自己破産で失うものと失わないものを正確に把握しよう
ざっくりポイント
  • 自己破産をすると価値のある財産は失う
  • 自己破産をしても手元に残せるものもある
  • 失うのをおそれて財産隠しは厳禁!

目次

【Cross Talk 】自己破産をすると何もかも取り上げられてしまうの?

借金の返済が難しくなってきたので自己破産を考えているのですが、自己破産をすると何もかも失いそうで踏ん切りがつきません。どうしたらいいですか?

誤解している方が多いですが、自己破産をしたからといって何もかも失うわけではありません。自己破産によってどのようなものを失うのか、どのようなものは失わないかご説明しましょう。

お願いします!

自己破産で失うものと失わないものを確認しよう

「自己破産をすると、借金が帳消しになる代わりに何もかも失う」
それが不安で自己破産に踏み切れないという方が少なくないようです。
しかし、自己破産によって何もかも失うというのは誤解です。

そこで今回は、自己破産によって失うもの、失わないものについて詳しく解説いたします。自己破産をしようか迷っている方はぜひ参考にしてください。

自己破産手続きによって何を失うのか

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産は財産を清算する手続き
  • 経済的な価値がある資産は失うことになる

自己破産をするとどんなものを失うのですか?

自己破産は財産を清算する手続きですので、不動産など経済的な価値のある財産は失うことになります。自動車も基本的には同様ですが、古くなって価値が低くなっているものについては手元に残せる可能性があります。

自己破産手続きの概要

破産手続とは、債務者の財産を清算する手続きをいいます。
具体的に言うと、債務者の財産を換価処分し(お金に換え)、それを債権者に弁済または配当をするのです(もっとも、財産がないことが明らかな場合には、破産手続は開始と同時に終了することになっています)。

債務者が個人(自然人)の場合、清算後に残った債務をどうするかという問題があります。というのも、債務が残ったままだとすると、債務者はいつまでたっても経済的更生を図ることができないからです。
そこで、破産手続とは別に、残った債務の支払いを免除するかどうかを決める免責手続という制度が設けられています。

債務者自身が破産手続の申立てをすることを自己破産と言い、自己破産は最終的に免責手続によって債務の支払いの免除を得ることを目的にするものです。

自宅

賃貸ではなく所有している自宅の土地や建物は、経済的な価値のある財産にあたりますので、破産手続において換価処分の対象になります。
したがって、自己破産をすると、自宅の土地・建物を失うことになります。

自動車

動産(不動産以外のもの)の中でも、自動車は一般的に経済的な価値がありますので、原則として換価処分の対象になります。したがって、自己破産をすると失うのが原則です。

もっとも、古くなって価値が低くなっているものについては、手元に残せる可能性があります。
手元に残せる基準については、裁判所ごとに、たとえば「初年度登録から5年以上経過」「処分見込額が20万円以下」などと定めていますので、詳細は弁護士に確認するといいでしょう。

高価なもの

自動車以外の動産でも、経済的な価値があるものについては換価処分の対象になる場合があります。
たとえば、高級ブランド品のような高価なものなどです。
これについても各裁判所で、「20万円以上の価値があるものは換価処分の対象とする」などと具体的な基準を定めています。

資産と認定される可能性があるもの

それ以外に資産と認定される可能性があるものとしては、有価証券(株式、社債など)が考えられます。

また、保険についても、解約返戻金(保険を解約すれば戻ってくるお金)があるものについては、換価処分の対象となる場合があります。

さらに、退職金を受け取ることができる権利も、一定の基準に従って換価処分の対象となります。

たとえば東京地裁の場合、すでに退職しているがまだ退職金を受け取っていないときは退職金の4分の1を、退職しておらず退職する予定もないときは退職金の8分の1を、換価処分可能な財産と評価しています。

もっとも、退職金の4分の1または8分の1が20万円未満の場合、換価処分されることはないとされています。
つまり、退職の見込みがない場合は、現在の退職金の見込み額が160万円以上のときに換価処分が必要になるということです。
なお、退職金が換価処分の対象となる場合であっても、実際に退職しなければいけないわけではなく、退職金の8分の1に相当する金額を積み立てることで仕事を続けることができます。

信用情報

自己破産をすると、一定期間は信用情報機関に自己情報(いわゆるブラックリスト)として登録されます。
そのため、一定期間は新たな借入等をすることができなくなります。

自己破産手続によって失わないもの

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産しても家族に影響はしない
  • 原則として仕事にも影響ないが一定期間は就けない仕事もある

では自己破産をしても失わないのはどんなものですか?

