
- 法人と個人は別人格だが、代表者個人が責任を負う場合もある
- 連帯保証人になっている場合や善管注意義務違反などで個人責任が発生する
- 法人破産と同時に代表者個人の自己破産も検討する必要がある場合がある
【Cross Talk 】法人破産をすると代表者も責任を負う?
会社が破産することになりそうなのですが、代表者である私にも責任が及ぶのでしょうか。
会社と個人は法律上別の存在ですが、実際には代表者個人が責任を負う場合も多くあります。
代表者が責任を負うのはどのような場合か、詳しく教えてください。
法律上、会社と個人は別々の存在であり、原則として会社の債務に個人が責任を負うことはありません。しかし実際には、代表者が連帯保証人になっていることが多く、法人破産と同時に個人の破産も検討せざるを得ない状況もあります。
本記事では、法人破産における代表者個人の責任や、法人破産と同時に自己破産する場合の手続き方法、費用などについて詳しく解説します。会社経営の危機に直面している方に対して、適切な意思決定のための情報をお届けします。
原則、代表者個人に法的な責任はない

- 法律上、会社と個人は別の存在で、会社の債務に個人は責任を負わない
- 実際には代表者が連帯保証人になっていることが多い
会社と個人は法律上別々ということは、代表者は責任を負わないのでしょうか。
確かに法律上は別人格ですが、現実には代表者にも責任が及ぶことが多くあります。
では、代表者の責任について具体的に教えてください。
会社と個人は法律上別々の存在として扱われ、会社は独自の権利と義務を持つ主体であり、会社の借金は基本的に会社自身のものとされます。そのため、会社が破産したとしても、法律上は代表者個人がその責任を負うわけではありません。
しかし、実社会においては代表者が会社の連帯保証人になっていることが多くあります。これは、銀行などから融資を受ける際に、代表者が連帯保証人になることを求められるためです。このように経営者個人が会社の連帯保証人となっている場合、債権者は直接保証人である代表者個人に返済を求めることができます。
経営者個人の責任が生じるのは会社の連帯保証人になっている場合であり、現実的には多くの代表者がこれに該当します。
法人破産における代表者の責任

- 連帯保証人になっている場合に代表者に責任が残る
- 義務違反や財産散逸行為があれば損害賠償責任を負う可能性がある
法人破産で代表者が責任を負うのは、どのような場合ですか?
連帯保証人になっている場合のほか、経営者としての義務違反があった場合などに責任が発生します。
では、具体的にはどのような責任があるのか教えてください。
代表者が連帯保証人の場合
代表者が会社の連帯保証人になっている場合、会社が破産しても個人の保証債務は消滅しません。この場合、債権者は代表者個人に対して直接支払い請求ができ、会社の破産後も代表者個人が責任を負うことになります。
しかし、多くの場合は会社破産時の負債は莫大であるため、個人での完済は困難です。そのため、代表者は債権者の同意を得て分割で返済したり、自己破産や個人再生など、代表者個人の債務整理を検討したりする必要があります。
法人に対する損害賠償責任がある場合
代表者をはじめとする取締役は、法人に対して忠実義務・善管注意義務を負っています(会社法355条、会社法330条、民法644条)。忠実義務・善管注意義務とは、経営者として求められる適切な注意を払って業務を遂行する法的責任のことです。そして、これらの義務に違反して会社に損害を与えた場合、代表者個人が会社に対して損害賠償責任を負います(会社法423条)。
義務違反の例としては、法規制に反する決定を行った場合や、社内の違法行為を黙認した場合など、合理性を欠く経営判断によって会社に損失をもたらした場合などです。こうした義務違反があると、会社の債務とは別に代表者自身が責任追及を受けます。
第三者に対する損害賠償責任事由がある場合
代表者は会社の取引先や顧客などの第三者に対しても、一定の条件下で直接的な損害賠償責任を負います(会社法429条)。具体的には、代表者が悪意または重大な過失により職務執行を怠り、それによって第三者に損害を与えた場合などです。
例えば、粉飾決算に関与した場合や取引先に虚偽の説明をした場合などは、第三者に対するが責任を問われる可能性があります。法人破産を行った場合でもこうした第三者への損害賠償責任は消滅せず、代表者個人として責任を負うことになります。
財産散逸防止義務違反を犯している場合
財産散逸防止義務違反とは、破産財団に組み入れるべき財産を散逸させないよう管理・保全する義務に違反することです。
例えば、会社が支払停止状態になった後、代表取締役が特定の親しい取引先や親族・友人のみに対して借入金を返済し、他の債権者には返済しないという「偏頗弁済」を行った場合、公平な債権者への返済が妨げられたとして財産散逸行為と判断されるおそれがあります。
また、会社所有の不動産や設備を市場価値より大幅に安い金額で売却する「不当廉売」も、)財産散逸防止義務違反とみなされる可能性があります。
このような財産散逸行為をした代表者は、破産管財人から損害賠償請求を受ける可能性があります。
法人から借入等をしている場合
会社経営において、代表者をはじめとする役員が会社からお金を借りている場合があります。これは「役員貸付」と呼ばれ、この場合は代表者個人が会社に貸金を返還する義務が発生します。
役員貸付は、生活費や教育費など代表者個人の収入不足を補う場合や、住宅ローンの自己資金とする場合などに行われます。他にも、別の事業として新たに法人を立ち上げるための資金に使われたり、個人事業主が法人成りする際に元の負債を役員貸付金として計上していたりする場合もあります。
このような役員貸付金は会社破産時に代表者個人への債権として扱われ、破産管財人から返還を求められることになります。
刑事責任を負う場合
代表者が破産手続きにおいて、刑事罰の対象となるような行為を行った場合刑事責任を負います。具体的には、債権者を害する目的で以下のような行為を行うと、詐欺破産罪として罪に問われます(破産法265条)。
また、債務者が特定の債権者に対する債務について、他の債権者を害する目的で担保の供与又は債務の消滅に関する行為をした場合にも、刑事責任を問われる可能性があります(破産法266条)。
これらの行為は最大で10年以下の懲役となる重い刑事罰が科されるため、法に触れることがないよう注意しなければなりません。
法人破産で代表者が自己破産する手続きの流れ

