取締役が自己破産するとどうなる?会社に対する影響は?
ざっくりポイント
  • 取締役が自己破産すると会社を退任する必要がある
  • 会社法に規定されている欠格事由がない限り再任はされる
  • 自己破産以外の債務整理方法も検討

目次

【Cross Talk】取締役個人として債務を負った!?自己破産をするとどうなる?

私は小さな会社の代表者として取締役に就任しています。個人で親類の債務の保証をしていたのですが、その債務の支払いができなくなったようで、多額の債務を負うことになりました。この場合私が自己破産をするとどうなりますか?

一度取締役としては退任することになりますが、再任することはできます。

会社の取締役などの役職者が自己破産する場合には一度退任するが、再度の選任で取締役として復帰できる

会社の取締役も、冒頭の相談者様のように個人で別の債務の保証をする等で、会社の債務と関係なく個人で債務を負うことはあります。
このような場合には、代表者個人が自己破産をすることも視野に入れるべきことになるのですが、法律の規定から会社の取締役の地位を一度退任にする必要があります。
ただ、会社法所定の欠格事由がない限り再任をすることもできます。自己破産をすることで問題がある場合には別の債務整理手続も検討すべきなので、どの手続が良いのかは弁護士に相談してみてください。

取締役が自己破産することによる影響と責任

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 取締役が自己破産をすると一度退任する必要がある
  • 退任することによって会社の債務を引き継ぐ等の責任は発生しない

まず、取締役である私が自己破産をすると、なぜ退任をする必要があるのですか?また急に退任することによって何か責任を負うことになるのでしょうか?

会社と取締役は委任契約の関係にあり、委任契約は破産によって終了するため退任をする必要があります。

まず、取締役が自己破産をした場合の法律関係について知りましょう。

自己破産により取締役は退任となる

まず、自己破産によって取締役は退任する必要があります。
これは、会社と取締役などの役員の間の関係は(取締役・会計参与等その他の人も同様)、委任契約を結んでいる当事者というのが法律上の建前になっています。
この委任契約ですが、自己破産をすることによって終了すると規定されています(民法653条)。
そのため退任が必要となっています。

取締役が自己破産しても退任以外の影響や責任はない

取締役が個人で自己破産をするのは会社にとっては想定外の事になります。
とはいえ、例えば今ある会社の債務は破産した取締役個人で負うことになるなどの特別な影響や責任を負わせる規定はありません。

一度自己破産した取締役が再び取締役になれる?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産によって退任した取締役ももう一度株主総会で選任されれば取締役に復帰できる
  • 自己破産をして取締役に復帰するにあたってはデメリットもある

退任するのは委任契約が終了するから、という理由なのであれば、株主総会で再度選任されれば取締役に就任できるのではないですか?

おっしゃる通りで、会社法の欠格事由さえなければ、再度株主総会で選任すれば取締役に就くことはできます。

自己破産により退任した取締役は再度取締役に就任することはできるのでしょうか。

取締役の欠格事由について

どのような事由があると取締役に選任されることはできないのか?という事については会社法331条により次のように規定されています。
・法人
・成年被後見人若しくは被保佐人
・会社法・金融証券取引法・倒産処理に関する法律に規定されている罪を犯してから2年経過していない者
ですので、破産者であること・過去に破産手続を利用したことがある・自己破産をすることによっていわゆるブラックリストに載っている、等は欠格事由になっているわけではありません。

再び選任されれば取締役になれる

取締役として一度委任契約が終了し、退任する必要がある場合には、再度株主総会で取締役に選任することは可能です。
そのため、100%株主が取締役である場合では、取締役に復帰すること自体は手続を通せばできる、という事になります。
個人投資家に参加してもらっている等、多数の資本が株主として参加している場合でも、株主総会を可決できるのであれば、再任すること自体は問題がないという事が言えます。

自己破産した取締役が再び就任するリスクについて

ただ、自己破産をした取締役が再度会社に取締役として復帰することには、それなりにリスクもあります。
会社に対して融資や出資を検討する場合には、取締役をはじめとする役員の属性についても考慮されることになります。
例えば、経営状態が良くなくなった場合などに、債権保全・回収の見地から、法人が融資を受ける場合,代表者が保証人になることを求められることがほとんどです。
そのため、代表者に自己破産歴があるという事になると、どうしても慎重にならざるを得ません。
つまり、融資や取引をするにあたってマイナスの評価がされる可能性があることは考慮しておくべきということになります。

自己破産以外の債務整理方法

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産以外にもある債務整理方法を知っておく

ちなみに、私の借金は自己破産でしか解決できないものなのでしょうか?

借金と収支の状況を検討しながら、適切な債務整理方法を弁護士と模索しましょう。

自分が100%出資している会社であればそのまま取締役に戻っても問題ないでしょう。
しかし、個人投資家に出資してもらっているなど第三者が株主に居るため、株主に自己破産をすることを知られたくない場合などもあります。
そのような場合に備えて他の債務整理方法も知っておきましょう。

任意整理を行う

裁判所の手続をとらず、直接債権者と交渉して借金を減額(多くは場合は将来利息のカット)させる方法のことを任意整理と呼んでいます。
あくまで債権者と交渉をして返済をしていくもので、これを利用しても委任契約が終了するわけではなく、取締役の欠格事由に該当するようなこともありません。

特定調停を行う

内容としては任意整理に似ているのですが、簡易裁判所に申立をして、調停委員をはさんで借金を減額してもらう手続です。
任意整理とあまり変わらないと説明されるのですが、合意した内容は調停調書という形で公的な書面として残るので、特定調停後に債務の支払いができなくなると、民事訴訟を経ずに強制執行できるので、実務上あまり使われるものではありません。

民事再生(個人再生)を行う

自己破産と同じく、裁判所に申立てをするもので、債務を約1/5程度に圧縮してもらい分割して弁済をしていく手続です。
これを利用しても、委任契約の終了原因にはなりませんし、欠格事由になるわけでもありません。
任意整理をしても支払いきれない額の債務がある場合にはこちらを検討することになります。
ただし,官報には民事再生をしたことが乗るので,必ずバレないとは言い切れません。

まとめ

このページでは、会社の取締役の自己破産をする場合の会社との関係についてお伝えしてきました。
会社と取締役との委任契約関係が自己破産によって終了するという民法の規定から、一度退任する必要があるという事を知っていただいた上で、融資などで不利になるデメリットもあるものの再任自体はできるということを知ってください。
自分の地位に少しでも不安があるようでしたら、弁護士に相談の上適切な債務整理方法を決めるのが良いでしょう。