自己破産した場合には破産者の財産はどのように処分されるのでしょうかご説明いたします。
ざっくりポイント
  • 自己破産した場合の不動産の処分任意売却されることが一般的である
  • 任意売却の他は強制競売という方法がある
  • 自動車がある場合残債があるかどうかで売却されるかの判断がされる

目次

【Cross Talk 】自己破産をしたら不動産や車はどうやって処分されるの?高く売れる任意売却って何!?

借金が返済できなくて自己破産を検討しています。住宅ローンでマンションを購入したのですが、これらはどのように売却されるのでしょうか。また任意売却というものについても詳しく知りたいです。

債権者が抵当権にもとづいて競売をすることになるのですが、任意売却をすれば引越し代を得られる可能性もあります。積極的に活用してみてください。

そうなんですね!詳しく教えてください

自己破産をした場合に財産はどう処分されるのか?任意売却とは?

自己破産をする場合、ローンが残っている財産で債権者が担保権をもっている場合には債権者が担保権を実行して債務の弁済にあてます。それ以外の財産については破産手続きでお金に替えられて債権者に配当されます。
不動産も同様なのですが、競売では3割~5割安い値段で買われるのが通常で、債権者は大きく損をすることになるので、任意売却という市場価格に近い値段で売却する方法が採られます。
任意売却をすると、引越し代を得られることがあり、新しい生活のスタートを切りやすいので、自己破産を検討する際には積極的に利用することをおすすめします。

任意売却とは?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 住宅ローン債権者は抵当権を実行して競売で不動産を売却できる
  • 競売は市場価格より3割~5割安く不利
  • 任意売却で市場価格に近い価格で売却することが可能で協力した債務者は引越し代を貰えることがある

任意売却とはどのようなものでしょうか?

住宅ローンなどの抵当権がある不動産について、抵当権者と交渉をしながら、市場価格に近い金額で不動産を売却することをいいます。

任意売却とはどのようなものなのでしょうか。自己破産をする場合の財産の処分と併せて確認しましょう。

自己破産をする場合の財産の処分

借金返済ができなくなって自己破産をする場合、財産は処分されてお金に替えられ債権者に債権額に配当されることになります。
しかし、対象となる財産に担保権がついている場合には、破産手続きとは別に担保権を行使して、強制執行をすることが可能です。
高級外車をローンで購入した場合で、所有権が債権者にあるような場合には、債権者は車を引き上げて売却してしまい、債務の残額に充てることが可能です(所有権留保という担保の種類です)。
また不動産について抵当権をつけているような場合には、抵当権を行使して不動産を競売して、そこから得られた代金を返済に充てることが可能です。
自己破産をする場合、まずは担保権によって財産が処分された後に、破産手続きの中で管財人によって財産が処分されることになります。

不動産の競売は安いという問題がある

ここで不動産の競売については、市場価格での売却よりも安いという問題があります。
競売は国が管理して行うのですが、不動産の中の状態が見えないことが多く、実際に落札して中を見るまで、物件の状態がわからなかったり、不法占拠者(専有屋と呼ばれます)がいないか、などがわかりません。
通常の売買では、購入前に内覧ができるので、どうしても購入する側としてリスクを抱えることになります。
そのため、市場価格の3割~5割の価格で落札されることが多いです。

市場価格で売却するのが任意売却

例えば市場価格が1,000万円の物件があるとして、5割の価格で落札されると500万円が売却価格になります。
債権者はこの500万円を借金の返済にあてます。
市場価格の1,000万円で売れてくれれば回収できる金額は1,000万円となりますので、債権者としては市場価格で売却してくれるのを望むでしょう。
しかし債務者側から見ると、競売だろうが任意売却だろうが、どのみち自宅の所有権を失う点では異ならないので、積極的に売却をしようという気になれないのが通常です。
そこで、市場価格で売却し、30万円の引っ越しなどの費用を渡せるとするならば、債権者としても引越し費用を差し引いた970万円が回収できますし、債務者としても30万円の引っ越し費用を手に入れることができ、win-winの関係ができます。

任意売却の存在価値はこの点にあります。
同じようにローンで購入した自動車のように、市場価格での売却を債権者ができるような場合ではあまり問題になりません。

任意売却と自己破産の違い

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 任意売却と自己破産の違い
  • 任意売却は不動産の売却方法で自己破産手続きとは異なるが密接な関連がある。

自己破産と任意売却はどのような関係なのでしょうか。

任意売却は不動産売却の方法で、自己破産は債務の処理に関するもので、2つは別のものです。しかし、任意売却した後に自己破産も必要であったり、自己破産の相談から任意売却を先行して行うこともあり、両者は密接な関係があります。

自己破産と任意売却とはどのような違いがあり、どんな関係にあるか確認しましょう。

任意売却と自己破産の違い

任意売却と自己破産には次のような違いがあります。
任意売却は、抵当権がついている不動産の処分の方法の一つです。
一方で自己破産は、返済ができなくなった債務の処理の方法の一つです。
住宅を所有しているときに債務の返済ができなくなると、選択肢として任意売却と自己破産があるように思えるのですが、両者は不動産の処分と借金の処理という、全く違う手続きであるといえます。

