養育費と確定申告の必要性について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 養育費は原則非課税所得なので、確定申告は不要
  • もらった養育費を預貯金に回した、投資した場合や、社会通念上多すぎる場合には贈与税がかかる可能性がある
  • 養育費を払う側ともらう側は一定の要件を満たすと扶養控除を申請できるが、二重適用は不可能

目次

【Cross Talk 】養育費をもらったら確定申告するべきなのでしょうか?

元配偶者から子どもの養育費をもらっています。確定申告は必要ですか?

いいえ、基本的に養育費は非課税所得なので確定申告も不要です。ただし、場合によっては贈与税の対象となる可能性があります。

詳しく教えてください!

養育費は原則非課税所得なので、確定申告は不要!扶養控除は二重適用に注意を

養育費は子どもの生活費や教育費など、自立するまでに必要な費用を指します。
所得税法で、「学資に充てるため給付される金品」や「扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」は非課税の所得と定められていますので、確定申告は不要です。

さらに、養育費を払う側ともらう側は、一定の要件を満たすと扶養控除を申請でき、16歳以上の子どもがいる場合は38万円、19歳以上23歳未満の子どもがいる場合は63万円が所得から控除されます。
今回は養育費と確定申告、扶養控除について解説していきます。

養育費をもらう側の税金はどうなる?原則確定申告は不要

知っておきたい離婚のポイント
  • 養育費は基本的に非課税所得で確定申告の必要はない
  • 養育費を一括で受け取った、社会通念上養育費としては金額が多すぎるといった場合では贈与税の対象となる可能性がある

養育費はなぜ非課税所得なのでしょうか?

所得税法に規定があり、養育費にかかわらず親子・兄弟など扶養義務がある人への送金は課税されません。ただし、預貯金・投資に回した場合や、あまりに金額が多い場合には贈与税の対象となる可能性があります。

養育費は基本的に非課税所得

養育費は、基本的に非課税所得です。

所得税法※1
第9条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
15 学資に充てるため給付される金品(略)及び扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品

「学資に充てるため給付される金品」は子どもの教育費、「扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」は扶養義務がある者(元配偶者)からの送金に該当します。
離れて暮らす親でも子どもを扶養する義務はありますので、養育費は非課税所得となります。
また、祖父母など扶養義務がある人からの仕送りも、基本的に税金は課されません。
この仕送りも非課税所得となりますので、原則確定申告も不要です。
なお、民法では、第877条1項※2に「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と記載されています。

特別の事情があるときには、家庭裁判所の審判で、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることが可能です。

例外的に贈与税が課される場合

養育費という名目で送金があっても、例外的に贈与税がかかることがあります。

1.養育費を預貯金・株式や不動産などの買入資金に充てている※3
2.養育費を一括で受け取った
3.社会通念上、養育費としては過大な額

上記の場合は、贈与税の対象となる可能性があります。
贈与税はもらった人に課税されます。
なお、贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの課税方法があり、相続時精算課税を申請しないと、自動的に暦年課税が適用されます。

暦年課税は、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば贈与税はかかりません。

養育費を払う側の税金と確定申告、扶養控除について

知っておきたい離婚のポイント
  • 養育費を払う側ともらう側は一定の要件を満たすと扶養控除が申請できる
  • 1人の子どもに対して二重適用はできない。元配偶者と意見が分かれている場合は弁護士に相談を

養育費を払った人ともらった人は扶養控除が申請できますよね?元配偶者とどちらが扶養控除を申請するか、揉めています。

そうですね、一定の要件を満たせば扶養控除の申請ができますが、1人のお子さんに対して二重適用はできません。トラブルに発展しそうですので、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

養育費を払う側も扶養控除の対象となる

子どもと一緒に住み養育費をもらっている親だけではなく、子どもと離れて暮らしていて養育費を払う親も、一定の要件を満たすことで扶養控除を受けられます。
ただし、二重適用はできませんのでどちらかの親が控除を申請します。

扶養控除は、以下の要件を満たす16歳以上の者(申告をする年の12月31日現在)がいる場合に適用されます。

(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
(2)納税者と生計を一にしていること。
(3)年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

引用元:国税庁「扶養控除」

子どもが上記4つの要件に該当し、その年の12月31日現在の年齢が16歳以上の場合は38万円、19歳以上23歳未満の場合は63万円が、両親のどちらかの所得から控除できます。

所得から控除されるということは、所得税・住民税などの負担軽減が期待できます。

養育費を払う自営業者などが、扶養控除の要件に当てはまる場合は確定申告を

扶養控除は給与所得者の場合、年末調整で「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に子ども=「控除対象扶養親族」の氏名や生年月日などを記入することで申請が可能です。

各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)令和5年分扶養控除等(異動)申告書

※参照:国税庁「各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)令和5年分扶養控除等(異動)申告書」

赤枠内に必要事項を記入します。
勤務先や申告者によって他の箇所も記入する場合があります。
養育費を払うまたはもらう人が自営業者の場合は、年末の確定申告で申請します。

確定申告書等の様式・手引き等 申告書第一表・第二表【令和4年分以降用】

※参照:国税庁「確定申告書等の様式・手引き等 申告書第一表・第二表【令和4年分以降用】」

パソコンで作成する方は、手順に沿って金額を入力し、最終的に上記の赤枠の「扶養控除」に金額が入っていることを確認しましょう。

養育費を払う側ともらう側で扶養控除の二重適用できない

養育費を払う側ともらう側で、1人の子どもに対して扶養控除を二重に適用することはできません。
2人で相談し、どちらが扶養控除を適用するかを決めましょう。
話し合いがまとまらない場合には、弁護士に相談することをおすすめいたします。

まとめ

養育費は基本的に非課税所得で確定申告は不要ですが、もらった養育費を預貯金や投資に回した場合、金額が多すぎる場合などは、贈与税の対象となる可能性があります。
養育費を払っている人・もらっている人はどちらかが扶養控除を申請できますので、2人で相談して決定しましょう。話し合いができない、意見がまとまらないときには、代理で交渉を依頼できる弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。