法人破産と個人破産の違いとは?
ざっくりポイント
  • 法人破産と個人破産は免責の有無や処分対象財産など複数の点で異なる
  • 同時に破産するメリットは手続きの効率化と費用削減、時間短縮が可能になること
  • 同時に破産するデメリットは一度に高額な予納金が必要であり作業量も増加すること

目次

【Cross Talk 】法人破産と個人破産の違いとは?

会社の経営が行き詰まり、法人破産を考えていますが、法人破産と個人破産はどう違うのでしょうか?

法人破産と個人破産には、いくつかの点で違いがあり、連帯保証によって両者は関連付けられています。

具体的に両者にはどのような違いがあるのか、また私が連帯保証人になっている場合の影響について詳しく知りたいです。

法人破産と個人破産の違いとは?

法人破産と個人破産にはいくつかの違いがあり、それぞれの特性を理解したうえで手続きを進めることが重要です。

本記事では、法人破産と個人破産の違いについて、免責の有無や処分対象となる財産、費用、管財人の有無などの観点から解説します。また、両者を同時に行う場合のメリットとデメリットについても詳しく説明し、それぞれの状況に応じた最適な選択ができるよう必要な情報を提供します。

法人破産とは?個人の自己破産との違い

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 法人破産と個人破産は免責の有無、処分財産の範囲などの点で違いがある
  • 法人は破産後に消滅するが、個人は免責により再スタートが可能

法人破産と個人破産の具体的な違いについて教えてください。どのような点で異なるのでしょうか?

法人破産と個人破産は、免責の有無や処分財産の範囲などいくつかの違いがあります。

免責の有無

免責とは、借金の返済義務を免除することです。個人が自己破産をし、免責許可決定があれば、借金の返済義務が免除されますが、法人破産の場合は法人そのものが消滅するため免責されるまでもなく債務が消滅します。

従って、法人破産と個人の破産では免責の有無という点に違いがありますが、借金がなくなるという意味ではどちらも同じです。

ただし、代表者が連帯債務者になっている場合、法人破産をしても連帯債務者である代表者の債務は残るので、法人の債務と代表者の債務は別個に考える必要があります。

処分対象となる財産

法人破産の場合、会社が有する財産は全て債権者へ弁済・配当されるため、全ての財産が処分の対象となります。破産手続が開始すると、破産者が有する財産は全て破産財団に属し、裁判所が選任した破産管財人が適切に管理・処分することになります。

一方、個人の自己破産では全ての財産が処分されるわけではなく、自由財産は手元に残しておくことができます。自由財産にあたるものの中には、以下のようなものがあります。

  • 99万円以下の現金
  • 自己破産手続開始後に取得した財産
  • 差押禁止財産

    99万円以下の現金の所持が認められるのは、最低限の現金がなければ生活ができないためです。また、自己破産手続開始後に取得した財産は破産の対象外であるため、自由に使えます。差押禁止財産には、衣服、寝具、食料などの生活必需品や、位牌、仏像、勲章など、処分には適さないものが該当します。

    費用

    法人破産、個人の自己破産を問わず、破産手続においては主に以下のような費用がかかります。

  • 予納金
  • 弁護士費用
  • その他の手数用

    予納金とは、破産にかかる費用に充てるために裁判所への支払いが義務付けられているお金のことです。金額は負債総額によって決まり、負債が多ければ多いほど費用が高くなるため、法人破産の方が個人の自己破産よりも高額化する傾向にあります。

    一般的には個人の自己破産(後述の同時廃止事件を除く)で20~50万円程度、法人破産で20~300万円程度の金額になりますが、大きな会社で多額の負債を抱えていれば、さらに高額な予納金がかかる場合もあります。

    弁護士費用も予納金と同じように、手続きが複雑で手間のかかる法人破産の方が高くなる傾向にあります。一般的には個人の自己破産で50~80万円程度、法人破産の場合で50~150万円程度かかります。

    管財人の有無

    管財人の有無は、同時廃止事件か管財事件かによって異なり、同時廃止であれば管財人は不要、管財事件であれば管財人が必要となります。

    同時廃止とは、破産手続き開始の決定と同時に破産手続き廃止の決定をすることであり、破産者に特段問題がない場合には同時廃止が認められます。そして、同時廃止であれば手続きの手間がかからないので、管財人は不要とされています。この場合、管財人報酬が不要なので、予納金は1~2万円程度で済みます(東京地裁の場合)。

    ただし、法人破産において同時廃止が認められる場合は少なく、法人破産の多くは管財事件として扱われます。一方、個人の自己破産であれば内容次第で同時廃止が認められることもあり、同時廃止であれば管財人を選任することなく、破産手続開始決定と同時に手続きが終えられます。

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    知っておきたい借金(債務)整理のポイント
    • 法人と経営者は法律上別人格だが、連帯保証により密接に関連している
    • 法人破産だけでは経営者の保証債務は消えないため、個人破産も検討が必要

    会社が破産すれば、経営者の債務も消えるのでしょうか?

