
- 新たに導入される共同親権とは?
- 共同親権の導入で養育費はどうなる?
- 養育費の未払いへの対処法とは?
【Cross Talk 】共同親権が導入されると、養育費にも何か影響が出ますか?
テレビで共同親権の制度ができると聞きましたが、これによって養育費に何か影響がでるのでしょうか?
共同親権が導入されても、非監護親は子どもに養育費を支払う義務があることには変わりありません。
共同親権と養育費について、詳しく教えてください。
民法が改正され、新たに「共同親権」という制度が導入されるということを耳にしたことがある方も多いでしょう。共同親権とは、離婚後も父母の両方が子どもの親権を持つことを指します。これまで、離婚後は原則として単独親権であったことから、「新制度になると養育費が受け取れなくなるのではないか?」と不安を感じている方もいるかもしれません。
そこで、この記事では、共同親権の概要や、共同親権の導入による養育費への影響などについて、弁護士がわかりやすく解説していきます。
共同親権とは?

- 改正法における共同親権の内容とは?
- 新たに共同親権が導入されるのはいつから?
新たに導入される共同親権とは、どのようなものですか?
ここでは、共同親権の概要と、導入の時期などについて解説していきます。
共同親権について
共同親権とは、離婚した父母の双方が、子どもの親権を持つことを指します。
これまでの日本では、離婚後の親権は父母のどちらか一方のみが持つ「単独親権」が原則でした。しかし、2024年(令和6年)5月に成立した改正民法により、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」が選択可能となります。
親権とは、子どもの利益のために子どもを監護・教育し、かつ財産を管理するための父母の権利義務の総称です。具体的には、以下の2つの側面があります。
共同親権の下では、これらの権利義務を父母双方が共同で行使することになり、以下のような、「重要な事項」については、父母双方の合意が必要です。
しかし、上記以外の「監護教育に関する日常の行為」や、「子どもの利益のために急迫の事情があるとき」には、親権の単独行使ができます。
関連記事:共同親権とは?離婚する場合の親権などについてチェック
共同親権が導入されるのはいつ?
改正民法は、「2024年(令和6年)5月24日」に公布され、公布の日から2年以内に施行される予定です。具体的な施行日はまだ確定していませんが、「2026年(令和8年)5月」までには制度が開始されます。
今回の改正により、離婚後は、共同親権か単独親権かを選択することができるようになりました。
まず、協議離婚の場合には、父母が話し合いによって、親権者を父母の両方とするのか、その一方にするのかを取り決めることができます。
父母の協議が調わない場合には、調停や訴訟により、家庭裁判所が親権者を定めることになります。
家庭裁判所が、父母と子どもの関係や、父と母との関係など様々な事情を考慮したうえで、子どもの利益の観点から、共同親権とすべきか単独親権とすべきかを判断します。この裁判手続きでは、裁判官が父と母の両方から意見を聴取し、子どもの意思を把握するように努めることが求められています。
以下のような場合には、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをすることとされています。
共同親権の導入は、離婚後の親子関係に大きな影響を与える可能性があるため、制度の内容を正しく理解し、適切な選択をすることが重要です。
共同親権の導入で養育費はどうなる?

- 共同親権で養育費は支払われなくなる?
- 養育費の算定方法とは?
共同親権が導入されると養育費は支払われなくなるのでしょうか?
共同親権が導入されても、養育費の負担義務はなくなりません。
共同親権になっても養育費はなくならない
現行法のもとでは、離婚後の養育費は、親権を取得した親が、親権者ではなくなった親から受け取るものというイメージがあるため、共同親権が導入された場合、「離婚後に養育費が受け取れなくなるのではないか?」と不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、結論から言うと、共同親権になったとしても、養育費の支払い義務は従来と変わらず存在します。
養育費は、子どもの健全な成長と生活を維持するために、親が負うべき扶養義務に基づくものです。親権の有無に関わらず、子どもが経済的に自立するまで、両親はその責任を分担する必要があります。
共同親権の下では、両親が協力して子どもの養育にあたることが期待されますが、それはあくまでも「養育の責任」の分担であり、「養育費の負担」を免除するものではありません。実際、今回の法改正では、むしろ養育費に関する取り決めがより重視され、支払いの確保に向けた仕組みが整備されました。
例えば、養育費の取り決めがないまま離婚した場合でも、一定の金額を請求できる「法定養育費制度」が導入されます。これにより、養育費の支払いを拒む親に対して、より迅速かつ確実に子どもの権利を守ることが可能となります。
もちろん、養育費の金額は、両親の収入や子どもの年齢、人数などの様々な要素を考慮して決定されるため、共同親権になったからといって、いずれかの親の負担が極端に軽減されるわけではありません。両親は、それぞれの経済状況に応じて、公平な養育費の分担について協議する必要があります。
養育費の算定方法
養育費の月額は、原則として父母間の合意によって自由に決定可能です。しかし、現実的には、養育費の額を定める基準として、「養育費算定表」が広く利用されています。
この算定表は、家庭裁判所の実務における研究結果を基に作成されたもので、標準的な養育費の金額を迅速かつ容易に算出することを目的としています。家庭裁判所のウェブサイトで公開されており、誰でもアクセスして利用できます。
算定表は、子どもの人数と年齢、そして両親それぞれの収入に基づいて養育費を計算できるように構成されています。具体的には、子どもの年齢に応じて「0歳から14歳まで」と「15歳以上」の2つの区分があり、それぞれに対応した複数の表が用意されています。これにより、各家庭の状況にもっとも適した表を選択し、具体的な養育費の金額を算出することができます。
養育費の算定は、子どもの生活を安定させるために非常に重要なプロセスです。適切な養育費が支払われることで、子どもは経済的な不安なく、健全な成長を遂げることができます。
関連記事:養育費はどうやって決める?相場はいくら?無料で相談できる場所4つ
養育費の未払いがあった場合の対処法

