自己破産にかかる期間は?
ざっくりポイント
  • 手続ごとに異なる自己破産の期間
  • 自己破産の期間を短くする方法
  • 自己破産以外の債務整理手段について

目次

【Cross Talk 】自己破産にはどれくらいの期間がかかる?

借金が返済できそうもないので、自己破産を考えています。自己破産をするにはどれくらいの期間がかかるのでしょうか?

自己破産にもいくつかの種類があり、それによって期間が異なります。

それでは、自己破産にかかる期間について、種類ごとに詳しく教えてください。

自己破産にかかる期間は?

自己破産にはどれくらいの期間がかかるのか、早期解決は難しいのではないかと心配をされている方が多くいらっしゃいます。そこで、本記事では自己破産までどのくらいの期間がかかるのか、また手続を少しでも早く進めるためにどうすれば良いのかについて、詳しく解説します。

自己破産とは

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産とは何か
  • 自己破産の条件やデメリット

そもそも、自己破産とはどのような手続ですか?自己破産をすれば借金は完全になくなるのでしょうか。

はい。自己破産をすれば借金はなくなります。ただし、自己破産には条件がありますし、いくつかのデメリットもあります。

では、まずは自己破産とはどのような手続なのか、教えてください。

自己破産とは、支払不能に陥った債務者が裁判所に破産申立てを行うことで、債務が免責され、全ての借金がゼロになる手続です。

支払不能とは、「債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」(破産法2条11項)のことを指します。つまり、現在の預金や資産、給料その他の収入を全部合わせても借金を返せない状況でなければ、自己破産はできないということです。

また、免責不許可事由(破産法252条)に該当する行為を行った場合、自己破産ができなくなります。例えば、借金をギャンブル等の浪費行為に使用したというのが、免責不許可事由の代表例です。このように、自己破産をするうえでは借金の使途も重要なので、借金を何に使ったのかということは正確に把握しておかなければなりません。

自己破産をすると、全ての債務の支払義務が免除され、借金の督促からは解放されます。ただし、持ち家や車などの高価な財産は処分されてしまい、また5~10年は新規借入が制限されるといったデメリットもあります。自己破産をする上では、これらの点を踏まえたうえで慎重に検討することが重要です。
自己破産について詳しく知りたい方は「自己破産ってどんなもの?メリット・デメリットとは?」もご覧ください。

自己破産にかかる期間はどのくらい?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産には同時廃止・管財事件・少額管財事件の3種類がある
  • それぞれの手続によって、かかる期間が異なる

自己破産で借金がゼロになることはわかりましたが、免責までにはどれくらいの期間がかかるのでしょうか。

自己破産にかかる期間は、手続の内容によって異なるので、自己破産の所要期間について詳しく解説します。

同時廃止

同時廃止とは、破産手続の開始と同時に破産手続を終了させることです(破産法216条1項)。破産者に換価できるような財産がなく、免責不許可事由に該当するような問題もない場合には、同時廃止が行われます。

同時廃止は管財事件よりも手続が簡単なので、比較的かかる期間が短く、3~6か月程度で免責許可決定が出されるのが一般的です。

「同時廃止の流れ」

  • 申立て~即日面談:3営業日以内
  • 即日面談~開始決定・廃止決定:約1ヶ月
  • 廃止決定~免責許可決定:約2ヶ月

まず、弁護士が代理人となって裁判所へ同時廃止の申立てをすると即日面接が行われ、同時廃止の可否が判断されます。そして、同時廃止が可能であれば、裁判所から同時廃止決定が出されます。その後、免責について債権者の意見申述期間があり、免責が認められると免責許可決定が出され、自己破産完了という流れです。

管財事件

管財事件は、裁判所に選任された破産管財人によって進められる手続であり、破産管財人が破産者の財産調査や財産の換価・配当を行います。管財事件の場合、破産管財人の報酬に充てるための予納金が発生します。

また、管財人による財産調査や債権者集会などが行われるため、同時廃止よりも手続に要する期間が長く、6~12ヶ月くらいかかるのが一般的です。

同時破産と管財事件の詳細は「自己破産手続は2種類!同時廃止と管財事件って何?それぞれの違いとどちらが簡便かを解説」をご覧ください。

少額管財事件

少額管財事件は、通常の管財事件よりも手続が簡略化された事件のことです。予納金が通常の管財事件よりも低額であり、20万円程度になる場合が多いため、破産者の負担が少なく済むのが少額管財事件の特徴です。

