面会交流の拒否による慰謝料請求について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 基本的に面会交流は拒否できないが、子どもの利益・福祉に反する場合は拒否が可能
  • 面会交流を取り決めており、約束を破った証拠がある際には慰謝料請求が可能に
  • 子どもへの影響を考え、慰謝料請求は慎重に検討を

目次

【Cross Talk 】面会交流を拒否された!慰謝料は請求できる?

5年前に離婚し、子どもは元配偶者が引き取っています。面会交流を取り決めたにもかかわらず、3年間配偶者が「面倒だから」という理由で拒否されています。慰謝料請求はできますか?

取り決めて一度合意しておきながら、身勝手な理由で長期間面会交流を拒否している状態ですので慰謝料を請求できます。

詳しく教えてください。

面会交流を取り決め、拒否をした証拠がある場合には慰謝料を請求できる

離婚時に面会交流について取り決め、お互い合意したにもかかわらず正当な理由がなく拒否された場合には慰謝料を請求できます。面会交流は原則として拒否できません。

ただし、例外的に子どもに暴力をふるう、子どもの非行の原因となっている場合などでは拒否が可能です。今回は面会交流の拒否についてや、慰謝料請求の流れについて解説していきます。

面会交流とは?拒否されたら慰謝料請求はできるのか

知っておきたい離婚のポイント
  • 基本的に面会交流は拒否できないが、子どもの福祉や利益に反する場合は拒否ができる
  • 慰謝料の相場は10万円~100万円程度で、長年にわたって拒否する場合などでは高額になる可能性がある

そもそも面会交流は拒否しても良いのでしょうか?

子どもには、離れて暮らす親と面会交流をする権利がありますので、原則として拒否できません。しかし例外的に拒否できる事例もあります。

基本的に面会交流は拒否できない

面会交流とは子どもと離れて暮らす父母の一方が子どもと会って話をする、一緒に遊ぶ、電話や手紙などの方法で交流することです。

面会交流の時期や回数・場所などについては、離婚前に取り決めた方が良いでしょう。
取り決めた後は合意書や公正証書に書面として残しておくとトラブルが回避できる可能性があります。

子どもには、離れて暮らす親と面会交流する権利(面会交流権)があり、基本的に拒否はできません。

しかし、面会交流では子どもの利益・福祉が最優先されますので、例外的に拒否できる場合もあります。

例外的に面会交流を拒否できる事例

以下のような場合では、面会交流の拒否もしくは制限が可能となります。

  • 子どもに暴力をふるう、虐待するおそれがある
  • (過去に子どもに暴力をふるっていた)

  • 子どもを連れ去ろうとする
  • 子どもにとって危険な行為、犯罪をさせる可能性がある
  • 子どもを通じて金銭の要求をする
  • 子どもの学力低下・非行の原因となっている
  • 子どもが乳幼児で、自分では世話ができないにもかかわらず「預けさせろ」と主張するなど無理な要求をする

子どもに精神的・身体的な虐待のおそれがあり利益や福祉に反する場合には面会交流が制限または拒否されてしまいます。
面会交流は、子どもの健やかな成長のためにおこなわれるものということを把握しておきましょう。

面会交流で慰謝料請求ができる要件と相場とは

面会交流での慰謝料は、面会交流の取り決めを具体的に行っていた、正当な理由がなく長期にわたって面会交流を拒否した、子どもと同居する親が身勝手な理由で拒絶したなどの要件を満たすと認められる可能性は高くなります。合意書やメッセージアプリでのやりとりなど証拠の有無も重要となります。

慰謝料の相場は10万円~100万円程度ですが、長年に渡って拒否する、同居する親が身勝手な理由で拒否するなどの行為があると高額になる可能性があります。

面会交流を拒否されたときの対処法とは

知っておきたい離婚のポイント
  • 面会交流を拒否されたら、面会交流調停を申立てられる
  • 調停が成立もしくは審判で面会交流ができることが確定しても、元配偶者が面会交流に応じないときには裁判所が履行勧告・間接強制を執行できる

面会交流調停とは何ですか?

面会交流について親と子どもの意見を聞き、解決に向けて話し合います。調停が不成立に終わったときには裁判官が審判(決定)をします。

面会交流調停を申立てる

面会交流を拒否された場合には、面会交流調停を申立てることができます。

調停では、両親や子どもがそれぞれ調停委員・家庭裁判所調査官と面接をし、面会交流についての意見をききます。
面会交流は子どもの年齢・性別・就学の状況・生活のリズムなどを考え、精神的負担をかけることのないように配慮しながら子どもの意見を尊重した取り決めができるように話し合いが進められます。

面会交流調停については、「面会交流調停の流れとは?有利に進めるための方法も」をご覧ください。

調停が不成立の場合は審判に移行

調停で元配偶者が全面的に拒否をする、欠席するなどの理由で不成立に終わることがあります。
不成立になった際は、自動的に審判に移行し裁判官が様々な事情を考慮し決定(審判)をします。

審判※2に対して2週間以内に不服申立てがない時には審判が確定します。

調停が成立もしくは審判が確定し、面会交流が取り決められても元配偶者が子どもと会わせないときには履行勧告・間接強制といった手続が可能です。
履行勧告は元配偶者に面会交流をするよう裁判所から勧告する手続です。間接強制は、取り決め通りの面会交流がなされない場合に、同居親に対して間接強制金の支払義務を課す手続です。

損害賠償請求は慎重に検討を

面会交流の慰謝料(損害賠償)請求は、慎重に検討することをおすすめします。
慰謝料を請求することで元配偶者にとって金銭的に負担となり、一緒に暮らす子どもの生活にも影響を及ぼしてしまう可能性があります。

面会交流の手続をする際は、面会交流が子どもの福祉・利益にかなうことを裁判所に法的に適切な形で主張することが重要です。
「面会交流を拒否された」という方は、まず弁護士に相談みてはいかがでしょうか。

まとめ

子どもの利益や福祉に反する場合を除き、基本的に面会交流を拒否することはできません。
拒否された場合には弁護士に相談し、面会交流調停の申立てを検討してみましょう。

この記事の監修者

弁護士 丸井 駿第二東京弁護士会
専門家として冷静な視点を持ちつつ、暖かく寄り添い、ご依頼者様が前を向いて生活する手助けをするため最善を尽くします。