養育費の取り決めを公正証書で作成するメリット・デメリット・書き方などを解説いたします。
ざっくりポイント
  • 養育費の取り決めは公正証書にすることでいざという時の証拠力が高くなる
  • 「強制執行認諾の文言」を入れると調停・裁判などをしなくても強制執行の手続きができる
  • 養育費と公正証書についてお悩みの方・詳しく知りたい方は弁護士にご相談を

目次

【Cross Talk 】養育費の取り決めは公正証書にした方が良いの?

離婚する予定で養育費の話し合いをしています。取り決めたことは合意書にした方が良いと聞きましたが・・・

合意書でも良いですが、公証役場で作成する公正証書は公的文書として取扱われるため証拠力が高い、また、「強制執行認諾の文言」を入れると強制執行の手続きができるというメリットがあります。

詳しく教えてください。

養育費の取り決めは公正証書にすると、証拠力が高く「強制執行認諾」によって強制執行の手続きができる

離婚時の財産分与や親権・養育費などを決めた後「書面化した方が良い?」「公正証書にすれば良いって聞いたけど難しそう」と考える人は多いでしょう。

公正証書は公証役場に赴き、取得します。公証役場は平日にしか開いていない、営業手数料がかかるというデメリットがありますが、いざという時の証拠力が高くトラブル回避に繋がる可能性があります。また、「強制執行認諾の文言」を入れると調停や裁判などをせずに強制執行の手続きができるというメリットもあります。

養育費の約束を公正証書にするメリット・デメリット、ひな形や書き方などについて解説していきます

養育費の取り決めは公正証書にした方が良い?

知っておきたい離婚のポイント
  • 取り決めで双方の合意できた場合、合意書もしくは公正証書として約束を書面化する
  • 公正証書のメリットは強制執行認諾の文言を入れると、調停・裁判を経ずに強制執行の手続きができること

養育費は取り決めたら支払ってもらえるんですよね?合意書や公正証書にする必要はあるのでしょうか?

残念ながら取り決めたにもかかわらず、後で支払ってもらえないという事例があります。「言った・言っていない」のトラブルを避けるためにも、せめて合意書は作成しておきましょう。

養育費の約束を公正証書にするメリット・デメリット

子どもがいる場合、離婚時には親権・養育費・面会交流について取り決めをします。あらかじめ取り決めることで後のトラブルが避けられる可能性が高くなります。

取り決めで双方の合意できた際に、合意書もしくは公正証書として約束を書面化するとトラブルになった際に証拠として役立つ可能性があります。
厚生労働省が行った「2021年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、母子家庭で母の養育費の取り決めをしている世帯は46.7%という結果でした。

そのうち取り決めを文書にした場合は73.3%、公正証書は58.3%です。

公正証書とは、個人や企業・その他の法人からの依頼により公証人が作成する公文書です。
公文書として高い証拠力がありますので、養育費が支払われなかった際に調停・訴訟で証拠として役立つ可能性があります。「強制執行認諾の文言」を入れると、裁判所で調停などをすることなく強制執行の手続きが可能というメリットがあります。養育費を支払う元配偶者にとって、約束を破らない抑止力になることも期待できます。

一方で、公正証書を作るために費用がかかる、平日に公証役場に行く必要があるなどのデメリットもあります。
しかし、2022年4月から愛知県刈谷市※2など一部市町村では、公正証書や調停により養育費の取り決めを交わした場合、費用を助成する事業などを行っています。費用が気になる方はお住まいの自治体で支援制度がないか調べてみましょう。
公正証書の作成は、手間や費用はかかりますがいざという時のために有効な手法と言えます。

公正証書に「強制執行認諾の文言」を入れると強制執行の手続きができる

離婚時の公正証書は「離婚給付等契約公正証書」と呼ばれています。
項目は以下の中から当事者の意向や必要に応じて選択し、記載します。※3

①離婚の合意
②親権者の定め
③子どもの養育費
④子どもとの面会交流
⑤慰謝料について
⑥財産分与
⑦住所変更等の通知義務
⑧清算条項
⑨強制執行認諾

⑨の「強制執行認諾」とは、養育費を支払う義務がある者の支払いが滞った場合に「直ちに強制執行を受ける事を承諾する」という内容です。この「強制執行認諾の文言」を入れると、調停・審判などをすることなく、直ちに強制執行の手続きが可能です。※4

離婚時の公正証書の書き方や記載例、「強制執行認諾の文言」とは

知っておきたい離婚のポイント
  • 公正証書は当事者が記載したい事項を選び公証人に伝え、公証人が作成する
  • 養育費は事情変更があった場合の対処法や大学・専門学校に進学した際の金額を決めておくのがベター

公正証書はどのように書くのでしょうか?知識がないので心配です。

公正証書は当事者から事情を聞き取り公証人が作成するので、専門知識が無くても大丈夫です。

離婚給付等契約公正証書の記載例

離婚給付等契約公正証書のひな形は以下の通りです。

公正証書は当事者から聞き取りをしたうえで公証人が作成します。
書き方や文章の内容は上記と異なる部分があるかもしれませんが、大まかな内容に変わりはないでしょう。

強制執行認諾を入れる場合は「支払いが滞った際に直ちに強制執行に服する」という文言があることを確認します。

離婚給付等契約公正証書作成の注意点

公正証書を作成する際には、あらかじめ2人で話し合い内容を取り決めてから公証役場に連絡し記載する事柄を伝えます。
養育費については将来トラブルを避けるために適切な文言を入れておきましょう。

<事情変更について>
将来物価の変動AまたはBの再婚・離職その他の事情の変更があった際には、AとBはCの養育費の変更について誠実に協議し、解決するものとする。

<進学状況>
1.▲▲年□月から○○年□月まで、1カ月金■万円
2.二年制の専門学校に進学した場合は、□□年3月まで1カ月金■万円
3.四年制の大学に進学した場合は、▲▲年3月まで1カ月金■万円

養育費と公正証書についてお悩みの方は弁護士にご相談を

知っておきたい離婚のポイント
  • 相手と顔を合わせたくない、何らかの理由で話し合いができない場合には弁護士にご相談を
  • 話し合いが難航しても弁護士に代理人となってもらえる

相手の提案する養育費の金額が、私の希望額より少なく納得できません。相手は弁が立つのでこのまま言いくるめられてしまいそうで不安です。

話し合いが心配な場合、弁護士に代理人として代わりに交渉してもらうことができます。まずは相談してみましょう。

離婚給付等契約公正証書を作成するにあたって「話し合いがまとまらない」「相手と顔を合わせたくない」という方もいらっしゃるでしょう。

話し合いでは弁護士を代理人とすることが可能です。
弁護士法72条※6において「報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い又はこれらの周旋をすること」は弁護士のみと定められています。

離婚給付契約公正証書を作成する際には当事者の戸籍謄本が必要になりますが、委任状を作成し弁護士に代理人として取得してもらうことも可能です。※7

なお公正証書の作成には、不動産を財産分与として所有権移転する場合に不動産の登記簿謄本及び固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書が必要となります。
年金分割をする場合は年金手帳など当事者の年金番号が分かるものも必要です。※8

まとめ

養育費を公正証書にするメリット・デメリット、公正証書の書き方などについてお伝えしてきました。この記事を参考に養育費の取り決めや書面化を進めていきましょう。お悩みの方は離婚問題に強い弁護士への相談をおすすめします。