離婚すると子どもの苗字はどうなる?
ざっくりポイント
  • 離婚すると子どもの苗字はどうなる?
  • 離婚後に子どもの苗字をそのままにしておくメリット・デメリットとは?
  • 離婚後に子どもの苗字を変えることはできる?

目次

【Cross Talk 】離婚すると子どもの苗字も自動的に変わるのでしょうか?

父母が離婚すると、子どもの苗字も自動的に変わるのでしょうか?

:父母の離婚が成立しても、原則として子どもの苗字はそのままです。

離婚と子どもの苗字の取り扱いについて、詳しく教えてください。

父母が離婚しても原則として子どもの苗字はそのまま

結婚によって夫の姓を名乗っていた妻は、離婚の成立によって旧姓に戻ります。離婚後に母親が親権者となった場合、子どもの苗字は当然に母親と同じになるのでしょうか?子どもの苗字を変更しないメリットとデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?また、離婚後に子どもの苗字を変更するにはどうすればいいのでしょうか?本コラムでは、このような疑問点について、弁護士が詳しく解説していきます。

離婚後、子どもの苗字はどうなる?

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚すると子どもの苗字はどうなる?
  • 離婚しても原則として子どもの苗字は変わらない

離婚すると、子どもの苗字は親権者と同じ苗字になるのでしょうか?

子どもの苗字は親の離婚によって当然に変動するものではありません。

改姓した方は離婚すると前の氏に戻る

結婚した際には、夫婦どちらかの氏を名乗ることが法律上定められています(民法750条)。
しかし、離婚が成立すると、原則として改姓した側は結婚前の苗字、つまり旧姓に戻ることになります(民法767条)。これは、離婚届を提出することで自動的に適用されます。

ただし、離婚後も婚姻中の苗字を継続して使用したいという希望がある場合、離婚の日から3ヶ月以内に「婚姻時の氏を称する届」を市区町村役場に提出することで、引き続き同じ苗字を名乗ることが可能です。この手続きは「婚氏続称」と呼ばれています。ただし、婚氏続称をした場合でも、戸籍上、離婚した夫婦は別の戸籍となります。

離婚しても子どもの氏(苗字)はそのまま

ここで注意しておきたいのは、親が離婚したからといって、自動的に子どもの苗字が変わるわけではないということです。子が父親の苗字であった場合、たとえ離婚の際に母親が親権を取得し、旧姓に戻ったとしても、お子さんの苗字は原則として離婚前のまま、つまり父親の苗字のままとなります。

例えば、結婚時に夫婦で夫の「田中」という苗字を選択していた場合、離婚後に母親が旧姓の「佐藤」に戻ったとしても、子どもの苗字は特定の手続きをしない限り「田中」のままです。これは、母親の戸籍と子どもの戸籍が別々に扱われるためです。
このように、離婚後の苗字の手続きは、親と子どもで個別の手続きが必要となる点を理解しておくことが重要です。

子どもの苗字を変えるには戸籍の変更が必要

もし、離婚後に母親が親権を持ち、お子さんとご自身の苗字を同じにしたいと考える場合、家庭裁判所での手続きが必要になります。具体的には、「子の氏の変更許可の申立て」を家庭裁判所に行い、許可を得る必要があります。
離婚後に子どもの氏をそのままにするのか、親権者と同じ氏に変更するのかについては、メリットとデメリットを考慮したうえで判断する必要があるでしょう。

関連記事:離婚後は新しい戸籍を作る必要がある?メリットとデメリットを解説

離婚後に子どもの苗字をそのままにするメリット・デメリット

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚後に子どもの苗字をそのままにするメリットとは?
  • 離婚後に子どもの苗字をそのままにするデメリットとは?

離婚後には、子どもの苗字をそのままにした方がいいのでしょうか?

離婚後に子どもの苗字をそのままにしておくことには、メリットとデメリットの両方がありますので、それらを考慮して決めるとよいでしょう。

離婚後に子どもの苗字をそのままにするメリット

子どもの苗字を離婚前のものと変えないことには、主に以下の3つのメリットが考えられます。

まず、子どもの生活への影響を最小限に抑えられます。
苗字が変わると、学校や習い事などで登録情報の変更が必要になります。新しい苗字で呼ばれることに戸惑ったり、離婚したことを周囲に知られることで、精神的な負担となったりする可能性があります。

また、子どもの苗字をそのままにすることで、煩雑な手続きを避けることができます。
離婚に伴い、ご自身の苗字が旧姓に戻るだけでも、金融機関の口座やクレジットカード、運転免許証など、様々な名義変更手続きが必要です。そのうえ子どもの苗字まで変更するとなると、さらに多くの時間と労力がかかります。子どもの苗字をそのままにしておくことで、これらの煩雑な手続きを省き、離婚後の生活をスムーズにスタートさせることができます。

さらに、離婚した事実が周囲に知られにくくなるというメリットもあります。
子どもの苗字が変わると、学校や近所の方など、周囲に離婚したことが伝わりやすくなります。子どもの苗字をそのままにしておくことで、詮索や憶測を避けることができます。
離婚後も、なるべく平穏な日常を送りたいと願う方にとっては、大きなメリットと言えるでしょう。

