
- 自己破産をすると価値のある財産は失う
- 自己破産をしても手元に残せるものもある
- 失うのをおそれて財産隠しは厳禁!
【Cross Talk 】自己破産をすると何もかも取り上げられてしまうの?
借金の返済が難しくなってきたので自己破産を考えているのですが、自己破産をすると何もかも失いそうで決意が固まりません。どうしたらいいですか?
誤解している方が多いですが、自己破産をしたからといって何もかも失うわけではありません。自己破産によってどのようなものを失うのか、どのようなものは失わないかご説明しましょう。
お願いします!
「自己破産をすると、借金が帳消しになる代わりに何もかも失う」それが不安で自己破産に踏み切れないという方が少なくないようです。しかし、自己破産によって何もかも失うというのは誤解です。
今回は、自己破産によって失うもの、失わないものについて詳しく解説いたします。自己破産をしようか迷っている方はぜひ参考にしてください。
自己破産手続きによって何を失うのか

- 自己破産は財産を清算する手続き
- 経済的な価値がある資産は失うことになる
自己破産をするとどんなものを失うのですか?
自己破産は財産を清算する手続きですので、不動産など経済的な価値のある財産は失うことになります。自動車も基本的には同様ですが、古くなって価値が低くなっているものについては手元に残せる可能性があります。
自宅
賃貸ではなく所有している自宅の土地や建物は、経済的な価値のある財産にあたりますので、破産手続きにおいて換価処分の対象です。
したがって、自己破産をすると、自宅の土地・建物を失うことになります。
自動車
動産(不動産以外のもの)の中でも、自動車は一般的に経済的な価値があり、原則として換価処分の対象になるため、自己破産をすると失うのが原則です。
もっとも、古くなって価値が低くなっているものについては、手元に残せる可能性があります。
手元に残せる基準については、裁判所ごとに、例えば「初年度登録から5年以上経過」「処分見込額が20万円以下」などと定められています。
高価なもの
自動車以外の動産でも、経済的な価値があるものについては換価処分の対象になる場合があります。
例えば、高級ブランド品やパソコンなどの高価なものです。
これについても各裁判所で、「20万円以上の価値があるものは換価処分の対象とする」などと具体的な基準を定めています。
資産と認定される可能性があるもの
有価証券(株式、社債など)や、保険についても、解約返戻金(保険を解約すれば戻ってくるお金)があるものについては、換価処分の対象となる場合があります。
例えば、東京地裁の場合、既に退職しているがまだ退職金を受け取っていないときは退職金の4分の1を、退職しておらず退職する予定もないときは退職金の8分の1を、換価処分可能な財産と評価しています。
もっとも、退職金の4分の1または8分の1が20万円未満の場合、換価処分されることはないとされています。つまり、退職の見込みがない場合は、現在の退職金の見込み額が160万円以上のときに換価処分が必要になるということです。
なお、退職金が換価処分の対象となる場合であっても、実際に退職しなければいけないわけではなく、退職金の8分の1に相当する金額を積み立てることで仕事を続けることができます。
信用情報
自己破産をすると、一定期間は信用情報機関に自己情報(いわゆるブラックリスト)として登録されるため、一定期間は新たな借入をすることができません。
不動産
自宅の土地・建物以外の不動産も、通常は経済的な価値がある財産にあたりますので、破産手続きにおいて換価処分の対象になります
ただし、農地や山林などの経済的な価値が低く買い手が見付からない不動産については、破産管財人は裁判所の許可を得て破産財団から放棄できます。
したがって、経済的な価値の低い不動産については自己破産をしても失わずにすむ可能性があります。
退職金
退職金が既に支払われた場合、通常の現金や預貯金と同様に扱われ、自由財産の範囲を超える額は原則として破産手続きにおける処分の対象です。
対して、退職金が支払われていない場合、退職金の4分の3は差押禁止とされており、差押禁止財産は自己破産をしても回収の対象になりません。
したがって、退職済みであるがまだ退職金が支払われていない場合や、近い時期に定年などで退職が予定されており退職金が支払われる見込みである場合には、退職金の4分の1相当額が処分の対象になります。
退職までの期間が長い場合、勤務先の倒産などにより退職金が支払われる不確実性が高まるため、退職金の4分の1相当額を処分の対象にすることは破産者にとって酷な結果になります。そのため、東京地裁など多くの裁判所では、差押が許される4分の1のさらに半分の8分の1を処分の対象とする(破産者に退職金の8分の1相当額を破産財団に組み入れさせる)という運用が行われています。
自己破産手続きによって失わないもの

