自己破産できない確率は1~2%
ざっくりポイント
  • 自己破産が不許可になる確率は1~2%程度
  • 免責不許可事由があると自己破産が認められない
  • 自己破産が認められなくても他の救済手段がある

目次

【Cross Talk 】自己破産できない確率は1~2%

自己破産を考えているのですが、申請しても認められないことはありますか?

きちんと手続きを行えば認められることがほとんどですが、中には認められない場合もあります。

どのような場合に自己破産が認められないのか、また認められなかった場合の対策について詳しく知りたいです。

自己破産できない確率は1~2%

自己破産は借金問題を解決する有効な手段ですが、「申請しても認められないのではないか」という不安を抱える方もいるでしょう。

本記事では、自己破産が認められない理由や条件、万が一不許可になった場合の対処法について解説します。適切な知識を持つことで自己破産に関する不安を解消し、最適な債務整理方法が選択できるようになりましょう。

自己破産できない確率は1~2%程度

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産の申立て不許可率は1~2%程度
  • 適切な手続きを踏めば、ほとんどの場合で認められる

自己破産を検討しているのですが、申請しても認められないことがあるのでしょうか?

自己破産が認められないのは非常に稀で、適切な手続きを踏めば大抵は認められます。

それでは、実際にどのくらいの確率で自己破産が不許可になるのか教えてください。

日本弁護士連合会の2020年の調査では、自己破産の申立て純粋な不許可率は0%とされています。(参照「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」)。本調査によると、自己破産申立てが許可される確率は96.85%とされており、この他に死亡による手続きの終了や本人による申立ての取り下げといった場合が、残りの3.15%を占めています。

そのため、これらを考慮して考えると、不許可率は1~2%程度になると考えられますが、いずれにしても不許可になる可能性は極めて低いことがわかります。

もっとも、中には自己破産を諦めて他の債務整理方法を選択した場合など、この調査に反映されないことがあることにも留意が必要であり、実際には「自己破産をしたかったけど断念した」という方は一定数存在すると考えるべきでしょう。

自己破産できなくなる可能性がある行為

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 免責不許可事由に該当すると、借金が帳消しにならない可能性がある
  • 破産手続き前後の行動には特に注意が必要

自己破産をしたくてもできないことには、どんな理由があるのでしょうか。

自己破産は原則として認められるのですが、法律に定められた免責不許可事由に該当すると認められない可能性があります。

では、免責不許可事由の内容について詳しく教えてください。

財産価値を減少させる行為

「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと」(破産法第252条1項1号)

財産価値を減少させる行為とは、返済原資となる財産を意図的に減らす行為です。具体的には、以下のような行為がこれにあたります。

  • 高価な品物を市場価値より著しく安い金額で売却する
  • 財産を隠し持つ
  • 現金を隠す
  • わざと資産を壊す

これらの行為により、債権者に分配すべき財産の価値を減少させると、免責が認められない可能性があります。なお、債務者に自由な処分が認められている自由財産に関しては、処分しても免責不許可事由にはあたりません。

不利益な条件による債務の負担

「破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと」(破産法第252条1項2号)

不利益な条件による債務の負担とは、不利な条件で借金をしたり、信用取引で購入した商品を安く売却したりする行為のことで、具体的には以下のような行為がこれにあたります。

  • ヤミ金でお金を借りる
  • クレジットカードで購入した商品を購入価格より大幅に安く売却する
  • 返済できないとわかっている状態で新たな借入をする

これらは金融機関からの借り入れが困難になった場合に行われがちな行為ですが、自己破産を検討しているのであれば避けなければなりません。

特定の債権者に利益を与える行為

「特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為(以下略)」(破産法第252条1項3号)

特定の債権者に利益を与える行為とは、具体的に以下のような行為が該当します。

  • 親族や知人などを優先して返済する
  • 特定の債権者に対して新たに担保を提供する

破産手続きでは債権者平等の原則が重視されており、全ての債権者は公平に扱われるべきとされています。そのため、特定の債権者だけを優先することはこの原則に反し、免責が認められなくなる可能性があります。

