自己破産すると、どのような影響があるのか
ざっくりポイント
  • 自己破産をした場合の影響について
  • 自己破産のよくある間違い

目次

【Cross Talk 】自己破産が生活にもたらす影響は?

自己破産をすると、どのような影響があるのかわからないので不安です。

確かに、自己破産をすると財産の制限などが生じるので、事前に正しい知識を身に付けておくことは重要ですね。

自己破産をしたときに起こりうる影響について、詳しく教えてください。

自己破産すると、どのような影響があるのか

自己破産を検討しているものの、実際に自己破産をすると具体的にどのような影響があるのか、不安に感じている方もいるでしょう。そこで、本記事では、自己破産による具体的な影響や注意点についてわかりやすく解説します。

よくある誤解についても触れながら、自己破産以外の解決方法についてもご紹介します。

自己破産するとどうなる?起こりうる影響について

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産をするとどうなるのか
  • 自己破産の影響とは

自己破産をすると、実際にどのような影響があるのでしょうか。

自己破産には様々な影響があるので、ひとつずつ解説します。

家族に発覚して様々な影響が及ぶ可能性がある

自己破産をすると裁判所からの通知が自宅に届くため、その通知によって自己破産したことが家族に発覚する可能性があります。もっとも、弁護士に依頼すれば裁判所からの通知は弁護士宛てに届くため、通知によって家族に知られる心配はありません。

しかし、自己破産をすることで持ち家や車が処分されて、携帯・スマホ、クレジットカードが解約になる場合があるため、そのことから家族に知られることがあります。また、借金の保証人が家族になっている場合、自己破産後は保証人である家族に請求がいくため、家族に自己破産したことが知られます。

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会社に自己破産したことが発覚する可能性がある

自己破産を申立てる際、弁護士や裁判所から会社に直接連絡が行くことはないため、基本的に会社に知られることはありません。ただし、いくつかの例外もあります。

まず、会社からの借り入れがある場合、裁判所から会社宛てに通知が送られるため、自己破産したことは会社に伝わります。また、借金の返済が長期間滞ると給料を差し押さえられことがあり、この場合も裁判所からの通知によって会社に自己破産の事実が発覚することもあるので注意しておきましょう。

その他にも、弁護士・会計士・警備員・保険外交員といった一部の仕事は自己破産によって業務ができなくなるため、これらの仕事に就いている場合にも自己破産したことが会社に知られます。

借金を支払う必要がなくなる

自己破産すると債務が免責され、全ての借金がゼロになります。そのため、自己破産の申立てをして免責許可決定が下りれば、借金を支払う必要がなくなります。

ただし、自己破産には免責不許可事由があり、これらに該当する行為を行うと免責許可が下りない可能性があります。例えば、多額の借金を浪費やギャンブルに使った場合、自己破産できなくなる場合があります。

そのため、自己破産で借金をゼロにするうえでは、借金の使い道も重要なポイントとなります。

持ち家に住み続けるのは難しくなる

自己破産すると原則として持ち家は処分され、売却代金が返済に充てられます。

住宅ローンが残っている場合、金融機関による担保権が設定されているため、競売にかけられたうえで換価されます。一方、住宅ローンを完済している場合、不動産は売却されて債権者の配当に充てられます。

なお、持ち家を失いたくないからといって、自己破産中に名義を他人へ変更したりすると財産隠しとみなされ、免責が受けられなくなる可能性があります。

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車が引きあげられる可能性がある

ローンが残っている車は、法律上ローン会社やディーラーに所有権がある場合がほとんどであり、自己破産によって支払いが止まると、車は所有者のもとへ引きあげられます。

また、ローンを支払い終わっていたとしても、時価20万円以上の車は資産とみなされ、債権者への弁済に充てられます。一方、時価20万円以下の車は破産者に最低限必要な「自由財産」とみなされるため、手元に残しておけます。

なお、家族名義の車など、本人名義以外の車は引き上げの対象にはなりません。

生命保険・学資保険は解約しなければならない可能性がある

生命保険・学資保険の取り扱いは、破産手続開始決定時の解約返戻金の金額によって決まります。

【1】解約返戻金が20万円以下:解約不要
【2】解約返戻金が20万円を超えるが、他の財産と合わせて99万円以下:解約不要の可能性あり
【3】上記①②のどちらにも該当しない:解約が必要

なお、学資保険は子ども将来のための積立金という性質がありますが、破産者名義であれば破産者の資産とみなされるため、解約の対象です。

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奨学金を返済する必要がなくなる

奨学金も借金の一種であるため、自己破産による免責の対象となり、自己破産をしたら奨学金を返済する必要はなくなります。 

奨学金は数百万円という高額な借り入れとなることが多いうえに、学生から社会人になったばかりの時期に返済が始まります。そのため、返済計画が立てられなくなり、やむを得ず自己破産を選択することも少なくありません。返済に行き詰まった場合は、自己破産による債務整理も一つの選択肢として検討する価値があるでしょう。
もっとも、貸与型の奨学金は、両親などの家族が連帯保証人になっている場合も多いでしょう。その場合は、たとえ本人が自己破産したとしても、家族が連帯保証人として負う債務は消えないので注意が必要です。

自分名義のクレジットカードは原則解約される

自己破産すると信用情報機関に事故情報が記録され、原則クレジットカードは解約されます。信用情報機関とは、クレジットカードなどの審査のために、利用者の支払能力や信用能力に関する情報を保持している機関です。

