
- 延滞金(遅延損害金)を請求されていても任意整理は可能
- 任意整理の交渉によって延滞金を全額・一部のカットができる可能性がある
- 消滅時効にかかっている場合には延滞金も含めて支払わなくて済む
【Cross Talk】遅延損害金を請求されている場合には任意整理によって減額できる可能性がある
借金の返済を延滞してしまって、貸金業者から延滞金の支払いを求められていて、その額がかなりのものになります。こうなると自己破産しかないですか?
任意整理で延滞金を全額または一部カットできる場合もありますので、まずは状況を教えてください。
裁判所の手続きをとらず、直接債権者と交渉して借金を減額させる方法である任意整理で借金完済を目指す方の中には、返済ができずに延滞金の支払いを求められている方もいらっしゃいます。
長期間の延滞により、元金の何倍もの金額に膨れ上がっているような状況もあります。このような場合にはもはや任意整理は不可能…と思う方もいるかもしれませんが、任意整理を行うこと自体を禁止するものは何もなく、任意整理を利用することによってこの延滞金を全額・一部をカットできる場合もあります。
そもそも任意整理ってなに?

- 任意整理の手続き概要を知る
借金をカットしてくれる任意整理とはどのような手続きなのですか?
任意整理とは裁判所の手続きをとらず、直接債権者と交渉して借金を減額させる方法のことをいいます。
前提となる任意整理というものについて知っておきましょう。
任意整理とは
任意整理というのは、裁判所の手続きをとらず、直接債権者と交渉して借金を減額させる方法をいいます。
銀行でも消費者金融でも契約をすると元金・利息・支払いが遅れた場合に支払うことになる延滞金(遅延損害金)の支払いをしなければならないことになっています。
任意整理は、こういった債務の支払いについて債権者と個別に交渉をして、支払いの総額・毎月の返済額をより軽いものにしてもらう手続きのことをいいます。
現在では任意整理に関する実務が積み重ねられてきているので、弁護士が貸金業者と交渉をしたならば、借金の元金を36回(3年)の分割にして支払っていく、というのが標準的な結果になっています。
つまり、A社への借入元金が50万円の場合には、将来の利息や延滞金をカットして、毎月約1万4,000円を36回にわたって支払っていく合意をするのが任意整理です。
東京三会基準とは
以上の任意整理については、「東京三会基準」に準拠したものとされています。
東京三会基準とは、債務整理についての基本方針について、東京の3つの弁護士会(東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会)が定めたものです。
その内容として、任意整理にあたって
- 貸金業者には取引履歴の開示を求めること
- 取引履歴に基づいて利息制限法の利率によって残元本を確定すること
- 任意整理にあたっては遅延損害金・将来の利息をつけないこと
などを内容としています。
任意整理のメリット
任意整理には、
- 手続きが簡単である
- 連帯保証人や担保がついている債務以外を対象に絞って債務整理ができる
というメリットがあります。
他の債務整理方法である自己破産・個人再生をする場合には、裁判所に申立てが必要です。
申立書の作成や添付書類の収集が必要で、手続きは非常に煩雑です。
任意整理は債権者と交渉をして行うのみで、申立書を作成する、添付書類を収集するなどの負担がありません。
また、自己破産・個人再生は全ての債権者が手続きに加わることになります。
そのため、連帯保証人がいる債務がある場合には連帯保証人に請求されることになります。
また担保がある場合には、担保となっているものは引き上げられてしまいます。
任意整理では連帯保証人がいる・担保がある債務を外すことができます。
遅延損害金を請求されていても任意整理自体は可能!