浪費やギャンブルによる財産の費消

「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」(破産法第252条1項4号)

収入に見合わない過度な支出や賭博行為によって財産を大きく減らしたり、多額の債務を抱えたりする行為が免責不許可事由にあたります。具体的には、以下のような行為がこれに該当します。

  • 収入から考え、明らかに高額な趣味への支出
  • パチンコやカジノなどのギャンブルに大金を使う
  • FXや株式投機など、ハイリスクな投資で大きな損失を出す

なお、「著しく」という基準は個人の収入や借金総額などによって異なり、個別の事情に応じて判断されます。

詐術を用いた信用取引

「破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと」(破産法第252条1項5号)

詐術を用いた信用取引とは、返済能力がないことを知りながら虚偽の情報を提供し、取引相手を欺いて財産を取得する行為です。具体的には以下のような行為が該当します。

  • 実際の収入よりも高い金額を申告してローンやクレジットカードを契約する
  • 既存の借金を隠して新たな融資を受ける
  • 氏名や住所などの個人情報を偽って契約する

このような行為は免責不許可事由となるだけでなく、悪質な場合は詐欺罪に問われ刑事罰を受ける可能性もあります。

帳簿の破棄・隠匿・偽造

「業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと」(破産法第252条1項6号)

これは、自分の財産状況や事業の実態を隠すために、関連する書類を処分したり改ざんしたりする行為のことです。具体的には、以下のような行為が該当します。

  • 確定申告書や収支報告書などの財務書類を破棄する
  • 債務の金額を少なく見せるために帳簿を書き換える
  • 架空の帳簿や虚偽の財務資料を作成する

このような行為は破産手続きの公正性を損なうだけでなく、文書偽造罪などの刑事罰に問われる可能性もあります。

虚偽の債権者名義の提出

「虚偽の債権者名簿(中略)を提出したこと」(破産法第252条1項7号)

これは、自己破産申立て時に提出する債権者名簿に、事実と異なる情報を記載する行為のことです。

債権者名簿は公平な配当を行うための重要な書類であり、これに虚偽の内容を記載することは債権者平等の原則を損なう行為となります。そのため、このような行為は免責不許可事由に該当し、自己破産が認められなくなる可能性があります。

裁判所への説明拒否または虚偽の説明

「破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと」(破産法第252条1項8号)

自己破産手続き中に裁判所や破産管財人からの質問・調査に対し、回答を拒んだり事実と異なる説明をしたりする行為がこれにあたります。

裁判所の業務を妨げる行為は、免責不許可事由の中でも特に免責が認められなくなるリスクが高いものとされています。そのため、自己破産手続きにおいて、裁判所や破産管財人による調査に誠実に協力しなければなりません。

管財業務の妨害

「不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと」(破産法第252条1項9号)

管財業務の妨害とは、破産管財人など破産手続きを進める職務を担う方の業務を不当に妨げる行為あり、具体的には以下のような行為が該当します。

  • 破産管財人への脅迫や威嚇
  • 管財業務に必要な情報や書類の提供を拒む

破産手続きを適正に進めるためには管財人の業務が不可欠なので、管財人からの指示や要請にも誠実に対応する必要があります。

過去7年以内に免責を受けている

「(前略)七年以内に免責許可の申立てがあったこと」(破産法第252条1項10号)

これは、以前に自己破産による免責許可の決定を受けた日から7年以内に、再度自己破産の申立てをした場合のことです。自己破産に限らず、給与所得者等再生における再生計画の遂行なども、当該再生計画認可の決定の日から7年以内の場合は、この免責不許可事由に該当します。

この規定は、自己破産制度の濫用を防ぐためのものであり、短期間に繰り返し免責を受けることは自己破産の制度趣旨に反するため認められません。

破産法上の義務違反

「(前略)この法律に定める義務に違反したこと」(破産法第252条1項11号)

