自己破産について、特徴、メリット、デメリットを紹介します。
ざっくりポイント
  • 自己破産すると借金を返す義務がなくなる
  • デメリットとしては財産が処分されるローンが組めなくなる、更には生命保険の解約もされてしまう可能性が。
  • 弁護士に相談して自分に合った債務整理の方法を選びましょう。

目次

【Cross Talk】借金を帳消しにできる!?自己破産!

借金が多すぎてとても払いきれません!なんとか帳消しにできないですか!?

それなら、自己破産という手続がありますよ!免責を受ければ、借金を返さなくて済みます!

え!?借金を返さなくてよくなるのですか!?その自己破産について教えてください!

借金を返さなくてもいい!自己破産の特徴をおさえたい!

借金(債務)整理手続は様々な種類・方法があります。その中でも、借金を帳消しにできる自己破産とはなんなのか、メリット・デメリットはなんなのか、解説したいと思います。

自己破産の特徴

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産のイメージは全てキレイにする!借金と財産を清算するのが自己破産!

自己破産は借金を帳消しにできるんですよね!?その特徴を教えてください!

わかりました。まず、自己破産は全てを「清算する」イメージです。借金を帳消しにできますが、同時に車や家などの財産も処分されて、債権者に配当されてしまいます。もっとも、無一文になるわけではなく、自己破産後も生活はしていけるので安心してください。

借金を返さなくてよくなる!

破産手続は申立→開始→財産清算→免責という手順で進行します。借金を返さなくてよくなる効果があるのは、免責を得た場合です。
免責が出ると借金を返さなくてよくなります。法律上の不許可事由がない限り、免責を得られます。不許可事由とは、免責を許さない事由のことで、代表的なものは、ギャンブルなどの浪費行為があった場合です。ただし、不許可事由に当たるとしても、裁判所が裁量的に免責を許す場合がほとんどで、免責されない可能性は低いといえます。

でも財産はなくなる!?

不動産や大きな額の預貯金などの、ある程度の規模の財産がなければ財産は処分されませんが、免責を得るまでに、財産を清算する手続を踏むことが一般的な破産の手続です。そうなれば、自分の持っている財産を処分しなければなりません。そのため、自分の持っている家や車等の財産は、手放さざるを得ない可能性が高いです。

債務整理の専門家たちはこんな時に自己破産を薦める

債務整理の相談を受ける弁護士や司法書士は、まず法律相談を行います。
相談時に総債務額・月々支払い可能な額・どの債務整理手続が希望かを整理した上で、適切な手続を依頼者に伝えます。

任意整理が希望の場合でも、任意整理で想定される毎月の支払額を準備できない場合には、任意整理をすることができません。

このような場合には任意整理を諦めて法的手続である自己破産・個人再生を選びます。
個人再生は大幅に借金を減額してくれるものですが、支払義務が残るものです。
そのため、住宅ローンで家を購入していて家を手放したくない・自己破産をするとつけない職業がある場合以外は、基本的には自己破産を薦めることになります。

自己破産のメリットとデメリットとは!?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産のイメージは全てキレイにする!借金と財産を清算するのが自己破産!

自己破産のイメージはつかめました!他にもメリット・デメリットあれば教えてください!

自己破産には免責という大きな効果がある一方、デメリットもたくさんあります。大きなものとしては財産が処分される点でしょう。他にも、ローンが組めなくなるなど、生命保険契約を解約させられる可能性もあります。詳しく見ていきましょう。

メリットとは

・借金を返還しなくてよい

一番のメリットとしては、借金がすべて帳消しになり、0からまたやり直すことができます。これは他の借金(債務)整理手続にはないメリットです。

・借金がいくらでも自己破産ができる

また、借金の額に制限はなく、100万円であっても、1000万円であっても、免責を得ることができます。

・借金の取立がとまる

弁護士に依頼した場合、弁護士が受任通知を発送します。受任通知が到着した以降も借金の取立を継続することは、法律上禁止されています(貸金業法21条1項9号、債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)18条8項)。そのため、弁護士に依頼し、受任通知を発送した段階で直接の取立は止まります。もっとも、このメリットは自己破産特有のものではないことに注意をしてください。

デメリットとは!?

