不倫された場合に、慰謝料をもらって離婚しないことは可能かを解説いたします。
ざっくりポイント
  • 慰謝料はもらうが離婚しないという選択は可能
  • 慰謝料は配偶者と不倫相手に請求することができる
  • 慰謝料を請求するには不倫の証拠を確保することが重要

目次

【Cross Talk 】不倫された場合に慰謝料をもらって、離婚しないことは可能なの?

夫に不倫されてしまいました。許せないので慰謝料を請求したいのですが、子どもがいるので離婚はしたくありません。

慰謝料を請求することと離婚は別なので、不倫された場合に慰謝料をもらって、離婚はしないという選択も可能です。

慰謝料をもらって離婚しないことは可能なんですね。慰謝料だけを請求する場合に、知っておくべきことも教えてください!

不倫を理由に慰謝料をもらっても、離婚しないという選択ができるかを解説

配偶者に不倫をされた場合、受けた精神的苦痛に対して慰謝料を請求することができます。

しかし、まだ小さい子どもがいるなど、何らかの理由で離婚はしたくない場合もあります。

慰謝料は請求したいけれど、離婚はしたくないので、どうすればいいか迷ってしまうこともあるでしょう。

そこで今回は、不倫された場合に慰謝料をもらって離婚しないことができるかについて、弁護士が解説いたします。

慰謝料をもらっても離婚しないことはできる?

知っておきたい離婚のポイント
  • 不倫の法律関係は、民法の共同不法行為にあたる
  • 慰謝料はもらうが離婚しないという選択は可能

慰謝料は請求し、離婚はしないという選択は可能でしょうか?

慰謝料を請求することと、離婚をすることは別問題なので、慰謝料は請求するが離婚はしないという選択は可能です。

不倫をされた場合の法律関係

不倫は厳密には法的な用語ではありません。法律上は不貞行為と呼ばれます。

不貞行為は法定離婚事由(裁判で離婚するための条件)に該当するだけでなく、不貞行為をされた場合は、慰謝料を請求することができます。

不貞行為とは、配偶者のある方が、配偶者以外の方と肉体関係を持つことです。

配偶者以外の方と仲良くしたとしても、
肉体関係がない場合は、原則として不貞行為には該当しません。

不倫と一口に言っても、肉体関係がある場合は慰謝料を請求できますが、肉体関係がない場合は、基本的には慰謝料は請求できないということです。

不倫された場合の法律関係は、共同不法行為にあたります。

不法行為とは、故意または過失によって他人の権利や法律上の利益を侵害した場合に、その損害を賠償するという民法の制度です(民法第709条)。

不法行為にはいくつかの類型がありますが、複数人が共同の不法行為によって他人に損害を与えることを、共同不法行為といいます(民法第719条)。

肉体関係のある不倫は、配偶者と不倫相手が共同で被害者に損害を与える行為なので、共同不法行為に該当します。

共同不法行為をした場合は、加害者側は連帯して損害を賠償しなければなりません。

慰謝料と離婚をするかどうかは別!慰謝料をもらっても離婚をしないことは可能

離婚しなければ慰謝料を請求できないわけではなく、離婚しないで慰謝料だけを請求することは可能です。

不倫を理由に慰謝料を請求することは、不倫されたことによる精神的な苦痛を補填するためのものであり、離婚するかどうかとは別問題だからです。

また、慰謝料を請求するために離婚しなければならないという規定もありません。

よって、不倫されたことに対して慰謝料は請求するが、離婚はしないという選択も可能です。

例えば、不倫されて深く傷ついたので慰謝料は請求するものの、配偶者が深く反省して生活を改めることを約束したので、ひとまず離婚はしないなどです。

相手から離婚を請求された場合

不倫をした配偶者(有責配偶者)から離婚請求された場合に、
必ずしも離婚を受け入れる必要はありません。

不倫をして離婚の原因を自ら作ったにもかかわらず、離婚請求をすることは、原則として認められないからです。

ただし、以下の要件を満たす場合は、例外として有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性があります。

・夫婦の別居期間が相当の長期間であること
・夫婦の間に未成熟の子がいないこと
・離婚請求を認めることが著しく社会正義に反すると言えるような特段の事情がないこと

慰謝料だけを請求する場合に知っておきたいこと

知っておきたい離婚のポイント
  • 慰謝料は配偶者と不倫相手に請求することができる
  • 慰謝料を請求するには不倫の証拠を確保することが重要

離婚しないで慰謝料だけを請求する場合に、知っておくべきことはありますか?

