任意整理と過払い金請求の手続きの違いを詳しく解説いたします!
ざっくりポイント
  • 任意整理で元金が減るのも過払い金請求ができるのもグレーゾーン金利が原因
  • 取引履歴を入手して利息制限法による引き直し計算をすることは同じ
  • 引き直し計算により過払いの事実が判明すれば過払い金を請求する

目次

【Cross Talk 】任意整理と過払い金請求は何が違うの?

借金の毎月の返済が苦しいので何とかしたいと思っています。借金を整理するには任意整理とか過払い金請求をすればいいとよく聞くのですが、どう違うのですか?

債権者から取引履歴を取り寄せて引き直し計算をし、元本を減らすという点は共通しています。計算の結果、元本が残る場合には債権者と交渉して返済額等の見直しをします。これが任意整理です。計算の結果、計算上は元本がなくなった後も返済していたということが判明すれば、債権者に対し、払いすぎたお金を返すよう求めます。これが過払い金請求です。

途中までの流れは同じなんですね。

そのとおりです。借入の時期や期間などで元本が残るか過払いになるかはある程度予想できますが、正確なことは引き直し計算をしてみないとわからない、ということになりますね。

任意整理と過払い金請求の手続きの流れとは?

借金でお悩みの方の中には、任意整理や過払い金請求という言葉は聞いたことがあるが、どう違うのか、自分はどちらをすればいいのか、といった疑問をお持ちの方がいらっしゃると思われます。
そこで今回は、両者の違いや手続きの流れについて解説いたします。

任意整理で元金が減る理由と過払い金請求ができる理由

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • グレーゾーン金利の取り扱いが共通
  • 他に債務がある場合には過払い金を減資に返済をする

どうして元本が減ったり払い過ぎになったりするんですか?

元本が減るのも過払いになるのも理由は共通で、2010年まで多くの消費者金融業者が利息について「グレーゾーン金利」と言われる高い利率を定めていたことが原因です。

両者に共通するのはグレーゾーン金利の取り扱い

金銭消費貸借契約の利息については、利息制限法や出資法という法律が利率を制限しています。
利息制限法では、元本の額が10万円未満の場合は年20%、10万円以上100万円未満の場合は年18%、100万円を超える場合は年15%が、利率の上限とされています。
もっとも、この制限は民事上のものであり、この制限を超える利率で貸し付けをしたとしても直ちに刑事罰を受けるわけではありません。
これに対し、出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締理に関する法律)では高金利の貸付けを処罰する(刑事罰を科す)ことが定められており、かつては業として金銭を貸し付ける場合の利率の上限は年29.2%とされていました。

二つの法律が定める利率の上限が一致しないため、利息制限法の利率の上限を超えるが、出資法の利率の上限を超えない範囲の利率が存在することになります。この、民事上は違法であるが刑事罰は科されない範囲の利率のことを、シロでもクロでもないということで「グレーゾーン金利」といい、かつては多くの消費者金融業者がグレーゾーン金利で貸し付けを行っていました。

債務者が約定通りグレーゾーン金利で計算した利息を払った場合、民事上適法とされる金額を超える利息を払ったことになります。
この払いすぎた利息については、裁判例によって次のような取扱いが確立されました。

・払いすぎた利息は元本の返済に充当する
・計算上は元本がなくなった後も返済を続けていた場合、払いすぎた金員(過払い金)の返還を求めることができる

例えば、100万円を年利24%で借りて1ヶ月後に5万円を返済した場合を想像してください(実際の計算はより複雑で、以下の計算は厳密には不正確ですが、イメージをつかみやすくするために簡略化しています)。
約定通りであれば利息は2万円(100万円×0.24÷12)で残る3万円が元本の返済に充てられるので、残る元本は97万円になるはずです。
ところが、上記の取扱いによれば、払った5万円のうち利息に相当するのは1万2500円(100万円×0.15÷12)だけということになり、残りは元本を返済したことになるので、返済後の元金は96万2500円になります。
つまり、消費者金融業者が約定利率で計算した元本よりも、実際の元本は少なくなっているのです。

これを長期間繰り返せば、業者が計算した約定利率による元本と実際の元本の差額はどんどん大きくなり、やがては実際の元本はゼロになります。債務者がそのことに気付かず、その後も約定通りの返済を続ければ、元本はマイナス(払い過ぎ)になります。
これが任意整理で元本が減ったり、過払い金が発生したりするメカニズムです。

残額がある場合で過払い金が残額よりも少ない

[両者に共通するのはグレーゾーン金利の取り扱い]で解説した通り、長期間にわたりグレーゾーン金利で取引をしていた場合、過払い金を請求できる可能性があります。
ただし、複数の借入がある場合、過払いになるもののほかに、利息制限法の範囲内の利率による借入等、債務が残ることもあるでしょう。

