相手が原因でうつ病になった場合に離婚ができるのか?離婚する場合の慰謝料や親権について
ざっくりポイント
  • うつ病にされたことが原因で離婚ができるか
  • うつ病で離婚する場合の親権・養育費・慰謝料
  • うつ病で離婚する場合の注意点

目次

【Cross Talk 】夫のせいでうつ病になったけど離婚できますか?

夫のせいでうつ病になってしまいました。離婚をしたいと考えるのですがうつ病にされたということで離婚できるのでしょうか。夫は離婚に反対しています。

相手が反対しているのであれば最後には離婚裁判を行うので、離婚原因が必要です。うつ病にされたこと自体は離婚原因に規定されていませんが、強度の精神病と認定できる場合や・不倫をされたような場合はそれ自体が離婚原因になったり、モラハラ・DVなどが原因になっているような場合には総合して離婚原因があるということになる場合もあります。

詳しく聞かせてくれませんか?

うつ病の場合に離婚はできるか?慰謝料・親権などについて

夫婦の一方が他方のせいでうつ病になってしまった場合に相手と離婚ができるのでしょうか。協議離婚・調停離婚をする際には当事者が合意できれば離婚できるのですが、裁判離婚をする際には離婚原因が必要です(民法770条1項各号)。

このページでは、うつ病の場合に離婚ができるのか、離婚できる場合の決め事についてうつ病が影響するのかについて解説いたします。

うつ病が原因で離婚はできる?

知っておきたい離婚のポイント
  • 裁判離婚をする場合には離婚原因が必要
  • うつ病自体は離婚原因に記載されていないが「強度の精神病」として離婚原因になったり、その経緯に離婚原因がある可能性がある。

うつ病になったことが原因で離婚はできるのでしょうか。

当事者が合意しない場合には離婚裁判を起こす必要があり、この場合、法律上の離婚原因が必要です。うつ病自体は規定されていないのですが、いろいろなケースで離婚原因があると判断できる場合があります。

うつ病が原因で離婚はできるのでしょうか。

離婚をするには離婚原因が必要

離婚には、当事者の協議で行う協議離婚、離婚調停で行う調停離婚、離婚裁判で行う裁判離婚があります。
協議離婚・調停離婚については、当事者が合意していれば離婚ができますが、相手が反対しており、離婚裁判で離婚をするには、民法770条1項各号所定の離婚原因が必要です。

浮気・不倫が原因でうつ病になった場合

うつ病について離婚原因となるのでしょうか。
民法770条1項を確認してみましょう。

(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

ここには「うつ病」になったことは規定されていないので、相手のせいでうつ病になった・相手がうつ病になったということだけでは離婚原因にはなりません。
しかし、例えば、うつ病になった原因が、相手の不貞行為(浮気・不倫)にあるような場合には、民法770条1項1号が原因で離婚の裁判を提起できます。

その他の原因でうつ病になった場合

その他の原因でうつ病になったような場合、4号の「強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」といえるか、他の事情から5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたるかによります。
4号の「強度の精神病」として認定されやすい疾患としては、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)が挙げられますが、症状の重さによるものとされています。

また、うつ病になった原因が、相手のDVやモラハラにあるような場合には、そのDVやモラハラが原因で婚姻を継続し難い重大な事由があるとき、にあたりうる場合もあります。
うつ病になった経緯や、現在の状態などについて精査すると離婚原因が見つかることがあるので、離婚原因があって離婚裁判を提起できるかは、弁護士に相談してみてください。

うつ病で離婚する場合の親権や養育費はどうなる?

知っておきたい離婚のポイント
  • うつ病で離婚する場合の親権
  • うつ病で離婚する場合の養育費

うつ病で離婚できる場合、親権はどうなりますか?親権をもらえるとして養育費には影響しますか?

