民事執行法改正の重要なポイントについて詳しく解説いたします!
ざっくりポイント
  • 民事執行法改正によって財産開示の手続違反に刑事罰が科されることになった
  • 刑事事件になることを防ぐには財産開示に適切に対応する

目次

【Cross Talk 】裁判所に出頭しなかったら書類送検される?

先日、裁判所の呼び出しを無視した人が書類送検されたというニュースを見ました。お金を払う、払わないというのは民事の問題で、刑事事件にはならないと思っていました。

それは2020年に民事執行法が改正されたことによる影響ですね。この改正によって、財産開示手続について不出頭などの手続違反をした者に対し、刑事罰が科されることになったのです。

そうなんですか!私も借金があるので気を付けます。

裁判所の呼び出しを無視したら刑事事件になる?

裁判所に出頭しなかったら書類送検された、というニュースをご覧になったことはありませんか?
ご覧になったことがある方は、「なぜ裁判所に行かないだけで刑事事件になるのか?」と驚かれたかもしれません。
これには、2020年に改正された民事執行法が大きく関係しています。
そこで今回は、裁判所の呼び出しを無視したことで書類送検を受けた事例を紹介したうえで、民事執行法改正のポイントや刑事事件にならないようにするための対処法等について、詳しく解説いたします。

裁判所の出頭命令に応じなかった男性が書類送検

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 財産開示は債権者が債務者の申立て財産に関する情報を取得する手続
  • 2020年4月1日施行の改正民事執行法で財産開示の手続違反に対する罰則が定められた

どうして裁判所に行かなかっただけで書類送検されるのですか?

ニュースでご覧になった件については、民事執行法の改正によって、財産開示の手続違反に刑罰が科されることになったからです。財産開示というのは、債権者が債務者の財産に関する情報を取得するための手続です。

2020年10月20日に報じられた書類送検のニュースとは

2020年10月20日、神奈川県警松田署は、財産開示手続の期日への呼び出しを受けたにもかかわらず、正当な理由がなく出頭しなかったとして、男性介護士を書類送検したというニュースが報じられました。
2020年4月1日に民事執行法が改正された後、初めての検挙とのことです。

財産開示手続とは

財産開示手続とは、債権者が債務者の財産に関する情報を取得するための裁判所の手続で、民事執行法に定められています。

債権者が債務者を相手方として金銭の支払いを求める訴訟を提起し、勝訴した(請求を認容する判決が確定した)としても、債務者が素直に支払いに応じるとは限りません。

そのような場合、債権者は債務者の財産を差押えるなどの強制執行の手続をとる必要がありますが、実際に強制執行を行うためには、対象となる債務者の財産を特定しなければなりません。
ところが、債権者は、必ずしも債務者の財産や勤務先等についての正確な情報を持っているとは限りません(従来の情報を把握していたとしても、執行時点では、その情報が変動している可能性もあります)。
その場合、確定判決等を得たと言っても、絵に描いた餅になってしまいます。

そこで、平成15年の民事執行法改正で、債権者が債務者の財産に関する情報を取得するための財産開示の手続が創設されたのです。

2020年4月1日施行の改正民事執行法ではどのような改正がされたのか

平成15年に創設された財産開示手続では、債務者が正当な理由なく出頭しないなど、手続違反がある場合でも、30万円以下の過料(刑罰ではないので、前科にもなりません)という制裁があるのみでした。
そのため、裁判所から呼び出しを受けても出頭しない債務者も多く、手続の実効性が不十分であり、債務者の逃げ得になっているとの批判がありました。

そこで、2020年4月1日施行の改正民事執行法により、財産開示の手続違反について、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処するとの刑事罰の規定が創設されました。

「2020年10月20日に報じられた書類送検のニュースとは」で紹介したニュースは、この改正民事執行法の規定に基づき、裁判所から呼び出しを受けたにもかかわらず、財産開示手続の期日に正当な理由なく出頭しなかった者が、書類送検された、というものです。

刑事事件にならないためには

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 財産開示の申立てがなされたとしても、しっかりと対応すれば、刑事事件にはならない。

私も裁判を起こされ、書類送検されるようなことにならないか不安です。刑事事件にならないようにするにはどうすればいいですか?

財産開示の申立てがなされたとしても、直ちに刑事事件になるわけではありません。

財産開示の申立てがなされたとしても、その手続にしっかりと対応していれば、刑事事件になることはありません。
改正民事執行法213条1項5号、6号では、裁判所から財産開示期日に呼び出しを受けたにもかかわらず正当な理由なく出頭しない場合や、出頭したとしても宣誓を拒んだ場合、出頭して宣誓したにもかかわらず、陳述を拒んだり虚偽の陳述をしたりした場合に、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑事罰が科されることとなっています。
ですから、財産開示の申立てがなされたとしても、財産開示期日に出頭し、宣誓をしたうえで、自身の財産状況について正直に陳述を行えば、刑事罰が科されることはありません。

まとめ

こちらのページでは、民事執行法改正についての重要なポイントを解説いたしました。
2020年の民事執行法の改正によって、債務者の逃げ得となる事態は大きく減少すると思われます。
財産開示手続についての呼出状が届いた場合には、刑事事件になることがないよう、期日に出頭し、宣誓の上正直に陳述をする等、適切な対応をとってください。