自己破産の手続きを弁護士に依頼した場合のメリットについて、ご説明いたします。
ざっくりポイント
  • 自己破産は本人でも申立てることができるが、手間や時間がかかるうえ、うまくいかない可能性がある
  • 自己破産の手続を弁護士に依頼すると、書面の作成をしてくれるだけでなく、資料の収集について的確な指示をしてくれるため、手間や時間を削減できる
  • 弁護士が持つ知識や経験から、同時廃止事件が認められたり、最終目標である免責を得られる可能性が高くなる

目次

【Cross Talk】自己破産を弁護士に依頼するメリットは?

自己破産を弁護士に依頼するメリットは具体的にどのような点にあるのでしょうか?

主なメリットとして、時間や手間の削減が挙げられます。また、最終目標である免責を得られる可能性も高くなります。

詳しく教えてください!

自己破産は自分でできるの?弁護士に依頼した方がいいの?

自己破産という言葉は何度も耳にしたことがあるものの、どうやって手続をしたらいいかわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
弁護士費用なども安価でないことから、自分でできるのであれば、そうしたいと考えるのが普通ですよね。

しかし、本人で自己破産の手続をするには、必要な知識の習得、関係資料の収集など多くの準備が必要となるため、時間や手間がかかります。また、場合によっては、裁判所に申立自体を受け付けてもらえないことや、裁判所から結局免責を得られないこともあり得ます。
そこで本記事では、自己破産の手続を弁護士に依頼するメリットについて解説します。

自己破産の申立ては本人でもできる?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産は本人で行うこともできる
  • 自己破産は、各裁判所所定の申立書類一式を準備作成した上で、裁判所に申立てる

書面の作成や揃えなければならない書類がたくさんあるようですが、本当に自己破産の申立ては自分でできるのでしょうか。

手間はかかりますが、絶対に弁護士に依頼しなければできないというわけではありません。

本人が自己破産手続を申立てる場合、本人自身が作成した申立書類一式を裁判所に提出する必要があります(破産法20条1項)。そして、申立書類一式中の申立書については、次の事項を記載しなければなりません(破産法20条1項、破産規則13条)。

1. 申立人の氏名と住所
2. 申立ての趣旨
3. 破産手続開始の原因となる事実
4. 申立人の収入と支出、資産と負債の状況
5. 破産手続開始の原因となる事実が生ずるに至った事情
6. 申立人の財産に関して他の手続や処分がされている場合はその旨
7. 申立人について現に係属している破産事件などがあれば、その事件が係属する裁判所と事件の表示
8. 申立人の郵便番号と電話番号

このように申立書類一式中の申立書だけ見ても、法律用語が多く使われ、その意味から理解していく必要があります。また、申立書に加え、債権者ごとに負債額や滞納している税金を記載した債権者一覧表など、他に提出しなければならない書類や資料がたくさんあります。

弁護士に頼むメリットは?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 書類の作成や資料の収集について的確な指示をしてくれる
  • 同時廃止事件となる可能性が高くなる
  • 免責に対する知識や経験があるので、免責を得られる可能性が高くなる

自己破産手続を弁護士に頼むメリットはどのような点にあるのでしょうか?

弁護士は破産手続に関する法律知識や経験があるので、書面作成や資料収集についてスムースに進めることができます。また、弁護士が事情を聴いた上で、免責に関する知識や経験から、免責を得られるために何をすべきか検討し、さらに指示をくれるので、免責を得られる可能性が高くなります。

書類の作成や資料の収集について的確な指示をしてくれる

前述のとおり、自己破産を申立てるためには、申立書類一式として、申立書や債権者一覧表など、作成しなければならない書面が多くあります。これらの書面について、用語の意味や手続の内容を習得しつつ、書面を作成していくには、相当な時間がかかりますし、とても大変です。

