養育費と扶養控除について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 養育費を支払う人でも一定の要件を満たせば扶養控除の対象になる
  • ただし、養育費を受け取る人と二重で控除はできない
  • どちらが控除の申請をするか、相手と相談を

目次

【Cross Talk 】子どもと同居していませんが、扶養控除は可能ですか?

離婚後に毎月離れて暮らす子どもに養育費を支払っています。子どもが成人するまでの約束ですが、扶養控除の対象になりますか?

扶養義務を果たすために、一定の年齢まで養育費を定期的に送金している場合は扶養控除の対象となります。ただし元配偶者と二重で控除はできません。

詳しく教えてください。

養育費を払っている人も扶養控除は可能!要件とは?

子どもと離れて暮らす親が養育費を支払っている場合でも、一定の要件を満たすと扶養控除の対象となります。
扶養控除の対象となる親族とは、6親等内の血族および3親等内の姻族または里子、自身と生計を一にしている、子どもの年間の合計所得金額が48万円以下といった要件を満たす人です。
今回は、扶養控除の概要と要件、手続きや注意点について解説していきます。

養育費は一定の要件を満たせば扶養控除できるが、16歳未満は対象外

知っておきたい離婚のポイント
  • 一定の要件を満たすと、養育費を払っている者も子どもの扶養控除を申請できる
  • 子どもの年齢によって扶養控除の金額が異なる。16歳未満は対象外

扶養控除が適用される場合、金額はいくらですか?

お子さんが16歳未満であれば扶養控除の対象外ですが、16歳以上は38万円、19歳以上23歳未満は63万円が控除されます。

扶養控除とは?要件と控除できる金額

養育費は、子どもが経済的に自立するまでに必要となる衣食住のための費用・医療費・教育費などを指します。離婚後に子どもと一緒に暮らす親はもう一方の親から養育費を受け取る権利があり、子どもと離れて暮らす親は子どもと一緒に暮らす親に養育費を支払う義務があります。

養育費を支払っている親にとって、離れて暮らす子どもは一定の要件を満たすと扶養控除の対象となります。国税庁のホームページ※1にも離れて暮らす親が養育費を支払っている場合「(1)扶養義務の履行として、(2)『成人に達するまで』など一定の年齢に限って行われるものである場合には、その支払われている期間については、原則として(中略)扶養控除の対象として差し支えありません」と記載されています。

扶養控除とは、所得税から差し引くことのできる控除の1つで「控除対象扶養親族」がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。金額は子どもの年齢によって異なります。

扶養する子どもの年齢 控除額
16歳未満 0
16歳以上 38万円
19歳以上23歳未満 63万円

※1

扶養控除の対象となる親族は、12月31日時点で以下の4つの要件の全てに当てはまる人です。

(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)
(2)納税者と生計を一にしている
(3)子どもの年間の合計所得金額が48万円以下(2019年分以前は38万円以下)である
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でない。

※1
なお生計を一にしているとは、経済的に一体であることをいい,いわゆる「同じ財布で生活をしている」状況をいいます。そのため、同居している場合だけではなく別居で仕送りをしている場合も含まれます。

※1参照:国税庁 質疑応答事例「生計を一にするかどうかの判定(養育費の負担)」

16歳未満は扶養控除の対象外。他にも扶養控除にできない場合がある

養育費を負担していても、16歳未満は扶養控除の対象外です。
また、養育費を毎月送金しているわけではなく一括で支払った場合は「生計を一にしている」状況とは言い難いため、基本的には扶養控除の要件を満たさないといえます。

また、扶養控除は二重に適用できないため、子どもと一緒に暮らす親が子どもに扶養控除の対象としている場合には、離れて暮らす親は扶養控除を適用することはできません。
そのため、どちらが扶養控除を適用するのかについては、離婚にあたり夫婦で話し合う必要があります。

別居していても扶養控除はできる?

たとえ別居していても定期的に養育費(生活に必要な費用)を支払っている場合は「生計を一にしている」とみなされ、扶養控除の対象となります。

扶養控除の手続きと注意点

知っておきたい離婚のポイント
  • 給与所得者は年末調整、自営業者などの個人事業主は確定申告で申請する
  • 元配偶者と二重に申請はできない

会社員ですが、どうやって扶養控除を申請するのでしょうか?

会社員などの給与所得者は勤務先から渡される年末調整の「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」に必要な事項を記入することで、申請できます。

給与所得者は年末調整で申告する

会社員・公務員などの給与所得者は、年末調整で勤務先から渡される「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」に記載することで扶養控除を申請できます。

令和5年分扶養控除等(異動)申告書

※参照:国税庁「令和5年分扶養控除等(異動)申告書」

上記の赤枠内に子どもの氏名・住所などを記入します。
19歳以上23歳未満の場合は「特定扶養親族」にチェックを入れましょう。
勤務先に提出することで申告は完了します。

個人事業主・自営業者は確定申告書に記入する

個人事業主・自営業者は、確定申告書に扶養控除の額を記入します。
確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)

※参照:国税庁「確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)

申告書第一表・第二表【令和4年分以降用】」
上記の赤枠内に金額を記載しましょう。

払う側と受け取る側、二重で控除はできない

養育費を支払う親と受け取る親の両方が、同じ子どもに対して扶養控除を適用することはできません。
扶養控除を適用する前に、相手に報告しておきましょう。

トラブルになった際には弁護士にご相談を

扶養控除について2人で話し合っても合意できない場合、トラブルになってしまった際には弁護士に相談することをおすすめします。
法律的な観点からの対処法を知ることができるでしょう。また、相手と直接話し合わなくても良いというメリットもあります。

まとめ

養育費を支払っており、子どもと同居していなくても扶養義務を果たすために定期的に送金し一定の年齢までと約束している場合は扶養控除の対象となります。子どもの年間の合計所得金額が48万円以下で、16歳以上であることも要件です。
もっとも、元配偶者と二重で控除の適用を受けることはできないので、元配偶者と直接話し合いができない、話し合いがまとまらない場合には弁護士への相談を検討しましょう