自己破産をすることによって内緒の借金が会社や家族に知られる危険についてご説明いたします。
ざっくりポイント
  • 自己破産の事実は債権者などの関係者以外には通知されない
  • 自己破産の事実を勤務する会社が知る場合は一般的ではない
  • 自己破産の事実を配偶者に間接的に知られてしまうことはある

目次

【Cross Talk】自己破産をしたことを知られたくない!自己破産したら家族や会社に知られるの?

私の持つ自己破産の印象としては、会社や妻に知られ、最終的には、離婚や解雇の結果が待っているといったものがあります。このようなことは実際にあるのでしょうか。

リスクが0とはいえませんが、どのようなリスクがあるか知っておいて、きちんとコントロールして、できる限り内緒にできるようにやってみましょう。

是非よろしくお願いします。

自己破産によって会社や家族に知られるリスクはあるのでしょうか。

妻や夫に内緒の借金がある場合、相手には知られたくはないものです。
また、同様に、会社に対しても知られてしまうことは、ばつが悪く、出来れば知られたくはありません。
自己破産をする際に気になるのは、こうした点ではないでしょうか。
この点、自己破産したとしても、その通知は債権者以外の関係者には通知されず、一般的には会社などに知られる心配はないでしょう。この記事では、自己破産をする上でのこうした心配・懸念についてご説明していきます。

自己破産は会社に知られるの?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 会社から借り入れをしていない場合には、会社が直接的に破産の事実を知ることはない
  • 退職金制度のある会社に勤務している場合には、破産者の義務として、裁判所に退職金の見込み額を届け出る必要があるため、間接的に会社が破産の事実を知ることがあり得る

現在、多額の借金を抱えており、返済の当てがなく、破産を検討しています。破産をすると会社に知られてしまうのでしょうか。

原則的に、会社から借り入れを行っている以外は、会社に直接通知が送付されることは、ありません。したがって、会社が直接破産の事実を知る可能性は低いでしょう。
しかしながら、会社が福利厚生の一環として、社員が住宅などを購入する際の資金の一部を貸し出すなどをしている場合には、会社も債権者となり得るため、破産手続が開始されると、直接的に知ることがあります。


自己破産は会社に知られるのでしょうか。
知られる場合のポイントなどを知っておきましょう。

自己破産の通知などは届かない

前述のとおり、自己破産の通知は、勤務先である会社には届きません。しかし、会社から直接借金をしているような場合には、破産開始決定の通知が届くため、自己破産を知られてしまうことがあります。

自己破産の通知が届かなくても必要書類の取得で知られる可能性が高い!?

自己破産の手続きには、最高裁判所規則で定める事項を記載した書面を提出する必要があり(破産法20条)、その書面の中には、直近2か月の給与や源泉徴収票などがあります。

また、退職金制度がある会社の場合には、退職金見込み額証明書の写しを提出する必要があります(破産規則14条3号)。退職金は1/4まで差押えが可能なため(民事執行法152条2項)、あらかじめ、その見込み額を届け出る必要があります。

したがって、退職金制度がある会社に勤務している場合には、会社に事情の説明(破産手続に必要な旨)を行う必要があり得ることから、自己破産の事実が知られる場合があります。

会社から借り入れをしている場合や会社を通して借り入れしている場合

会社から借り入れをしている人は、会社に知られます。
自己破産においてはすべての債権者に手続きに参加をしてもらう必要があり、特定の債権者だけ優遇することはできません。

そのため、会社から借り入れをしているならば、債権者として届け出る必要があります。
「黙っていればわからないんじゃないですか?」という方もいらっしゃいますが、給与天引がされているような場合には、裁判所に提出する給与明細で明らかに判明します。
そうでない場合でも、会社に返済をしていると、銀行口座に履歴が残ったり、家計の状況が不自然になったりするなどして、裁判所に説明ができなくなります。

これが判明すると、偏頗弁済に当たると判断されたり、免責不許可事由に該当するとして借金を返済しなくても良いという決定が得られなくなったりする可能性があるので、絶対にしてはいけません。
会社を通して同僚や役員から個人的な借入をしたような場合にも、同僚や役員には手続きに参加してもらう必要があります。

注意点

借金を放置すると、給与を差し押さえられます。
これによって会社に知られてしまったりするトラブルが発生することもあります。
詳しくは、「給与が差し押さえられる?借金を放置する危険と対処法を解説」こちらで解説していますので参照にしてください。

自己破産は、同居の家族には知られるの?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 同居の家族には基本的には知られない。

自己破産の事実は同居している親などにはバレる知られるのでしょうか。社会人として、いまさら、こんな恥ずかしい状態を、なるべくは知られたくはないのですが。

ご心配なさらなくとも、破産の事実を知られずに手続きを進めることができる可能性があります。

ただし、住宅購入資金を親子で捻出した場合や、夫婦で連帯保証となっている場合などでは、破産手続の関係上、知られてしまうことはあります。

管財事件の場合は家族に知られる可能性が高い?