債権者一覧表一つをとっても、本人が準備する場合、本人が各債権者に連絡をし、債務額、契約内容等を聴取し、さらに債権調査票を受領した上で、一覧表を作成していかなければなりません。時間がかかることはもちろんですが、メンタル的にも大きな負担となります。
それに加え、各裁判所によって、必要な資料の提出が求められるので、その資料を収集しなければなりません。しかし、申立人の状況や裁判所の運用によって、必要な資料は異なってくるので、どの資料が必要かを裁判所などに確認をとりながら、資料を収集していく必要があります。

もっとも、法律の専門家である弁護士であれば、法律はもちろんのこと、作成しなければならない書面の種類やその記載方法を知っていますし、弁護士に依頼すれば、それらの書面を作成してくれます。

例えば、債権者一覧表の作成にあたっては、弁護士は、各債権者に対し、受任通知を発送し、債権者から債権調査票を受領し、債務額や契約内容を把握した上で、債権一覧表をスムースに作成することができます。
また、資料の収集については、弁護士が申立人の状況や各裁判所の運用を調査し、必要な資料を選定してくれるばかりでなく、収集方法などについても、的確な指導をしてくれます。

同時廃止事件となる可能性が高くなる

個人の自己破産手続においては、大きく「管財事件」と「同時廃止事件」とに分かれます。
「管財事件」とは、申立後、裁判所が管財人を選定し、管財人が申立人の財産や状況を調査していく手続を指します。原則は「管財事件」として取り扱われ、管財人の費用や債権者への配当にあてられる引継予納金として、「少額管財」であれば原則20万円以上、「通常管財」であれば原則50万円以上が、申立時に必要となります。

一方、「同時廃止事件」とは、裁判所が管財人を選定するまでもないと判断した手続を指します。申立時において、裁判所が必要としている調査が尽くされた上で、換価や配当にあてられる財産がないことも明らかである場合に、「同時廃止事件」として認められます。この場合には、管財人の費用も発生しないので、前記のような高額な引継予納金は必要ありません。

もっとも、裁判所が必要としている調査が尽くされた上で、換価や配当にあてられる財産がないことも明らかであることを、申立時に申立書類一式によって裁判所を納得させる必要がありますので、本人申立ではとてもハードルが高いものとなります。
そこで、知識や経験を持つ弁護士に依頼することで、前記のとおり、書類や資料を準備し、円滑な申立をすることによって、「同時廃止事件」となる可能性が高くなります。

免責に対する知識や経験があるので、免責を得られる可能性が高くなる

「免責」とは、自分の負債について、その支払義務が免除されることをいいます。破産手続の最終目的は、この免責について裁判所から許可を受けることにあります。
しかし、法律では、免責不許可事由(免責が許可されない行為)が定められており(破産法252条1項)、この事由に該当すると、免責不許可となる可能性が出てきます。

免責不許可事由として定められているもののうち、代表的なものは次のような行為です。

1. 不当に破産財団の価値を減少させたこと
2. 不当に一部の債権者のみに対し返済をしたこと(いわゆる偏頗弁済)
3. 浪費や賭博などによって財産を減少させ、または、多額の借金を負ったこと
4. 破産手続開始の原因があることを知りながら、詐術を使って信用取引により財産を取得したこと
5. 過去にも破産したことがあり、その免責許可の確定から7年以内に免責許可の申立てがあったこと

もっとも、これらの免責不許可事由に該当する行為が認められたとしても、破産に至った経緯などを考慮した上で、裁判所が免責を許可することが相当であると判断した場合には、免責許可の決定がなされます。これを裁量免責といいます(破産法252条2項)。

まず、免責不許可事由にあたるのかどうかも、本人では判断が難しいことも多くあると思います。それに加え、裁判所が出す裁量免責など、破産手続を経験したことのない方から見れば、見当もつきにくいものとなっています。

そこで、知識や経験を持つ弁護士に依頼することで、免責不許可事由に該当する行為なのかどうかについて弁護士から意見をもらうことができ、免責不許可事由にあたる行為があったとしても、どのような方法をとれば、裁量免責を得られるのか、具体的な方策を検討してもらえますので、免責を得られる可能性が高くなります。

