傾いた会社を立て直す再建型の民事再生と会社更生の違いを知ろう
ざっくりポイント
  • 民亊再生も会社更生も会社を存続させる再建型の法的整理
  • 民亊再生も会社更生も裁判所に申立てをおこなう点で共通する
  • 経営者の交代の要否・担保権の実行の可否などに違いがある

目次

【Cross Talk】実はけっこう差がある?再建型の倒産処理手続である民事再生と会社更生の違い

私は会社の経営者なのですが、借金の支払いがかなり苦しくなっており、事業再生をしようといろいろ調べていました。
民事再生と会社更生という手続がある事を知ったのですが、これらの違いを教えてもらえますか?

経営者の交代の要否・担保権の実行の可否など2つの手続には多くの点で違いがあります。

同じ再建型の倒産処理手続である民事再生と会社更生にはどんな違いが?

銀行への借金や取引先への支払いなど債務の返済に困ったときに利用する倒産処理手続には様々な種類があります。
それらの中で会社を再建するために行う再建型手続の法的整理に民事再生と会社更生という2つの手続があります。
同じカテゴリーにある手続なので類似する点もあるのですが、異なる点も多く、利用にあたっては様々な要素を考慮しながら行うことになります。

民事再生・会社更生の基本を知る

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  • 民事再生・会社更生ともに会社の再建を目的とする再建型倒産処理手続

まず民事再生・会社更生ってどのような手続なのかの概略を教えていただいても良いですか?

再建型倒産処理手続で法的手続という位置づけについて知っておきましょう。

まず、民事再生・会社更生の言葉の意味について知りましょう。
会社が経済的に破綻して債務の支払いをできなくなった状態を一般に「倒産」と呼んでおり、その後の処理をすることを倒産処理と呼んでいます。
イメージとしては法人の債務整理という風に理解をしておけば良いでしょう。
倒産処理の方針として、会社をたたむ場合には破産や特別清算という清算型倒産処理手続を利用し、会社を再建する場合には再建型倒産処理手続を利用します。
再建型倒産処理手続には、当事者間の協議によって行う私的整理と、法律の規定によって裁判所への申立てによって行う法的整理があります。
今回のテーマである民事再生・会社更生はこの再建型の法的整理といえます。
手続の数で言うと民事再生の方が圧倒的に多く、司法統計によるここ3年の申立件数は下記の通りとなっています。

年度 民事再生 会社更生
H28 151 1
H29 140 10
H30 114 4

この差は、会社更生は大規模な会社が利用することが多いため、その分件数も少ないということに原因があります。

民事再生と会社更生の同じところは?

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  • 再建型法的手続であり法的手続であるという点から民事再生・会社更生に共通する点を確認する

では、民事再生と会社更生にはどのような共通点がありますか?

前述した、「倒産処理」「再建型」「法的整理」という事から導かれる共通点を確認しましょう。

それでは、民事再生と会社更生にはどのような共通点があるのかを見てみましょう。
この共通点は前述した「倒産処理」手続の中でも「再建型」であり「法的整理」であるという事から次のような共通点を持っています。

利用できる原因

まず、民事再生・会社更生ともに「倒産処理」の手続なので、倒産状態になって初めて利用できるという共通点があります。
申立てにあたっては民事再生法では21条で、会社更生法では17条で、両者で少し書き方が違うのですが、「破産手続開始の原因となる事実が生ずるおそれがある」「弁済期にある債務を弁済すると事業の継続に著しい支障を来すおそれがある」という場合に申立てができるとされています。
破産手続開始の原因については破産法15条・16条に規定されており、債務者が支払不能にあること、法人に関しては債務超過も破産原因とされています。
支払不能という状態は破産法2条に規定されており、弁済期にある債務をその先もずっと支払っていけない状態を指しています。
民事再生・会社更生ともに再建型の手続なので、破産しなければならない状態よりも前から手続開始を認めています。

債務の一部の免除

次に「再建型」の手続ですので、企業の再建のために必要な債務の一部免除はあるものの、残った債務額についてはきちんと弁済することになります。

裁判所等が関与して再建計画を行う

また、「法的整理」であるので、裁判所等が関与して再建計画を行っていきます。
これは、同じ再建型手続である私的整理が、裁判所の関与なしに当事者が集まって協議をして行う事に対する共通点です。
民事再生は民事再生法、会社更生は会社更生法に基づき、両者とも裁判所への申立てにより裁判所および裁判所から選任される監督委員・更生管財人の進行に従うなどの点が共通します。

民事再生と会社更生の違うところは?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 経営者の交代の要否や担保権実行の可否などの違いに注目する

では、民事再生と会社更生にはどのような違いがありますか?

