養育費の実態や保証会社のメリット・デメリットなどについて解説いたします。
ざっくりポイント
  • 養育費を取り決めなかった夫婦は約53%・もらったことがない母子世帯は約57%に上る
  • 保証会社を利用することで、養育費を立て替えてもらえる、配偶者と直接話し合わずに済むというメリットがある
  • 養育費の交渉や文書の作成は弁護士の独占業務。悩んでいる方は弁護士に相談を

目次

【Cross Talk 】養育費の不払いが不安。保証会社があると聞いたけれど・・・

離婚の話し合いをすすめています。子どもは私が引き取る予定ですが、養育費の不払いが多いと聞き不安です。保証会社があると聞いたのですが・・・。

まず2人で話し合い、養育費の金額・支払い方法などを取り決めましょう。取り決めた内容を文書に残し、支払いが滞った際には養育費の保証会社を利用することが可能です。

詳しく教えてください!

養育費の保証会社・サービスとは?離婚時に養育費を取り決めないと利用できないことも

法務省の調査では離婚時に養育費を取り決めなかった夫婦は約53%で、厚生労働省の調査では母子世帯の約57.9%が「養育費を受けたことがない」と回答しています。父子家庭では約86%です。
離婚時には話し合いで養育費を取り決め、文書化しておくことが重要です。
養育費の保証会社を利用すると、支払いが滞っている養育費を立て替えてもらえますが「取り決めをしていないと契約できない」という保証会社も存在します。
今回は、養育費の実態と保証会社・保証サービスの概要とメリット・デメリット、地方自治体の支援制度などを解説していきます。

養育費を取り決めない・もらったことがない世帯は多い

知っておきたい離婚のポイント
  • 養育費を取り決めなかった夫婦は約53%・もらったことがない母子世帯は約57%。離婚時には2人で話し合い、取り決めた内容を公正証書に「強制執行認諾文言」とともに記しておく
  • 保証会社を利用すると養育費を立て替えてもらえる。地方自治体の支援制度もある

離婚する予定ですが、もう配偶者と話し合いたくないです。財産分与・養育費などの取り決めはした方が良いでしょうか?

経済的な面を考慮すると、話し合い、取り決めた内容を公正証書に「強制執行認諾文言」付きで残しておくことをおすすめいたします。顔を合わせたくない場合は弁護士に代理で話し合ってもらいましょう。

養育費を取り決めなかった夫婦は約53%・もらったことがない母子世帯は約57%

法務省の「財産分与を中心とした離婚に関する実態調査結果の概要※」によると、離婚に際して養育費を取り決めなかった夫婦は53.4%に上ります。

法務省「財産分与を中心とした離婚に関する実態調査結果の概要」

※参照:法務省「財産分与を中心とした離婚に関する実態調査結果の概要」

さらに厚生労働省の「2021年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」では、母子世帯の母全体のうち約57.9%が「養育費を受けたことがない」と回答しています。
父子家庭では約86%に上ります。

離婚時に養育費を取り決めないと、後から請求しづらくなる、本来もらえるはずの養育費をもらえなくなってしまうおそれがあります。離婚時に未成年の子どもがいて自分が引き取る場合には、養育費を取り決めておきましょう。

口頭で取り決め最初は養育費を振り込んでいたものの途中から支払いが滞り、書面化していないため取り決めた証拠がなく泣き寝入りという事例もあります。
取り決めた後は公正証書などで書面化しておくことをおすすめいたします。
公正証書に取り決めた内容と、養育費を支払う人の支払いが滞った場合には強制執行を受けることを認諾するという「強制執行認諾文言」を記載しておきましょう。

強制執行認諾文言入りの公正証書を作成し、一定の要件を満たすと保証会社を利用しなくても家庭裁判所に申し立てることで給料の差し押さえといった強制執行の手続きが可能となります。

2020年には「養育費確保のための公的支援の問題が、近時、重要なテーマとして問題提起されている」ことから法務省と厚生労働省の連携で「不払い養育費の確保のための支援に関するタスクフォース」を設置しました。

上記のように養育費を受け取れない世帯が多いことから、養育費には保証会社・保証サービスがあります。

養育費の保証会社・サービスとは

養育費の保証会社は、不払いの養育費を立て替えてもらえるサービスです。
養育費の支払いを希望する人があらかじめ保証会社と契約をして、支払いが滞った際に保証会社が立て替えて支払います。養育費が不払いになった時点で契約をする会社もあります。