手続の流れは基本的に通常の管財事件と同様ですが、少額管財では財産の調査・換価処分、債権者集会などを簡略化できるため、一般的に6~9ヶ月くらいで免責許可決定が出されます。手続を効率化することで、通常の管財事件よりも2~3ヶ月ほど早く手続を完了できます。

自己破産の期間をできるだけ短くする方法

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 弁護士へ早期に相談し、弁護士費用の分割回数を減らすこと
  • 必要書類を把握し、速やかに準備すること

自己破産をするには意外と時間がかかるのですね。できるだけ早く借金がなくなると嬉しいのですが。

では、自己破産の期間を少しでも短くするためにできることを解説します。

弁護士へ早期に相談する

借金問題を抱えている方にとって、弁護士への相談はハードルが高く感じられ、つい先延ばしにしがちです。しかし、早い段階で弁護士に相談すれば裁判所への申立てもすぐに行えるため、相談が早いほど自己破産に着手するタイミングを早められます。

初回相談を無料で受け付けている法律事務所も多いので、まずは相談だけでもしてみるのが良いでしょう。自分で何とかしようとして他から借入をするといった一時しのぎの対応をとると、かえって事態を悪化させます。

弁護士に相談すれば、状況に応じた適切なアドバイスを受けられるので、明確な見通しが立てられます。

弁護士費用を一括払いにする

弁護士に依頼する場合には、できるだけ費用を一括で支払うのがおすすめします。なぜなら、自己破産の申立ては費用の積立てが完了した後に行われるため、分割で支払う期間が長くなればなるほど申立てのタイミングも遅くなるからです。

とはいえ、自己破産に至る状況下にある方は、お金に困っている方がほとんどでしょう。一般的に自己破産には30万円から100万円程度の費用がかかるので、一括で支払うのが難しい場合が多いのが現実です。

そのため、もし一括で支払えないのであれば分割回数をできるだけ減らすように調整し、少しでも弁護士費用を早く支払い終えることが重要です。

必要書類を速やかに集める

自己破産は必要な書類が全て揃わなければ手続を進められないので、可能な限り早期に必要書類を集めましょう。自己破産をするには、主に以下のような書類が必要です。

  • 自己破産申立書
  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 住民票、戸籍謄本
  • 給与明細書(過去1年分)
  • 源泉徴収票
  • 預金通帳のコピー
  • 各種借入の契約書や返済明細書
  • 財産目録

自己破産申立書は、現住所を管轄する裁判所の窓口や公式サイトで入手します。住民票・戸籍謄本は住んでいる自治体の役所で取得できます。給与明細書や源泉徴収票は職場で配布され、借入の契約書や返済明細書は借入先から渡されます。

手元にないものがあれば再発行できる場合もありますが、判断に迷ったときは一度弁護士に相談してみると良いでしょう。

自己破産の手続期間に関する注意点

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 信用情報に事故情報が記録されている間は、クレジットカードが作れない
  • 自己破産する際に気を付けなければならない職業の制限がある

自己破産をする上で、他にも何か注意点はありますか?

自己破産をすることによる生活への影響も考慮すると良いでしょう。後から後悔することがないように、自己破産をする上での注意点を説明します。

クレジットカードが発行できない

自己破産をすると信用情報機関に事故情報として記録され、クレジットカードの発行ができなくなります。

信用情報機関とは、住宅ローンやクレジットカードなどの審査をするために、利用者の支払能力や信用能力に関する情報を取り扱う機関です。主な信用情報機関は国内に3つありますが、銀行や信用金庫が加盟する信用情報機関はKSC(全国銀行個人信用情報センター)といい、住宅ローンやカードローンで自己破産をするとKSCに事故情報が掲載されます。

KSCの事故情報の掲載期間は5~10年であり、この期間はクレジットカードが発行できない、ローンを利用できないといった制限がかかります。ただし、掲載期間が終われば事故情報は消えるので、それ以降は信用情報への影響はなくなります。

