起業に失敗し自己破産する際の注意点と再度の起業の可否
ざっくりポイント
  • 起業をしていた場合の自己破産の可否
  • 起業をしていた場合の自己破産における手続きの注意点
  • 再度起業することの可否

目次

【Cross Talk】起業をしましたがうまくいかず自己破産をしたいのですが…

私は銀行からお金を借りて起業をしたのですが、うまくいかずに借金だけが残ってしまいました。返済もできる目途がないので自己破産をしようと思うのですが、起業に失敗したような場合でもできるのでしょうか。

はい、起業に失敗した場合でも自己破産は可能です。ただ注意点もあるので確認しましょう。

はい、よろしくお願いします。

起業に失敗した場合の自己破産と再度の起業について

起業をしたものの失敗をして借金を抱えた場合も自己破産をすることは可能です。起業をした場合には個人の自己破産の中でもいくつか注意点がありますので確認しましょう。
また失敗を活かして再度起業をする場合の注意点も知っておきましょう。

起業をして自己破産する場合の注意点

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産自体はできる
  • 起業をしていた場合の自己破産の注意点

起業をしていたときの自己破産に注意点はあるのでしょうか。

起業に失敗をしたという場合でも自己破産の利用は可能ですが、手続の上でいくつか注意点があるので確認しましょう。

起業をしたもののうまくいかず借金が残ってしまい返済ができなくなった場合に、自己破産をすることについての注意点について見てみましょう。

自己破産をすることは可能

まず、起業して失敗したとしても自己破産をすること自体は可能です。
自己破産は、借金返済ができない状態である「支払不能」という状態であれば可能なのであって、起業をしたから自己破産をすることはできない、という訳ではありません。

ただ、借金の理由が主に起業にある場合でも、一定割合で競馬・競輪・パチンコなどのギャンブル、キャバクラ・風俗などの遊興に原因があるなど、免責不許可事由がある場合には、裁量免責を得る必要があるので注意をしましょう。

起業をしていた場合には自己破産手続は管財手続で行われる

自己破産が出来るとして、手続における注意点として、管財手続になることです。
個人に関する自己破産については、管財人が選任されずに簡単に終わる同時廃止と、管財人が選任される正式な手続である管財手続があります。

起業をしていた人が自己破産をする場合には、事業に関するお金のやりとりに財産隠しがないか、直近の帳簿などを正確に調査する必要があり、管財手続になります。ただし、個人事業主であるなど起業している場合は、管財手続の中でも費用が少なくて済む「少額管財」という手続で進められるのが通常です。

管財手続になる場合には管財人が選任されることから、引継予納金が必要となります(東京地方裁判所に申し立てをする場合は、少額管財でも20万円~、その他の裁判所では50万円~になることも)。

申立時にこの金額を貯めて申し立てを行うのが通常ですが、廃業した直後に仕事を探そうとして、貯金をする余裕のない仕事の場合や、そもそも仕事が見つからないような場合もあります。
親族に助けてもらえるような場合には助けてもらう、お金をまだ用意できるうちに申し立てを行うなどの対応が必要です。

会社の場合には会社の破産と代表者の自己破産等を同時にする

会社を設立して起業をする場合には会社の破産手続を行います。このとき、代表者の自己破産も同時に申し立てることが多いです。
法的には、会社と代表者個人は別の人格であるため、会社のみ破産することも可能です。しかし、代表者個人も会社の債務について連帯保証人になっていることが多く、代表者個人も債務の弁済ができなくなる、ということが多くあります。

このような場合には、会社の破産と代表者個人の自己破産は高度の関連性がありますので、一緒に手続を行うことになります。

自己破産後の再度の起業の可否

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産後に再度の起業を禁止する法律はない
  • 起業のための資金調達が難しいのはブラックリストが原因
  • 日本政策金融公庫の再挑戦支援資金貸付

今回の起業は失敗しましたが、この失敗を活かして再度起業ができないかと思っています。

再度の起業ができないという法律はありませんが、ブラックリストなど事実上資金調達を阻む要因があります。

自己破産をした後に再度起業をすることはできるのでしょうか。

起業をしてはいけないという法律はない

まず、もし代表者が自己破産をしても、再度の起業をしてはいけないとする法律はありません。
自己破産をする際に、一部の資格に基づく職業(警備員・宅建士・保険募集人など)について職業制限がされ、免責決定がなされるまで資格が停止されることから、起業をすることもできないのでは?と思う方もいます。

これらの資格は、業務上他人の財産を取り扱う可能性があることなどから、このような制限がされているのであって、起業をすること自体を制限するものではありません。

起業のための資金調達ができない?

とはいえ、現実に起業をするのが難しいとされるのは、資金調達のための手段が限られているからです。
起業をする場合に、初期の設備投資をするために、大きな金額の借り入れをすることが通常ですが、自己破産をするといわゆるブラックリストに情報が掲載されているため、お金の借り入れをするのが難しいのです。

ブラックリストに情報が載るということは、個人の信用情報に自己破産をした記録が残っている状態をいい、この情報があると金融機関から借り入れをする際の審査に大きく影響することになります。
ブラックリストは自己破産をしてから7年~10年で消えますので、その後であれば金融機関からの借り入れも可能であるといえます。

なお、信用情報を参照しない資金調達(エンジェル投資やクラウドファウンディングなど)を利用する場合には問題にはなりません。

日本政策金融公庫の再挑戦支援資金貸付

基本的には借り入れは難しいのですが、日本政策金融公庫では、再挑戦を促すための再挑戦支援資金貸付とうものを行っています。
国民生活事業としては7,200万円を上限、中小企業事業としては7億2千万円を上限とする借り入れをすることができ、再度の起業をするための後押しをしてくれます。
借り入れについては、日本政策金融公庫のホームページによると、

新たに開業する方または開業後おおむね7年以内の方で、次の全てに該当する方

  • 1.廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人であること
  • 2.廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること
  • 3.廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること

とされています。
特に重要なのが2.の要件で、前の事業の負債がまだあるような場合で、なかなか支払い終わらないような場合には、この貸付の利用をすることはできないといえます。
実務上も前の事業の借金について自己破産などの債務整理をしていることは、2.の要件を充たすという判断がされやすくなるので、再度の起業を目指しているのであれば、債務は早めに片付けてしまうのが良いといえます。

まとめ

このページでは、起業をした人の自己破産についてお伝えしました。
起業をした人も自己破産をすることができますが、管財手続になるので、予納金がかかることは確認しておくべきでしょう。
再度の起業をするためにはブラックリストが問題となりますがブラックリストも期間があることと、日本政策金融公庫で再挑戦支援資金貸付というものがあることなども知っておきましょう。