離婚時に仮想通貨(暗号資産)は財産分与の対象になる?
ざっくりポイント
  • 仮想通貨は財産分与の対象?
  • 仮想通貨が財産分与の対象とならない場合とは?
  • 仮想通貨を財産分与する際の評価額は?

目次

【Cross Talk 】仮想通貨(暗号資産)は財産分与の対象ですか?

仮想通貨は財産分与の対象となりますか?

夫婦の共有財産であれば暗号資産も財産分与の対象となります。

仮想通貨の財産分与について詳しく教えてください。

仮想通貨(暗号資産)も原則として財産分与の対象となる

離婚に際し、配偶者が仮想通貨(暗号資産)を保有していた場合、財産分与の対象になるのでしょうか。また、仮想通貨はどのように価値を評価すればいいのでしょうか。仮想通貨も原則として財産分与の対象ですが、特有財産との区別や評価基準については複雑な問題があります。
この記事では、仮想通貨が財産分与の対象となる場合や、対象とならない場合、仮想通貨の評価時などについて弁護士がわかりやすく解説していきます。

仮想通貨は財産分与の対象となる?

知っておきたい離婚のポイント
  • 財産分与の対象とは?
  • 暗号資産も財産分与の対象となる

仮想通貨は財産分与の対象ですか?

暗号資産も原則として離婚時の財産分与の対象となります。

離婚時には財産分与を請求できる

財産分与とは、離婚する際に、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を公平に分け合う制度(民法768条)で、「清算的財産分与」、「扶養的財産分与」、「慰謝料的財産分与」の3種類に分けられますが、中心となるのは、夫婦の共同財産を清算する清算的財産分与です。

財産分与の対象となる財産は、「夫婦共有財産」です。これは、結婚してから夫婦が協力して築いた財産全般を指し、その名義が夫婦どちらか一方であっても関係ありません。
専業主婦(主夫)であった配偶者の家事労働による貢献も、財産形成に協力したものとして評価されます。

原則、仮想通貨も財産分与の対象となる

財産分与の対象となる共有財産には、現金、預貯金、不動産、株式、保険などが含まれます。
暗号資産は、インターネット上でやり取りされる電子的な資産の総称で、ビットコインやイーサリアムなどがその代表的です。国が保証する法定通貨(円やドル)とは異なり、特定の管理者が存在せず、ブロックチェーン技術という改ざんされにくい仕組みで取引が記録・管理されます。元々は「仮想通貨」と呼ばれていましたが、法定通貨との誤解を避けるため、金融庁が「暗号資産」に名称を変更しました。

そして、暗号資産も財産的価値を持つ資産である以上、株式などの有価証券と同様に、原則として財産分与の対象となります。特に、夫婦が婚姻期間中に、夫婦共同の家計から支出して仮想通貨を取得し、運用していた場合は、夫婦が協力して築いた財産(共有財産)と見なされます。

したがって、例えば、夫名義の取引所で保有されている仮想通貨であっても、妻は離婚時に自身の貢献分を請求する権利があるのです。

財産分与の割合は原則として2分の1

財産分与の割合(貢献度)について、裁判実務では、夫婦が共同で築いた財産については、特別な事情がない限り、夫婦それぞれ平等に「2分の1」とするのが原則です(2分の1ルール)。

これは、財産形成における夫婦の役割や貢献度は、収入の多寡や財産の名義に関わらず平等であるという考え方に基づいています。一方が経営者や投資家など、一定のスキルによって財産を築いた場合であっても、この2分の1ルールが適用されるのが通例です。

したがって、夫婦の共有財産と認められた仮想通貨(暗号資産)についても、原則としてその評価額の2分の1の分与を請求できます。

関連記事:財産分与の割合は原則2分の1?割合が変更される場合とは?

仮想通貨が財産分与の対象とならない場合

知っておきたい離婚のポイント
  • 仮想通貨が財産分与の対象とならない場合とは?
  • 特有財産は財産分与の対象とならない

仮想通貨が財産分与の対象とならないのは、どのような場合でしょうか?

仮想通貨が一方の特有財産の場合は、財産分与の対象とはなりません。

仮想通貨が特有財産であれば財産分与の対象外

仮想通貨は原則として財産分与の対象となる「共有財産」ですが、「特有財産」については、財産分与の対象外です。
特有財産とは、民法で定められた、夫婦の一方のみが単独で有する財産のことを指します。財産分与制度の趣旨が「夫婦の協力による財産の清算」にあるため、夫婦の協力とは無関係に取得された特有財産は、公平性の観点から分与の対象外です。

たとえ相手名義の仮想通貨が多額であっても、それが特有財産と認められれば、分与を請求することはできません。

仮想通貨が特有財産として認められる場合

仮想通貨が特有財産として認められるのは、以下のような場合です。

  • 婚姻前に取得・保有していた場合
  • 婚姻後に相続や贈与により取得した場合
  • 保有者の特別な才覚によって得られた利益と認められた場合
  • まず、結婚する前に自己資金で購入し、保有していた仮想通貨については、特有財産と判断される可能性が高いです。ただし、婚姻期間が長期にわたる場合、独身時代の貯金が夫婦の共同生活費やその他の共有財産と混ざり合い、特有財産としての性質(特有性)が失われたと判断される場合には、財産分与の対象となる可能性があります。

    また、親族などから相続や贈与によって取得した仮想通貨についても、夫婦の経済的な協力関係とは無関係に一方的に取得されたものであるため、特有財産として扱われます。

    さらに、仮想通貨は価格変動が激しい金融商品であり、多額の利益が夫婦の一方の特別な知識や投資の才覚(才能)によってもたらされたと認められた場合、その利益の全部または一部が特有財産として扱われ、財産分与の対象外となる可能性があります。例えば、マイナーな仮想通貨を初期段階から保有し、独自の分析と判断で利益を上げ、それが投機的な要素よりも本人の特別な才能によるものと判断されれば、特有財産として主張できる余地があります。

    ただし、市場全体の上昇に伴って値上がりした一般的なビットコインなどの利益について、「たまたま利益が出ただけ」と評価される場合は、才覚による特有財産とは認められにくいのが実情です。
    このように仮想通貨を特有財産として主張する場合には、専門家による主張・立証が必要となります。

    財産分与の対象となる仮想通貨の評価額は?