職業の制限がある

自己破産の申立てを行い、破産手続開始の決定が出ると、一部の他人の財産や秘密を扱う職業に就くことができなくなります。具体的には、以下のような職業に制限がかかります。

  • 弁護士(弁護士法第7条4号)
  • 税理士(税理士法4条2号)
  • 司法書士(司法書士法5条3号)
  • 社会保険労務士(社会保険労務士法5条2号)
  • 公認会計士(公認会計士法4条4号)
  • 行政書士(行政書士法2条の2第2号)
  • 警備員(警備業法4条)
  • 生命保険外交員(279条1号、307条1号)

破産手続開始の決定を受けた破産者は、上記の資格の新規登録ができなくなり、すでに資格登録をしている場合にはその登録が抹消されます。ただし、破産者の資格自体が無効になるわけではないので、免責許可決定を受けて復権すれば再度資格登録をして業務を再開することは可能です。

引越し・海外旅行が制限される

自己破産の申立て後に破産手続開始の決定が出されると、引越しに制限がかかる場合があります。具体的には、管財事件として取り扱われる場合、引越しの際に裁判所の許可が必要とされます(破産法37条1項)。これは、住所を自由に変更されると財産隠しや逃亡のおそれがあり、破産管財人が適切に財産管理を行えなくなるためです。

無断で引越しをすると免責不許可になる可能性があるので、引越しをする際は必ず裁判所へ転居許可申立書を行いましょう。裁判所からの許可が下りれば、破産手続開始の決定後でも引越しができます。

また、引越しが制限されるのと同じ理由により、海外旅行などで長期間にわたって家を離れる際も、裁判所の許可を得る必要があります。

借金問題を個人破産以外で解決する方法

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産と個人再生の違い、どちらを選ぶべきかのポイント
  • 自己破産と任意整理の違い、どちらを選ぶべきかのポイント

債務整理の中には、自己破産以外にも個人再生と任意整理があると聞きました。自己破産に決める前に、他の手続についても検討しておきたいのですが。

それでは、個人再生や任意整理について、自己破産と何が違うのかという点を含めて解説します。

個人再生

個人再生とは、裁判所から再生計画の認可決定を受けることにより、借金を大幅に減額できる手続きのことです。自己破産との大きな違いは、借金がゼロになるわけではないということです。個人再生は借金を減額する手続なので、借金の残額は3~5年程度かけて分割で支払うことになります。

個人再生の手続にかかる期間は、早ければ6ヶ月程度、長い場合は1~2年かかることもあります。持ち家に関しては、住宅資金特別条項を使えば住宅ローンを支払い続けることができ、持ち家を処分することなく個人再生ができる可能性があります。

このように、個人再生は自己破産と同じく裁判所を通じて行う手続ですが、借金が免責されるわけではないため債務者に一定程度の支払能力が求められます。ただし、持ち家を始めとした財産を残したままで債務整理が行える可能性があるので、債務整理をしたいけど持ち家を手放したくないといった方には向いている手続であるといえます。

個人再生の詳細は「自己破産はしたくない!個人再生手続ってどんなもの?メリット・デメリットを教えて!」の記事をご覧ください。

任意整理

任意整理は、利息や遅延損害金などをカットしたうえで、残額を3~5年かけて返済するという手続です。自己破産や個人再生と違って裁判所を通さない手続なので、債権者との交渉によって和解するというのが任意整理の特徴です。手続にかかる期間は3〜6ヶ月程度であり、債務整理の中でも比較的短い手続であるといえます。

ただし、任意整理は個人再生と比較しても借金の減額幅が少ないため、個人再生以上に支払能力が求められます。そのため、利息や遅延損害金のカット程度では返済が難しい状況であれば、個人再生や自己破産を検討するべきでしょう。

任意整理を詳しく知りたい方は「任意整理に失敗しないためには?失敗例や成功するコツを弁護士が解説」の記事もご覧ください。

まとめ

自己破産の手続期間は同時廃止がもっとも短く、財産調査や債権者集会などの手続が加わる管財事件は同時廃止よりも期間が長くなります。もっとも、少額管財事件であれば通常の管財事件の手続を簡略化できるため、比較的短期間で手続ができます。