クレジットカード会社は信用情報機関を通して審査を行いますが、事故情報が確認されると支払い能力に問題があると判断され、クレジットカードの利用が停止されます。

事故情報の記録は5~10年残るため、その間はクレジットカードを利用することができなくなります。もっとも、その期間を過ぎれば事故情報の記録はなくなるので、自己破産後はずっとクレジットカードが使えなくなるわけではありません。

新規の借り入れはできなくなる

クレジットカードと同じく、カード会社や金融機関は融資の際に信用調査を行いますが、自己破産によって事故情報がある場合には融資を行いません。そのため、自己破産をするとキャッシングやカードローンなどの借り入れもできなくなります。

なお、自己破産後でも借り入れの審査が通る業者はいわゆる「闇金」である可能性が高いので、そういった業者から借り入れをするのは避けましょう。闇金は法外な金利で貸し付けを行い、厳しい取り立てを行うので、借り入れができてもあとから苦しい返済を強いられます。

自己破産のよくある間違い

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産にはよくある間違いがある
  • 間違った情報が出回る理由

自己破産をすると選挙権がなくなるとか、戸籍に記載されるといったことを聞いたのですが。

そのような誤った情報も流れているので、正しい知識を身に付けましょう。自己破産のよくある間違いについて説明します。

選挙権がなくなる?

自己破産をしても、選挙権はなくなりません。選挙権を失う条件は公職選挙法に定められており、例えば禁固刑以上に処せられたり、公職選挙法に違反したりした場合などが挙げられますが(公職選挙法11条)、自己破産に関する規定はありません。

また、被選挙権についても公職選挙法に定めがありますが、自己破産によって被選挙権を失うという規定はありません。

年金がもらえなくなる?

自己破産をしても年金を受給することはできます。借金の返済が滞ると債権者から給料の差押を受けることがありますが、年金は法律によって差し押えが禁止されているため(国民年金法24条)、自己破産しても差押の対象にはなりません。

ただし、これは公的年金の場合であって、私的年金の場合には自己破産によって解約しなければならない場合があります。具体的には、他の資産と合わせて解約返戻金が20万円を超える場合、個人年金は解約の対象です。

戸籍に自己破産した記録が残る?

自己破産をしても、戸籍や住民票など公的な資料に記載されることはありません。ただし、公示という観点では、官報という国が発行する日刊新聞のようなものがあり、自己破産をしたことは官報に掲載されます。そのため、官報を通じて自己破産が他人に知られる可能性はあります。

もっとも、官報は一般の方が見ることはほとんどないため、そういった意味では官報によって自己破産を他人に知られることは実際ほとんどありません。

自己破産のデメリットを避ける方法

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産以外にも債務整理の方法がある
  • 自分にあった方法で債務整理することが大事

自己破産にはデメリットもあるようなので、他の方法で借金問題を解決できないでしょうか。

債務整理には、自己破産以外にも個人再生と任意整理という方法があります。

では、個人再生と任意整理について、自己破産とどう違うのかを教えてください。

個人再生

個人再生は、自己破産と同じく裁判所を通じた手続きで借金を減額する制度です。ただし、自己破産と異なり借金は完全になくなるわけではなく、8~9割程度減額されたうえで残りを3~5年かけて返済します。

手続きには半年から1年程度かかりますが、持ち家や車などの財産を手放さずに債務整理することも可能です。自己破産では持ち家や車は処分されてしまうため、これらの財産を残したい方にとっては個人再生が適した選択肢となります。

ただし、手続き後も返済を続けていく必要があるため、ある程度の収入が見込める方向けの債務整理手段であるといえます。

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任意整理

任意整理は、借金の減額に加えて利息や遅延損害金などをカットしたうえで、残額を3~5年かけて返済する手続きです。自己破産や個人再生とは違い、裁判所を通さない手続きなので、債権者との交渉によって和解するというのが任意整理の特徴です。そのため、手続きにかかる期間は3〜6ヶ月程度が一般的であり、債務整理の中でも比較的短い期間でできます。

また、任意整理の場合、どの債権を対象とするかは債務者側が選べます。そのため、例えば保証人がついている借金を外せば保証人に迷惑をかけずに済み、住宅ローンを外せば持ち家を手放さずに債務整理が行えます。

ただし、任意整理は個人再生と比較しても借金の減額幅が少ないため、個人再生以上に支払い能力が求められます。そのため、利息や遅延損害金のカット程度では返済し切れない状況であれば、個人再生や自己破産を検討するべきでしょう。

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まとめ

自己破産は借金問題を解決する一つの方法ですが、生活全般に大きな影響を及ぼす法的手続きです。具体的には、借金の支払い義務がなくなる一方で、持ち家や高額な財産は処分の対象となり、クレジットカードの利用や新規の借入も制限されます。また、手続きの過程で家族や会社に知られる可能性もあるため、慎重な判断が必要です。
借金問題の解決方法としては、自己破産以外にも個人再生や任意整理という選択肢があります。これらは財産を維持したまま債務を整理できる可能性がある一方で、一定期間の返済が必要となります。
借金問題は個人の状況によって最適な解決方法が異なります。弁護士に相談すれば、自身の状況に合った最適な解決方法を見つけられるので、迷った際は弁護士への相談がおすすめ致します。