自己破産をすると会社をクビになるって本当?自己破産のデメリットについて正しく理解しましょう。
ざっくりポイント
  • 自己破産したことが会社に知られたり、解雇されたりすることは基本的にない。
  • 一定の職業
  • に就いている場合など、例外的に会社に知られたり解雇されてしまうことがある。

  • 自分が自己破産したときどのようなデメリットがあるかは専門家である弁護士にご相談する。

目次

【Cross Talk 】自己破産したことを会社に知られてしまいクビになることはある?

私はサラリーマンをしている30代の男性です。20代の頃にギャンブルが理由で借金を重ねてしまい、現在4社から総額で500万円程度の借り入れがあります。毎月の給与は手取りで25万円程度ですが、最近毎月の返済が厳しくなってきました。

手取りが25万円で残高が500万円でしたら、完済するまでにはかなりの時間がかかると思われます。返済の見通しが立たないなら自己破産を検討してはいかがでしょうか。

自己破産をすべきだとは思うのですが、もしも自己破産をしたことが会社にバレてしまったら、クビされてしまうのではないかと不安を感じています。うちの社長は非常に厳しい人で、ギャンブルが原因で破産したなどということがバレたら、そんなだらしない従業員は雇えないと言われるかもしれません。

通常、自己破産をしたからといって解雇されることはありません。そもそも自己破産をしたことを会社に知られるおそれもほとんどありませんので、ご心配は不要です。ただし、例外がないわけではありません。

そうなのですね。それを聞いて少し安心しましたが、どのような場合に解雇や、自己破産をしたことを知られてしまうのか、詳しく教えていただけますでしょうか。

自己破産を理由に解雇されることはないし、会社に知られることも普通はないが、例外はある。

破産は法律に基づいて借金を帳消しにしてもらうことができる制度です。
破産をすると会社に知られてしまうのではないか、会社をクビになるのではないかと心配される方もいらっしゃいますが、基本的にそのようなことはありません。ただし、一部の職業に就いている場合などには自己破産をすると仕事ができなくなってしまうこともあります。

自己破産で解雇される可能性は

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 解雇には懲戒解雇と普通解雇がある。
  • 自己破産したことを理由として懲戒解雇とすることはできない。
  • 一部の職種では自己破産したことで仕事ができなくなり普通解雇される可能性がある。

通常、自己破産を理由に解雇されることはないと仰いましたが、それはなぜでしょうか?

日本の法制度では解雇は非常に厳しく制限されており、よほど重大な理由がなければ一方的にクビにすることはできません。自己破産というのはあくまで個人的な事情であり、業務に直接影響する事由ではありませんので、解雇は認められないのです。

なるほど。たしかに不当な解雇を理由とした損害賠償という話はよく聞きますね。解雇についてもう少し詳しく説明していただけますでしょうか。

解雇をするための法律の規定は?

会社が一定の事由に基づくペナルティとして従業員を解雇することを「懲戒解雇」といいます。たとえば横領を働いた場合や、故意で会社の情報を漏洩させた場合など、重大な非違行為を働いた場合に懲戒解雇の対象となります。

会社が従業員を懲戒解雇するためには、どのような事由があったときに解雇となるのか就業規則に規定されている必要があります。そもそも就業規則がない場合は懲戒解雇とすることはできません。
懲戒解雇の他に「普通解雇」と呼ばれるものもあります。普通解雇とは、病気や怪我で長期間回復の見込みがなく業務に支障が生じている場合や、職務遂行能力が欠如している場合に解雇の対象となるものです。

労働基準法第30条には、従業員を解雇するためには少なくとも30日前までに予告を行わなければならないと規定されています。予告が30日に満たない場合には、その満たない日数分の平均賃金を支払わなければなりません(これを「解雇予告手当」といいます。)

この規定だけ見ると、「30日前に予告するか、解雇予告手当を支払えば解雇はできるのか」と思われるかもしれません。ところが懲戒解雇であれ普通解雇であれ、会社が従業員を解雇することは簡単ではありません。

労働契約法第16条には「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されており、「客観的に合理的な理由があること」「社会通念上相当であること」が解雇の要件とされています。これらの要件を満たさない解雇は違法となり、違法に解雇された従業員は会社に慰謝料や解雇された日、以降の賃金を支払うよう求めることができます。

自己破産では基本的に解雇をすることができない

では、自己破産したことを理由として会社が従業員を解雇することは可能なのでしょうか。
結論から申し上げると、原則として自己破産したことを理由に会社を解雇されることはありませんし、仮に解雇されたとしたらそれは不当解雇にあたることになります。

なぜなら、自己破産したという事実はあくまで私生活上の問題であって会社の業務とは何ら関係がないからです。私生活上の問題であっても、犯罪行為により著しく会社の名誉や信用を失墜させたことが客観的に認められる場合には懲戒処分が認められることがありますが、自己破産したことのみを理由として懲戒解雇をすることは明らかに違法です。

