
- 警備員は自己破産をすると欠格事由になる
- 欠格事由に該当すると事実上職を失うことになるので自己破産をすることはできない
- 任意整理や個人再生をする
【Cross Talk 】警備員なのですがどうして自己破産ができないのでしょうか。
借金返済ができなくて困っています。私は警備員なのですが、警備員は自己破産ができないと聞きました。
自己破産ができないわけではないのですが、警備員の資格を用いて警備員としての仕事をすることができなくなる期間があるので、警備員の仕事をしながら自己破産をすることができないのです。ですが対応方法はあります。
そうなんですね!仕事を失うのは困るので、是非方法を教えてください。
自己破産について、警備員など一定の職種の方は利用できない、と説明されることがよくあります。警備員だからといって自己破産をすることができないわけではないのですが、自己破産手続きによって警備業法上の欠格事由となります。欠格事由となると警備員として働くことが出来なくなるため、警備員として働き続けることを望む場合、自己破産は向かない手続きです。
このような場合でも他の債務整理方法である任意整理や個人再生を利用することで、債務整理を行うことは可能です。
警備員は自己破産できないとする理由は?

- 警備員は自己破産をしていると欠格事由となる
- 警備員の仕事を続けながら自己破産をすることはできない
警備員が自己破産をすることができないと説明されるのは何故でしょうか。
警備業法14条、3条1号の規定により、「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」は警備員となってはならないとされています。そのため仕事を続けるのであれば自己破産手続きが利用できないということになるためです。
警備員は自己破産をすることができないとするのは何故でしょうか。
警備員にとって自己破産は欠格事由
警備員の仕事は、施設の管理を行ったり、現金や貴金属の盗難に備えるなど、財産に対して関与の深い仕事です。
そのため、警備業法において規制がされています。
警備業法14条は、警備員となってはならない方について規定しており、同法3条1号に該当する者、すなわち、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者は警備員となってはならない規定されています。
自己破産手続きを利用して破産手続き開始の決定を受けた場合、警備業法14条の規定により、復権するまで警備員として働くことができないのです。
この規定のことを欠格事由と呼んでいます。
この要件の確認は、警備会社に入社する際に市区町村において、自己破産手続きを行っていない旨の証明書の取得を必要としており、確認をすることになります。
さらに、自己破産をすると官報で公告をするのですが(破産法10条)、この官報を警備会社がチェックしている場合があります。
宅建士・保険募集人など、他人の資産を預かる資格で業務をしている方についても同様の欠格事由があります。
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自己破産ってどんなもの?メリットデメリットとは?
警備会社で警備業務と関係がないところで働くこと(事務など)は可能
自己破産で警備員が欠格事由となってしまっても警備業法2条に規定がある警備業務につくことができないだけで、警備会社の事務の仕事をする分には問題ありません。
ただし、事務の仕事のポジションが空いていて、これらの仕事をするのに十分なスキルがあることが前提条件となるので、会社側が必ず配置転換を認めるとは限りません。
欠格事由はいつからいつまで?
欠格事由は裁判所による破産手続開始決定が行われたときから始まります。
自己破産の手続きを弁護士・司法書士に依頼して、費用を分割払いにする場合には、申立てをするまでに6ヶ月~1年程度はかかるので、依頼してすぐに欠格事由となるわけではありません。
欠格事由は復権をすると終了します。自己破産手続きが終了して免責許可が決定し、官報に公告がされ、その翌日から2週間以内に債権者の不服申立てがなければ免責許可決定が確定します。
破産手続開始決定から免責許可決定が確定するまでは、事案によりますが、およそ4ヶ月~5ヶ月程度かかると考えておきましょう。
警備員が借金返済に困ったときの対処方法