そのような場合の対応については、過払い金の額と残債務の額によって対応が異なります。
まず、残債務額の方が過払い金より多い場合、過払い金を回収しただけでは借金問題を完全に解決できたことにはなりません。
基本的には、過払い金を原資として債権者に一部免除を認めてもらって一括返済する等、その機会に借金問題を一気に片付けるのが理想でしょう。
もっとも、住宅ローンを滞納して一括弁済を求められている場合など、過払い金では到底足りない債務を負っている場合もあります。

そのような場合には、別途自己破産等を検討する必要があります。

残額がある場合で過払い金が残額よりも多い

過払い金が残債務より多い場合は、過払い金を原資に残債務を返済するのが一般的です。
ここでも一括弁済を前提に、債務の一部免除をしてもらえないか債権者と交渉することになるでしょう。

完済している場合

[残額がある場合で過払い金が残額よりも少ない]、[残額がある場合で過払い金が残額よりも多い]場合と異なり、借金を完済済み(業者の計算によっても完済済み)である場合、過払い金を回収するだけということになります。

ただし注意が必要なのは、現在では基本的に過払い金は発生しないこと、過払い金には消滅時効があるということです。

2010年の法改正によりグレーゾーン金利が事実上撤廃されました。そのため、法改正後に貸金業登録をしている貸金業者から借入をした場合、過払いになることはまずありません。
言い換えれば、過払い金を請求できるのは、2010年の法改正以前にグレーゾーン金利で取引を開始したものに限られます。

また、そのような取引で過払いが発生したとしても、最終の取引日から10年が経過すると、過払い金の返還請求権は時効により消滅してしまいます。
現在残っている過払い金は、すでに時効が完成しているか時効の完成が間近に迫っているものが多いので、早急な対応が必要となります。

任意整理と過払い金請求の手続きの流れ

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 取引履歴をもとに引き直し計算をすることまでは同じ
  • 業者が過払い金の返還に応じない場合は訴訟を起こす

グレーゾーン金利についてはよくわかりました。実際に任意整理や過払い金請求をする場合、どのような流れで手続が進むのですか。

どちらも業者に取引履歴を開示してもらい、グレーゾーン金利で払った利息について利息制限法の上限を超える額を元本に充当したものとして、残元本を計算し直すという流れは同じです。
その結果、払い過ぎになっていれば、業者に対し過払い金の返還を請求することになります。

手続きは基本的には同じ

【任意整理で元金が減る理由と過払い金請求ができる理由】で解説した通り、任意整理で元本が減るのも過払い金が発生するのも、グレーゾーン金利と利息制限法の定める上限利率との差額を元本に充当したと扱うためであることは共通しています。
したがって、任意整理も過払い金請求も、基本的な流れは同じで、上記の差額がどの程度の額になっているかを明らかにする必要があります。

弁護士に依頼をする

任意整理も過払い金の請求も、上記の差額を明らかにするだけではなく、明らかにした差額を基に業者と交渉する必要があります。
差額の計算にも業者との交渉にも専門的な知識、経験が必要になるので、弁護士に依頼をするのが望ましいと言えます。

貸金業者に取引の履歴を求めて引き直し計算を行う

依頼を受けた弁護士は、貸金業者に対し、受任通知という書面を送付し、依頼を受けたことを明らかにするとともに、取引の履歴の開示を求めます。
取引履歴とは、いついくらどのような利率で借りたのか、あるいはいついくら返したかという取引の記録を時系列に整理したものです。
貸金業者がグレーゾーン金利で貸し付けを行っていた場合は、取引履歴の日時や金額を基に、利息制限法の上限利率による利息を計算し、それを超える返済を元本に充当したものとみなし、残債務額を計算し直します。これを引き直し計算といいます。

貸金業者と交渉をする

引き直し計算の結果、元本は減ったが残った場合、弁護士が貸金業者と、残る債務の返済条件等について交渉します。

また、引き直し計算の結果、過払い金が発生した場合には、弁護士が貸金業者と、過払い金の返還について交渉します。

貸金業者に訴訟を起こす

過払い金が発生した場合に、交渉によってどの程度(何割程度)返還に応じるのか、返還の時期はいつごろか、といったことは、貸金業者によって対応が異なります。
ただ、最近では、請求額の満額やそれに近い額、あるいは請求から短期間での返還に応じる貸金業者はあまりありません。
交渉では何カ月も先に、しかも相当に減額した額しか返還に応じない貸金業者も珍しくありません。

そこで、貸金業者の提示する返還額に納得できない場合には、弁護士に依頼して速やかに過払い金の返還を求める訴訟を提起してもらうことも選択肢に入れるといいでしょう。

まとめ

任意整理と過払い金請求の違いについて解説しました。
「完済している場合」で解説した通り、過払い金請求には時効があり、時効期間が経過してしまうと過払い金請求ができなくなってしまいます。
本稿を参考にしてご自身の返済が過払いになっている可能性があると思われる方は、早急に過払い金請求に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

この記事の監修者

弁護士 岩壁 美莉第二東京弁護士会 / 東京第二弁護士会 司法修習委員会委員
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