親権の放棄や手続きの流れについて解説いたします。
ざっくりポイント
  • 基本的に親権放棄はできないが、辞任・変更手続きは可能
  • 親権の辞任ができるのは「やむを得ない事由」があるときに限られる
  • 親権の辞任・変更でお悩みの方は弁護士にご相談を

目次

【Cross Talk 】子育てが大変…親権の放棄はできる?

子育てが大変で、親として育てられる自信がありません。経済的にも厳しいです。親権は放棄できるのでしょうか?

基本的にはできませんが、辞任・変更の手続きは可能です。ただし、一定の要件を満たす必要があります。

詳しく教えてください。

親権は放棄できないが、辞任・変更は許可される場合がある

「離婚時に親権を放棄したい」「親権を持っているがお金に余裕がなく子育てができない」という方は少なくありません。親権は基本的に放棄できませんが、辞任や変更は裁判所で認められる可能性があります。親権の放棄について、辞任の条件、親権辞任・変更の手続きの流れについて解説していきます。

親権は放棄できない。辞任・変更の手続きを

知っておきたい離婚のポイント
  • 親権は親の義務でもあることから、原則として放棄はできない
  • 裁判所で親権辞任・変更の手続きができる

なぜ親権は放棄できないのでしょうか?

民法で親権は子どもの利益のための権利であり義務とされているからです。ただし、辞任・変更ができる場合があります。

原則として親権放棄はできない

親権とは、子どもの利益のために監護・教育を行う、財産を管理するための権限です。権限であると同時に親の義務であるとも言われています。
民法にも以下のような規定があります。

第820条 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

よって親権を放棄することはできません。
ただし、やむを得ない事情がある場合は親権を辞任することができます。また元配偶者に親権を変更する手続きを行うことも可能です。

「やむを得ない事由」があるときには親権を辞任できる

民法837条では「親権又は管理権の辞任及び回復」として以下の通り定められています。

第837条 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
2 前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。

「やむを得ない事由」がある場合には家庭裁判所に申立て、親権を辞任できます。
「やむを得ない事由」とは親権者が親権を行使できない状態を指します。例えば犯罪行為により服役している、重病を患い長期入院をしている場合など客観的に見て親権を行使出来ない事態が挙げられます。
そのため、「子育てに自信がない」といった主観的な理由では親権を辞任できません。
子どもが未成年者であり、親権を単独で有している場合に辞任する状況では後見人を選任する必要があります。

第838条 後見は、次に掲げる場合に開始する。
一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
二 後見開始の審判があったとき。

親権を譲れる場合には変更手続きを

元配偶者に親権を譲ることができる場合には、家庭裁判所に親権の変更調停または審判を申立てます。
話し合いにより双方が合意できたときでも、家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
親権は家庭裁判所が「子の利益のため必要があると認めるとき」に変更することができます。
例えば親権者が経済的に困窮している、元配偶者に養育の実績があり子どもが一緒に暮らすことを望んでいる場合などが想定されます。

親権の辞任・変更の手続きの流れ

知っておきたい離婚のポイント
  • 親権の辞任・変更は家庭裁判所での手続きが必要となる
  • 自身の状況が「やむを得ない事由」であるか、手続きが難しいなど悩んだときには弁護士にご相談を

家庭裁判所での手続きは手間がかかり難しいイメージがあるのですが…

悩んだときには弁護士に相談しましょう。忙しく自身で手続きが行うことが難しい場合には、弁護士に依頼する方が多いです。

親権の辞任

親権の辞任は家庭裁判所の許可を得る必要があります。
基本的に親権は放棄できないため、「どうしても子育てできない」という場合に辞任が可能となります。
重病である、犯罪行為で服役した、経済的に困難な状況にある、転勤で海外に行くことになったなどの事由によって辞任できる可能性があります。

家庭裁判所に申立て、許可が得られた場合には役所に届出を行います。
例えば大阪市では親権(管理権)辞任届・戸籍謄本(全部事項証明書)・家庭裁判所の審判書の謄本などを提出します。

親権の変更

親権の変更も家庭裁判所に申立て、審判を経たうえで手続きを行います。
「親権者変更の調停又は審判」として、以下の書類を提出します。

1. 申立書と写し
2. 申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
3. 相手方の戸籍謄本(全部事項証明書)
4. 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)

必要な場合は追加の書類を提出することがあります。

親権者の変更を家庭裁判所が判断する際には「子どもの利益・福祉」が最優先されます。
調停・審判では変更を希望する事情や親権者の意向、今までの養育状況、経済力や家庭環境の他に子どもの年齢・性別、性格、生活環境などが考慮されます。
調停で元配偶者と話し合いがまとまらなかった場合、不成立として終了します。しかし、審判で審理が行われ結論が示されることになります。

新たに親権者になった人は戸籍法による届出義務があります。
調停が成立(又は審判が確定)した日から10日以内に市区町村役場に親権者変更の届出を行います。

困ったときには弁護士にご相談を

親権辞任では「やむを得ない事由」があることが要件です。しかし「やむを得ない事由になるのか分からない」「自分では判断できない」という方は多いのではないでしょうか。

親権問題で困っている方は、弁護士への相談をおすすめします。
法律の専門家に相談することで、対処法やより良い方法が見つかることがあります。

まとめ

親権の放棄は基本的に不可能ですが、辞任・変更ができる場合があります。親として「子どもを育てられない自分が悪いのでは」「子育てするべき」と考えてしまう方もいらっしゃいますが、病気にかかったときなど早めに対処したほうが良い場合もあります。親権を辞任した後に回復することも可能です。
まずは離婚や親権に詳しい弁護士に相談してみましょう。