したがって、もし自己破産を理由に懲戒解雇されたとしたら不当解雇にあたるとして解雇は無効であると主張することができます。

自己破産で解雇になる場合

自己破産を理由に解雇されることは基本的にないと申し上げましたが、全くありえないかというと残念ながらそうではありません。自己破産したことで結果的に解雇されてしまうケースとして、職業制限で業務ができなくなったことにより普通解雇となる場合が挙げられます。

詳しくはこの後に詳しくご説明いたしますが、たとえば保険募集人として会社に雇用されている場合、自己破産をすると一定の期間は保険募集人としての業務ができないことになります。
この場合は「保険募集人として勤務する」という内容で雇用契約を締結したにもかかわらず、自己破産してしまったせいで契約の内容に沿った労務の提供ができないことになり、先ほどご説明した客観的に合理的な理由がある、社会通念上相当である、と判断される可能性があります。

本来の業務ができない期間にもよりますが、このような場合に会社はその従業員との雇用契約を解除することができる場合があります。

そもそも会社に知られたくない

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産したことを会社に知られる可能性は極めて低い。
  • ただし、例外的に会社に発覚してしまう場合が典型的なパターンが2つある

「自己破産をしたことを会社に知られるおそれはほとんどない」と仰いましたが、「ほとんど」というのはどういう意味でしょうか?

自己破産したことを周りの方や勤務先に知られてしまう現実的な可能性はほとんどありません。ただし、典型的な例外が大きく分けて2つあります。一つ目は勤務先から借り入れをしていた場合、そして二つめは職業制限に該当する場合です。

三つ目の職業制限という話は先程も出てきましたが、どういう意味なのでしょうか。他の2つの例外も含めて教えていただけますでしょうか。

自己破産をすると会社に知られるのか

いくら解雇されないとはいっても、自己破産したことを会社に知られたくないという方は多いことと思います。「自己破産をしたことが会社にバレるのではないか」という心配から自己破産を躊躇している方もいらっしゃるかもしれません。

自己破産をしたとしても基本的に会社に知られることはありません。正確には、破産したことが周囲の方に知られる可能性は「完全にゼロではないが、限りなくゼロに近い」といえます。
自己破産したという事実そのものは公にされます。自己破産を裁判所に申立てると、「官報」に住所や氏名が公開されます。官報とは法改正、国家試験の合格者、そして破産した会社や個人の情報等が掲載された国の刊行物で、各都道府県にある官報販売所で販売されているほか、インターネットでも閲覧することができます。

しかし、官報を毎日くまなくチェックしている人は金融機関など一部の業種の従業員に限られます。一般の方は知り得る機会はほとんど皆無といって問題ありません。
このコラムを読んでいる皆様が官報を読んだことがないように、通常他の人も日常的に官報を読む人はいません。
不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的に破産をしても会社に知られることはないと考えていただいて問題ありません。

会社に知られる典型的なパターン2つ

しかし、例外的に破産をしたことが会社に知られてしまう典型的な例があります。それは次の2つのパターンです。

・一つ目のパターンは会社から借り入れをしている場合です
裁判所に破産を申立てると、申立て人が提出した債権者一覧表に基づいて債権者に「破産手続開始決定」が送付されます。

会社から借り入れをしていれば、当然、債権者の一つである会社にも破産手続開始決定が送付されます。破産手続き開始決定には申立て人の氏名等が記載されていますので、これにより破産の申立てをしたことが発覚してしまいます。

「債権者一覧表に会社を書かなければいいのでないか」「破産を申立てる前に会社から借りているお金だけ返せばいいのではないか」と思われるかもしれませんが、このような行為は免責不許可事由に該当するため、免責が認められなくなる可能性が高いです。

・二つ目のパターンは職業制限です。一部の職業においては破産者が職業に就くことが法律によって制限されています。職業制限の対象となる職業は、弁護士、司法書士、行政書士などの士業、警備員、質屋、生命保険募集人などです。

これらの職業に就いている場合は破産手続開始決定後に資格が喪失されて仕事ができなくなってしまいます。
もっとも、免責許可決定の確定によって資格制限が消滅(復権)し、再度その職業に就くことが認められるケースがほとんどです。破産手続開始決定が出されてから免責までは概ね3カ月から6カ月程度ですので、職業制限がかかるのはその期間に限られます。

しかし、職業制限期間中は当該資格による業務ができないため、その理由を説明する際に破産の手続きをしていることを会社に説明せざるを得ません。

したがって職業制限の対象となる職業に就いている場合にはあらかじめ事情を会社に説明し、復権するまでの間は別の業務に配転してもらうなどの対処が必要となります。

まとめ

このページでは、自己破産によって解雇される可能性はあるかの解説をいたしました。
自己破産は債務者にとっては借金を帳消しにできるという大きなメリットのある制度です。他方で、自己破産をしたときのデメリットについてはさまざまな誤解が広まっています。周囲の方や勤務先に知られてクビにされてしまうというのも誤解の一つです。
自己破産をしたときにどのような不利益が生じるかは人によって異なります。自己破産のデメリットについて正しく理解するためには、専門家である弁護士にご相談するのが最善の手段です。
借金でお困りの際にはできるだけ早く弁護士にご相談することをおすすめいたします。