熟年離婚とは?有利に離婚をすすめて、離婚後に生活に困らないようにするためには?
ざっくりポイント
  • 熟年離婚とは
  • 熟年離婚をする際に考えておくべきこと
  • 熟年離婚をする場合の手続き

目次

【Cross Talk 】夫も定年…熟年離婚を考えています。

離婚を考えています。夫はいわゆるモラハラ夫でしたが子どものことも考えて耐えてきました。子どもも独立し、夫ももうすぐ定年で、今後ずっとふたり一緒にいるのは無理です。熟年離婚の準備に何か注意はありますか?

相手の資産状況をしっかり把握しておくこと、別居後の住環境をきちんと調えて生活に困らないようにしておきましょう。

なるほど!手続きについても教えてもらえますか?

熟年離婚を有利にすすめるためには?生活に困らないようにするポイントを解説

子どもの独立や夫が定年退職をするタイミングで離婚を考える、いわゆる熟年離婚が増えています。子どもの独立や夫が定年退職をすると、夫婦の時間が増えることになり、何らかの我慢をしていたものが限界となる等が背景にあるようです。

熟年離婚をする際に注意をしておくべきこと、有利にすすめるために必要なこと、特に自分も老後の備えが必要で生活に困らないようにするにはどのようなことが必要かなどについて検討しましょう。

熟年離婚とは

知っておきたい離婚のポイント
  • 熟年離婚とは
  • 熟年離婚のきっかけは?

そもそも熟年離婚とはどのようなものですか?

とくに法律上の定義があるわけではなく、長期間連れ添った夫婦が離婚をすることを一般的にこのように呼びます。

熟年離婚とはどのようなものなのでしょうか。

熟年離婚とは?どのような特徴がある?

熟年離婚とは、長期間連れ添った夫婦が離婚することをいうものです。
法律上、熟年離婚という定義や制度があるわけではありません。
熟年離婚という言葉は2005年に放映されていたテレビドラマのタイトルで、当時団塊の世代と呼ばれる年齢層の方が定年退職を迎える時期でもあり、この名称が定着しました。

厚生労働省の「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、令和2年に離婚した193,251件のうち、同居期間が20年以上になる夫婦は38,980件で、約20%を占めています。
5組1組は同居期間が20年を超える夫婦であり、全体の離婚件数に占める割合も年々増加しています。

熟年離婚の原因

熟年離婚の原因となるものとして、夫に原因があるもの・妻に原因があるものそれぞれがあります。
夫に原因があるものとしては、

・家事への不参加
・不倫
・暴力・ハラスメント

などが挙げられます。

妻に原因があるものとしては、

・コミュニケーションをしない

などがよく挙げられます。
いずれにしても、離婚をする直前に発生することは稀で、同居期間中に原因が発生するも、生活や子どものことを考え、我慢していたものが積もり積もって離婚に至ることが多いといえます。

熟年離婚のきっかけ

ずっと我慢していたものが、いざ熟年離婚へと動き出すきっかけになるものとしてよく挙げられるのが、
・子どもの独立
・定年退職
です。

子どもが家庭から独立すると、夫婦で向き合う時間が増え、いままで我慢していた不満が爆発することがあります。

また、定年退職でも、夫婦が一緒になる時間が増えます。
それまでは顔を合わせる時間だけ我慢していればという感覚だったものが、日常的に一緒にいることで我慢の限界を迎えることも多いようです。

熟年離婚をする際に考えておかなければならないこと

知っておきたい離婚のポイント
  • 熟年離婚をする際に有利になるために考えておかなければならないこと
  • 熟年離婚で生活に困らないように考えておかなければならないこと

熟年離婚というものがどういうものかわかってきました。熟年離婚をする際に注意しておくことはありますか?

離婚に備え、相手の財産をしっかり把握しておくことが重要です。また、引っ越し先の居住環境をしっかり整えておくなどして、離婚直後に生活に困らないようにしておくことも重要です。

熟年離婚をする際にどのような注意が必要でしょうか。

資産状況をなるべく早期に把握すること

まず、相手の収入や資産状況をなるべく早期に把握することが重要です。
離婚の準備として別居をする際、生活費を得るために収入に応じた婚姻費用分担請求を行なうことができます。
また、離婚後の財産分与・慰謝料請求などをする際にも、相手の資産がわかっていないとどのくらいの額の請求をすればいいかが決められず、払わない場合に差し押さえるべき財産も不明となってしまいます。

長年連れ添っていても、なるべく干渉しないように生活していることも多く、相手の資産状況がよくわからないということも珍しくありません。
給与はどの銀行に入っているのか、不動産や株などの資産運用などをしているのか、手元に趣味で集めているものにはどれくらいの価値があるのか、など相手の資産状況をなるべく早期に把握しましょう。

退職金について把握する

相手の資産について特に調べておくべきなのが退職金です。
退職金というと退職したときに払われるもので、例えばまだ退職まで10年以上あるような場合、自分には関係のないものと思いがちです。
しかし、退職金は法律的には給与の後払いという性格があるものとして、払われる前でも資産として認定することができ、財産分与の対象になることがあります。