・財産が処分される

デメリットとして一番大きなものが、財産が処分されてしまうことです。車や家がある場合には、基本的には売却されて、借金の支払いに充てられてしまいます。一方、自己破産する人も、破産した後に生活をしなければならないので、生活に困らないよう、一定の現金(99万円まで、破産法34条3項、民事執行法131条3号、民事執行法施行令1条)、生活必需品(破産法34条3項2号、民事執行法131条1号、2号)等については、処分されずに残すことができます。

・ローン等が組めなくなる

次のデメリットとしては、破産した後、自分の信用情報に事故情報(いわゆるブラックリスト)として載ってしまうことです。一定期間の間、ローンが組めなくなったり、クレジットカードを作ることができなくなったりします。ただし、どの債務整理の方法をとったとしても、信用情報に事故情報として載ることはほぼ確実なので、大きなデメリットとまではいえないでしょう。

・保証人への請求は阻止できない

借金に保証人が立てられている場合、自分の借金はなくなりますが、保証人に請求が行ってしまいます。免責の効果は個人ごとに生じるため、保証人の債務には影響がありません。そのため、保証人への請求を阻止できないことになります。

・免責によっても免除されない債務がある

免責手続によっても免除されない借金も中にはあります。具体的な例としては、所得税などの税金や、他人の生命、身体を侵害したことによる損害賠償債務などです。

・すべての債権者に通知が届く

破産手続が開始された場合、債権者が破産手続に参加する機会を確保するため、債権者に対して破産手続開始の決定があったことを知らせる通知をします(破産法32条3項)。免責の効果は、すべての借金を対象に効果が生じます。そのため、例えば、勤務先から借金をしている場合、債権者として勤務先へ通知は届きますし、特定の債権者を除外して通知を発するということもできません。

勤務先等の知られたくない相手から借金をしており、どうしてもその債権者に知られたくないという人は、自己破産は向いていないといえるでしょう。特定の債権者のみと交渉できる他の手続を利用したほうが良いということになります。

・生命保険契約を解約させられる危険性がある

また、生命保険等の保険契約を締結しており、解約することによってお金が返ってくる見込みがある場合(例えば、生命保険における解約返戻金)には、その保険契約を解約させられる可能性があります。

最近は、生命保険契約の解約という重大性から、返戻金の見込み額を計算して、その相当額を生活費として残された現金等の中から代わりに支払う、という運用も見られます。その運用を受けられるかは、破産の対象にならない財産がある場合に限られるので、詳しくは弁護士に相談してみましょう。

・給料、退職金の一部がもらえなくなる

破産手続開始の時点で、未払いの給料や退職金がある場合には、一定の範囲で破産手続による処分の対象になる可能性があります。詳しくは、給料・退職金のコラムを参照してください。「自己破産をしたら持ち家、車はどうなるの?給料はもらえなくなるの?

・家族に知られる可能性がある

破産手続を開始するにあたって、家族に発覚する可能性があります。詳しくは他のコラムを参照してください。「実は内緒の借金がある!自己破産をしたら会社、家族にバレる!?

その他(職業制限・居住制限・信書の制限・官報に記載)

一定の職業制限があります。例えば、弁護士が破産した場合、資格がはく奪されてしまいます。主な職業制限を受ける職業としては、生命保険募集人、警備員、質屋等があります。

これらの職業に従事している方は、仕事ができなくなる可能性があります。もっとも、職業制限は破産者である期間、つまり破産手続中に限られます。そのため、免責を受けて、「復権」(破産手続による職業制限を解く制度)すれば、仕事を再開することも可能です。「自己破産すると仕事ができなくなる!?職業制限はあるの?

また、破産手続中は、居住地が制限されることになり(破産法37条1項)、個人宛の封筒も破産管財人に開けられる可能性があります(破産法81条1項)。

そのほか、官報という独立行政法人が発行している機関紙に破産した事実が載ることになるが、一般人であれば、通常、官報は見ないので、そこから自分が破産した事実が広まる可能性は低いといえます。

自己破産手続が向いている人・向いてない人

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産には借金の帳消しという他の整理手続にはないメリット!
  • 一方デメリットも大きい。でも生活ができなくなることはないように配慮されている。
  • 自分に合った借金整理を選びましょう。弁護士に相談してみよう!

