養育費の相場は?養育費算定表などについて
ざっくりポイント
  • 養育費の決まり方
  • 養育費算定表
  • 養育費をもらうときの注意点

目次

【Cross Talk 】養育費ってどれくらいが相場なんでしょうか?

夫と離婚することになりました。私達夫婦には子どもがいるので、養育費を決めなければならないのですが、相場はいくらくらいなのでしょうか?

養育費算定表を参考にするのが良いですよ!当事者の事情に応じて高くなったり低くなったりもするので、弁護士に相談してもらうのが一番です。

なるほど!詳しく教えてもらっても良いですか?

養育費の相場は養育費算定表が参考になる!養育費の決め方は?

夫婦の間に子どもがいる場合、離婚する際には子どもの養育費について定めることになります。
養育費は当事者で決める分には自由ですが、調停・審判になったときには裁判所が公表している養育費算定表が参考にされます。
そのため、養育費算定表が養育費の相場を決めるのに重要です。
事情によって高くなる場合・低くなる場合などもあるので、弁護士に相談しながら話し合い・調停・審判を進めることをおすすめいたします。

養育費の相場は?

知っておきたい離婚のポイント
  • 養育費について
  • 養育費の相場は養育費算定表が目安になる

養育費の相場はどのくらいなのでしょうか?

養育費の相場は養育費算定表が目安になります。

養育費の相場はどのようになっているのでしょうか。

養育費とは

養育費とは、法務省によると「子供の監護や教育のために必要な費用のこと」と定義されます。
(参考:養育費|法務省)
両親が離婚したときに、子どもを監護する親が他方に対して請求できる費用で、子どもが経済的・社会的に自立するまで必要とされるものです。

養育費はどうやって決まるのか

養育費はまず当事者で決めます。
当事者の話し合いがととのわないときには、家事調停などの手続きで決めます。
養育費のみの調停も可能ですし、離婚をするかどうか決まっていないような場合には離婚の調停の中で決めることも可能です。調停がととのわない場合には、審判で決めます。

養育費の相場はいくらか

養育費の相場はいくらなのでしょうか。
養育費の金額を特に国が決めている・法律などによって決めているということはありません。
養育費としてどのくらい支払うのが適切かについては、父・母それぞれの収入がいくらあるのか、子どもが何人いるのか、子どもの年齢がいくつか、などの事情によって異なります。
そこで、裁判所ではこれらを考慮して作成した「養育費算定表」というものを公表しており、調停や審判・裁判ではこれをもとに調整されます。
そのため、養育費の相場は、養育費算定表に大きく影響されるといえます。

養育費算定表とは?

養育費算定表とは、裁判所が公開しているもので、ホームページで閲覧することが可能です。

平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所ホームページ

養育費速算表は、

・子どもが何人いるか
・子どもが15歳以上か

によって9つの表に分かれています。

養育費算定表の見方

養育費算定表の見方を確認しましょう。
前提となる用語なのですが

・義務者:養育費を支払う義務がある人
・権利者:養育費をもらうことができる人

です。
夫から養育費をもらう場合には、義務者は夫で権利者は妻ということになります。
縦軸が義務者の年収で、横軸が権利者の年収です。
数字が2つあるのは、給与所得者(サラリーマン)か自営業者かで分けるためです。

養育費算定表をもとにした相場

実際に養育費算定表をもとにした相場をいくつか確認しましょう。

例)

夫:年収500万円
妻:年収200万円
子:10歳の子1人のみ

である場合は、「(表1)養育費・子1人表(子0~14歳)」によることになり、毎月4万円~6万円が相場となります。
4万円~6万円の中で、権利者・義務者の家計などを考慮して具体的な金額を決定します。

養育費の相場より金額が高くなる場合

以上が養育費の相場ですが、調停・審判でこの相場よりも高い金額が妥当とされる場合があります。
典型的な例としては、

・子どもが病気で治療が必要

といった場合です。
教育費の負担については、義務者と同じ水準が目安になります。

養育費はいつまで支払うのか

養育費はいつまで支払うのでしょうか。
養育費は子どもが経済的・社会的自立をするための費用です。
そのため、子どもが経済的・社会的自立を果たしたならば必要ありません。
目安になるのは、

・2022年4月1日以降の民法の成年の年齢である18歳
・それ以前の成年の年齢・2年制の専門学校や短期大学を卒業する年齢である20歳
・ストレートで大学を卒業する年齢である22歳

です。
こちらも義務者が大学を卒業しているのであれば、大学卒業する年齢である22歳を目安に考えることが多いです。
なお、既に養育費の取り決めをしている場合で、「子が成年に達するまで養育費を支払う」としている場合に、2022年4月1日に成年の年齢が引き下げられたことは影響するのでしょうか?
この点について、法務省は成年年齢が引き下げられたとしても影響せず、従来どおり20歳まで支払うことになると考えられるとしています
(参考「成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について|法務省ホームページ 

養育費と面会交流との関係は?

