
- 自己破産をすると復権するまでは警備員になることはできない
- 任意整理や個人再生は警備員を続けることができる
- 警備員の債務整理はまず任意整理や個人再生で返済できるかどうかを検討する
【Cross Talk 】警備員は債務整理ができない?
私は警備員として働いています。借金の返済が苦しいので何とかしたいのですが、警備員は債務整理ができないと聞きました。本当ですか?
全ての債務整理ができないわけではありません。債務整理の中で自己破産を選択すると、自己破産をしてから復権するまでの間、警備員になることはできません。ただし、任意整理や個人再生の場合はそのような制限がないので、警備員の方でも任意整理や個人再生をすることは可能です。
自己破産以外は問題ないんですね!
債務整理をすることで一定の職業に就くことが制限される場合があります。
例えば、「警備員は債務整理ができない」という話を聞いたことがある方は少なくないと思います。
もっとも、「債務整理ができない」というのは不正確で、債務整理の方法次第で、警備員を続けることができる場合もあれば、できない場合もあります。
そこで今回は、警備員の債務整理で注意が必要なことや、債務整理を選択する基準等について解説いたします。
なぜ警備員の債務整理には注意が必要なのか

- 警備業法で定める欠格事由がある場合は警備員になることができない
- 「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」が欠格事由に該当する
どうして警備員の債務整理には注意が必要なのですか?
債務整理の方法によっては、警備員を続けることができなくなるからです。警備業法という法律が警備員になることができない場合を定めており、自己破産をした場合は復権するまで警備員になることができないとされています。
警備員の欠格事由
警備業について必要な規制を定めた警備業法の中で、一定の事由に該当する方は警備員となってはならないと定められています。この一定の事由のことを、欠格事由といいます。
他人の財産あるいは身体を守るという警備員の職務の性質上、警備員にふさわしくないと思われる事情がある場合に、警備員になることが制限されるのです。
わかりやすい例で言えば、「禁錮以上の刑に処せられ、またはこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者」という欠格事由があります。罪を犯して処罰されてからそれほど時間が経過していない方は警備員になれない、ということです。
そして、欠格事由の一つに、「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」というものがあります。
「復権を得ない」という表現がわかりにくいかもしれませんが、まだ免責許可決定が確定していないといいうイメージを持っていただければ結構です。
言い換えれば、自己破産の手続が始まって免責許可決定が確定するまでの間、警備員になることができないということです。
なお、警備員とは、警備業法で定める警備業務に従事するものをいいます。
したがって、警備会社の従業員であっても、営業や経理など、警備業務に従事しない従業員は警備員には該当しません。
個人再生・任意整理には関係がない
警備業法で定める欠格事由には、[警備員の欠格事由]の自己破産に関する者はありますが、個人再生や任意整理に関するものはありません。
したがって、個人再生や任意整理の場合、警備員をすることに何の制限もありません。
警備員の債務整理

- まず任意整理ができないか検討する
- 任意整理が難しい場合は状況に応じて個人再生か自己破産を選択する
債務整理によって違いがあることはわかりました。警備員が債務整理をする場合、どの債務整理をすればいいですか?
まず任意整理ができないか検討するのが一般的です。任意整理が難しい場合には、個人再生か自己破産をすることになりますが、どちらがふさわしいかはケースバイケースといえます。
任意整理が可能かどうか検討
警備員が債務整理をする場合、まずは任意整理で解決することができないかを検討するのが一般的です。
【なぜ警備員の債務整理には注意が必要なのか】で解説した通り、任意整理であれば警備員を続けることに何の支障もありません。
また、個人再生や自己破産と違って裁判所を介さないので、手間や時間をかけずに解決できる可能性があります。
そのため、まず任意整理が可能かどうかを検討するのです。
任意整理が難しい場合には個人再生か自己破産か
任意整理には、簡易・迅速であるというメリットがある一方、債務の減免という効果はそれほど大きくありません。
一般的に債権者が譲歩してくれるのは、遅延損害金や将来利息のカット程度で、元本の減額に応じてくれることはまずありません(ただし、一部の業者は一括弁済の場合には元本の減額に応じてくれることもあります)。
ですから、債務の額によっては、任意整理では解決が難しい場合もあります。
そのような場合には、裁判所の手続によって債務を大幅に減額する個人再生か、債務を免除する自己破産のいずれかを選択することになります。
個人再生の場合、警備員の仕事に影響はありませんし、住宅ローン付きの持ち家を残すことができるというメリットがありますが、減額されるとはいえ毎月債務を返済していく必要があります。
他方、自己破産の場合、免責許可決定が確定すれば債務は免除されますが、持ち家を残すことはできませんし、【なぜ警備員の債務整理には注意が必要なのか】で解説したとおり、免責許可決定が確定するまでの間、警備員をすることができません。
警備業務をやっている会社に勤めていらっしゃるのであれば、そもそも会社に事情を説明することが難しい場合もございますし、事情を説明しても配置転換が難しい場合もあると思いますので、上述の対応が難しく、転職もできないようでしたら、任意整理や個人再生を考えた方が良いでしょう。
このようにみると、個人再生と自己破産は、どちらかが常に優先されるというものではないといえます。安定した返済ができるか、残したい財産があるか、配置転換などの勤務先からの協力が得られる見込みがあるか、ないのであれば転職先を見つけることができるか等といった事情を考慮して、どちらがふさわしいかを事案ごとに判断することになるでしょう。
ご自身で判断することが大変、難しいようでしたら、方針についても弁護士にお気兼ねなくご相談ください。
まとめ
このページでは、警備員の債務整理について解説しました。
任意整理や個人再生の場合は警備員をすることに制限がありませんし、自己破産を選択した場合も警備員をすることができないのは復権までの期間に限られます。
ですから、警備員は債務整理ができないというのは誤解です。
警備員をしていて借金に悩んでいるという方は、ぜひ弁護士に相談して、適切な債務整理をするようにしてください。