貸金業者からの取り立てを止めることができる

自己破産手続きを自分で申立てをすることを禁止する法律があるわけではありません。
ただ、自己破産の申立てをするには、実際にはかなりの時間がかかります。

まず、債権者の債権額の確定のために債権の調査を行います。
貸金業者の場合には取引の履歴を取り寄せて、引き直し計算という計算をする場合もあります。申立て時には1円単位で記載する必要があるので、きちんと調べなければなりません。
自己破産は申立書を作成した上で、様々な書類を添付しなければなりません。
これには弁護士が依頼者と一緒に行う場合でも1~2ヶ月くらいはかかります。
もし自分で自己破産の申立てをするのであれば、借金を返済しながら行うか、借金返済が滞ったあとに督促を受け続けながら行う必要があります。

借金の返済を行うと、借金の残額がその度に変動するので、正確な把握するが困難になります。また、毎日仕事をしながら、督促に、面倒な書類作成と収集…とかなり大変な状況が待っています。

しかし、弁護士に依頼をすると、返済を止めることができ、貸金業者の本人に対する督促が原則禁止となります(貸金業法21条9号)。
このように、弁護士に依頼することで、落ち着いて自己破産手続に取り組むことが可能になります。

債務整理は司法書士もやっているけど弁護士に依頼する必要がある?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 司法書士が自己破産の申立てを行うのは本人申立と同じ処理になる
  • 司法書士は自己破産における期日に立ち会えない

自己破産などの債務整理は司法書士もやっていると思うのですが、どちらに依頼したほうがいいというのはありますか?

自己破産については、司法書士が行うと裁判所からは本人申立と扱われて不利になるなど、司法書士は期日に立ち会えないので一人で期日に行っていただく必要が生じますので、弁護士に依頼されるほうが良いかと思います。


債務整理手続については弁護士のほかにも司法書士も行っています。
しかし、自己破産手続については、下記の理由から弁護士に依頼をすべきです。

司法書士が申立てをすると本人申立になる

司法書士は裁判所に提出する書面の作成代行を有償で請け負うことができるので、自己破産手続を請け負っています。
申立て代理をするわけではないので、司法書士に依頼しての自己破産の申立ては、本人が直接申立てをするのと同様の取り扱いを受けます。

そのため、自己破産手続における同時廃止の利用をすることができず少額管財になり、管財人に支払う引継ぎ予納金(20万円以上)を支払う必要が生じます。
同時廃止での自己破産を目指すのであれば、弁護士に依頼をするのが適切です。

司法書士は期日に立ち会うことができない

自己破産をすると、免責審尋・債権者集会・管財人面接などの期日が設定され、申立てをする人は出席する必要があります。

弁護士はこれらの期日に一緒に同席することができますが、司法書士は出席をすることができません。
期日では自己破産に至った理由や、申立書類中の不明点、今後の生活をどうするか、反省の様子を確認するといったもので、一人でも答えられなくはないものです。

しかし、万が一間違えた回答をしたことによって、手続がさらに混乱するようなことがあると、最悪のケースでは自己破産ができなくなるということも考えられなくはありません。
専門家に依頼をするのであれば、弁護士に依頼をして期日にも立ち会ってもらい、万全を期すべきでしょう。

まとめ

自己破産手続の目的は、生活の再建を図るために、債権者の犠牲の下、裁判所から債務の支払責任を免除してもらうことにありますので、裁判所や債権者を納得させるだけの書類や資料が必要となります。
本人が申立てをできないわけではありませんが、手間がかかるだけではなく、避けられたはずの費用が必要になるなど、誤った対応により免責を得られないこともあります。
一方、弁護士に依頼することで、手間を省けるだけでなく、必要な知識を理解した上で手続に臨める上、さらに、免責を得られる可能性も高くなります。
自己破産を検討している方は、以上のことを踏まえて、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。