産後に離婚するときに苦労すること・法律上の問題点・離婚する場合の注意
ざっくりポイント
  • 産後離婚をすると苦労すること
  • 産後離婚をする場合の法的問題
  • 産後離婚の際に注意すべきこと

目次

【Cross Talk 】夫と離婚したいが産後間もない今、どんな苦労や問題がありますか?

夫と離婚を考えています。いわゆる「産後クライシス」で夫が家にも帰ってこなくなりました。離婚するにあたってどのような問題があるでしょうか。

産後で離婚の準備が大変なのと、相手が協議離婚に応じない場合には最終的には離婚裁判になるのですが、離婚原因があるかどうかも検討すべき事項ですね。

そうなんですね、私の場合はどうでしょうか。

産後離婚する場合にはどんな注意が必要?法的問題点にはどんなものが?

妊娠中の夫の言動などが原因で、産後に離婚をするという方もいらっしゃいます。この場合にはどのような注意が必要なのでしょうか。実際に産後離婚をすると苦労すること・法的問題を含めた注意点にはどのようなものがあるか、確認してみましょう。

産後離婚で苦労すること

知っておきたい離婚のポイント
  • 産後離婚で苦労すること
  • 産後の体調の変化・収入を得る手段・赤ちゃんと2人で暮らしていくストレス

産後離婚をすると、どんなことに苦労するかを知っておきたいです。

産後離婚で苦労することについて確認しましょう。

産後離婚で苦労することには、どのようなことがあるのでしょうか。

産後の体調の変化で準備がうまくできない

離婚するにあたっては、離婚の手続き・離婚後の手続き・離婚後の生活など、しっかりとした準備をする必要があります。
しかし、出産後は、体調が変化することがあり、人によっては日常生活を送るのもやっとという場合が珍しくありません。
そのため、離婚のための準備がうまくいかず、苦労することがあります。

仕事を退職していて離婚後に収入を得る手段が未確定

妊娠・出産を機に退職しているような場合には、産後離婚をした後に仕事をするなどで、収入を得る手段を探す必要があります。
産後すぐにできる仕事は限られており、養育費の支払いが受けられない場合には、裁判等で請求するにあたっても時間がかかるため、生活に苦労することも珍しくありません。

離婚後の育児や仕事による疲れ産後の離婚では

離婚後赤ちゃんと二人きりで生活することになるため、(親族やベビーシッターのサポートを得られない場合は)赤ちゃんのお世話のほとんどを自分でやることになります。
特に生後すぐの赤ちゃんは、付きっきりでお世話をしなければならないこともあり、睡眠不足になることも珍しくありません。肉体的、精神的にかなりの疲労がたまります。ひどい場合には、産後うつになる場合もあります。
加えて、仕事もする場合にはそのストレスもかかるため、苦労することも珍しくありません。

産後うつや産後クライシスで離婚する場合の法的問題は?

知っておきたい離婚のポイント
  • 産後離婚をする場合の法的問題
  • 産後うつや産後クライシスで離婚が認められるか・慰謝料の請求は可能か

産後うつや産後クライシスで離婚するのは法律上どんな問題があるのでしょうか。慰謝料はもらえますか?

離婚原因の問題と慰謝料も検討してみましょう。

産後離婚として「産後うつ」となった場合や「産後クライシス」が原因で離婚する場合の法律問題について検討しましょう。

産後うつ病や産後クライシスで離婚は認められるのか

産後うつ病や産後クライシスが原因で離婚はみとめられるのでしょうか。
産後うつ病は、精神疾患の一種類で「分娩後の数週間、ときに数カ月後まで続く極度の悲しみや、それに伴う心理的障害が起きている状態をいいます。」(引用:「産後うつ病|MSDマニュアル より)。

産後クライシスは、産後2~3年ほどの間に、夫婦仲が悪くなる状態を指す用語です。
協議離婚や調停離婚で離婚をする場合には、当事者が離婚に合意していれば、産後うつ・産後クライシスを理由とした離婚は可能です。