うつ病が原因で子どもを養育できる状況ではないと認定されるおそれはあります。もし親権をもらえる場合、養育費は子どものために使うお金なので、うつ病であることで認定が変わってくるということはありません。

うつ病で離婚をする場合に、親権・養育費については影響があるのかを確認しましょう。

親権

離婚をする場合に子どもがいるとどちらの親権にするかを決めなければなりません。
どちらの親権にするか決まらない場合には、調停や裁判で決めます。
このときに親権をどちらにするかは、あくまで子どもの福祉の観点から決めるため、うつ病であることは養育できる状態にないと判断される資料になりえます。
うつ病であるかどうかだけで決めるわけではありませんが、親権の決定にあたっては不利になると考えておくべきでしょう。
この場合、両親や親族と同居するなど、養育をするのに影響はないとできるようにすれば親権に関する交渉を有利に進めることができるでしょう。

養育費

親権者となると相手から養育費をもらうことができます。
養育費は子どもの養育のために使う金銭のことなので、養育費の決定にあたって親権者となる方がうつ病であるかどうか、相手がうつ病になるような原因を作ったか、などについては問われません。

うつ病が原因で離婚する場合慰謝料はもらえる?

知っておきたい離婚のポイント
  • うつ病が原因で離婚する場合の慰謝料
  • 相手が原因でうつ病になった場合には慰謝料はもらえる

うつ病が原因で離婚する場合の慰謝料はどうなりますか?

相手が原因でうつ病になったような場合には、慰謝料の請求が可能です。

うつ病が原因で離婚する場合慰謝料はもらえるのでしょうか。
慰謝料は、相手が精神的苦痛を与えるようなことをしてきた場合に発生するものです。
離婚の事案では、離婚の原因が相手にあるような場合に慰謝料を請求することができる場合が多いでしょう。

相手の浮気・不倫などが原因でうつ病になった場合の慰謝料

相手の不貞行為によってうつ病になったような場合には、慰謝料請求をすることが可能です。
不貞行為が原因で離婚になった場合、慰謝料請求権も発生するのですが、不貞の結果うつ病のような精神疾患となった場合には、精神的苦痛の程度がより大きいと認定され、慰謝料の額が増える傾向にあります。

うつ病で離婚をする場合の注意点

知っておきたい離婚のポイント
  • うつ病の診断はきちんと病院で行う
  • 離婚した後の生活について考えておく

うつ病で離婚をする場合の注意点にはどのようなものがありますか?

うつ病と自己判断するのではなく専門医の診断書をきちんともらって行動するようにしましょう。

うつ病で離婚をする場合の注意点について確認しましょう。

病院で診断してもらう

うつ病であることについては、自己判断をせずに、きちんと病院で診断してもらうようにしましょう。
「うつ病」と最終的に認定してもらうためには、医師の診断書が不可欠で、これがないままにうつ病であると主張するだけでは、実際にはそこまでの症状ではないなどと認定される可能性高いです。
うつ病であることを主張する場合には、きちんと医師に診断をしてもらうようにしましょう。

うつ病になった状態での離婚後の生活

うつ病で離婚をするとなると、心身ともに大きな負担が伴います。
離婚をした後の生活について考える余裕までないようなケースもあり、いざ離婚をした後の生活について困窮することも珍しくありません。
うつ病になった状態で離婚する場合には、離婚後の生活についてある程度見通しを立てたり、助けてくれる人を確保しておくようしましょう。

身近に相談する相手がいない場合には、行政に相談をして、助けてくれる制度を利用しながら離婚に関する手続きを行うようにしましょう。

まとめ

このページでは、うつ病である場合に離婚ができるかを中心に、うつ病である場合の離婚に関する問題についてお伝えしました。
うつ病自体は離婚原因ではないですが、症状により強度の精神病として認定される可能性がないわけではなく、またうつ病になった原因によっては離婚できる可能性もあります。
うつ病になった原因や、子どもがいるかなどによって、慰謝料を請求できるか、親権をどうするかなど、決めるべき事項は多くなるので、まずは弁護士に相談するようにしてください。