- 任意整理や個人再生であれば欠格事由にあたらない
- 復権したら就職をすることはできる
家族もいるので今の仕事をやめるのは難しいです。債務整理は諦めたほうが良いでしょうか。
いいえ、債務整理は自己破産だけではなく、任意整理・個人再生といった手続きもあるので検討してみましょう。
警備員が借金返済に困ったときに、仕事を続ける前提であれば自己破産をすることはできません。
ただし、借金返済に困ったときの方法としては、自己破産のみではないので、他の手段を検討してみましょう。
任意整理
任意整理とは、裁判所を通じた手続きをとらず、直接債権者と交渉して借金を減額させる方法をいいます。
貸金業者を選んで個別に契約を行うもので、自己破産や個人再生のように法律に基づいた制度ではありません。
そのため、欠格事由になることもありませんので、警備員の方でも仕事についたまま利用することが可能です。
ただし、任意整理は元金を36回~60回分割(3年~5年)で分割する必要があります。
例えば、200万円の借金がある場合には、3万4千円~5万6千円を毎月返済できることが必要です。
これらの返済ができない場合には任意整理ができないので、次の個人再生を利用します。
任意整理の手続きについては「任意整理とは?~任意整理の手続やメリット・デメリットを解説!~」にて解説していますので、確認してください。
個人再生
個人再生とは、裁判所に申立てをし、不動産などの資産価値の高い財産を持っていない場合には、債務額に応じて借金を法律の定めに従った金額に減額してもらい、これを分割して返済する手続きのことをいいます。
任意整理で必要となる返済ができない場合でも、元金を減額してもらったうえで3年の分割返済にすることができ、かつ自己破産ではないので欠格事由にもあたりません。
関連記事:
自分は個人再生できるの、できないの?利用条件・向いている人とは!?
自己破産後に復権してから就職
収入が低く、任意整理・個人再生すらできない場合、自己破産をせざるをえません。
しかし、上記のように復権をした後であれば警備員として復職することも可能です。
債務額が大きくなりすぎて、自己破産しか手段はない、となると警備員を続けることが難しくなるので、債務整理の相談は早めに行うようにしてください。
警備員の借金問題は弁護士への相談がおすすめ

- 借金問題の対処方法には複数の選択肢がある
- 弁護士に相談することで各自の事情に合わせた適切な対処方法を選択することができる
自己破産以外にも借金問題の対処方法があることはわかりましたが、どれを選べばいいのですか?
債務の総額や毎月の返済可能額、職場の協力が得られるか等、人それぞれの事情がありますから、どの対処方法がふさわしいと一概には言えません。ですから、警備員をしていて借金問題にお悩みの方は、専門家である弁護士に相談するといいでしょう。
警備員をしている方が自己破産をすると、復権するまでは警備業務に就くことができません。職場内での配置転換など、職場の協力が得られない場合には、退職あるいは休職して自己破産をするか、警備員を続けるために他の債務整理をするかを決めなければなりません。
自己破産以外の債務整理の方法としては、任意整理、個人再生といった方法がありますが、自己破産と違って債務が完全になくなるわけではなく、分割による返済をしていく必要があります。任意整理と個人再生を比較すると、借金減額の効果は個人再生の方が大きいと言えますが、任意整理には時間や費用、手続きに対する労力の負担が少ない、整理の対象とする債務を選ぶことができるというメリットがあります。
このようにみると、警備員の借金問題といっても、どの対処方法がふさわしいかは人それぞれで、各自時の事情に応じた適切な方法を選択する必要があると言えます。
ですから、警備員をしていて借金問題にお悩みの場合は、まず弁護士に相談をして、借金の総額、毎月返済可能な額、職場の協力が得られる可能性があるか等を正確に伝え、どの対処方法が適切かを検討してもらうといいでしょう。
まとめ
このページでは、警備員が自己破産できない、といわれるのがなぜなのかについてお伝えしました。
警備員だからといって自己破産ができないわけではないのですが、欠格事由という仕組みがあるために、仕事を続けながら自己破産をすることができないことはご理解いただけたかと思います。
とはいえ、債務整理は自己破産だけではなく、任意整理・個人再生という手段もあるので、債務額が大きくなりすぎないうちに弁護士・司法書士に相談をしてみてください。