任意売却と自己破産は密接な関係がある

任意売却と自己破産は異なる手続きのことをいいます。
しかし、いずれも借金返済ができなくなった時点で問題になるため、密接な関係にあるといえます。
任意売却をしたうえで、まだ債務が残ることが多いです。不動産の所有権や住居の問題を任意売却で処理しても、なお債務の返済は残っていることがほとんどです。
そして、住宅ローンで借り入れをする額は非常に多額で、残された債務の支払いをできない状態になっていることは珍しくなく、続いて自己破産をすることは珍しくありません。
また逆に、自己破産の相談に弁護士を訪れたところ、任意売却を先行して行うことになることもあります。
住宅問題の解決を任意売却で、債務の処理を自己破産で、と連続することもあるので、両者は密接な関係があるといえるのです。

自己破産せず任意売却で解決する方法

場合によっては自己破産せずに任意売却で解決する場合もあります。
残っている債務の額と、住宅の売却された額によっては、残った債務が僅かである場合があります。
また、残った債務を自己破産ではなく、他の債務整理方法である任意整理や個人再生で処理することもあります。
どのような解決方法が良いかは、残債務額や返済可能な金額がどれくらいあるかにもよるので、弁護士に相談してみてください。

任意売却するメリットは?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 任意売却のメリット
  • 債権者・債務者ともにメリットがある

任意売却のメリットにはどのようなものがありますか?

債権者としては市場価格に近い金額で売却でき、債務者としても引越し費用を手に入れられる可能性があるなど、債権者・債務者ともにメリットがあります。

任意売却にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

市場価格に近い金額で売却が可能

上述したように、任意売却をすると市場価格に近い金額で売却が可能です。
これにより債権者はより多くの金額を回収することができます。

引っ越し費用を得ることができる可能性がある

こちらも上述したように、債務者としては引っ越し費用を得ることができる可能性があります。
場合によっては不動産投資家に購入してもらって、その人から借り入れをするリースバックという方法が可能で、この場合所有権自体は失うものの、賃貸物件として住み続けることが可能となります。

費用の持ち出しが不要

任意売却は通常は任意売却を専門としている不動産会社に依頼して行います。
費用は売却されたときに発生するので、当初は費用の持ち出しが不要です。
競売を行うには、債権者が担保権実行の申立てをしなければならず費用がかかりますし、また一般売却のように測量などの費用もここに含めるので、債務者は当初の費用がかからずに売却活動をすすめることができます。

計画的に売却が可能

計画的な売却が可能です。
競売によると、法律に従った手続きで進むので、特に自宅の退去の時期が一律に決まってしまいます。
任意売却によると、ある程度柔軟に進めることが可能で、計画的に売却手続きを行い、退去までをスムーズに行うことができます。

プライバシーが守られる

債務者のプライバシーが守られる点も任意売却のメリットです。
競売の情報はインターネットや新聞で公になり、その情報を見た不動産業者や自宅に任意売却の営業に来たり、購入希望者が少しでも状態を知りたいために自宅や周囲から見に来ることがあります。
任意売却であれば、競売がされている情報が公になるわけではないので、繰り返し不動産会社が訪問してくるようなことがなく、内覧希望者は事前に連絡を貰えるので周囲をウロウロされることもありません。

任意売却することのデメリットは?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 任意売却をする場合のデメリット
  • 返済ができない状態になっていると避けられないものもある

任意売却をする場合のデメリットにはどのようなものがありますか?

信用情報に傷がつく、などのデメリットについて確認しましょう。

任意売却をする場合のデメリットには次のようなものがあります。

個人の信用情報に傷がつく

任意売却から直接そうなるわけではないのですが、任意売却を進めることになった場合には返済が延滞することになるので、個人の信用情報に傷がつくことになります(いわゆるブラックリスト)。
そのため、貸金業者からの新たな借入、クレジットカードを作ること、携帯電話の分割購入などが、一定期間できなくなります。

保証人になってくれた人に迷惑をかける

契約どおりの支払いができなくなっているので、保証人(連帯保証人を含む)に対する請求が行われます。
また、売却にあたっては保証人の協力が必要となります。
保証人になってくれた人には迷惑をかける結果とならざるを得ません。

個人の判断だけで売却を決定できない

通常不動産の買い手がつかないような場合では、売却価格を下げます。
しかし、任意売却においては、売却価格を下げることは債権者に返済できる金額が減ることに繋がるので、債権者が納得をしなければできません。
個人の判断だけでは売却価格の決定ができず、債権者の意向を汲みながら売却を行う必要があります。

任意売却のタイムリミットを過ぎると競売

任意売却は売却されるまでいつまでも待ってもらえるわけではなく、債権者としてこれ以上待てないような場合は競売に切り替える必要もあります。
滞納して1年を超えるような場合にはタイムリミットとなることも多いので、早めに行う必要があるのがデメリットです。

残債分の支払いは続く

任意売却によって住居を確保できても、残債務が残っていると支払い義務は残ります。
例えば、残債務額が2,000万円あって、任意売却で1,000万円で売れたとしても、1,000万円の債務が残り、その支払い義務は残ります。
金融機関と残債務額の支払いについて話し合ったり、あらためて自己破産をするなどが必要です。

まとめ

このページでは、自己破産をした場合に財産がどのように処分されるかと関連して、不動産の任意売却を中心にお伝えしました。
抵当権がついている不動産がある場合には、競売されることになるのですが、競売では債権者は回収額が少なく、債務者もお金がなくて大変な中新居の準備をする必要が発生します。
任意売却を検討するのか、残った債務をどうするのか、個人が置かれている状況と併せて検討する必要があるため、まずは弁護士に相談してみてください。