- 自己破産しても家族に影響はしない
- 原則として仕事にも影響ないが一定期間は就けない仕事もある
では自己破産をしても失わないのはどんなものですか?
自己破産は債務者個人の問題ですので、家族の信用情報などには影響しません。また、原則として仕事を続けることができますし、選挙権・公民権が制限されることもありません。
新得財産
破産者が破産手続き開始後に新たに得た財産を「新得財産」といいます。
破産手続きにおいて換価処分の対象になるのは、破産者が破産手続き開始時に有していた財産です。したがって、新得財産は破産手続きにおける換価処分の対象にはならず、破産者が自由に処分できます。
99万円以下の現金
破算手続きにおいては破産者の財産は原則として換価処分の対象ですが、一定の財産については破産後も破産者が所有し続けることが認められています。そのような財産を「自由財産」といいます。
破産者やその家族の生活の保障、経済的な再建のために99万円以下の現金は自由財産とされているので、自己破産をしても99万円以下の現金は手元に残すことができます。
家族の信用情報
信用情報は一人一人の経済的な信用に関する情報をまとめたものです。
自己破産をしたとしても、それは債務者自身の信用にかかわるものであり、家族の信用に影響するわけではありません。そのため、家族の信用情報には影響はなく、家族が新たに借入をしたり、ローンを組んだりすることはできます。
仕事
自己破産をしたとしても、基本的に仕事には影響しないため、会社で働き続けられます。
一方で、弁護士や司法書士などの一定の資格や、警備員・保険外交員などお金の管理にかかわる一定の職業については、自己破産をしたことで資格や職業が制限される場合があります。
しかし、自己破産をすればこれらの職業に一生就くことができないわけではありません。免責決定の確定などにより復権したときは、制限がなくなり、これらの職業に就くことができるようになります。
選挙権・公民権
自己破産をすると選挙権がなくなると聞いたことがある方がいらっしゃるかもしれませんが、自己破産をしても選挙権や被選挙権に影響はありません。
自己破産で失うものを隠す(財産隠し)のはNG

- 自己破産をしても免責不許可事由があると免責が認められない可能性がある
- 財産隠しは免責不許可事由に該当する
どうしても手元に残したい財産がある場合、財産を隠して自己破産をすることができますか?
自己破産で失うはずの財産を隠すと、免責不許可事由に該当して免責が認められない可能性があります。ですから、財産隠しは絶対にしてはいけません。
自己破産は、破産者の財産を換価処分して債権者に公平に支払をする破産手続きと、破産手続きを経ても残った債務について支払いの責任を免除させる免責手続きで構成されています。
個人が自己破産をする目的は、免責手続きで免責許可を得ることによって経済的な再建を図ることにあります。
免責は破産者にとっては非常にありがたい制度ですが、何の落ち度もない債権者が大きな不利益を被ることになるので、免責は必ず認められるわけではありません。破産法が定める一定の事由に該当する場合には、免責が認められない可能性があります。そのような事由を「免責不許可事由」といい、「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿」することは、免責不許可事由の一つとされています。
財産隠しをしてそのことが発覚した場合、免責が認められない可能性があるので、財産隠しは絶対にしてはいけません。
自己破産以外の方法について

- 任意整理は対象とする債権者を柔軟に選べるので財産を残しやすい
- 民事再生は財産を残すことができるが弁済額が高額になる可能性がある
自己破産以外の方法で債務を整理して財産を残すことができますか?
任意整理は対象とする債権者を選ぶことができるので、残したい財産と関係のない債務だけを対象とするなど、柔軟な対応が可能ですから、自己破産と比べて財産を残しやすいといえます。また、裁判所の手続きである民事再生は、自己破産と違って財産を処分する手続きではないので、財産を残せる可能性がありますが、所有する財産の価値によっては弁済額が高額になるおそれがあります。
任意整理
任意整理は対象とする債権者と個別に交渉し、将来利息や月々の返済額などの返済条件を見直すものです。自己破産と違って一部の債権者だけを任意整理の対象にでき、任意整理の結果は他の債権者に影響しません。
そのため、住宅ローンのほかに消費者金融やカード会社に対する債務があり、住宅は残したい場合、消費者金融やカード会社の債務だけを任意整理の対象とし、住宅ローンや約定どおりの返済をするといった柔軟な対応が可能になります。
民事再生
民事再生は、債務を減額して分割で返済していく裁判所の手続きです。
任意整理と違って一部の債権者だけを対象として選択することはできませんが、自己破産と違って民事再生手続きにおいて財産が換価処分されるわけではありません。
そのため、抵当権や所有権留保などの担保がついていない財産については、民事再生をしても手元に残すことができます。
ただし、民事再生には「精算価値保障原則」と呼ばれる制限があります。これは、民事再生における弁済額は、自己破産をした場合に債権者に支払われる額を下回ってはいけない、というものであり、財産の価値によっては、弁済額が多額になる可能性があります。
また、抵当権のついている不動産は競売にかけられ、所有権留保されている自動車は債権者によって引き上げられるのが原則ですが、住宅資金特別条項付個人再生を利用すれば、住宅ローン付きの自宅を手放すことなく住宅ローン以外の債務を減額することができます。
まとめ
自己破産をすることで失うもの、自己破産をしても失わないものについて解説しました。
借金の返済が苦しいが財産を失うことから自己破産を躊躇している方は、自己破産に詳しい弁護士に相談して、どのような財産を残すことができるか確認するといいでしょう。