- 法人破産と代表者個人の破産は同時に行うのが一般的
- 個人の破産は法人より比較的短期間で終了する
代表者が破産する場合、どのような手続きが必要でしょうか?
法人破産と同時進行で行うことが多く、弁護士への相談から免責許可決定までの流れがあります。
では、具体的な手続きの流れを教えてください。
代表者が破産する場合、法人破産と同時に破産申立てをするのが一般的です。この場合、以下のような流れで手続きを行います。
まず、弁護士へ相談すると、代表者個人の債務内容や資産状況をヒアリングしたうえで方針が決定されます。法人と同時に破産する場合、法人と個人両方の申立て書類が必要となり、個人の破産には預金通帳や源泉徴収票のほか債務や資産に関する資料が必要です。
破産申立て後、裁判所が選任した破産管財人が、財産があればそれを売却して債権者への配当を行い、破産者の財産を調査、破産に至る経緯や破産者のお金の使い方に問題がないか等といった点などを調査します。管財人のこのような換価配当、調査調査手続きを経た上で、最終的に裁判所が行う「免責許可決定」によって債務が免除されます。代表者個人の破産手続きは法人よりも短期間であり、申立て後3~6か月程度で終了するのが一般的です。
法人破産で代表者も破産するのに必要な費用

- 予納金と弁護士費用の両方が必要になる
- 負債額によって費用が変動する
法人と代表者両方が破産する場合、どれくらいの費用がかかりますか?
主に予納金と弁護士費用が必要であり、合計数百万円程度かかるのが一般的です。
では費用について、内訳などを詳しく教えてください。
法人破産と同時に代表者個人の破産申立ても行う場合、主に以下の費用がかかります。
予納金とは裁判所に破産を申立てる際に納める費用であり、破産管財人の報酬や管財人による調査の費用などに充てられます。負債額によって金額が変わり、負債額が増えるほど予納金も高額になります。負債額が大きい場合は数百万円に達することもあるため、破産をするにはある程度の資産を残しておくことが重要です。
少額管財であれば予納金は比較的少額に抑えられ、手続き期間も短縮できますが、この制度は全ての裁判所で実施されているわけではなく、また利用には弁護士への依頼が必要とされます。
弁護士費用も同じく債権者数や債務総額によって変動しますが、法人破産と代表者の破産を同時に行う場合には一般的に100~200万円程度の費用がかかります。なお、予納金を弁護士費用に含めるかどうかで金額が変わる場合もあるため、複数の事務所を比較検討する際は内訳まで丁寧に確認し、正しく比較検討しましょう。
まとめ
法人と個人は法律上別の存在ですが、実際には代表者が連帯保証人になっていることが多く、その場合には会社の破産後も個人の債務責任が残ります。また、善管注意義務違反や財産散逸行為があれば損害賠償責任を問われる可能性があり、悪質な場合は刑事責任にも発展します。
法人破産と同時に代表者も自己破産する場合、弁護士に相談したうえで予納金と弁護士費用を準備しましょう。適切な手続きにより免責許可決定を受けることで、経済的な再出発が可能になります。
破産手続きは法的に複雑で専門知識が必要なので、経営危機に直面したら早めに弁護士へ相談し、法人と個人両方の視点から最適な解決策を見出すことが重要です。










