自己破産をすると就職や転職に影響する可能性もある
ざっくりポイント
  • ほとんどのケースでは就職や転職に影響しない
  • 一定のケースで就職・転職に影響することも
  • 自己破産手続中は就けない仕事があるが、手続が終われば再度就くことができる

目次

【Cross Talk】自己破産をすると就職・転職ができない?

前の会社が倒産して借金をしていた私は返済ができなくなっているのですが、自己破産をすると就職できなくなりませんか?

基本的には就職・転職にあたって自己破産をしたかどうかは問われませんし、就職後に分かってしまった場合でも解雇されることはありません。

自己破産をしたことを会社に知られることはまずないので基本的には就職・転職に影響はしない。

自己破産をすると信用情報に事故情報が登録されるので、生活に影響が出るという解説がされ、これをもって就職・転職に影響してしまうというイメージを持っている方がいます。
業種によっては影響することもあるのですが、基本的には影響はありません。その理由や例外的に影響するケース、自己破産において気を付けるべき職業などについて知っておきましょう。

自己破産とは

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産手続の概要

まず自己破産という手続の概要を確認しておきたいです。

自己破産の概要と就職・転職と関連しそうなところについて確認しましょう。

まず、自己破産手続の概要と、就職・転職と関連しそうな手続利用の影響について確認をしましょう。

自己破産の概要について

自己破産手続とは、裁判所に申し立てをして借金を免責してもらう手続のことをいいます。
借金返済に困った場合に法的な手段を使って返済を楽にする手続のことを債務整理といいますが、その方法として任意整理・個人再生といった手続と並んで利用されるのが自己破産です。
任意整理・個人再生は返済をする必要があるものですが、自己破産は原則として借金を免責してもらえるという特徴がある手続のことです。

自己破産をすると信用情報に事故情報として記載される

自己破産とは、債務の支払ができなくなった債務者が裁判所に申立てをして、債務者の一定の財産を処分して債権者に分配したうえで、残った債務を免除する手続のことです。
 
債務整理には、自己破産のほかに任意整理、個人再生といった方法もありますが、これらの方法は債権者に一定の金額を分割返済をしていくものです。
これに対して自己破産は、残った債務を免除する手続なので、債務者の経済的更生を図るという意味では非常に大きなメリットがあるといえます。

関連記事:自己破産で失うものは何か?失わないものは何か?しっかり確認して不安を解消

自己破産した事実は公開される?

官報に公開される

官報とは、政府が発行する機関紙で、法令の公布や公務員の人事等、国が一般国民に知らせるべき情報を広告するものです。
自己破産を申し立てて裁判所が破産手続開始決定や免責決定をすると、それらの決定をしたことが破産者の氏名・住所とともに官報に掲載されることになっています。
官報は、一定期間はインターネットで誰でも無料で閲覧することができるので、自己破産をしたことを知られるおそれがないとはいいきれません。

「信用情報機関」「破産者名簿」には記録されるものの、一般公開はされない

銀行、消費者金融、カード会社等が債権者に含まれる場合、債務者の氏名、住所、債務の返済状況等についての情報が、これらの債権者が加盟する信用情報機関に記録されます。
自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が記録されます。銀行、消費者金融、カード会社等が新たな融資等の申込みを受けた場合、加盟する信用情報機関で申込者の情報を収集するため、自己破産をすると新たに融資等を受けることができなくなるのです。
  
また、自己破産をすると破産者名簿(本籍地の市町村が裁判所からの通知に基づいて作成する名簿)に掲載される場合があります。
自己破産をした方の全てが破産者名簿に記載されるわけではなく、自己破産を申立てたものの免責許可決定を得られなかった場合(免責不許可決定を受けた場合)に、破産者名簿に記載されることになっています。記載されるのは破産者名簿だけで、戸籍や住民票に記載されることはありません。
 
なお、信用情報機関に登録された情報も破産者名簿も一般に公開されないため、自己破産をしたことが信用情報機関や市町村を通じて無関係な第三者に知られることはありません。

自己破産は原則として就職や転職には影響しない

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 会社に自己破産を申告する必要はない
  • 会社も面接に来た方が自己破産をしたかどうかは調べようがない
  • 会社には自己破産者であることがわからない

自己破産をした方が就職・転職の面接を受ける際に、面接官や会社の人事に自己破産をしたことが分かることは無いのですか?