破産法上の義務違反とは、具体的には以下のような行為が該当します。

  • 説明義務(破産法第40条1項)に違反し、破産管財人からの質問に答えない
  • 財産の開示義務(破産法第41条)に違反し、財産の情報を正確に開示しない

これらの義務は破産手続きを適正に進めるために重要なものであり、正当な理由なく履行しない場合には免責が認められない可能性があります。

非債免責債権を有している

非免責債権とは、自己破産しても免除されない特別な性質を持つ債権のことです。通常、自己破産が認められると債務の返済義務が免除されますが、非免責債権については例外的に支払い義務が残ります。具体的には以下のような債権が非免責債権に該当します。

  • 税金や社会保険料などの公租公課
  • 悪意の不法行為による損害賠償請求
  • 故意または重過失により人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求
  • 未払い給与
  • 養育費

これらの債務については、自己破産後も引き続き支払い義務が残ります。なお、非免責債権があっても自己破産自体が妨げられるわけではありません。

免責不許可事由があった場合の対処法

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 裁量免責や即時抗告などの救済手段がある
  • 免責不許可となっても自己破産以外の債務整理が可能

免責不許可事由があった場合、借金はどうすることもできないのでしょうか。

免責不許可事由があっても自己破産できる場合があります。また、自己破産以外の方法でも借金問題を解決できます。

では、免責不許可事由があった場合の対処法について教えてください。

裁量免責を得る

免責不許可事由があっても、裁判所の裁量で免責が認められる場合があり、これを裁量免責といいます(破産法第252条第2項)。裁量免責は、免責不許可事由の重大性、破産手続きへの協力姿勢、経済的更生の可能性などの事情を考慮し、総合的に判断されます。

例えば、免責不許可事由が軽微であれば、真摯な反省と更生への意欲を示すことで裁量免責が認められる可能性があります。また、破産手続きに協力的な姿勢を見せ、安定した収入を得るための求職活動や生活費の見直しなどの取り組みを示すことも重要です。

その他、親族のサポートがあることや節約生活を続けているといった事実も、経済的更生の可能性を裁判所に示す材料となります。

このように、免責不許可事由がある場合でも諦めずに裁判所に事情を説明することで、裁量免責による自己破産が認められる場合があります。

即時抗告する

免責不許可の決定に納得がいかない場合、即時抗告という異議申立て手続きが可能です(破産法第252条第5項)。即時抗告をすると、地方裁判所での免責不許可決定について高等裁判所で再審理が行われ、免責不許可決定が覆る可能性があります。

ただし、即時抗告が認められるには、裁判所が重大な事実を見落としたことを客観的な資料で示す必要があります。成功率は必ずしも高くありませんが、弁護士のサポートを受けながら十分な準備をすることで異議申立てが認められる可能性はあります。

なお、即時抗告の期間は免責不許可決定の送達を受けた日から1週間以内であるため、早期に手続きを行わなければなりません。

自己破産以外の債務整理を検討する

債務整理には、自己破産の他にも個人再生と任意整理があるので、自己破産が認められなかった場合は他の債務整理方法を選ぶという選択肢もあります。

個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、残りを3〜5年かけて分割返済する方法です。自己破産と異なり、持ち家や車などの財産を手放すことなく債務整理を進められる場合もあります。

また、任意整理は裁判所を通さない手続きであり、債権者と直接交渉して将来の利息や遅延損害金をカットし、元金を3〜5年で分割返済する方法です。任意整理では債務整理の対象債権を選べるため、保証人付きの借金や住宅ローンを除外するなど債務整理の影響を最小限に抑えられるというメリットがあります。

まとめ

自己破産は、適切な手続きを踏めば高い確率で認められる債務整理方法です。日本弁護士連合会の調査では、純粋な不許可率は0%という結果も出ており、自己破産が認められない可能性は非常に低いと考えられます。
ただし、免責不許可事由に該当する行為を行うと、自己破産が認められなくなる可能性があります。そのような場合でも、裁量免責を求めたり、免責不許可の決定に対する即時抗告をしたりといった救済手段があり、自己破産以外の債務整理方法を選択することも可能です。
債務整理を検討する際は、自分の状況に最適な方法を選ぶことが重要です。不安な点があれば、専門家である弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。