たくさんあるのですが、主なものとして経営者の交代の要否や担保権実行の可否などがあります。

民事再生と会社更生にはどのような違いがあるのでしょうか。

適用される対象

まず、適用される対象となる法人が、民事再生はどの法人でも利用できるのですが、会社更生では株式会社に限られています。
ですので、株式会社以外の合同会社・合資会社・一般社団法人などは会社更生を利用できないという違いがあります。

現経営者の交代の要否

2つの手続のもっとも特徴的な違いは、取締役などの代表者の交代の要否です。
民事再生では経営者はそのまま経営を続けることができますが、会社更生では原則として代表者などの経営陣が交代しなければなりません。

担保権の実行の可否

貸付を受けたり、信用取引を行うときに、担保を要求されることがあります。
例えば、会社が自社ビルを所有しているような場合、これを担保にお金を借りる、というのがイメージしやすいかと思われます。
民事再生をする場合には、担保権を持っている方は手続開始にかかわらずこれを実行することができ、担保権実行の中止命令や担保権消滅の許可によって例外的に実行を止められることとなります。他方、会社更生の場合には民事再生の場合よりも担保権実行の中止命令の条件が緩やかであり、手続開始後は担保権者も手続に参加するため、担保権の実行がされにくくなります。
上述の自社ビルなどの企業存続において重要な資産が担保に入っているような場合には、民事再生が適さないような場合も出てきます。

株主の権利

民事再生では株主の権利に影響を受けるものではないのですが、会社更生では減資を行って株主の権利を無くしてしまいます。

手続終了までの期間

裁判所における手続終了(認可)までの期間も大きく異なります。
会社更生法は手続が複雑であるため、1年以上の期間が必要になります。
これに対して、民事再生法は6ヶ月くらいの期間で手続が終了します。

民事再生と会社更生の手続きの流れ

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 民事再生の手続きの流れ
  • 会社更生の手続きの流れ

民事再生や会社更生はどのような手続きの流れとなるのでしょうか。

民事再生と会社更生の手続きの流れを確認しましょう。

民事再生と会社更生それぞれの手続きの概要について見てみましょう。

民事再生

民事再生の流れは次の通りです。

申立準備

民事再生は裁判所への申立てによって行います。
申立てには申立書を作成して添付書類などを作成・取り寄せる必要があります。
この申立ては慎重に行なわれるもので、念入りな準備が必要となります。

申立

申立書・添付書類を提出し手続きが開始します。
申立てがされると、裁判所から監督委員が選任されます(民事再生法54条)。
また、ほとんどのケースで弁済禁止の保全処分決定が下されます(民事再生法30条1項)。
また、法律で定められた手続きではないですが、債権者に対する情報提供をするために、債権者向けの説明会をすることが通例となっています。

民事再生手続開始

再生計画を立てる見込みが乏しいなどが原因で、債権者から大きな反対がないような場合には、民事再生手続きが開始します。

再生計画案策定のための活動

再生計画案策定をするためにはまず事業再建に向けた活動を前もっておこないます。
会社の収益性をたかめるための事業の見直しを行ったり、事業再生のためにスポンサーに支援をしてもらったりします。

債権届出

まずは負債額を確定するために、再生債権者の債権届出をします(民事再生法94条)。
届け出られた債権については、債務者はその届出に対して認否をするために、認否書を提出します(民事再生法101条)。

財産の価額の評定

再生手続がはじまると、会社の財産の価額の評定を行います(民事再生法124条)。

再生計画案を提出

以上のようなステップを経て再生計画案を作成すると、これを裁判所に提出します。
裁判所では法律上の障害があるかを確認し、なければ再生債権者の決議に付することになります(民事再生法169条)。

再生債権者による議決・認可

裁判所から決議に付された再生計画案について、再生債権者の議決権の行使が行なわれます。
届け出債権者の頭数の過半数かつ届け出債権者の議決権の額の1/2以上の賛成が得られると、再生計画案は可決されます(民事再生法172条の3第1項)。
再生計画案が可決されると、再生計画案は認可され(民事再生法174条、176条)、再生計画が履行されます。

会社更生

会社更生の流れは次の通りです。

申立準備

民事再生と同様にまずは会社更生のための準備を行います。
会社更生はその規模が大規模なので、メインバンクや主要な取引先などと念入りに調整を行う必要があります。

申立・保全管理人の選任

申立書・添付書類を作成して裁判所に提出して申立を行います。
会社更生は手続きが大規模ですぐに会社更生手続開始決定が出ないので、その間の会社の財産を流失しないように、保全管理人が選任され、会社財産を一時的に保全します(会社更生法30条)。

会社更生手続開始決定

会社更生手続が開始され、更生管財人が選任されます(会社更生法67条)。

会社更生計画案作成のための活動・債権届出・財産評定

会社更生では、更生管財人が主導で、会社更生計画案の作成を行うことになります。
そのために関係人集会を開いたり(会社更生法114条)、スポンサーを探したりする必要があります。
また、民事再生と同じく債権の届出と認否(会社更生法138条以下)・財産評定(会社更生法83条)を行います。

会社更生案の提出・決議・認可

会社更生案が出来上がると裁判所に届出られ、決議に付されて可決されると認可がされるのも民事再生と同様です。

まとめ

このページでは、民事再生と会社更生の手続の違いについてお伝えしてきました。
再建型の2つの手続ですが、様々な違いがあり、どの手続がどの会社に合っているかは、規模・債務の内容・ステークホルダーとの関係などの要因によって変わり、一概に決まるものではありません。
そのため、弁護士に相談をしながら進めることが必須であるといえます。