自己破産にも同時廃止と管財事件があります。
管財事件になった際に、同居している家族に知られる可能性が高いといえます。
管財事件になると、申立てをした人の郵送物が一度管財人のもとに届けられ、封を開けて中を開けられた上で、一定程度の量がたまると本人にまとまって転送されてくる仕組みとなっています。
比較的多いのが、レターパックが一杯になるころに届けるということが多く、本人宛の郵送物を家族の人が開けるような場合には、見てしまう可能性が高いです。

自宅や車を持っている場合

自宅を自分名義で保有している場合・車などを自分名義で保有している場合にも知られる可能性が高いでしょう。
自宅を自分名義で保有している場合で、債務が支払えない場合の代表例は、住宅ローンの債務が残っているか、不動産担保ローンで借り入れをした場合です。

自己破産を選択すると、どうしても自宅から退去することになるため、家族に内緒で行うことは難しいといえます(このような場合には管財手続にもなります)。
また、車がある場合で、車をローンで購入していたり、ローン自体は完済していても車に価値があったりする場合には、車を手放す可能性が高いといえます。
そのため、家族で恒常的に車を使っているような場合には、どうしても知られてしまう可能性が高いといえます。

その他、知られるケース・知られないケースの違い

原則 知られないケース
自己破産を申し立てる場合、弁護士に依頼している場合には、弁護士から受任通知が各債権者に通知されるため、取り立てが止まります。
したがって、取り立ての通知から、隠れた借金があることを同居の家族に知られることはありません。
一般的には、自己破産で弁護士が介入している場合には、手続中の破産者の郵便物は、原則的には弁護士に送付されるため、郵便物から事実が発覚することもありません。また、財産目録を裁判所に提出する際に、偽りなく申告していれば、配偶者・親族等に連絡等されることもありません。
例外 知られるケース
冒頭で触れたとおり、妻・夫が保証人になっている場合に 自己破産した場合には、破産者から取立はできない一方で、保証人からは取立ができることから、間接的に破産の事実が知られる可能性はあります。
他方で、持ち家などがある場合には、自己破産の手続きで処分することとなるため、配偶者に知られることはあります。しかしながら、出直すためには、破産手続きをとるしかないといったことを、家族にも理解してもらう必要があることから、隠さず打ち明けることが望ましいでしょう。

その他注意点

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • マイナンバーカードには自己破産の情報は載らない
  • 保証人になることができない

自己破産をするときにほかに注意点はありますか?

マイナンバーカードには情報が載るようなことはありませんが、奨学金の連帯保証人になれない、一定の職業につくことができない、などといったことに注意が必要です。


自己破産をするときの他の注意点にはどのようなものがあるのでしょうか。

マイナンバーカードには自己破産の情報は載らない

自己破産手続きをする際に、マイナンバーカード(個人情報カード)に自己破産をした旨の記載が載るのではないか、という心配をする方も多いのですが、マイナンバーカードはあくまで行政手続きにおける個人を識別するために行うものです。

自己破産の事実について市区町村が保有している情報と関係するのは、破産手続き開始決定の通知を受けていないことを示す身分証明書を発行するときであり、これは例えば警備業や宅建業などの登録をする際の必要書類として提出するものです。
そしてこれは、あくまで登録に使われるのみで、第三者に開示することを前提とするものではありません。

保証人になることができない

日常生活において自分が連帯保証人にならなければならないことがあります。
例えば、会社の役員が会社の借入について個人で連帯保証をしたり、商工ローンや中小規模の消費者金融から借り入れをしたりする人の連帯保証人となる場合です。
また、もっとも利用されることが多いものとしては、奨学金の保証人・連帯保証人が挙げられます。
自己破産に限らず、債務整理をするとどの手続きでも信用情報にその旨が登録される、いわゆるブラックリストに載るという状態になります。
ブラックリストに載ってしまうと、信用情報を利用して行う貸付を受けられないのですが、同様に信用情報が問題となる保証人・連帯保証人にもなることができません。

職業制限

自己破産の申立てをすると、一定の職業に制限がかかります。
よく問題になるのが、警備員・宅建士・保険募集人で、これらの資格の登録をして仕事をする人は、他人の財産を預かる立場にあります。

そのため、自己破産手続きを利用した場合には、これらの資格に登録をすることができず、登録をしている人が自己破産をした場合には、登録を抹消しなければなりません。
このような資格を保有している方は、自己破産の前に任意整理や個人再生といった、資格に影響の出ない債務整理方法を利用することも検討することになります。
詳細は、「自己破産すると仕事ができなくなる!?職業制限はあるの?」で解説しておりますので参考にしてください。

まとめ

自己破産をする際には、会社や家族などに必ずしも知られることはないとは言えませんが、仮に知られてしまったとしても、自己破産をマイナスと捉えずに、新たなやり直しの機会だと前向きにとらえるのが望ましいのかもしれません。
迷いがある場合には弁護士に相談してみると良いでしょう。