- 養育費が支払われない場合の対処法とは?
- 養育費請求調停を申し立てる
離婚した相手が養育費を支払わなくなった場合、どうすればいいのでしょうか。
ここでは、養育費の未払の対処法について解説していきます。
父母で話し合いを行う
養育費の未払いが発生した場合、まずは、相手方(養育費を支払う側)との直接的な話し合いをしましょう。相手方の経済状況や支払い能力を考慮し、現実的な支払い計画を立てることが重要です。話し合いでは、支払い方法、支払い期限、未払い分の分割払いなど、具体的な条件を明確にすることが望ましいでしょう。
口頭での話し合いが難しい場合や、相手方が話し合いに応じない場合は、内容証明郵便で養育費の支払いを請求します。内容証明郵便は、相手方に心理的なプレッシャーを与えると同時に、裁判になった際の証拠としても有効です。内容証明には、未払い養育費の金額、支払い期限、支払い方法などを具体的に記載し、相手方に支払いを促します。
養育費請求調停を申し立てる
話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てます。
調停では、裁判官と調停委員が双方の意見を聞き、養育費の支払いに関する合意を目指して調整を行います。また、養育費の金額だけでなく、支払い方法や支払い期間など、養育費に関するあらゆる事項について話し合うことができます。また、調停委員が中立的な立場からアドバイスや提案を行うことで、当事者同士では解決が難しい問題も解決に導くことが期待できます。
調停で合意に至った場合は、調停調書が作成され、法的拘束力を持ちます。調停調書は、裁判の判決と同等の効力を持つため、相手方が合意内容を守らない場合には、強制執行などの法的手段を取ることができます。
法定養育費の請求権が新設される
今回の法改正により、養育費の取り決めがないまま離婚した場合でも、一定の金額を請求できる「法定養育費制度」が導入されます。これにより、養育費の支払いを拒む親に対して、より迅速かつ確実に子どもの権利を守ることが可能です。
これまでは、父母の協議や裁判手続きにより養育費の金額を取り決めておかなければ、養育費を回収することはできませんでした。しかし、今回の改正により、離婚のときに養育費の取り決めをしていなくても、離婚のときから引き続き子どもの監護を主として行う親は、他方に対して、一定の「法定養育費」を請求できるようになります。また、法定養育費の支払いがされないときは、差押手続きの申立てが可能です。
養育費の悩みは弁護士に相談すべき

- 養育費の悩みを弁護士に相談すべき理由とは?
- 相手方との交渉や、調停・訴訟を代行してもらえる
養育費の悩みは弁護士に相談すべきなのでしょうか?
ここでは、養育費トラブルを弁護士に相談するメリットを解説します。
養育費に関する悩みは、当事者間での解決が難しいことが多く、弁護士に相談することで適切な解決に繋がる可能性が高まります。
養育費の金額は、法律や判例に基づいて算出されるため、専門的な知識が必要です。弁護士は、適切な養育費の金額を算出し、法的に有効な合意書を作成することができます。
また、養育費の支払いについて、相手方が話し合いに応じない、または不当な要求をしてくるなど、交渉が難しい場合があります。弁護士は、あなたの代理人として相手方と交渉し、適切な解決を目指します。
さらに、養育費の未払いが発生した場合、法的手続きが必要となることもありますが、弁護士は、調停や裁判などの手続きをサポートし、あなたの権利を守ります。
養育費の問題は、精神的な負担が大きくなりがちなので、弁護士に相談すること、精神的な負担を軽減し、安心して問題解決に取り組むことができます。
まとめ
共同親権とは、離婚した父母の双方が、子どもの親権を持つことを指します。共同親権が導入されたとしても、子どもと離れて暮らす親の養育費支払義務がなくなるわけではありません。養育費の未払いがあった場合、話し合いでは解決できなければ、養育費請求調停を申し立てる必要があります。
養育費についてお悩みの場合には、お早めに弁護士に相談されることをおすすめいたします。当事務所には、養育費トラブルの解決実績のある弁護士が在籍しているため、お気軽にお問い合わせください。






