

- 不貞行為をする配偶者からの離婚の請求は原則認められない
- 離婚したい場合は慰謝料請求や離婚後の生活設計について考える
- 離婚したくない場合は離婚届不受理申出書を役所に提出し、別居は避ける
【Cross Talk 】夫が浮気しており、離婚したいと言われました
夫が職場の女性と懇意になり、離婚したいと言われました。子どももいますし、今は混乱していてどうしたら良いか分からない状況です。
まずは冷静になることが重要です。落ち着いたら離婚するか否か、離婚する場合は慰謝料や養育費の請求、今後の生活について考えていきましょう。
詳しく教えてください。
夫が浮気しており、「離婚したい」と言われた時にはどうすれば良いのでしょうか?
まずは冷静になり、離婚をするか否かを考えましょう。感情的になり「今すぐ離婚する、家を出て行く」と衝動的に離婚してしまうと、後に経済的に困窮してしまうおそれがあります。
基本的に不貞行為などをした有責配偶者からの離婚は、裁判上は認められません。
離婚する場合、離婚しない場合に分けて対処法を解説していきます。
夫が浮気しており、離婚したいと言われたら?

- 基本的に有責配偶者からの離婚請求は認められない
- 自分の心情に加え経済面などを考慮し、離婚するか否かを検討する
夫から離婚したいと言われたら離婚するしかないのでしょうか?
離婚は基本的に双方の合意で決定します。不貞行為をした有責配偶者からの離婚請求は、裁判上、基本的には認められません。
有責配偶者からの離婚請求は例外を除いて認められない
DVや不貞行為などによって夫婦の婚姻関係を破綻させた者を「有責配偶者」といいます。
今回の事例の場合は、浮気をした夫(有責配偶者)から離婚を申し出ても、裁判上、基本的には認められません。
そのため、そのような場合には、妻が合意しない場合は離婚できないといえます。
なお、法律的な離婚理由とされる「法定離婚事由」※1は以下の5つです。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
今回の事例の場合、離婚をしてもしなくても、夫に慰謝料を請求することができます。
また、夫が既婚者だと知っており、性的関係を持っていた場合には、浮気相手にも慰謝料を請求できます。ただし、基本的に「二重取り」はできず、請求できる金額は夫と変わりません。
離婚するか否かを検討する
離婚したいと言われた際には、離婚をするか否か、慰謝料請求について検討しましょう。
「金銭面に不安」という理由から離婚をためらっている方は、財産分与ではいくらもらえるのかに加えて、慰謝料の相場も把握しておきましょう。
一般的に不貞行為による慰謝料の相場は50~300万円といわれています。不貞行為の他にDVなどがあれば、慰謝料は高くなる傾向にあります。
また、財産分与は夫と妻で原則1/2ずつとされています。
ただし、一方が長く専業主婦(夫)である場合などは、離婚後の生活保障として多めに支払われることもあります。
浮気のように離婚の原因を作ったことへの損害賠償(慰謝料)を上乗せし、多めに分与される事例もあります。
財産分与の対象は、夫婦が協力して築いた財産です。
夫婦のいずれか一方の名義になっている財産でも、実質的に夫婦2人で築いた財産であれば財産分与の対象となることがあります。
例えば、婚姻中に夫の収入でマイホームを購入し、夫の単独名義になっていても、妻が家事や育児を行い夫に協力していた際には「夫婦の共有財産」と考えられることもあります。
さらに、子どもがいる場合は親権や養育費についても考えておきましょう。
養育費や別居中の婚姻費用は、以下が目安となります。
裁判所ホームページ「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」※2
離婚後の生活費をシミュレーションし、できれば離婚後の住まいや仕事を見つけたうえで離婚することが望ましいといえます。
離婚に応じる場合の対処法

- 浮気の慰謝料を請求する人は証拠を集めておく
- 財産分与や慰謝料・養育費の支払いなどの取り決めは、公正証書として文書化しておく
離婚を決心しました。夫に慰謝料は請求できますか?
請求できます。相手がしらを切った時に備えて証拠を集めておきましょう。
慰謝料を請求する場合は証拠を集める
離婚に応じ、夫に慰謝料を請求する場合は、すぐ返事をせず浮気の証拠を集めることをおすすめします。
なお不貞行為とは既婚者が異性と自分の意思で性的な関係を持つことで、キスやハグをしただけでは認められない可能性があります。
ホテルから出てきた写真や相手と性的な関係があることが分かるメッセージアプリ・メールの履歴、第三者の証言などを証拠として集めておきます。
「証拠を集めるのは精神的に負担が大きい」という方は専門の業者に依頼するという選択肢もあります。
また、夫の浮気が原因で病気になってしまった方は、医師に診断書を書いてもらいましょう。浮気だけではなくDV被害に遭っている方も診断書を作成してもらいます。
夫が正当な理由もなく家を出て行く・生活費を渡さない・性行為を強要するなどの行為も慰謝料の対象となる可能性があります。日時や起きた出来事をメモし、証拠となるものを集めておきましょう。
財産分与や慰謝料・養育費の支払いなどは公正証書に残しておく
離婚・財産分与・慰謝料・養育費などについて取り決め、お互いが合意したときには内容を公正証書に残しておきましょう。
公正証書には「強制執行認諾文言」を入れることが可能です。強制執行認諾文言とは、支払いが滞った場合に直ちに強制執行を受けることを認めるという意味の文章になります。
慰謝料や養育費が支払われなかった際に、調停や審判など家庭裁判所で手続きを経ずに強制執行の手続きができるようになります。※3
離婚したくない時にはどうすれば良い?

- 離婚したくない(または事情があってできない)場合には、離婚届不受理申出書を役所に提出するのが望ましい
- 長期間の別居は法定離婚事由になってしまうので、同居を続ける
経済的な事情で離婚は見送りますが、夫は離婚したいようで・・・。勝手に離婚届を出されそうで心配です。
念のため、役所に「離婚届不受理申出書」を提出しておきましょう。提出することで、離婚届を勝手に出されても、配偶者が窓口で確認しないと離婚できなくなります。
離婚届不受理申出書を役所に提出
夫から離婚の話が出ても離婚したくない(またはできない)という方は、念のため、まず役所に「離婚届不受理申出書」を出しておきましょう。
離婚届不受理申出書は、もし夫が勝手に離婚届を出しても、本人が窓口に出頭して届け出たことを確認できない場合には、届け出を受理しないよう申し出るものです。※3
別居は避ける
長期間にわたる別居は、法定離婚事由の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性が高くなってしまいます。
そのため、別居は避け、できれば夫婦として同居生活を続けましょう。
まとめ
基本的に、裁判上は有責配偶者からの離婚は認められません。よって、浮気をした配偶者から離婚したいと言われた場合、すぐに応じることはせず、今後の生活について十分に検討したうえで離婚するか否かを決めましょう。
そして、「どのくらい慰謝料をもらえるのか知りたい」「まずは専門家に相談したい」という方は、弁護士への相談をおすすめします。