債務整理手続がある中で自己破産手続が向いている人はどのような人なのでしょうか。

自己破産手続が向いている人・向いていない人はいくつかパターンがあるので確認しましょう。

自己破産手続を利用するのが向いている人・向いていない人にはどのような人がいるのでしょうか。

自己破産手続が向いている人

まず、自己破産手続を利用するのが向いている人は以下のような人です。それぞれ説明します。

1.収入がない・少ない
2.任意整理では支払いきれない
3.任意整理で頑張れば支払えなくもないが早く経済的に立ち直りたい

一つ目は収入が無いような場合には、そもそも任意整理・個人再生の毎月の支払ができません。
そのため、自己破産をするのが基本となります。
債務額がそれほど多くなくても、収入が少ないような場合には、長期間返済のための無理な生活を送るのがふさわしくないともいえますので、自己破産手続のほうが向いているといえるでしょう。
一時的に失職していて、体調面でも問題なく、就職をしたらしっかり支払っていけるような場合には、弁護士にその旨を伝えて、就職が決まり実際に毎月の生活が動きはじめてから、もう一度どの債務整理手続の利用をしていくのが適切か弁護士と話し合うことも可能な場合があります。

二つ目は
任意整理で支払いきれないような場合には、任意整理を利用することができません。
任意整理をする場合、基本は元金を36回分割(3年)例外的には60回(5年)に伸ばすことができるのが限度です。

つまり、300万円の借金がある場合には、毎月約5万円~約8万4千円の支払ができなければなりません。
毎月これくらいの金額を数年間支払い続けられるだけの余裕が必要です。
3年の間には、賃貸に住んでいる人の中には家賃の更新がある人もいるかもしれませんし、冠婚葬祭で急な出費に見舞われることもあります。

1回支払いが遅れただけであれば、遅れながらも払って頑張って遅れを取り戻せば良いのですが、2回以上支払いが滞ると、債権者は一括請求をすることができるようになってしまい、返済が頓挫します。
任意整理で支払いきれないような場合には、弁護士は基本的に自己破産を薦めます。

三つ目は計算の上では任意整理で頑張れば支払えるという場合でも、3年~5年も借金返済を続けるのは苦しいという方もいらっしゃいます。
早く経済的に立ち直りたいのであれば、借金と返済能力のバランス次第では自己破産手続を利用できなくもないので、弁護士と相談をしてみましょう。

自己破産手続が向いていない人

一方次のような方は自己破産手続には不向きです。

1.住宅ローンの借り入れをしていて住宅を失いたくない人
2.自己破産すると資格を失う仕事についている人
3.連帯保証人に絶対に迷惑をかけられない人

一つ目は、住宅ローンの借り入れをしていて住宅を失いたくない人。
自己破産手続においては、住宅ローンを含むすべての債権者を対象に手続を行います。
住宅ローン債権者は自宅に抵当権という担保を持っている状態で、自己破産手続に入ると抵当権を行使して住宅を競売にかけられます。
これによって自宅から退去する必要が生じます。

個人再生をすることで住宅ローンだけは手続き対象から除くことができ、従来どおり支払うことによって競売を免れることができます。
ですので、住宅ローンで借り入れをしていて住宅を失いたくない場合には、自己破産は向いておらず、個人再生を利用することを検討します。

二つ目は、自己破産すると資格を失う仕事についている人。

自己破産手続の申立てをすると、破産法に規定されている破産者という状態になります。
この状態になると、一定に資格や登録を必要とする仕事についている人が、資格を失うことになります(欠格事由)。
該当する例として多いのが、警備員・宅建士・保険募集人などで、いずれもお金を預かる可能性があるものです。
医師・看護師・薬剤師といった生命・身体への影響を考えて資格制にしているものについてはそのまま仕事を続けることができます。
このような仕事についている人の場合には、同じく個人再生の利用を考えます。

三つ目は、連帯保証人に絶対に迷惑をかけられない人。

奨学金や事業資金・中小の貸金業者からの借り入れに代表されるような、連帯保証人がついている債務について、自己破産をするとどうしても連帯保証人に請求がいくことになります。
家族には絶対に迷惑かけられないような場合には、連帯保証人がいる債権を除いて任意整理を行うことを検討します。
ただ、支払えないような場合には、連帯保証人に事情を話して自己破産をするより他になく、この場合、迷惑をかけたからといって家族にだけ、自己破産手続中に返済する(偏頗弁済)ことがないようにしましょう。

まとめ

自己破産特有のメリットやデメリットも多くあります。どの手続が自分に合っているのか、法律の専門家である弁護士と相談してみましょう!!