自己破産は官報に掲載されますが、日常生活に影響がある可能性は低いです。その理由を解説いたします。
ざっくりポイント
  • 自己破産をすると氏名や住所が官報に掲載される
  • 一般の方が官報を閲覧する機会はほとんどないので、知人に自己破産を知られる可能性は低い
  • 官報に掲載された破産者の情報をみだりに公開すると、罰則を科される可能性がある

目次

【Cross Talk】自己破産をすると官報に掲載されて、知人に知られる可能性があるの?

借金が返済できないので自己破産を検討していますが、自己破産をすると官報に氏名や住所を掲載されると聞きました。官報への掲載が原因で知人や職場にバレないか心配です。

確かに、自己破産をすると氏名や住所が官報に記載されます。しかし、官報を通じて自己破産をしたことが知られてしまう可能性は非常に低いです。

官報に掲載されても、あまり心配する必要はないんですね。その理由を詳しく教えてください!

自己破産をすると官報に掲載されるが、それほど心配しなくても良い理由とは?

自己破産は裁判所に申立てて行う手続で、免責が認められると、滞納した税金などの一部の債務を除き、貸金業者からの借金などの債務は免除されます。強力な効果がある反面、自己破産をすると氏名や住所などが官報に記載されるという特徴もあります。
もっとも、自己破産をして官報に掲載されたとしても、自己破産をしたことが知人や職場などに知られてしまう可能性は低いです。その理由について、そもそも官報とは何かを含めて解説していきます。

自己破産をした場合、名前は官報に掲載される

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 官報は国が発行する機関紙
  • 自己破産をすると氏名、住所が官報に掲載される

自己破産をするとどのような情報が官報に掲載されるのですか?

自己破産をすると、破産者の住所、氏名が官報に掲載されることになっています。

官報とは、新しい法令をはじめとした国民に周知すべき情報が掲載されている国が発行する機関紙であり、自己破産をした場合、破産者の住所、氏名が官報に掲載されることになっています。

自己破産をする際、裁判所に提出する「債権者一覧表」という書類に挙げられた債権者に対しては、裁判所から通知が発送されます。
もっとも、何らかの理由で債権者一覧表に記載されなかった債権者がいる場合、その債権者には裁判所からの通知がなされないため、破産手続に関与できないまま破産手続が終了してしまうおそれがあります。
そのような事態を避けて債権者に破産手続に関与する機会を与えるため、自己破産をした破産者の情報を官報に掲載することになっているのです。

自己破産で官報に掲載されるタイミングは基本2回

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 1回目の官報公告は破産手続き開始決定時
  • 2回目の官報公告は免責許可決定時

官報にはどのタイミングで載せられるのですか?

申立てを行った後に行われる破産手続き開始決定のときと、免責許可決定のときの2度行われます。

自己破産をしたときに官報に掲載されます(官報公告)。
そのタイミングは破産手続き開始決定時と、免責許可決定時の2回です。

1回目:破産手続き開始決定時

1回目の官報公告は、破産手続き開始決定時に行われます。
破産手続きの申立ては、裁判所に申立書・添付書類を提出することで行われます。
その後、裁判所が、申立て書類を確認して、破産手続きを行う要件を満たしていることが確認されると破産手続き開始決定が出されます。
この開始決定時に1回目の官報公告がなされます。

2回目:免責許可決定時

2回目のタイミングは免責許可決定時です。
自己破産の申立てがされると、同時廃止の場合には裁判所で1回、少額管財の場合には管財人と1回・裁判所で1回、直接面接することになります。
この中で免責を認めるかどうかを確認して、裁判所は免責をします。
この免責が許可されないと、借金などの債務の支払い義務は免れません。
この免責許可決定時に2回目の官報公告がされます

関連記事:自己破産手続で免責されない債権がある?(非免責債権)

官報に掲載される期間

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 紙で発行されていた官報が令和7年4月1日に電子化された
  • 電子化された官報をインターネットで閲覧できるほか官報掲載事項記載書面で確認することもできる
  • それぞれの媒体を閲覧できる期間

自己破産の官報公告はどのくらいの期間閲覧できるのですか

官報はインターネットで直近90日間は閲覧・ダウンロードをすることができます。また、紙媒体が欲しい場合は、発行から90日間は官報掲載事項記載書面の交付を受けることができます。なお、官報情報サービスという過去の官報を全て閲覧できるサービスがあり、ここには半永久的に残ってしまいます。ただ、官報の内容を確認する業者でもなければその内容を確認することはありません。官報を閲覧することができる期間は、次の通りです。

官報(直近90日)

令和7年4月1日、それまで紙で発行されていた官報が電子化され、官報発行サイトへの掲載をもって官報を発行したものと扱われることになりました。
電子化された官報は、直近90日間はインターネットを通じて閲覧・ダウンロードすることができます。
90日経過後は、プライバシーへの配慮が必要な一部の事項については閲覧・ダウンロードができなくなります。破産者の住所、氏名は、プライバシーへの配慮が必要な事項に含まれるので、90日経過後は閲覧することができなくなります。