基本的にはそのようなことはないので就職・転職には影響しません。

自己破産をしたことが就職や転職に影響するのでしょうか。

会社が自己破産をした旨を調べる方法はほとんどないといえる

まず、会社は就職・転職をする方が破産手続を利用したことを知り得るのでしょうか。
自己破産をしたことを知ることができる可能性があるとすると、前述のように信用情報を見ることができるか、官報を常に見ているということが必要です。
信用情報は加盟している金融機関しか見ることができませんし、会社として官報を見てデータベース化するようなことはまずありません。
そのため、会社が自己破産をした旨の情報を手に入れる可能性は低いです。

自己破産したことを就職の際の履歴書に書く必要はない

履歴書の記載事項として、前科があるような場合には基本的に賞罰として記載しますが、自己破産をしたことを記載する法律や慣習は基本的にありません。

面接の際にも自己破産したかどうかを聞かれることはほとんどない

採用面接の際に様々な事項についての質問がされますが、会社で就職するにあたっての質問が中心となり、プライベートな事項である自己破産について聞かれることはありません。
以上から、就職をするにあたって現状ほとんど影響がないといえます。

自己破産が例外的に就職・転職に影響する場合

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産をすると警備員、保険募集人等の一定の職業に就くことができなくなる
  • 復権すればこれらの職業に就くことができるようになる

自己破産をしたことが就職や転職に影響する可能性は全くないのですか?

警備員や保険募集人、弁護士等の一定の士業は、例外的に自己破産をするとその職業に就くことができなくなります。ただし、永久に就くことができないわけではなく、復権を得ることでそれらの職業に就くことができるようになります。

自己破産は原則として就職や転職には影響しませんが、例外的に一定の職業に就くことができなくなることがあります。
職業制限の代表的な例としては、警備員、保険募集人、弁護士・司法書士・税理士などの士業が挙げられます。これらの職業は、他人のお金(財産)に関わる業務を行うため、警備業法等の各種の法律で職業制限が規定されているのです。

もっとも、一度自己破産をすると永久にこれらの職業に就くことができなくなるわけではありません。
ほとんどの場合、復権を得ることでこれらの職業に就くことができるようになります。
復権とは、自己破産による職業、資格の制限がなくなることで、当然復権と申立てによる復権の二つがあります。

当然復権は、破産法が定める事由に該当する場合に特段の手続を必要とせず当然に復権が認められるものです。破産法が定める事由は、次の4つです。

・免責許可決定が確定したとき
・破産債権者の同意による破産手続廃止の決定が確定したとき
・再生計画認可の決定が確定したとき
・破産者が、破産手続開始の決定後、詐欺破産罪について有罪の確定判決を受けることなく10年を経過したとき

また、申立てによる復権は、破産者が弁済等により債務の全部について責任を免れたときに、破産者の申立てにより破産裁判所が復権の決定をするというものです。

関連記事:自己破産は就職・転職に影響する?一定期間制限される職業もある!

就職決定後に自己破産が会社にばれても内定取り消し、解雇は考えにくい

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 例外的に自己破産をしていることを確認する会社以外では就職後に自己破産が会社にばれたとしても解雇などの処分はできない

採用の時点では自己破産を利用したことがわからなくても、働き始めてから分かってしまうケースはありませんか?その場合には内定が取り消されたり解雇されたりしませんか?

ごくごく稀にわかってしまうケースがありますが、それによって解雇がされることは考えにくいといえます。

もし採用後に自己破産をしたことがわかってしまったら解雇などの処分をされてしまうのでしょうか。
まず、そもそも採用後に自己破産をしたことが分かってしまうことがあるのでしょうか。採用後も基本的には自己破産の事実が露見することはほぼないのですが、たとえば会社で福利厚生としてカード会社の優待措置が受けられることになったとして、カードの作成をさせることがあります。

この場合に、信用情報に事故情報が記載されていることから、カードを作成することができず、これが原因で分かってしまうことがあります。このような場合でも、あくまで自己破産をしたかどうかはプライベートなことにすぎず、会社の業務に影響がないのであれば、解雇・内定取り消しといった事態には発展しません。
ただし、採用した後に資格への登録をしようとして、自己破産が原因で登録できなかったような場合には、経歴詐称ということにもなるので、解雇の可能性はあります。

まとめ

このページでは、自己破産手続と就職・転職についてお伝えしてきました。
自己破産手続を利用すると一定の範囲で生活に影響は及びますが、就職・転職が全面的にできなくなるということありません。
ただ、資格を使って勤務する業種・金融機関・公務員などでは影響することもありますので、注意が必要です。生活設計なども併せて弁護士に相談をしてみてください。