養育費と面会交流との関係、特に面会交流をさせてもらえない場合に養育費を支払わないことができるのでしょうか。
面会交流とは、離れて暮らす子どもと会ったり通信したりする権利をいいます。
父母の関係が悪化しているような場合には、監護をしている母が父親に会わせないということが発生します。
これに対抗して、父親が養育費の支払いをしないことがあるのですが、これは認められていません。
なぜなら、面会交流と養育費は別々の制度であり、交換条件になるものではないからです。
面会交流をさせてもらえない点については不利益ですが、これについては面会交流を拒否したことを理由に、損害賠償請求をすることが認められる場合があるので、母親相手に請求することで解決することになります。

養育費は後に増額・減額することがある

養育費は、決定をしたときの収入や収支をもとに決定されます。
養育費を長く支払っている中で、収入が上がる・下がるようなこともあれば、再婚するなどで生活費が多く必要となることがあります。
これらの事情をもとに、養育費が増額・減額することがあるので注意が必要です。
養育費の増額・減額の話し合いについて、まず当事者で話し合いを行い、それでも合意に至らない場合には、養育費の増額(減額)調停を行う必要があります。

養育費をもらう場合の注意点

知っておきたい離婚のポイント
  • 合意は必ず書面で行い、できれば公正証書を作成する
  • 相手が養育費を払わない場合には早めに弁護士に相談をする

養育費をもらうにあたって注意すべきことはありますか?

合意した場合には必ず書面にするのは基本です。もし支払わない場合には早めに弁護士に相談してください。

養育費をもらう場合の注意点には次のようなものがあります。

口約束ではなく公正証書を作成する

養育費の支払いに当事者で合意できた場合、口約束ではなくきちんと書面を作成するようにします。
養育費は最後まできちんと支払われないことが多いことで知られています。
口約束だけの場合、きちんと最後まで支払ってもらえない可能性が高いです。
そのため、口約束ではなく、書面を作成しておくようにします。
書面の作成にあたっては、念書などの私的な書面の作成の場合、支払いがなくなった場合に、その書面をもとに裁判を起こして勝訴して、相手に強制執行する必要があり、養育費を取り立てるのに時間のロスが発生します。
養育費については公正証書で作成をすると、裁判をせずに強制執行に進むことができるので、養育費の支払いがなかったときにスムーズに取り立てを行えます。

養育費の適正額は弁護士に相談すべき

養育費については上述したように養育費速算表の中でも幅があり、かつさらに増額・減額の幅があります。
おおよその相場を知ることができても、具体的な事例で客観的に養育費を適正に決めるのは困難です。
養育費の額は最終的には当事者の交渉に大きく左右されることも珍しくありません。
適正な額はいくらか、その根拠はどのようなことに基づくのか、弁護士としっかり相談し、交渉で相手に押し切られそうなのであれば弁護士に依頼して交渉してもらうことを検討しましょう。

養育費を支払わない場合には早めに法的手続きを

相手が養育費を支払わない場合には早めに法的手続きに向けて行動しましょう。
養育費の合意について公正証書にしていない場合には、まず民事訴訟を起こし、強制執行をする必要があります。
民事訴訟を起こし強制執行を行う場合も時間がかかってしまい、その間の生活費にも困るということも珍しくありません。
決められた養育費を支払わない場合には、いち早く法的手続きを行うようにしましょう。

まとめ

このページでは養育費の相場について中心にお伝えしました。
養育費の相場は養育費速算表をもとに大体の金額を知ることができます。
ただし、養育費速算表で得られる金額にも幅があるうえに、個別の事情を加味する必要があり、具体的に適正な養育費を計算するのは難しいです。
なるべく早く弁護士に相談し、適正な養育費を受け取れるようにしましょう。

この記事の監修者

弁護士 手柴 正行第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 法教育委員会委員
ご依頼者さまが笑顔で毎日を過ごせるよう迅速かつ適切な事件処理を心がけています。