求償権とは何か、行使できる場合・できない場合について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 求償権とは連帯債務を肩代わりした際に、他の連帯債務者に一定の額を請求できる権利
  • 不倫の慰謝料は不倫をした2人が共同で支払い責任を負う
  • 慰謝料請求の求償権を行使されたら、弁護士に相談するという方法も

目次

【Cross Talk 】求償権の行使とは何ですか?行使できない場合とは?

不倫関係にあった女性から郵便が来て「求償権を行使し、○○円を請求します」と書いてありました。どういう意味でしょうか?

あなたの代わりに慰謝料を全て支払ったから肩代わりした部分を請求するという意味です。求償権は行使できない場合もあります。

詳しく教えてください。

求償権を行使されたら、まずは交渉を。行使できない場合とは?

求償権とは、連帯債務を肩代わりした場合等に、共同の連帯債務者に一定額を請求できる権利

です。

例えば、不貞行為の慰謝料(不倫した2人の共同債務)を不倫相手が全額支払った場合に請求(求償権を行使)されることがあります。逆に自分が不倫の慰謝料を全額支払った際には、不倫相手に求償権の行使が可能です。

また、(1)配偶者の借金を代わりに支払った、(2)住宅ローンの連帯保証人となっており返済が滞っていたため代わりに返済した場合などで求償権を行使できます。

今回は求償権とは何か、行使できる場合とできない場合、不倫の慰謝料請求と求償権について解説していきます。

求償権とは

知っておきたい離婚のポイント
  • 求償権とは連帯債務を弁済した場合に、他の連帯債務者に一定の額を請求できる権利
  • 求償権が時効を迎かえている、または権利を持っている人が放棄した場合は行使できない

求償権を行使されたら、必ず請求額を支払わなくてはいけないのでしょうか?

基本的に拒否はできませんが、時効を迎かえている場合・権利を放棄した場合では行使できません。まずは時効を確認してみましょう。

求償権とは連帯債務を肩代わりした際に、他の連帯債務者に一定の額を請求できる権利

求償権とは、共同で不法行為をして損害賠償を請求された場合などで支払った額の一部を相手方に請求できる権利

です。

例えば、既婚者と不倫してしまい、不貞行為で慰謝料を請求されたような場合、全額自分が支払ったのであれば、求償権を行使し、慰謝料の一部を不倫相手に請求できます。逆に不倫相手の配偶者が不倫相手に慰謝料を請求し、不倫相手が全額支払った際には、不倫相手は自身に慰謝料の一部を請求できる権利を持っています。

また、債務者が借金を支払わずに連帯保証人の自分に請求が来て全額支払ったような場合にも、求償権を行使できます。

求償権は民法442条※1で以下の通り定められています。

第442条 連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。

なお民法444条※1では連帯債務者に返済能力がない場合について、触れられています。
連帯債務者が返済をする資金力がない場合には、返済できない部分について「各自の負担部分に応じて分割して負担する」と記載されています。

求償権の時効は、求償権を行使できることを知った時から5年間、もしくは権利を行使することができる時から10年間

と定められています。

※1 参照:民法 第166条(債権等の消滅時効)

離婚では不倫の慰謝料請求や住宅ローン返済で求償権が発生する

離婚の場面では、主に慰謝料請求と住宅ローン(または借金)返済で求償権が発生する可能性があります。

求償権が発生する具体例
1.不貞行為をして配偶者に慰謝料を請求され、不倫相手の分も支払った
2.住宅ローンの連帯保証人となっており、配偶者に代わり全額支払った
3.配偶者の借金を肩代わりした

1は不倫相手に、2と3は配偶者に対して、一定の要件を満たすと求償権を行使できます。
1の場合では、不倫相手が慰謝料を全て支払うと、夫婦のうち不倫をした方に請求される可能性があります。

求償権を行使できる場合とできない場合

基本的に求償権を行使されたら拒むことはできません。

しかし、求償権が時効を迎かえている場合、権利を持っている方が放棄した場合には行使できません。

よって自分が不貞行為をした結果、配偶者が不倫相手に慰謝料を請求し不倫相手が全額支払った後に慰謝料の一部を請求された場合には拒否ができません。
ただし時効を迎えている場合には請求が不可能ですので確認してみましょう。

知っておきたい不倫の慰謝料請求と求償権

知っておきたい離婚のポイント
  • 不貞行為があった際には不倫した2人に慰謝料請求ができるが、例外もある
  • 求償権を行使された時には交渉をして放棄させる

求償権を放棄させたいのですが、どうすれば良いのでしょうか?

まずは時効を確認しましょう。時効を迎えていない場合には相手と交渉し放棄させましょう。弁護士に相談するという方法もあります。

不貞行為の慰謝料は連帯責任。請求方法は3パターン

不貞行為は、民法709条における「不法行為」に該当します。
慰謝料は、基本的に不倫をした既婚者と不倫相手の2人が共同不法行為者として連帯責任を負います。

ただし、不倫相手が既婚者だと知らなかった、キスやハグだけで性的関係を持っていない場合では慰謝料請求は困難でしょう。

不倫の慰謝料請求は、以下の3つのパターンがあります。

1.配偶者と不倫相手に合計の金額を請求する。負担割合は2人で決める
2.配偶者または不倫相手に慰謝料の全額を請求する
3.配偶者と不倫相手それぞれに○万円ずつという形で請求する

2では求償権が発生します。
3も請求額の割合によっては、求償権が発生する可能性があります。

不倫相手から求償権を行使され、「不倫相手と冷静に話し合うことが困難」という方には、弁護士に代理人となってもらい代わりに交渉してもらうという方法があります。

配偶者とも慰謝料について話し合い、減額してもらうことで不倫相手が求償権の放棄に応じてくれる事例もあります。

求償権を持っているのは不倫相手ですが、慰謝料の請求権は配偶者にあります。配偶者と慰謝料について話し合うことも重要になります。

慰謝料請求の求償権を行使されたら弁護士に相談すべき?

不倫相手に慰謝料の一部を請求された場合には、交渉で話し合うもしくは弁護士を通して話し合う

ことになります。

「弁護士費用が心配」という方もいらっしゃるかもしれませんが、不倫相手や配偶者との交渉は当事者同士では感情的になってしまう場合が多いです。
弁護士に代わりに交渉してもらうことで、冷静に話し合える可能性があります。
法律の観点から対処法を聞くこともできますので、気になる方はまず相談してみましょう。

まとめ

不倫の慰謝料や借金の肩代わりなどで、求償権を行使したいまたは求償権を行使された場合には弁護士への相談をおすすめいたします。
特に不貞行為の慰謝料は当事者同士では感情的になってしまい、話がこじれてしまう事例は少なくありません。弁護士という第三者かつ紛争解決のプロに相談してみてはいかがでしょうか。