
- 自己破産によって口座が凍結される場合がある
- 銀行口座が凍結された場合の対処法
- 自己破産後も口座の開設は可能
【Cross Talk】自己破産をすると口座は凍結される?その後、口座開設は可能?
借金の返済ができなくなって自己破産を考えています。自己破産をしたときに銀行の口座が凍結されて使えなくなると聞いたのですが、本当ですか?別の口座を作るのも難しいですか?
特定の条件のもとでは凍結されることもありますが、いずれ利用はできるようになります。また、他の銀行の口座を開設できなくなるということもありません。
借金の返済ができなくなったときに、裁判所に申し立てることで支払義務が免除(免責)される手続が自己破産という手続きです。
自己破産に限らず債務整理の手続きを開始すると、後述するように、一定の条件のもとに口座が凍結されることがあります。この場合でも永久に凍結されるわけではなく一定期間のみに限られます。また新しい銀行口座をつくることも基本的には妨げられません。自己破産をする場合の銀行口座に関する知識をまとめました。
自己破産とは

- 自己破産は債務整理の一つの方法
- 借金(債務)を免責してくれるという特徴のある手続き
自己破産手続の概要をまず教えてもらって良いですか?
債務整理手続の中でも、借金免責の可能性があり、経済的な更正を目指す手続きです。
まず、自己破産手続の概要についておさらいしましょう。
月々の借金返済が難しくなった場合、毎月の返済を軽くしたり、借金を免除することができる手続きがあります。それが債務整理という法律的な手続きです。主に債務整理には、返済条件を整理して返済をしていく任意整理・個人再生と、返済の免除を目指す自己破産の3つの手続きがあり、いずれかを利用することになります。
自己破産は、裁判所から免責が認められた場合、返済義務がなくなるため、経済的な更正をいち早く行うことができるという大きなメリットがあります。
自己破産により銀行口座が凍結される可能性がある

- 銀行口座がある銀行に借り入れをしている場合には凍結されることがある
- 凍結は一時的
自己破産をすると銀行口座は全て凍結されるのですか?
全て凍結されるわけではなく、使っている銀行口座に関連した金融機関に借金がある場合には凍結されることになります。
自己破産をすると、銀行口座は凍結されてしまうのでしょうか。
銀行から借入金がある場合にその銀行の口座が凍結される
以上のように、預金のある銀行から借り入れをしている場合に自己破産手続を利用すると、相殺という手続きが行われます。これは、銀行口座の中の預金をいつでも引き出すことができる状態にしておくと、銀行が相殺をするための事務手続を踏んでいる間に預金者がATMなどから預金を引き落としてしまうからです。
そのため、銀行はこれを阻止するために、口座から自由に引き落としができないように凍結手続をとります。この凍結は銀行が相殺を行うためにする手続きですので、相殺の手続きが終われば凍結が解除されます。
銀行口座が凍結される期間
では、どのようなタイミングで口座が凍結され、どのようなタイミングで凍結が解除されるのでしょうか。債務整理は通常弁護士・司法書士に依頼をして行います。
依頼を受けた弁護士・司法書士は、債権者に対して、債務整理に関する依頼を受けたという旨が記載された「受任通知」というものを債権者に郵送します。
金融機関としては、口座内の預金と借り入れを相殺して返済を受けたことにする必要があるので、この受任通知を受け取った時点で凍結に進みます。口座が凍結されてから、預金と銀行の債権の相殺を行いますが、その事務のために通常1ヶ月~3ヶ月程度を要するようです。凍結が解除されるのはその後になります。
口座が凍結されるとどうなる?

- 口座が凍結されると引き出し・引き落とし・振り込みなどの口座を使って行うことができない
- 口座のお金は借金と相殺され、場合によっては強制解約させられることもある。
口座が凍結されるとどうなるのですか?
引き出し・引き落とし・振り込みなどができなくなって、口座の中のお金は借金と相殺されます。場合によってはそのまま強制解約されることもあります。
口座が凍結されるとどうなるかを確認しましょう。
お金の引き出し・引き落とし・振り込みができなくなる
まず、銀行口座がある方ができる、口座のお金の引き出し・お金の引き落とし・振り込みができなくなります。
ATMでカードを入れても、窓口やコールセンターに連絡するように画面が表示され、これらの操作ができず、窓口に行っても現在口座が凍結されている旨が伝えられ、督促などの担当部署への連絡を促されます。
預金は借金と相殺される
凍結された口座の預金と借金は相殺されます。
これは、借金の返済に預金をあてるもので、例えば30万円の借り入れをしていて、銀行に10万円お金を預金している場合には、10万円は30万円の返済にあてられて、残りの借金が20万円として残る状態になります。
これは民法505条に定められている相殺という法律行為に基づくものです。
口座が強制解約される可能性がある
多くの場合で相殺がされ、再度口座が利用可能になるのですが、銀行など金融機関によっては、返済不能な状態に陥った場合には強制解約となることが契約で明記されている場合があります。
その銀行との関係で口座が解約されるだけなので、他の銀行に口座をつくることになります。
自己破産で口座が凍結される前にやった方がいいこと

