事実婚解消時の財産分与について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 事実婚でも法律婚と同様に財産分与ができる。慰謝料請求も可能
  • 養育費は父親の認知が必要になるため、解消前に認知してもらう
  • 話がまとまらないときには裁判所に内縁関係調整調停を申立てられる

目次

【Cross Talk 】事実婚で財産分与はできる?

10年間事実婚の状態で暮らしてきましたが解消する予定です。相手が働いており私は家事をしていたのですが財産分与は可能でしょうか?

可能です。事実婚でも法律婚と類推して適用し、財産分与を認める判決が過去に出ています。家事により財産形成に貢献したとみなされ分与される可能性は高いでしょう。

事実婚でも財産分与は可能。協力して築いた財産は「共有財産」となる

事実婚の関係を解消する際、事実婚状態のときに築いてきた財産は分与すべきでしょうか?
2人で協力して形成した財産は「共有財産」として財産分与が可能です。請求期限は解消から2年以内ですので、早めに分与の請求を行いましょう。
本記事では事実婚解消時における財産分与について、分与の流れについて解説していきます。

事実婚でも財産分与は請求できる

知っておきたい離婚のポイント
  • 事実婚について法律に明確な規定はないが、過去の判例では財産分与が認められている
  • 財産分与だけではなく、法律婚と同様に同居義務や婚姻費用負担義務も類推して適用される

事実婚の財産分与はいつ行えば良いのでしょうか?

決まりはありませんが、請求期限は2年以内ですので早めに行いましょう。

事実婚とは?法律婚との違い

事実婚とは籍を入れずに事実上夫婦として共同生活を送る男女を指します。
民法では法律婚については財産分与や養育費などについて定めがありますが、事実婚に関しては明確な記載がありません。

ただし、平成30(2018)年11月19日福岡高等裁判所決定では、事実婚状態にあった男女の財産分与を認める判断が出されました。

事実婚は籍を入れていないため、夫婦で同じ姓になることなどは認められません。ただし、これまでの判例から以下の民法の法律婚に関する規定は類推して事実婚にも適用すると解釈されています。

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない(民法第752条)
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する(民法第760条)
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない(民法第761条)
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする(民法第762条)
2.夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる(民法768 条)

民法より

以上のほかに、DVや、場合によっては不貞による慰謝料請求なども可能です。
養育費に関しては子どもが父親に認知されていることが要件となりますが、任意で養育費が支払われることもあります。取り決めた後に合意書、できれば公正証書を作成しておきましょう。

事実婚であっても法律婚と同様に財産分与は請求できる

事実婚では上記の通り法律婚と同様に財産分与の請求が可能です。

請求の期限は事実婚を解消してから2年以内ですので、早めに行いましょう。

事実婚を解消する際には双方で話し合いますが、一方が亡くなった場合にはどうすれば良いのでしょうか?
2000(平成12)年3月10日の最高裁判所の財産分与審判 では、事実婚のパートナーが亡くなった場合「法律上の夫婦の離婚に伴う財産分与に関する民法七六八条の規定を類推適用することはできないと解するのが相当である」と述べられました。

国税庁のホームページにも「内縁関係の人は、相続人に含まれません」と明記されており、事実婚の関係では相続の権利がありません。
事実婚のパートナーに遺産を譲りたい方は、遺言書を残しておく、親戚・身近な方に話し理解を得ておくことが重要となります。

事実婚の財産分与の流れ

知っておきたい離婚のポイント
  • 基本的に財産分与は1/2の割合で分けるが、例外もある
  • 話がまとまらないときには弁護士に相談、内縁関係調整調停を申立てる

相手と分与の割合で揉めています。どうすれば良いでしょうか?

財産分与は基本的に1/2の割合とされていますが、例外もあります。まずは弁護士に相談してみましょう。

財産分与の決まり

財産分与は基本的に1/2の割合で分けますが、関係解消後の生活保障の観点から多めに分与されることもあります。また慰謝料として上乗せされる場合も存在します。

分与の対象は2人で協力して築いた財産であり、事実婚より前に貯めたお金や相続・贈与で得た財産は除外されます。
不動産など一方の名義になっている財産でも、2人で協力して得たものであれば財産分与の対象となります。
例えば働きに出ている方の収入でマンションを購入し名義人となっていても、家にいる方が家事・育児などを担当していた際には財産の形成に貢献したとみなされ共同の財産になります。

基本的に財産分与は2人で話し合い決定します。

財産分与では原則贈与税はかかりませんが、国税庁のホームページによると以下の2点に該当する場合には贈与税が課されます。

「1 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合
2 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合」
国税庁「離婚して財産をもらったとき」

2人で話し合う

2人で話し合い共有財産をリストアップし、分与する財産の割合や方法を決めます。

預貯金・有価証券・不動産・家財道具など共有とみなされる財産を全て書き出しましょう。
住宅ローンや借金など債務がある場合は、まず「共有財産であるか個人の債務であるか」を話し合いましょう。例えば一方がギャンブルで借金をした際には個人の債務となりますが、夫婦で共同生活するためのマイホームの住宅ローンは2人の債務となります。

住宅ローンが残っており、残債が売却価格を上回る「オーバーローン」では物件の資産価値はマイナスとなります。
オーバーローンの家はトラブルが起こりやすいため、事実婚解消後に売却するかどちらかが住み続けるか、ローン返済などについて慎重に話し合いましょう。

連帯保証人・連帯債務者となっている方は事実婚解消後も返済義務は残りますので、可能であれば連帯保証(債務)を解除することをおすすめします。

話がまとまらないときには弁護士に相談を

財産分与について双方で話がまとまらない、何らかの事情で話が出来ないときには弁護士に相談することでスムーズに解決できることがあります。

弁護士は日常のトラブルの場面で代理人として交渉することが可能です。
事実婚の解消・離婚は当事者同士の話し合いで感情的になりこじれてしまう事例が多いですが、弁護士を通すことで冷静に話し合いができる可能性が高くなります。

法律の専門家としての観点からアドバイスを貰うことも可能です。

内縁関係調整調停に発展することも

話し合いで双方が合意に至らない場合には裁判所に「内縁関係調整調停」を申立てることが可能です。
調停では内縁関係の解消、財産分与・慰謝料・養育費などについて話し合うことができます。

子どもがおり父親に認知されていない場合には養育費の支払い義務が生じません。
認知されていない状況なら、事実婚を解消する前に認知をしてもらう、もしくは裁判所に「認知調停」を申立てましょう。

まとめ

法律婚と同様に、事実婚の解消時にも財産分与は可能です。事情があり相手と話し合いが出来ない場合、話がまとまらない場合には弁護士に相談することをおすすめします。
離婚・男女トラブルに詳しい弁護士に相談し、スピーディーな解決を目指しましょう。