離婚時に弁護士に相談するメリットを解説いたします。
ざっくりポイント
  • 法律事件に関する鑑定・代理・仲裁・和解、その他の法律事務は弁護士だけができる業務
  • 弁護士に相談することで、代理人としての交渉や法的に適切な対処が可能となる
  • 手続きを任せることができるため、時間・労力が削減できるというメリットもある

目次

【Cross Talk 】離婚で弁護士は必要でしょうか?

協議離婚で弁護士を立てずに離婚する予定です。弁護士に依頼するメリットはありますか?

代理人が必要ない場合でも、法的な観点からのアドバイスや書類作成など手続きのサポートなどが可能です。離婚が有利に進められることもあります。

詳しく教えてください。

離婚の際に弁護士に相談するメリットとは?

当事者同士が話し合う「協議離婚」で弁護士は必要ないと思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、離婚時にはやるべきことが多く、手続き面が負担になってしまうことがあります。弁護士は代理人としての役割だけではなく、書類作成や法律相談など後方支援も可能で手続きの代行も依頼できます。
本記事では離婚時に弁護士だけができること、弁護士に相談するメリット4つを解説していきます。

離婚の際に弁護士は必要?弁護士ができることとは

知っておきたい離婚のポイント
  • 離婚時に弁護士は代理人としての役割と助言・手続きなどサポート的な役割を担うことができる
  • 法律事件に関する鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務は弁護士だけができる業務

具体的に離婚時に弁護士に支援して貰えることには何があるのでしょうか?

大きく分けて代理人として交渉などを行うこと、書類作成・助言など後方から支援する2種類のサポートが可能です。

離婚時に弁護士が支援できることとは

離婚時に弁護士が支援できることは、大きく分けて(1)代理人としての役割(2)助言・手続きなどサポート的な役割があります。

弁護士は代理人となることが可能で、「相手と顔を合わせたくない」「暴力を振るうから危険」などの場合には代わりに交渉してもらえます。
「自分で交渉するのは苦手だが慰謝料を多く貰いたい」「相手と話し合う時間がない」などの場合にも対応が可能です。

例えば以下のような事例で代理人として弁護士に交渉を依頼する方が多いです。

離婚・親権・養育費・財産分与などについて意見がまとまらない
調停・裁判で弁護士を選任したい
相手と顔を合わせたくない、何らかの事情で会えない
有利に交渉を進めたい
忙しく話し合いの時間がとれないなど

一方で、交渉は自分で行い相談して助言をもらいたい、手続きについて詳しく知りたいなどサポートを希望する場合もあります。

離婚協議書・合意書など書類作成を依頼したい
法律の専門家からのアドバイスが欲しい
慰謝料・養育費の相場を知りたいなど

離婚時には財産分与・親権・養育費・不動産の名義変更など話し合いで決定する事項が多いです。また慰謝料や養育費は費用の目安はありますが、家庭の状況やこれまでの経緯、相手の収入も影響しますので個々の事例によると言えるでしょう。
弁護士に相談することで、自身の状況での適切な費用を把握することができ、相手とトラブルになったときの対処法も助言して貰えます。

法律上の権利・義務に関する争いは弁護士しか対応できない

弁護士には弁護士資格を持つ人だけができる「独占業務」があります。

弁護士法第72条※1
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

法律事件に関する鑑定・代理・仲裁・和解その他の法律事務は弁護士だけができる業務です。

また、家事事件手続法第22条では「法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ手続代理人となることができない※2」と定められています。
例外的に弁護士以外の人が代理人となることはありますが、基本的に離婚や相続などの家事事件の手続きでは弁護士のみが代理人となることができます。

離婚で弁護士に相談するメリット

知っておきたい離婚のポイント
  • 弁護士に依頼することで代理人になってもらうことができ、交渉を有利に進められることがある
  • 法律・紛争解決のプロにアドバイスをもらい適切な対処ができる

あまりお金を出せないのですが、1時間だけ弁護士に相談することはできますか?

もちろん可能です。法律の専門家からアドバイスや適切な対処法を聞くことができます。

交渉などの代理を任せることができる

離婚時には弁護士を代理人として相手との交渉を任せることができます。
「相手がモラハラ気味でいつも言いくるめられてしまう」「忙しく話し合う時間がない」といった場合には、財産分与や慰謝料などの交渉を一任できます。
調停・訴訟に発展したときにも弁護士を代理人として選任し、手続きを任せることが可能です。

離婚を有利に進められることがある

離婚問題の実績が豊富な弁護士は、様々な家庭問題に関する対処法を、相談者の意思を尊重しながらアドバイスすることができます。
「相手の不貞行為による慰謝料を請求したい」「財産分与でマイホームをもらいたい」「養育費を多めにもらいたい」など、有利な条件で離婚したい場合には弁護士への相談をおすすめします。

離婚の財産分与ではマイホームが大きな問題となることがあります。特に売却価格を住宅ローン残債が上回る「オーバーローン」の状態では資産価値がマイナスであり、協議が難航するおそれがあります。
婚姻中に住宅を購入し、ローンが残っている場合には財産分与の話し合いに注意しましょう。

法的に適切な対処をとることができる

離婚は双方の話し合いで離婚に合意する「協議離婚」、離婚調停で調停委員と話し合い離婚に至る「調停離婚」、訴訟を起こす「裁判離婚」の3つがあります。
厚生労働省の2022年度「離婚に関する統計」※3によると、2020年には協議離婚の割合は 88.3%となっています。
協議離婚と裁判離婚(調停・審判・裁判など)の割合の推移は以下の通りです。

協議離婚の割合は90%前後で推移していましたが、2004 年以降低下し 80%台となっています。

調停・訴訟に発展した場合、法律の専門家である弁護士に相談し、場合によっては代理人となってもらうことで適切な対処が可能となります。
また、協議離婚においても法的な観点から対処法を助言してもらうことができます。
財産分与の話し合いや養育費の交渉などで役立つでしょう。

精神的・労力的に負担が減る

弁護士に相談することで「精神的に楽になった」という方は多い傾向にあります。
離婚問題は親や親しい友人など相談できる方が限られてしまうため当事者には精神的な負荷が大きくなりがちです。第三者である弁護士にこれまでの経緯を話すだけでも精神的な負荷の軽減が期待できます。

また書類作成などの手続きや交渉を代行してもらうことで、時間・労力的な負担が減るというメリットがあります。

まとめ

代理人として調停・訴訟で活躍するイメージのある弁護士ですが、離婚時には書類作成や法律相談などのサポート業務も対応できます。離婚時はやるべきことが多く「話し合いや書類作成をする余裕がない」という方は多い傾向にあります。中には「1日でも早く相手と離れたい」という事例も存在します。弁護士に相談しながらスムーズな離婚を目指しましょう。

<参照>
※1 弁護士法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC1000000205
※2 家事事件手続法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=423AC0000000052
※3 厚生労働省 令和4年度「離婚に関する統計」の概況 左5P
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/rikon22/dl/gaikyo.pdf