自動車がないと生活できない!自己破産をした場合の自動車利用生活の仕方について
ざっくりポイント
  • 自己破産手続きで車が不可欠な人にどのような影響があるか
  • 自己破産手続き後も車を使い続けるための方法

目次

【Cross Talk】借金の返済が厳しい…自己破産すると車はどうなる?

借金の返済が苦しく自己破産を考えています。私の住む地域は交通の便も悪く、自宅には年老いた両親も居て、車がないと生活が不便です。自己破産をすると車にも乗れなくなるのでしょうか。

車に乗ること自体は問題ないのですが、手続き上今まで通りにはいかない場合もでてきます。自己破産により、できなくなること、引き続きできることを確認しましょう。

車に乗ること自体は問題ないけれども、自己破産によってできなくなることもある!

借金返済が難しくなり自己破産をする場合に、車に乗る生活を維持することはできるのでしょうか。自己破産の影響として、制限される部分はありますが、車に乗る生活を続けることは可能です。
どのような影響が生じるのかを知り、対策について確認しましょう。

自己破産で車が不可欠な人に及ぼす影響

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産手続きとの関係で生じる影響

自己破産手続きによっておこる、車に乗る生活への影響を教えてください。

いくつかありますので、順番にみてみましょう。

自己破産手続きをすると、車を持っている人にどのような影響が生じるのかをみてみましょう。

自己破産手続きで資産である車が売却される可能性

自己破産手続きは資産をお金に換えて債権者に配当をする手続きです。
車は資産として自己破産手続きの中で配当のために売却される可能性があります

ただ車といっても、高級車から廃車寸前の車まであります。資産となる一つの目安として、減価償却の観点から6年(軽自動車の場合は4年)で価値がなくなるとされているため、所有している自動車が6年(または4年)を超えている場合には、そのまま手元に残せる可能性もあります。
ただ人気の車種で、6年(または4年)を超えていても、状態が良ければそれなりの値段がつくものに関しては、資産に変えられる可能性が高いでしょう。

自動車ローン債権者が車を引きあげる可能性

自動車ローンを組んで車を購入している場合、自動車ローンの貸付を行っている債権者との間で所有権留保の特約を締結している場合があります。その場合、自動車ローン完済まで車の所有権が債権者にあります。

そのため、返済を滞納したら債権者が所有権に基づいて車を引き上げる可能性があります。

自動車ローンが組めなくなること

債権者により車が引き上げられてしまう場合や、車を所有し続けられるが廃車寸前で新しく買わなければならない場合に問題になるのが、自動車ローンが組めないことです。
自己破産に限らず債務整理をすると、信用情報に事故情報が登録され、いわゆるブラックリストという状態になります。ブラックリストに登録されると、借り入れができなくなり、ローンなども組めなくなってしまうため、自動車ローンの申請をしても却下されてしまいます。

対処法は後述しますが、たまに「ブラックOK」といった文言を打ち出しているお店は、ヤミ金融や特殊詐欺の可能性が高いので絶対に利用しないようにしましょう。

ETCカードが使えなくなること

ブラックリストになると、クレジットカード類の利用も制限されます。
ETCカードも例外ではなく、現在使用しているカードの期限が切れた後、更新することができなくなります。新しいETCカードを作ろうと思っても、後述するETCパーソナルカードなどでなければ利用することができません。

車検のローンが使えなくなること

車は車検を受けなければなりません。
普通自動車ですと、排気量などにもよりますが4~8万円程度かかるものなので、車検ローンを利用する方も多いと思います。自動車ローンやETCカードと同様の理由で、車検ローンも利用できなくなります。

免許は剥奪されない

なお、自己破産によって自動車免許を剥奪されることはありません。
一部の職業(宅建業や警備員)においては、自己破産をすると職業制限がかかってしまう場合があるのですが、車の免許に自己破産(任意整理・個人再生でも)による制限の規定はありません。

配偶者や家族名義の車はどうなるか?

なお、自己破産をしたからといって、配偶者や家族名義の車には全く影響はしません。
配偶者や家族名義の資産は、自己破産手続きにおいて没収されたり・引き上げられることはありませんし、家族の自動車ローン・ETCカードなどに影響することもありません。
ただし、配偶者の自動車ローンなどの連帯保証人になることはできませんので、今まで連帯保証人になっていたような場合には、別途保証人を立てる必要があります。

車が不可欠な人がする対策

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 車を利用するためにする対策

それでは、車が不可欠な人が車を維持するにはどうすれば良いのか、対策を教えてください。

順を追ってみてみましょう。

車に乗ること自体は問題ないが、自己破産することによって受ける影響が多いため、その影響を受けず車に乗る生活を維持する方法を考えましょう。

任意整理が利用可能かどうかを検討する

「債務整理=自己破産」というイメージがありますが、債務整理には他にも任意整理・個人再生という手続きがあります。
自己破産や個人再生の場合、返済を止める借り入れの対象として自動車ローンも含まれるため、上述したように車を引き上げられる可能性があります。
ただ、自動車ローン以外の借り入れを任意整理することによって返済が可能な場合、自動車ローンへの影響はなく従来通り支払いを続けることができます。