離婚後に子どもの苗字をそのままにするデメリット

一方で、子どもの苗字を離婚前のままにしておくことには、以下のようなデメリットも考えられます。

まず、親と子で苗字が異なる場合、法律上同じ戸籍に入ることはできません。
そのため、子どもの戸籍謄本が必要になった際に、親の戸籍とは別に取得する必要があるなど、手続き上の煩雑さを生む可能性があります。また、元配偶者との関係性が良好でない場合、戸籍を通じて住所を知られる可能性も否定できません。
そのため、子どもと戸籍法上も一体でありたいと考える場合や、元配偶者との関係を完全に断ちたいと考える場合には、デメリットとなるでしょう。

また、苗字が違うということは、親子関係が変化したことを常に意識させる要因になり得ます。
学校の書類や日常生活の中で、親子で異なる苗字を記入しなければならない場面に遭遇する可能性があります。そのような場合に、子どもが「なぜ自分だけ苗字が違うのだろう」と感じたり、離婚した事実を改めて意識して精神的な負担を感じたりする可能性があります。

離婚後に子どもの苗字を変更する方法

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚後に子どもの苗字を変更する方法とは?
  • 家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立て」を行う

離婚後に、子どもの苗字を親権者と同じ苗字に変更するためにはどうすればいいのでしょうか?

家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立て」を行う必要があります。

家庭裁判所に子どもの氏の変更申立てを行う

離婚後に子どもの苗字を変更するためには、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に対して、「子の氏の変更許可の申立て」を行う必要があります。この申立ては、子ども自身が行うのが原則ですが、子どもが15歳未満の場合は、親権者が法定代理人として手続きを進めることができます。

家庭裁判所から審判書を受け取る

申立てが受理されると、家庭裁判所での審査が開始されます。離婚を理由とした子どもの氏の変更は、一般的に許可されることが多いでしょう。ただし、複雑な事案の場合には、書面による照会や審問が行われる可能性もあります。

申立後、家庭裁判所から「子の氏の変更を許可する」という内容の審判書謄本が自宅に郵送されてきます。この審判書は、次の手続きで必要になりますので、大切に保管してください。なお、家庭裁判所への出廷が求められることはほとんどありません。

役所に入籍届を提出する

家庭裁判所からの審判書の謄本を受け取ったら、次はお子さんの戸籍を母親の戸籍に入れるための手続き、「入籍届」を市区町村役場に行います。提出先は、母親の本籍地または所在地の役所のいずれかを選択できます。

子どものいる離婚問題は弁護士への相談がおすすめ

知っておきたい離婚のポイント
  • 子どものいる離婚問題を弁護士に相談すべきメリットとは?
  • 親権や養育費、面会交流などの交渉を任せられる

子どものいる離婚問題は、弁護士に相談すべきなのでしょうか?

ここでは、子どものいる離婚を弁護士に相談するメリットについて解説していきます。

親権問題について適切なアドバイスを受けられる

子どものいる夫婦の離婚問題では、親権が争点となる可能性があります。
弁護士に相談することで、親権獲得のためにどのような証拠を収集・提出すべきか、裁判所の手続きにおいてどのような主張をすべきかなど、具体的なアドバイスを受けることができます。
また、ご自身の状況を客観的に分析してもらい、親権獲得の見込みや、取るべき戦略について専門的な意見を聞くことができるでしょう。

養育費や面会交流に関するトラブルを未然に防止できる

親権問題と並んで、月々の養育費の支払いや、非監護親との継続的な面会交流の取り決めも重要となります。
弁護士に相談することで、養育費の相場や算定方法について正確な情報を得ることができ、適正な金額での合意を目指すことができます。また、面会交流についても、子どもの年齢や状況に合わせた無理のない取り決めを行うためのアドバイスを受けることができます。
合意内容を公正証書として作成することで、将来的な不払いやトラブルを未然に防ぐ効果も期待できます。

交渉や離婚調停などの裁判手続きを任せられる

夫婦間の話し合いがまとまらず、離婚調停や審判といった裁判手続きに移行した場合、ご自身で対応するには大きな負担がかかります。
弁護士に依頼することで、これらの煩雑な手続きを全て任せることができます。弁護士は、あなたの代理人として相手方との交渉を行い、法的な根拠に基づいた主張を展開します。
また、調停や裁判の期日にも代理人として出席し、あなたの意向を適切に裁判所に伝えることができます。専門家である弁護士のサポートを得ることで、時間的・精神的な負担を軽減し、より有利な条件での離婚成立を目指すことができるでしょう。

まとめ

結婚の際に改姓した方は、離婚することで婚姻前の苗字に戻ることになります。しかし、父母の離婚が成立したとしても、原則として子どもの苗字が自動的に変動するわけではありません。
離婚後に子どもの苗字を変更するためには、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立て」を行う必要があります。
そして、夫婦の間に子どもがいる場合には、親権や養育費、面会交流などについて取り決める必要があります。子どものいる離婚問題でお悩みの方は、弁護士に相談するようにしてください。当事務所には、離婚問題に詳しい弁護士が在籍しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。