もちろん、婚姻期間中の就業期間相当に限定されたり、勤務中に懲戒解雇処分をされる等で退職金が支払われない場合もあり得るので、将来の全てが財産分与の対象になるわけではありません。
しかし、退職金があるような場所で長期間勤務しているような場合には、財産分与の対象として多額の認定がされる可能性がありますので、できる限り退職金の有無や計算方法について調べておきましょう。

住宅ローンが残っている場合

住宅ローンで住宅を購入して、まだローンが残っているような場合があります。
この場合に別居や離婚をする場合には、住宅ローンの支払いをだれがどの程度負担するかや、退去した側の新たな賃料の支払いをどうするかといった問題が発生することになり、金額を確認して早めに検討しておく必要があります。
また、住宅ローンの状況は、財産分与の際の計算にも影響を及ぼします。
場合によっては自宅を売却する必要があるのですが、住宅ローンがある場合には住宅ローン債権者と調整しながら売却する任意売却という手段で売却することとなります。
住宅ローンの残額や、権利関係(主債務者は誰か?連帯保証人は誰かなど)についても調べておき、売却をする可能性がある場合には任意売却となる場合も検討しておくようにしましょう。

年金分割を忘れない

離婚の際に年金分割の手続きを忘れないようにしましょう。
年金分割とは、半分ずつの受給となるように一方の年金を分割してもらう制度で、一方が専業主婦(夫)の場合はもちろん、共働きの場合にも認められます。
熟年離婚をする際には、年金をもらう時期も近くなっている・すでにもらっている状態です。
年金の有無は老後の生活環境に大きな影響を及ぼしますので、忘れずに手続きを行なうようにしましょう。

別居・離婚後の住環境は必ず整える

離婚準備として別居を行なうことが多く・また離婚後は一人で暮らしていく必要があります。
衝動的に家を飛び出して行く宛もない状態で離婚の手続きを行なうような場合、交渉が長引いて著しく不利な条件で離婚をする・離婚を諦めて自宅に戻るということになりかねません。

著しく不利な条件で離婚をした結果、生活が成り立たなくなってしまうこともあります。
離婚の手続きを行なう場合には、それまでの経緯によっては長期戦になることも想定されます。
別居をする際・離婚後の住環境は必ず整えてから離婚に向けての行動を起こすべきであるといえます。

熟年離婚の手続き

知っておきたい離婚のポイント
  • 熟年離婚のおおまかな流れ
  • 熟年離婚の法的な手続き

熟年離婚をする際にはどんな手続きの種類がありますか?

主に利用される3種類の離婚手続きについて確認しましょう。

熟年離婚をする際のおおまかな流れとしては、まず協議で離婚について話し合い、協議で離婚の合意ができない場合には法的手続きとしてまず調停を行ない、調停でも離婚に合意できない場合に裁判を起こすことになります。

離婚協議

協議離婚では、夫婦で離婚の協議を行ないます。
離婚をするか否か、財産分与・慰謝料・子が未成年者である場合には親権・養育費といったことについて協議で決めます。
協議で離婚の合意をすれば、離婚届を提出し離婚をします(親権者も離婚届に記載します)。
財産分与・慰謝料・養育費については、離婚協議書という形式で書面にして、できれば公正証書にして不払いがあった際に直ちに強制執行ができるようにしておきましょう。

離婚調停

協議での離婚がまとまらない場合には法的手続きによって離婚の請求を行ないます。
法的手続きというと裁判を思い浮かべる方も多いと思いますが、離婚は重大な影響を及ぼす行為なので、当事者の意見をすり合わせる機会を持つために、まず調停という手続きを試みることになっています。
なお、実務上は「夫婦関係調整調停(離婚)」と呼ばれています。

調停では、裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員が間に入り、双方の意見や主張を聞きながら、妥協案を探ります。
これによって合意が得られれば調停調書を作成して、離婚をします。
調停でも合意が得られないような場合、多くは後述する離婚裁判に進みます。
ただ、調停が不成立でも裁判所が離婚した方が良いと判断できるような場合には審判という手続きが行われることもあります。

離婚裁判

調停が整わないときには、当事者の一方が裁判を起こします。
裁判の場合、裁判所が離婚を認めるには、不貞行為や、回復の見込みのない強度の精神病など、婚姻を継続しがたい重大な事由の存在を立証する必要があります。
裁判手続きで最終的には和解や判決という形で離婚の可否・財産分与・慰謝料などが決められます。

まとめ

このページでは、熟年離婚についてお伝えしました。
結婚をして長期間経過する夫婦がする離婚は、一方・双方が長い年月我慢していることも多く、離婚を決意するときには強い決意のもとでなされます。
離婚を焦るあまり、不利な条件で離婚をして・生活に困る状況に陥ることもあるので、しっかり準備をしたうえで離婚の手続きを行なうようにしましょう。
準備にあたっては弁護士に相談しながら行なうことをおすすめします。