身内・友人などの援助を得られないか

自己破産・個人再生をする場合には、自動車ローン債権者を手続きに加えざるを得ません。
また車を引き上げられた後に再度購入する際も、ブラックリストに登録されているため自動車ローンの利用ができません。そのため、一旦身内・友人など援助をしてもらえる人がいないかを検討しましょう。

ただ、その際に援助の方法を借り入れにすると、貸主にも破産手続きに参加してもらう必要がありますし、破産予定であることを隠して借りた場合には免責不許可事由に該当して手続きの進行で不利益を受けることとなり得ますので、事情を伝えたうえであくまで一方的な援助をお願いすることになります。

自動車ローンを代わりに返済してもらったり、自動車が高すぎるような場合には代わりに安い車を購入してもらったりすることが考えられます。手続きと密接に関連するので、この方法をとる場合には、必ず弁護士に相談しながら進めるようにしましょう。

自己破産後はお金を貯めるか生活福祉資金貸付を利用する

自己破産後しばらくの間はブラックリストに登録されているため、自動車ローンや車検ローンの借り入れはできません。
ただ、一括で購入すること自体は禁止されないので「あたらしい自動車を購入する」「車検を受ける」ことを見越して、自己破産手続き中に家計を見直し手続き後は手元にお金を貯めることを習慣づけましょう。

ただ、生活に自動車が不可欠であるものの、どうしても手持ちのお金だけでは自動車を購入できないという場合も発生します。そのような場合には、自己破産・免責後であれば公的な貸付である福祉資金貸付を利用できる可能性があります。福祉資金貸付については、お住まいの地域の市区町村の社会福祉協議会へ相談してみてください。

デポジット式のETCパーソナルカードを利用する

最後にETCカードが使えない点について、デポジット制の「ETCパーソナルカード」であれば、ブラックリストに登録されていても使用可能です。

自己破産をする際にやってはいけない事

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産をする際にやってはいけないこと
  • やると免責不許可事由となる

自己破産手続きをする場合に車についてやってはいけないことはありますか?

ローンを一括返済したり、車の名義を変更する場合などに注意をしましょう。


自己破産をする際に自動車に関して、やってはいけないこととして、次のようなものが挙げられます。

ローンの一括返済

自動車を使えなくなるのは困るから…と自動車ローンだけ一括返済をして自己破産をするのはやめましょう。
自己破産手続きをするにあたって、一部の債権者のみに返済することを「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼んでいて、禁止されています。

具体的には、もし偏波弁済をすると、破産法所定の免責不許可事由にあたるとともに、破産手続きの中で管財人が返済した金額を取り戻すことになります。
免責不許可事由にあたると、法律上は債務の免責がされなくなり、実務上は裁量免責を得て免責される必要があります。その場合、管財事件で進める必要があり、管財人が反省していないと判断すれば管財事件になっても免責されないことがあります。
自動車がないと暮らせないからといって、自動車ローンを一括返済するのはやめましょう。

不当な車の処分

今持っている車を処分して、安い中古車に乗り換える場合もあります
この車の処分にあたって、自動車のローンが残っているような場合、売却行為が不当な車の処分となる場合があります。
同じく免責不許可事由に当たると判断され、免責されないことがあります。
自己破産手続き中の資産の処分行為は弁護士と相談しながら慎重に行う必要があります。

車の名義変更

自己破産で車を失ってしまう前に家族の名義に変えてしまうという場合があります。
車の名義変更は形式的には無償で贈与をすることになり、財産を隠匿・毀滅する行為として、免責不許可事由となります。
車の他には保険の名義人を変更する場合にも問題となるもので、自己破産手続きの中で行ってはいけない行為になります。

他の債務整理で車を残せる?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 任意整理で車を残せる可能性が高い
  • 個人再生では自動車ローンも手続きに対象になるがローンの終わっている車は残せる

自己破産手続き以外の手続きでは車は残せるのですか?

任意整理・個人再生ではどうなるか確認しましょう。

債務整理には自己破産のほかにも任意整理・個人再生という方法があります。
これらの方法をとった場合は車を残せるのでしょうか。

任意整理

任意整理で手続きを進める場合は車を残せる可能性は高いです。
任意整理は、裁判所の手続きをとらず、直接債権者と利息のカットや分割回数を交渉して、将来の返済計画に関する和解を行うことです。
そのため、債権者に返済ができていれば、どのような財産を持っているかは問われないので、自動車を持っていても問題ありません。
また、自動車ローンについては、任意整理をしないで従来どおり支払うことも可能です。
債務の支払いをできている限りは、任意整理で車を失う可能性は低いといえます。

個人再生

個人再生は自己破産と同じく全ての債権者の債務を減額し、例外として住宅ローンのみ特別に扱うことが認められています。
所有権留保があるローンで車を購入している場合には、自己破産と同様に引き上げの可能性があります。
ただ、一定の価格以上の自動車を所有していても、自己破産のように売却されるわけではなく、返済額に影響するものの車は所持しておくことが認められています。
ローンが終わっている・所有権留保がついていない場合には、自動車を持っておくことが可能です。

まとめ

このページでは、車の利用が不可欠な人が自己破産をするとどのような影響を受け、どう解決すべきかについてお伝えしました。車に全く乗れないというわけではないのですが、自己破産をすることで受ける影響もあります。弁護士に早めに相談をして、影響を少なくする方法について検討することが重要であるといえるでしょう。