    会社が破産しても連帯保証人の債務は残ります。多くの経営者は連帯保証をしているため、法人破産と個人破産を併せて検討するのが一般的です。

    連帯保証人の責任の範囲について、詳しく教えてください。

    法人と経営者個人は、法律上の別人格として扱われます。つまり、会社は独自の権利と義務を持つ主体であり、会社の借金は会社自身の責任であって、法人が破産手続きを行っても法律上は経営者個人に直接責任が及ぶことはありません。

    ただし、経営者個人が会社の借金の連帯保証人になっている場合、債権者は連帯保証人である経営者個人に借金の返済を求めることができます。そのため、この場合には経営者個人が責任を負うことになります。

    このように、法人と経営者個人は別人格ではあるものの、法人破産と経営者個人の破産は連帯保証という関係を通して密接に関連しています。

    なお、会社の借金を個人で完済することは難しい場合も多く、そのような場合には経営者個人も自己破産して債務の免除を受けることになるでしょう。

    法人破産と個人破産を同時に行うメリット

    知っておきたい借金(債務)整理のポイント
    • 手続きの効率化と費用削減が可能
    • 精神的・時間的負担を一度に乗り越えられる

    法人破産と経営者個人の破産を同時に行うメリットはありますか?

    最大のメリットは手続きの効率化と費用削減ですが、他にもいくつかのメリットがあります。

    では、効率化や費用削減以外のメリットについても詳しく教えていただけますか?

    法人破産と経営者個人の破産を同時に進めるメリットをまとめると、以下のようなものがあげられます。

  • 手続きを効率化できる
  • 費用を抑えられる
  • 手続きの時間を削減できる
  • まず、手続きの効率化ですが、法人破産・個人の自己破産ともに会社の負債に関する破産であれば、書類準備や債権者との交渉、裁判所への申立てなどを一括して進められるので、全体の処理時間が短縮されます。また、関連する債務情報の整理もしやすく、どの債務が法人に属し、どれが個人に属するのかを明確に区別できます。

    次に、費用についてですが、別々に手続きを行う場合と比較すると重複する業務を省略できるため、弁護士費用の総額を抑えられる可能性があります。

    そして、時間的な負担が軽減できるというメリットについては、債権者とのやり取りや裁判所への対応などを集中して行えるため、それぞれ分けて行うよりも効率がよく短期間で手続きを完了させられるのです。

    法人破産と個人破産を同時に行うデメリット

    知っておきたい借金(債務)整理のポイント
    • 一度に高額な予納金が必要となる
    • 手続き量と心理的負担が短期間に集中する

    法人破産と個人破産を同時に行うデメリットはどのようなものがありますか?

    最大のデメリットは資金面です。一度に両方の予納金が必要となるため、経済的負担が大きくなります。

    経済的負担以外にも何か注意すべき点があれば、教えてください。

    法人破産と経営者個人の破産を同時に進めるデメリットとしては、以下のようなものがあげられます。

  • 一度に高額な予納金が必要となる
  • 書類作成や資料収集の作業量が増加する
  • 時間的余裕がない場合は負担が大きい
  • まず、予納金の問題ですが、法人破産と個人破産を同時に行うと一度に両方の予納金を用意しなければなりません。予納金は法人破産・個人破産でそれぞれ必要となりますが、特に法人破産の予納金は債権者数や財産状況によって高額になることがあるため、経済的に苦しい状況では大きな負担となるでしょう。

    次に、作業量の増加についてですが、同時に行うことで手続きの効率化は図れるものの一度に行う作業量は増えるため、書類準備や資料収集の負担が大きくなる可能性があります。

    そして、時間的な負担については、法人と個人の両方の書類や手続きを同時に進行させるため、時間的な余裕がない中で膨大な作業量をこなさなければならず、法人破産のみを行う場合よりも精神的・肉体的な負担が大きくなる可能性があります。

    まとめ

    法人破産と個人破産には、免責の有無、処分対象財産、費用、管財人の選任など複数の違いがあります。法人破産では会社の全財産が処分され法人は消滅しますが、個人破産では免責決定により債務から解放され、自由財産も残せます。
    多くの経営者は会社債務の連帯保証人となっているため、法人破産だけでは個人の債務は残ります。そのため、法人破産に伴って経営者個人も破産することはよくあります。
    2つの破産を同時に行うことで、手続きの効率化や費用節約、時間短縮といったメリットがありますが、一方で一度に高額な予納金が必要になる、作業量が増えるなどのデメリットもあります。
    状況に応じた最適な方法を選ぶためにも弁護士に相談し、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解したうえで判断することをおすすめします。適切な選択と手続きで、新たなスタートのための土台を築くことができるでしょう。