父親が離婚した後に子どもの親権を勝ち取るためには
ざっくりポイント
  • 親権の概要
  • 親権は母親に認められやすい
  • 父親が親権を獲得するための注意点

目次

【Cross Talk 】離婚をした場合、父親は子どもの親権をもらえませんか?

妻と離婚することになりました。妻は自分の趣味を家族より何より優先し散財する傾向にあるので、子どもの親権は自分が獲得したいです。親権は母親が獲得することが多いイメージなのですが、自分が親権を獲得することはできるでしょうか。

親権については母親のほうが有利ということはありますが絶対ではありません。まずは状況を教えてもらえますか?

よろしくお願いします。

親権は母親が有利!父親が親権を獲得するためのポイントを知っておこう

離婚をする際には親権をどちらか一方に定める必要があります。協議で決まらない場合には調停・裁判などの法的手続きによって決めるのですが、その場合には基本的には母親側が有利です。しかし父親側が親権を獲得できないわけではありません。父親が親権を獲得するためのポイントを知っておきましょう。

親権とは

知っておきたい離婚のポイント
  • 親権とは
  • 離婚をする際には夫婦のどちらかが親権者となる

離婚をすると親権はどうなるのでしょうか。

夫婦共同親権が原則なのですが、離婚の際には夫婦のどちらかが単独で親権を行使することになります。

まず親権とはどのようなものか、離婚をする場合の親権について確認しましょう。

親権とは

親権とは、親が未成年者の子どもに対してもっている、監護・教育や子どもの財産管理などの権利・義務のことをいいます。
民法818条以下に定められており、父母が婚姻している間は、父母が共同して行なうとされています(民法818条3項)。

離婚をするときの親権

離婚をする場合の親権は離婚の種類によって異なります。
協議離婚をする場合には、協議で父母の一方を親権者と定めなければなりません(民法819条)。
実際離婚届を提出するときに未成年者の子どもについてどちらが親権を行なうか記載する欄があり、記載を欠くと離婚届は受理されません。

裁判上の離婚の場合には、どちらが親権を行なうかについて裁判所が定めます(民法819条2項)。
離婚裁判を起こす前には離婚調停を提起しなければなりませんが、離婚調停では調停委員会が親権についても調停の中で判断をします。

監護権

なお、親権とは別に監護権というものがあります。
親権のうち未成年者の監護、つまり子どもの世話・教育をする権利のみで、財産管理権はこれに含まれません。
一方が親権を持ちつつも、監護のみを他方が行なうということも可能です。

父親が親権を勝ち取るためには

知っておきたい離婚のポイント
  • 親権については争いになった場合は基本的に母親が優先される
  • 父親が親権を得るためのポイント

なるほど、では母親と協議をしてうまくいかなかった場合には調停や裁判で親権者を定めるのですね。親権というと、どうしても母親が有利に働くイメージがあります。

おっしゃる通りで親権は母親が獲得することのほうが多いです。しかし父親は親権を絶対に獲得できないわけではありまえせん。そのためのポイントを見てみましょう。

任意の交渉で親権を勝ち取れない場合には、調停・裁判などの法的手続きの中で判断することになります。
そこで、父親が親権を勝ち取るためにはどんなポイントがあるのでしょうか。

親権については母親が優位

親権がどちらになるかについては、子どもが健やかに成長するため(子どもの利益)にはどちらの親が良いかという観点から判断されます。
一般的に、子どもは出生してから母親と一緒に暮らす時間のほうが長いため、母親と暮らすことが望ましいと考える傾向になります(母性優先の原則)。
この傾向は、子どもの年齢が幼ければ幼いほど重視されることになります。
そのため、母親が育児を放棄して外で遊んで回っていたり、幼い子どもに暴力をふるっていたり、病気で育児ができない状況にある、などの状況にない限り、一般的には母親が親権を獲得しやすいといえます。

父親が親権を勝ち取るためのポイント

しかし、親権は母性優先の原則のみで判断されるわけではなく、次の3点も併せて考慮されます。
まず1つ目は、子どもの環境をなるべく変えるべきではないという「継続性の原則(現状維持の原則)」です。例えばすでに就学している子どもが転居を強いられると、転校をするなどの必要が生じ、子どもに大きな負担を強います。
そのため、なるべく今の状況を変えないようにしようという判断が働きます。

次に、兄弟姉妹がいる場合には、なるべく兄弟姉妹は分離すべきではないとする「兄弟姉妹不分離の原則」があります。
兄弟姉妹が多い場合には、働きながら父親が全員を養育するのは難しいと判断されることもありますので、両親や兄弟など継続的な養育にあたって周りの協力が得られるという状況を作っておくべきでしょう。
最後に、子どもがどちらの親に養育されたいか、「子の意思の尊重」という原則があります。
おおむね子どもが10歳を超える場合には、親権の決定において裁判所は子どもの意思を確認し、尊重する傾向があります。
父親が親権を獲得するためには、離婚後も今の生活を変えないで、兄弟姉妹全員を養育し、子どもも父親に親権されることを望んでいるという状況を作ることが必要です。

父親が親権の交渉をする際の注意点

知っておきたい離婚のポイント
  • 母親が子どもを連れ去っている場合には早めに対応を
  • 親権を獲得できない場合には面会交流をきちんと決める

親権の交渉をする際に何か注意すべき点はありますか?

母親が子どもを連れて家を出てしまった場合の対処は慎重にかつスピーディーに行なうようにすべきです。

父親が親権の交渉をする際の注意点にはどのようなものがあるでしょうか。

母親が子どもを勝手に連れて家を出た場合

母親が子どもを連れて勝手に家を出るような場合があります。
例えば、そのまま実家などで生活を始めて、そこで基盤を作ってしまうと、親権の交渉をする際に継続性の原則から母親に有利となってしまいます。

そのため、子どもを取り戻すために、なるべく早く家庭裁判所に「子の引渡請求」の調停・審判を申立てるようにしましょう。
このときに、自力で子どもを連れ去ってくることは、法律が手続きによることを建前としている以上するべきではありません。

連れ去られた先で子どもが暴力を振るわれていたり、食事を与えられていないなどが判明した場合には例外的に認められることもありますが、後に親権争いの際に問題とならないように、なるべく早く弁護士に相談しながら行なうようにしましょう。
また、取り戻す際の手続き中、相手に厳しい言葉を使うようなことがあると、後にこれが原因でモラハラなどが認定されることもあるので注意が必要です。

母親を親権者とした場合には面会交流を決める

以上のように様々な事情が考慮されるとはいえ、母性優先の原則もあるので、状況によっては、父親はどうしても親権を獲得できないという場合もあります。
この場合には、子どもと定期的に面会する方法(面会交流)をきちんと決めておくようにしましょう。

弁護士に依頼して交渉を任せる

父親側からの親権の獲得交渉は、常に不利を強いられるものです。
自分に有利な事情があれば、どんなに小さなことでもきちんと立証できるようにして、コツコツ積み重ねていることが大切です。
さらに、苛立つあまり不用意な発言をしたりして、マイナスのポイントになる事情が発生しないように注意も必要です。
そのため、できる限り弁護士に依頼して、交渉を依頼するのが良いでしょう。

まとめ

このページでは、父親が親権を獲得するために必要なことについてお伝えしました。
親権は母親側が獲得することが多く、父親が親権を獲得するためには困難を伴います。
弁護士に相談・依頼して親権獲得のための交渉をすることをおすすめします。