官報掲載事項記載書面(発行から90日)

紙の官報は廃止されましたが、従来のように紙媒体のものが欲しい場合、官報掲載事項記載書面を交付してもらうことができます。
交付を請求することができる期間は、官報の発行から90日間とされています。

官報情報検索サービス(半永久・有料)

過去の官報はデータベースとなって官報情報検索サービスで閲覧可能となっています。
この情報については半永久的に保存されることになっています。
なお、この官報情報サービスを利用するのは、官報の情報を確認する必要がある業者などがほとんどであり、利用にあたっては個人のプライバシーの侵害行為を禁じています。

官報を閲覧する方法

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 官報は期間内であればインターネットで誰でも無料で閲覧できる
  • 紙媒体が欲しい場合は官報サービスセンターを通じて官報掲載事項記載書面を発行してもらう
  • 官報情報検索サービスを利用するには有料の会員登録が必要になる

官報を閲覧するにはどうすればいいですか?

官報や官報情報検索サービスの情報は各自の端末からインターネットを通じて閲覧することができます。ただし後者を利用するには有料の会員登録をしなければなりません。紙媒体が欲しい場合は、手数料を支払うことで官報サービスセンターを通じて官報掲載事項記載書面を発行してもらうことができます。

官報

官報は、内閣府の官報発行サイトに掲載されており、各自のPCなどインターネットを利用できる端末から閲覧可能です。閲覧するために特別な手続等はありません。

なお、国立印刷局本局の敷地内に設置された掲示場に、直近に発行された官報に掲載された情報を記載した書面が掲示されることになっています。インターネットの利用ができる環境がない方は、直接国立印刷局本局に行くことで官報の内容を確認できます。

官報掲載事項記載書面

官報掲載事項記載書面は、手数料(+送料)を負担することで、官報サービスセンターを通じて発行してもらえます。
官報サービスセンターは、官報の電子化前に紙の官報を販売していた官報販売所のことです。

官報情報検索サービスで閲覧

官報情報検索サービスは、インターネットで過去の官報のデータベースを検索し、必要な情報を閲覧できます。
このサービスを利用するには有料の会員登録が必要で、利用規約において「不正の目的を持って利用する行為」「第三者を誹謗及び中傷する行為又は名誉を傷つけるような行為」「第三者の財産、プライバシーを侵害する行為又は侵害するおそれのある行為」などを行ってはならないと定められています。

自己破産で官報に掲載されるデメリット

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 官報を閲覧した方に自己破産をしたことを知られてしまう

自己破産をして官報に掲載されると、何かデメリットはありますか?

官報を閲覧した方に、自己破産をしたことや住所、氏名といった個人情報を知られてしまうというデメリットがあります。

自己破産をすると、破産者の住所、氏名が官報に掲載されます。
官報は発行から90日間であれば誰でも無料で特別な手続もなく閲覧できるので、自己破産という破産者の名誉、プライバシーにかかわる情報が、不特定多数に知られるおそれがあります。
これが自己破産で官報に掲載されるデメリットと言えます。

官報に掲載されても日常生活に影響する可能性は少ない

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 官報を日常的に閲覧している方はほとんどいない
  • 官報には検索機能がない

官報に掲載されるデメリットがあるなら、自己破産をしない方がいいんでしょうか?

官報に掲載されると言っても官報を日常的にチェックしている方はほとんどいないので、日常生活に影響が出る可能性は低いといえます。ですから、官報に掲載されることは自己破産をするかどうかを決めるにあたって、それほど重視しなくてもいいでしょう。

官報を日常的に閲覧している方はほぼいないため

官報は誰でも無料で閲覧することができるので、自己破産をしたことが第三者に知られるリスクがないわけではないものの、実際に官報を日常的に閲覧している方はほとんどいないのが現状です
官報を日常的に閲覧しているのは、税務署、金融機関、破産者の所有する物件の任意売却などを行う不動産業者など、業務上の関連を有する方に限られます。
また、有料の官報情報検索サービスには日付やキーワードによる検索機能がありますが、無料で閲覧できる官報には検索機能がありません。官報に掲載されたとしても、近隣住民や友人、職場の同僚等に自己破産したことを知られる可能性は低いと言っていいでしょう。

まとめ

自己破産をすると、国の機関紙である官報に氏名や住所などが掲載されます。官報に掲載される機会は最大2回で、手続の開始決定と免責許可決定のタイミングです。
もっとも、一般の方が官報を閲覧する機会はほとんどないこと、官報には膨大な情報が掲載されることから、官報に掲載されても、そこから知人などに知られてしまう可能性は非常に低いです。
ただし、官報に掲載された自己破産の情報を、インターネットで公開された事件が過去に発生した点には注意しましょう。自己破産について情報をみだりに公開された場合には、できるだけ早く弁護士に相談するのがおすすめです。