- 延滞金を請求されていても任意整理自体は可能
- 延滞金は全部または一部が免除される可能性もある
その任意整理は延滞金が発生している状況でも使えるのですね。
はい、延滞金が発生している場合でも任意整理はできますし、延滞金も全部または一部を免除してもらえる可能性もあります。
支払いの遅延が発生して、遅延損害金が発生している場合でも任意整理はできるのでしょうか。
遅延損害金とは
遅延損害金とは、返済日に返済しなかった場合に発生する金銭をいいます。
返済日に返済しなかった場合、元本に対して一定割合の遅延損害金を定めていることが通常で、利息とともにその遅延損害金の支払いもしなければなりません。
なお、遅延損害金は契約で定めるのですが、利息制限法によって上限が決められており、制限利息の1.46倍を超えると違法となります(利息制限法4条)。
- 10万円未満の場合には上限利率は20%なので29.2%
- 10万円以上100万円未満の場合には上限利率は18%なので26.28%
- 100万円以上の場合には上限利率は15%なので21.9%
が、遅延損害金の上限となります。
遅延損害金を請求されても任意整理は可能
遅延損害金が発生している場合でも任意整理は可能です。
任意整理については貸金業者との合意で行いますので、仮に遅延損害金が発生していたとしても、貸金業者が合意すれば任意整理は可能です。
ただし、滞納が長く遅延損害金が多く発生しているような場合では、遅延損害金の全部や一部の支払いをしなければ、任意整理に応じてもらえない可能性もあります。
そのため、延滞して遅延損害金が膨らむよりも早く任意整理をすることをおすすめします。
遅延損害金の計算方法
遅延損害金は、
で計算します。
実際にどのくらいの金額になるのかのシミュレーション
実際にどのくらいの金額になるのかシミュレーションしてみましょう。
銀行のローン
例えば、銀行のカードローンから
- 50万円借り入れ
- 毎月の返済額は2万円
- 利率12%
- 遅延阻害金17.52%
- 30日延滞
である場合には、
となります。
信販会社のキャッシング
信販会社のキャッシングは一般的に銀行よりも枠は小さいものの、金利・遅延損害金は高めです。
例えば、信販会社のキャッシングを利用して、
- 30万円借り入れ
- 毎月の返済額は1万円
- 利率15%
- 遅延損害金21.9%
- 20日延滞
であるとしましょう。
この場合には、
となります。
なお、ショッピング枠での利用もある場合には、その分の延滞も加算されるので注意しましょう。
消費者金融からの借金
消費者金融からの借金は銀行よりも枠が狭く、金利が高い点で信販会社と同様です。
例えば、消費者金融のキャッシングを利用して、
- 20万円借り入れ
- 毎月の返済額は7千円
- 利率18%
- 遅延損害金26.28%
- 25日延滞
であるとしましょう。
この場合、
となります。
期限の利益を喪失するとより深刻に
借金を延滞すると、期限の利益を喪失することになります。
期限の利益とは、返済日が来ていないものについては拒むことができる債務者側の利益のことをいいます。
例えば、30万円の借り入れをしていても、毎月の返済額が1万円であれば、1万円さえ返済していれば残り29万円の返済を求められても拒否することができます。
借金を延滞すると、この期限の利益を失うことになり、延滞は毎月の返済分だけではなく、借金全額にわたることになります。
例えば、
- 50万円借り入れ
- 毎月の返済額は2万円
- 利率18%
- 遅延損害金26.28%
であるとしましょう。
期限の利益を失った後は、返済が溜まっている額ではなく、50万円全額で計算するので、1ヶ月30日だとすると、
毎月10,800円の支払いをする必要が発生します。
期限の利益を喪失した後の遅延損害金は莫大なものになるので、継続的に支払いが遅れそうな場合には早急な対処が必要です。
遅延損害金が発生する状況を放置するとどうなるか
遅延損害金が発生する状況を放置すると次のようになります。
借金が増える一方
当然ですが、遅延損害金がかさむ一方で借金の総額が益々増えます。
上述した通り、特に長期に延滞をして、期限の利益を喪失したような場合には、いよいよ返済ができない状況になってしまいます。
ブラックリストとなる
延滞している状況を放置するとブラックリストとなります。
ブラックリストとは、信用情報に延滞などの事故情報が登録されることで、信用情報で審査する取引ができない状態をいいます。
借金ができない、クレジットカードを新しく作ったり更新することができない、携帯電話の分割購入ができない、などの影響が発生します。
裁判・強制執行となる
裁判を起こされ、財産に対して強制執行が行われることになります。
例えば、給与の1/4は差し押さえが可能なので、給与を差し押さえられ、手取りが減る・会社に返済ができなくなっていることが知られてしまうという自体に陥ります。
このような状態に陥る前に、任意整理を含めた債務整理を検討すべきであるといえます。
任意整理が成功するかは貸金業者との交渉次第!

- 任意整理は交渉なので相手方である貸金業者次第で成功・失敗が決まる
任意整理の手続きに入ることが可能であれば必ず分割弁済にしてもらえますか?
いいえ、一部の貸金業者は任意整理に応じないことがあります。全ては貸金業者との交渉次第といえます。
自己破産や個人再生は当事者が反対をしても最終的に裁判所が決定を出せば債務の免責・減額をしてくれます。
これに対して任意整理は貸金業者との個別の交渉によります。
これは残念なことなのですが、任意整理に非協力的な貸金業者もあり、債務整理のどの手続きを利用しても、すぐに訴訟を起こしてくるようなところもあります。
自分が借りている貸金業者が任意整理に応じる会社なのかどうかは、弁護士に相談をするなどして確認をしてみてください。
古い借金の請求であれば時効が成立していて支払う必要がないかも

- 2020年4月1日までに貸金業者から借入したものについては5年で消滅時効にかかる
延滞をして5年以上経つので、延滞金がものすごいことになっているのですが任意整理はできますか?
もし5年以上経っていて、裁判を起こされていないような場合には時効にかかっており、内容証明を送れば支払いから免れる可能性があります。
刑事事件について長期間逮捕・起訴されない場合には「時効」によって罪にならない…という時効の制度があることを知っている方も多いと思います。
この時効の制度ですが、民事上の請求にも同様に時効の制度があり、一定以上の期間請求をしていない債権は時効にかかるとされています。
貸金業者が営業のために貸付をする債権は、2020年4月1日までの法律ですと、商事債権として5年の消滅時効にかかるとされています(商法522条)。
このような場合には、任意整理をしなくても、消滅時効の主張をすることによって支払いをしなくて良くなる可能性があるのです。
消滅時効は時効に必要な期間が経過すれば自動的に債権が消えるわけではなく、「援用(えんよう)」という行為が必要です。
援用というのは、「債権は時効にかかっていて、時効の制度による債権の消滅を主張します」ということを相手に伝えるものなのですが、通常は内容証明を利用します。
この時効ですが、裁判をされていたり・債務者が債務の存在を承認していたりするような場合には、時効の中断というものが生じて時効が完成していない場合があります。
また、裁判をされるだけでなく判決まで出てしまっている場合には、新たに時効がスタートするので、郵便物には十分に注意しましょう。
まとめ
このページでは、このページでは延滞金が発生している場合の任意整理についてお伝えしてきました。
延滞金が発生している場合でも任意整理はできますし、延滞金は全部・または一部の免除をしてもらえたり、長期間返済ができていない場合には時効の主張をできたりする場合もあります。
まずは弁護士に相談してみるようにしてください。