

知っておきたい離婚のポイント
  • 家庭裁判所に婚姻関係事件を申立てた人のうち、4,871人が「家族・親族と折り合いが悪い」
  • 夫婦が合意すれば離婚はできるが、相手が合意していない場合にはまず別居などを視野に入れる

姑と折り合いが悪い事を原因に離婚する人はどのくらいいるのでしょうか?

姑とは限りませんが、「家族・親族と折り合いが悪い」という理由で2021年に家庭裁判所に婚姻関係事件を申立てたのは4,871人です。詳しく見ていきましょう。

家庭裁判所に申立てた人のうち4,871人が「家族・親族と折り合いが悪い」

2021年の司法統計年報家事編で、婚姻関係事件の申立人の動機を見ていきましょう。

【図解】嫁姑問題で離婚できる?離婚率や慰謝料の請求、具体的な事例を解説

2021年の婚姻関係事件の合計は64,885件に上ります。婚姻関係事件とは離婚・夫婦関係調整・婚姻費用分担など結婚した夫婦に関わる調停・審判・訴訟です。
嫁姑問題など「家族親族と折り合いが悪い」と回答したのは4,871件で、およそ8%です。

動機のうち主なものを3つ複数回答する形式ですが、義家族との折り合いの悪さで悩んでいる方は少なくありません。

※参照:裁判所 令和3年 司法統計年報3家事編

嫁姑問題で離婚できる?慰謝料や具体的な事例

「姑と仲が悪い」という理由で離婚できるのでしょうか?

夫婦が2人とも合意している場合、離婚は可能
です。ただし、合意できないときには「
法定離婚事由
」という最終的に裁判になった場合の民法※2に記載された
5つの離婚理由のうちいずれかが必要となります。

第770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

「悪意で遺棄された」とは、
今後の夫婦関係が破綻すると分かっていながら夫婦の同居・協力・扶助の義務(民法第752条)を怠った場合
です。正当な理由がないのに家を出て行く、生活費を渡さないなどの行為が該当します。

「婚姻を継続し難い重大な事由」の例としては、長期間の別居・DV・モラハラ・性的な不一致・犯罪行為に伴う服役などがあります。

嫁姑問題だけでは法定離婚事由とは言い難いですが、DVやモラハラなどがある場合には離婚理由となります。
また、嫁姑問題が原因で別居し別居期間が長い場合も法定離婚事由になるでしょう。

慰謝料については民法第709条「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」という条項を基に請求できます。

姑の行為が客観的に見て権利・利益を侵害される、行き過ぎた言動に対しては慰謝料請求が可能となるでしょう。
例えば姑の暴力や暴言が原因で離婚に至った、モラハラで病気になった事例などが想定されます。
調停・訴訟を経て
慰謝料を請求する場合には証拠が必要
となりますので、通話を録音したものやメッセージアプリの記録などを残しておくことをおすすめします。
慰謝料請求ができるか否か自分で判断が難しい場合は弁護士などの専門家に相談しましょう。

嫁姑問題での離婚の進め方

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚前に話し合い、財産分与や子どもがいる場合には親権・養育費などを取り決める
  • 合意ができない際には家庭裁判所に調停を申立てる。まずは弁護士に相談を

夫が離婚に同意しません。私はどうしても離婚したいのですが、どうすれば良いですか?

家庭裁判所に調停を申立てます。弁護士に依頼し、代理人として話し合ってもらうことも可能です。

離婚前の話し合い

離婚前に財産分与や慰謝料の有無、子どもがいる場合には
親権・養育費などについても話し合いで取り決めます。

話し合いがまとまらない際には弁護士に依頼することで、代理人として交渉が可能です。慰謝料を請求する、親権を獲得したいなどの場合では有利に進められる事もありますので、まずは弁護士に相談してみましょう。

子どもがいる場合は親権・養育費などについても取り決めを

子どもがいる場合には親権・養育費、離婚後の面会交流について取り決める必要があります。
養育費は裁判所のホームページに掲載されてある「養育費・婚姻費用算定表※3」を参考に話し合いを進めます。

双方が合意した際には離婚協議書または公正証書を作成

離婚の可否や財産分与の内容、親権など双方が合意できた際には離婚協議書もしくは離婚給付等契約公正証書を作成します。
後のトラブルを回避するためにも約束は必ず書面化しておきましょう。

離婚給付等契約公正証書は、公証役場で手数料を支払い作成しなければいけません。しかし、証拠力が高く養育費などの支払いが滞った時は直ちに強制執行を受けるといったことを公正証書に記載する事が可能です。「強制執行認諾文言」と呼ばれ、家庭裁判所での手続きをしなくても、直ちに強制執行の手続きが可能となります。

合意に至らない場合は調停、最終的には離婚裁判へ

話し合った結果、何らかの部分で合意できない場合には家庭裁判所に調停を申立て、調停が不成立に終わった時は審判もしくはどちらかが訴訟の手続きを行います。

裁判に発展すると時間と手間・費用がかかります。長期化すると精神的な負担も大きくなってしまいますので、お悩みの方は弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

嫁姑問題と離婚、慰謝料や離婚までの流れについて解説してきました。現在の状況で離婚できるのか、慰謝料を請求できるのか、親権や養育費はどうなるのか不安な方は弁護士に相談してみるのも良い方法です。
離婚問題の実績が豊富な弁護士に相談することで、知識や経験に基づいた対処法やアドバイスをもらえるでしょう。