保証会社によっては養育費の支払いをする人(元配偶者)と委託契約を結ぶこともあります。
養育費を立て替えた保証会社には立て替えたお金を請求する「求償権」という権利が生じ、支払人に請求を行います。

プランが複数ある保証会社もありますので、契約する際には保証会社を比較・検討してみましょう。

養育費の保証促進、受け取り支援をする自治体も

養育費の不払い対策として、多くの地方自治体では養育費確保を支援する取り組みを実施しています。
例えば東京都文京区・大阪府大阪市などでは、ひとり親が保証会社と養育費保証契約を締結するための費用の一部を補助する事業を実施しています。

東京都豊島区や福岡県福岡市では、養育費の取り決めで公正証書などの作成にかかる費用を一定の要件を満たす場合に補助します。
福岡市では同時に保証契約を結ぶ際の保証料を補助する制度も実施しています。

養育費の保証会社を利用するメリット・デメリットと注意点

知っておきたい離婚のポイント
  • 保証会社と契約すると、養育費を立て替えてもらうことができ元配偶者と連絡をしなくて済む
  • 養育費の交渉や文書化は弁護士の独占業務なので、弁護士に相談を

養育費の保証会社にはどのようなメリット・デメリットがありますか?

元配偶者と連絡を取らずに、保証会社から不払いの養育費を立て替えてもらえるというメリットがあります。ただし、一定の要件を満たさないと契約できない会社があり契約後は保証料を支払わなくてはいけません。

養育費の保証会社を利用するメリット

養育費の保証会社を利用するメリットは、以下の2点です。

1. 保証会社から不払いの養育費を立て替えてもらえる
2. 元配偶者と連絡を取る必要がない

「養育費がないと生活が困窮する」「経済的に困る」という方にとっては、1は大きなメリットになるのではないでしょうか。
ただし、保証会社によっては保証の上限額が設定されている、過去の未払い分は対応できないところもあります。十分な保証を受けられるか、事前によく確認しておきましょう。

保証会社を利用することで、「養育費が支払われず元配偶者に催促しなければならない」という悩みも解消されるでしょう。「いざというときに保証されることに安心感がある」という人にとっては精神面でもメリットとなります。

養育費の保証会社を利用するデメリット

養育費の保証会社を利用することで、保証料を支払わなければならない、契約・審査に手間や時間がかかるというデメリットがあります。
保証料に関しては「実質0円」を謳っている会社もあります。確かに場合によっては自己負担なしで保証が受けられることもありますが、養育費を取り決めており書面化しているなど一定の要件を満たす必要があります。
「養育費の取り決めをしていないと契約できない」という会社もありますので取り決めをしていない方は、契約ができない可能性があります。

また、契約・審査の間は養育費が保証されませんので、預貯金が少ない方は注意が必要です。

上記でもお伝えしましたが養育費を取り決め、取り決めた内容を「強制執行認諾文言」とともに記載しておくと一定の要件を満たした場合強制執行が可能になります。その場合はそもそも保証会社を利用する必要がありません。

養育費の交渉や文書作成は弁護士の独占業務

養育費の保証会社は、支払人に代わり養育費を立て替えます。
一方で、養育費について元配偶者と交渉する、文書を作成するなどの行為は弁護士の独占業務で保証会社には依頼できません。

弁護士法 第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

保証会社が弁護士を介さずに元配偶者と養育費の交渉をすることは弁護士法違反のおそれがあります。
養育費について元配偶者と交渉したい、書類を作成したいという方はまず弁護士に相談してみることをおすすめいたします。

まとめ

養育費の保証会社を利用すると、養育費を立て替えてもらえるというメリットがあります。加えて地方自治体の中には、契約にかかる費用の一部に対して助成金が出るところもあります。
離婚時に養育費の取り決めをしていないと、養育費の不払い問題が生じた際に保証会社を利用できない、調停・訴訟に発展してしまう可能性が高くなります。まずは取り決めをすることが重要です。
「もう時間が経っているから連絡しづらい」という方もいらっしゃるかもしれませんが、弁護士に代理人として交渉してもらうことができます。養育費の交渉・文書化などは弁護士の独占業務ですので弁護士に依頼しましょう。