- 口座が凍結される前に現金を引き出す
- 口座に給与が入ったり引き落としがかからないようにする
自己破産をする場合に口座が凍結される前にやるべきことはありますか?
口座が凍結される前に口座の中にある現金を引き出す、給与振り込み口座になっている場合には振り込み先を変更する、各種引き落としの口座にしている場合には、別の口座に変更するなどが必要です。
自己破産で口座が凍結される前には、次のようなことをやっておきましょう。
口座凍結前に預金を引き出す
口座凍結される前に預金を口座から引き出しましょう。
相殺は預金口座の残高と借金の金額をもとに行われます。
そのため、預金口座を引き出してしまえば、金融機関は相殺をすることができません。
時間がなく窓口や小銭を引き出せるATMに寄れない場合には、できる限り引き出して、生活に影響が及ばないようにします。
ただし、引き出した預金は適切に管理することが求められます。
給与の振込口座を変更する
預金を引き出した後に、その口座に給与などが振り込まれると、振り込まれた預金と借り入れが相殺がされてしまいます。
給与が相殺されたり、引き出しができなくなれば、その先の生活に影響を与えることになるので、給与の振込口座の銀行がどこであるかを必ず確認し、場合によっては振込先である銀行を変更するようにしましょう。
料金の引き落とし口座を変更する。
口座凍結前に預金を引き出し、給与振込口座を変更すると、その口座は0円ないしこれに近い状態になります。
そうすると、その口座を使って毎月家賃や、電気・ガス・水道などの公共料金、サブスクなどを口座引き落としをしている場合には、残高が足りずに支払いが延滞してしまうことになります。
そのため料金の引き落とし口座も必ずすぐに変更するようにしましょう。
なお、これらは自己破産を弁護士に依頼すれば必ず指示されるものなので、ここで対応を全て記憶・メモしておく必要はありません。
自己破産すると債務者名義の全ての銀行口座が調査対象

- 債務者名義の銀行口座は全て調査の対象になる
- 家賃や公共料金の支払いをしている家族名義の口座も調査の対象になる
自己破産をすると口座を調べられると聞いたのですが、どこまで調べられるのですか。
債務者名義の銀行口座は全て調査の対象になります。また、同居の家族名義の口座から家賃や公共料金が支払われている場合などは、家計の状況を明らかにするために家族名義の銀行口座も調査の対象になります。
自己破産が認められるには、債務者が支払不能な状態にある「支払不能」という条件が必要です。支払不能といえるかどうかを判断するには、裁判所に対して、債務者の財産の有無や現在の生活状況を明らかにする必要があります。
また、自己破産の大きなメリット借金を免除してもらえること(免責)がですが、浪費など一定の事由がある場合には免責が認められません。
そのため、自己破産をする際、債務者名義の銀行口座については、預金の種類を問わず全ての口座が調査の対象になります。具体的には、所定の期間(裁判所によって異なりますがおおむね1~2年)の全ての銀行口座の通帳の写しや、入出金明細を提出する必要があり、裁判所は提出された通帳等を精査して、財産隠しや浪費等の免責不許可事由がないかをチェックします。
なお、自己破産は債務者個人を対象とする手続なので、基本的に債務者以外の家族の財産は調査の対象にはなりませんが、例外的に家族名義の銀行口座が調査の対象になることもあります。
家族名義の銀行口座が調査の対象になるのは、同居する家族の名義の銀行口座から家賃や公共料金が支払われている場合です。このような場合、家族名義の口座も調査しないと、家計全体のお金の流れを明らかにすることができないので、必要な範囲で家族名義の口座の通帳の写し等を提出しなければならないのです。
自己破産をしても新たな銀行口座の開設は可能

- 自己破産後も銀行口座を開設することは可能
どうやらクレジットカードの引き落とし口座を日常生活に使っているので、給与振り込み・水道光熱費の引き落としは別の銀行にしたほうがよさそうなのですが、自己破産手続によって銀行口座を作ることができないということはありませんか?
はい、口座を作ること自体は禁止されるものではありません。ただし開設する時期によっては、裁判所に報告する必要があります。
自己破産手続の利用をはじめた、裁判所への申立てをした後に銀行口座を作ることはできるのでしょうか。自己破産手続を利用しても、口座の開設は自由に行うことができます。ただし、申立て前に銀行口座を作ったような場合には、その口座もきちんと裁判所に届け出る必要があるので注意をしておきましょう。
まとめ
このページでは、自己破産と銀行口座に関する問題についてお伝えしてきました。
知識を整理して不利益を受けないようにしておかないと、生活費を引き出せなくなるなど生活に大きな影響を与えることになります。また、特定の債権者を優遇して借金を返済した(偏頗弁済)と認定された場合、借金が免除されないなどの不利益が生じる可能性があることに注意が必要です。