    知っておきたい離婚のポイント
    • 財産分与における仮想通貨の評価額は?
    • 別居時の保有分について離婚成立時の評価額が基準となる

    仮想通貨の金額が変動している場合、どのように財産分与することになるのでしょうか?

    ここでは、財産分与の際の仮想通貨の評価額について解説していきます。

    仮想通貨は株式や不動産と同様に時価が変動する財産ですが、その価格変動が非常に大きいため、財産分与において「いくらで評価するのか」という評価基準が特に重要です。

    まず、財産分与の対象となる財産が「いつの時点の残高(数量)か」を決定する基準時については、一般的な財産と同様に、夫婦が協力して財産を形成する関係が終了した時点、すなわち別居を開始した時点(または離婚に向けた協議・調停を開始した時点)とされています。

    したがって、別居後にその保有者が暗号資産を追加で購入したり売却したりして数量が変動しても、分与対象となるのは原則として別居時の数量で固定されます。

    次に、その分与対象となる仮想通貨の市場価値をいくらと評価するか(法定通貨に換算するか)を決定する評価の基準時については、価格変動のある財産(時価のある財産)の評価基準時と同様に、原則として「離婚が成立した時点」とされています。

    これは、夫婦が財産を清算する目的から、離婚時という最終的な清算時点での価値を反映させる方が公平であるという考え方に基づきます。したがって、別居時の暗号資産の評価額が100万円だったとしても、離婚成立時に50万円に暴落していれば、財産分与の評価額は50万円となるのが原則です。

    しかし、裁判実務においては、調停や裁判の過程で「離婚成立時」の価格を採用することは現実的ではありません。価格変動が激しすぎるため、審理が進む中で新たな評価が必要となるためです。そのため、実際には、調停や裁判で財産分与の内容が確定する時点に可能な限り近い時点の評価レートを用いて算定することが一般的です。

    財産分与の問題は弁護士に相談すべき

    知っておきたい離婚のポイント
    • 財産分与の問題は弁護士に相談すべき
    • 分与財産を適切に評価してもらえる

    財産分与の問題は弁護士に相談すべきなのでしょうか。

    ここでは、財産分与を含む離婚問題を弁護士に相談するメリットについて解説していきます。

    相手方との交渉を任せられる

    財産分与は離婚条件の中でも特に争いになりやすく、当事者間の対立が激化しやすい事項です。特に仮想通貨のように多額の資産が絡む場合、相手が財産の存在を隠したり、本来分与の対象外である特有財産だと主張したりして、話し合いがまとまらない可能性があります。

    弁護士に依頼すれば、依頼者の代理人として、感情的になりがちな相手方との交渉を一任できます。弁護士は法的根拠に基づいて適切に主張・反論を行うため、ご自身で交渉を進めるよりも、スムーズかつ有利な条件で和解を成立させられる可能性が高まります。

    適切な財産評価をしてもらえる

    仮想通貨が絡む財産分与では、相手が財産隠しをしている可能性もあります。
    そのような場合でも、弁護士に依頼しておけば、弁護士会照会や調査嘱託などの方法を駆使して、財産を調査します。特に仮想通貨取引所に対する調査は、弁護士の経験や知識がなければ難しい可能性があります。

    また、相手が「これは婚姻前の貯金で買った特有財産だ」と主張してきた場合、その主張が法的に妥当かを判断し、適切に反論してもらえます。
    さらに、価格変動が激しい仮想通貨について、別居時や離婚時といったいつの時点の価格で評価すべきか、事案に応じて最も依頼者に有利になるよう法的主張を構成してもらえます。財産を適切に評価することが、適切な財産分与につながります。

    必要な法的手続を全て任せられる

    協議で解決しない場合、離婚調停や裁判といった法的手続に進むことになります。弁護士に依頼すれば、これらの手続を全て一任できます。
    ご自身で慣れない法的文書(申立書、主張書面など)を作成したり、裁判所や調停委員との複雑なやり取りを行ったりする時間と労力を大幅に節約できます。また、交渉や手続に関する精神的なストレスから解放され、離婚後の生活再建に集中できるようになるのも、弁護士に依頼する大きなメリットです。

    まとめ

    仮想通貨(暗号資産)は、夫婦が婚姻中に協力して築いた共有財産であれば、原則として財産分与の対象となり、財産分与の割合は2分の1です。ただし、婚姻前の資産や相続・贈与による取得した仮想通貨や、特別な才覚による利益と認められた場合は分与の対象外となります。
    価格評価の基準は、原則として別居時の保有数量に対して離婚成立時の価格を用いるため、変動リスクに注意が必要です。仮想通貨など複雑な財産分与の問題については、離婚問題に詳しい弁護士に相談して進めるようにしてください。