自己破産は債務者個人の問題ですので、家族の信用情報などには影響しません。また、原則として仕事を続けることができますし、選挙権・公民権が制限されることもありません。

家族の信用情報

信用情報は一人一人の経済的な信用に関する情報をまとめたものです。
自己破産をしたとしても、それは債務者自身の信用にかかわるものであり、家族の信用に影響するわけではありません。そのため、家族の信用情報には影響はなく、家族が新たに借入をしたり、ローンを組んだりすることはできます。

仕事

自己破産をしたとしても、基本的に仕事には影響しません。
ですから、それまでどおりの会社で働き続けることができます。

ただし、弁護士や司法書士などの一定の資格や、警備員・保険外交員などお金の管理にかかわる一定の職業については、自己破産をしたことで資格や職業が制限される場合があります。
もっとも、自己破産をすればこれらの職業に一生就くことができないわけではありません。
免責決定の確定などにより復権したときは、制限がなくなり、これらの職業に就くことができるようになります。

選挙権・公民権

自己破産をすると選挙権がなくなると聞いたことがある方がいらっしゃるかもしれませんが、自己破産をしても選挙権や被選挙権に影響はありません。

失うのをおそれて大変な目にあうことも

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 資産隠しは免責不許可事由、詐欺破産罪に該当する可能性がある
  • 資産隠しはバレる!

自己破産をしても失わないものもあるみたいですが、失うものも多いですよね。破産した後の生活に備えて財産を残しておきたいのですが、何とかなりませんか?

失うことをおそれて資産隠しをすると、大変な事態に発展する可能性があります。故意に財産を隠すと、免責が認められなかったり、詐欺破産罪という犯罪などに該当したりするおそれがあるからです。
資産隠しをしてもまずバレるので、財産については正直に説明するしかありませんね。

資産隠しと認定されると自己破産ができなくなることも

何もかも失うわけではないとはいえ、自己破産で失うものは少なくありません。
そのため、換価処分の対象にならないように財産を隠せばいいのではないかという誘惑にかられる方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、失うことをおそれて資産隠しをすると、大変な事態に発展するおそれがあります。

まず、債権者を害する目的で、破産財団に属しまたは属すべき財産を隠匿することは、免責を許可しない理由(免責不許可事由)の一つとされています。
自己破産の目的は最終的に免責を得ることですから、免責が許可されなければ何のために自己破産をしたのかということになってしまいます。

また、債権者を害する目的で債務者の財産を隠匿した者は、債務者について破産手続開始決定が確定したときは、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処せられ、またはそれらが併科されます(懲役刑と罰金刑の両方を科せられます)。
このように、資産隠しには大きな問題があるのです。

資産隠しはバレるのか

とはいえ、バレなければそれでいいではないかと思われるかもしれません。
しかし、資産隠しはほぼ間違いなくバレると考えてください。

自己破産を申立てると、裁判所の書記官が提出された書類を詳細にチェックいたします。書記官は、財産の流れについて不審な点があれば、質問をしたり追加の資料の提出を求めたりすることができます。
ですから、財産隠しをしようとしても、書記官のチェックによって発覚する確率が高いのです。

さらに、隠した財産以外にも換価処分な財産があると、裁判所が破産管財人を選任することになり、破産管財人が債務者の財産等についてより詳細な調査をすることになっています。
破産管財人には、破産者の財産を調査する強力な権限が与えられており、銀行に破産者名義の口座がないか調査をすることなどができます。また、破産者宛ての郵便物が破産管財人に転送されることになっているので、郵便物がきっかけで隠していた財産が発覚することもあります。
そのため、破産管財人が選任された場合は、資産隠しは一層難しくなります。

このように、資産隠しはバレる確率が高く、バレた場合に被る不利益が非常に大きい(免責が許可されない、詐欺破産罪になる)ので、絶対にしないようにしてください。

まとめ

このように、自己破産をしても失わないものはたくさんありますので、自己破産を過度におそれる必要はありません。失うことをおそれて財産隠しをしてもバレる確率が高く、バレてしまった場合には免責が認められなくなるばかりか、刑事罰を科されるおそれさえありますので、くれぐれもご注意ください。

この記事の監修者

弁護士 鈴木 奏子第二東京弁護士会
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