協議離婚・調停離婚で離婚に応じない場合には、裁判離婚を提起することになるのですが、裁判で離婚を認めてもらうには民法770条1項各号所定の離婚原因が必要となります。
産後うつであることや、産後クライシスであることは、民法770条1項各号には直接規定はされていません。

産後うつが医師に認定されている場合に、民法770条1項4号の「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。」にあたるのでは?と考える方もいるのですが、強度の精神病であるかどうかについては、専門家(医師)の判断を前提に、法律的に判断されますので、医師から「産後うつ」と診断されていれば必ず「強度の精神病」と認められるとは限りません。

産後うつ・産後クライシスの状態が深刻である場合には、民法770条1項5号所定の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」にあたりえますので、他の事情も考慮して夫婦関係が実質的に破綻しているといえる場合には離婚原因ありといえます。
また、相手が不倫をしている・家に帰ってこなくなった・生活費を入れなくなったような場合には、770条1項1号の不貞行為や、2号の悪意に遺棄に該当し、離婚の請求が可能です。

慰謝料は認められるのか

慰謝料は、精神的苦痛を被った場合に請求が可能なものです。
そのため、産後うつ・産後クライシスとなったことについて、相手に落ち度がある場合には慰謝料請求が可能です。
また、不倫や悪意の遺棄があったような場合には、慰謝料請求が可能です。
慰謝料の相場としては50万円から200万円程度で、相手の行為の悪質性などに応じて増減します。

なお、産後うつ病であることを理由に離婚や慰謝料請求をする場合、きちんと医師の診断を受ける必要があります。

産後離婚をする際に注意すべきこと

知っておきたい離婚のポイント
  • 産後離婚をする場合の注意点
  • サポートしてくれる方を早めに見つけること・離婚の準備は念入りに行うこと・交渉を弁護士にまかせることなど

産後離婚をする場合にはどのような注意が必要でしょうか。

離婚や離婚後の生活をサポートしてくれる方を見つけて、きちんと準備をして離婚に臨むように注意しましょう。

産後離婚をする場合には次のようなことに注意しましょう。

離婚・離婚後の生活をサポートしてくれる方を早めに見つける

離婚の手続き自体や、離婚後の生活にはサポートが欠かせません。
そのため、離婚手続きや離婚後の生活のサポートをしてくれる方は早めに見つけて、サポートをお願いしておきましょう。
ご両親や兄弟姉妹、友人などに、離婚の手続きに入ることを事前に知らせてサポートをお願いすることもありますが、どうしても助けてくれる方がいないような場合には、行政に相談してみましょう。

離婚に関する準備は念入りに

離婚に関する準備は念入りに行います。
離婚原因があることや、慰謝料の額に影響する相手の言動については、証拠が必要となります。
また、別居をする場合には住居や仕事の確保とともに、養育費の支払いがされない場合に差し押さえるべき相手の財産を調べておく必要があります。

相手が離婚・慰謝料や財産分与・養育費の支払いに応じない場合には、一時的に生活費を自分で工面する必要もあります。
見切り発車で離婚の手続きを始めると、離婚を諦めざるを得なかったり、不利な条件を飲まされる可能性も否定できません。
離婚に関する準備は念入りに行いましょう。

相手との交渉は苦痛なので弁護士にまかせてしまう

離婚をする場合には、相手との交渉が欠かせません。
産後の大事な時期に離婚をしなければならないような場合では、既に顔を合わせるだけでも苦痛であることも珍しくありません。
弁護士に依頼すれば、法的問題でサポートしてくれることはもちろん、相手と交渉を行ってくれるので、お互いが感傷的にならずに交渉を進めることが可能です。

まとめ

このページでは、産後離婚について、どのような苦労があるか、法的問題、注意点などについてお伝えしました。
産後離婚については、肉体的・精神的・経済的負担が大きいので、そのサポートが欠かせません。
弁護士は法的なサポートはもちろん、交渉をサポートするので、精神的負担を大きく減らすことが可能です。