慰謝料は配偶者だけでなく、不倫相手にも請求することができます。ただし、慰謝料を請求するには不倫の証拠をきちんと確保することが重要です。

慰謝料は配偶者と不倫相手に請求できる

不倫された場合の慰謝料は、不倫をした配偶者に対してだけでなく、不倫相手に対しても請求することができます。

例えば、夫と相手が不倫をしたことを理由に、被害者である妻に200万円の慰謝料が認められたとしましょう。

妻は夫に200万円を請求できるだけでなく、不倫相手に200万円を請求することもできます。夫に100万円を請求し、不倫相手に100万円を請求することも可能です。

ただし、慰謝料を請求できるのはあくまで上限額の範囲であり、配偶者や不倫相手から二重取りできるわけではありません。

例えば、慰謝料が300万円の場合は、請求できる上限額は300万円までです。

配偶者に200万円請求し、不倫相手に150万円請求することは、上限額を超えているので基本的に認められません。

注意点として、離婚しないで慰謝料だけを請求する場合は、配偶者に対して慰謝料を請求することは、あまり効果的ではありません。

離婚しない場合は、配偶者に慰謝料を請求しても、一般的には家庭内のお金を夫婦でやり取りしているに過ぎないからです。

離婚せずに慰謝料だけを請求する場合は、配偶者ではなく不倫相手に請求するのが一般に効果的といえます。

証拠をしっかり確保する

不倫を理由に慰謝料を請求する場合は、証拠をしっかり確保することが重要です。

不倫されたことを客観的に証明できるような証拠が不足している場合は、慰謝料を請求しても、不倫したことを否定されてしまう可能性が高いからです。

慰謝料を請求する場合の方法として、裁判によらずに相手に直接請求する方法と、裁判を起こして慰謝料を請求する方法があります。

裁判によって慰謝料を請求する場合は、証拠は特に重要です。不倫があったことを証明できる証拠がなければ、裁判官は基本的に慰謝料を認定してくれないからです。

一般に不倫を証明するのに役立つ証拠の例として、以下のものがあります。

・ホテルなどに出入りする写真や動画
・不倫相手とのメールやSNS
・不倫相手との通話履歴
・不倫を認める証言の録音
・不倫を認める内容の文章

離婚しない場合には離婚する場合よりも慰謝料の相場が下がる

離婚せずに慰謝料だけを請求する場合は、離婚する場合に比べて、慰謝料の相場が下がるのが一般的です。

不倫されたものの離婚には至らなかった場合よりも、不倫が原因で離婚しなければならなくなった場合のほうが、一般に精神的な苦痛が大きいと考えられるからです。

ただし、具体的にどのくらいの金額が認められるかは場合によるので、離婚する場合に比べて、必ずしも金額が低くなるわけではありません。

一般に慰謝料の金額に影響する要素としては、不倫をした側の収入や資産状況・被害者の収入や資産状況・当事者の社会的地位・被害者が受けた精神的苦痛の程度などがあります。

慰謝料の金額が高額になりやすい要素としては、以下のものがあります。

・不倫の回数が多いこと
・不倫の期間が長いこと
・婚姻期間が長いこと
・配偶者が妊娠していること
・不倫された被害者に落ち度がないこと

例えば、長期間にわたって不倫していた場合や、配偶者が姙娠しているにもかかわらず不倫をした場合などは、一般的に慰謝料が高額になりやすいです。

まとめ

不倫された場合に慰謝料を請求することと、不倫を理由に離婚することは別なので、慰謝料を請求しつつ離婚しないことは可能です。
ただし、離婚せずに慰謝料を請求する場合は、離婚する場合に比べて一般に慰謝料の相場が低くなることが多いです。
また、慰謝料を請求するにあたっては、不倫を証明できる証拠を確保することが重要です。
配偶者に不倫をされて、離婚をせずにスムーズに慰謝料請求をしたい場合は、弁護士に相談することをおすすめいたします。