破産宣告(破産手続開始決定)とは?そのための条件や発生する効力は?
ざっくりポイント
  • 破産宣告(破産手続開始決定)とは、破産者について破産手続きを開始する旨の裁判のことである
  • 破産宣告(破産手続開始決定)を受けるためには、3つの条件を満たす必要がある
  • 破産宣告(破産手続開始決定)されると、主に4つの効果が発生する
  • 相談から破産宣告(破産手続開始決定)が出るまでには、早くても2ヶ月~3ヶ月、遅いと1年以上かかることもある
  • 自己破産するためには、免責許可の決定を受ける必要がある

目次

【Cross Talk】破産宣告(破産手続開始決定)を受けるための条件とその効力は?

自己破産を検討しているのですが、破産宣告を受けるとどのような効力が発生しますか?
また、破産宣告を受けるために必要な条件はありますか?

破産宣告を受けるためには、一定の条件を満たしていることが求められますし、破産宣告を受けると一定の効力が生じます。

詳しく教えてください。

破産宣告について詳しく説明していきます。

「破産宣告」という言葉を1度は聞いたことがあるという方が多いと思いますが、そもそもどういった意味かを知っている方は意外にも少ないのではないでしょうか?
破産宣告を受けるためには一定の条件を満たすことが必要であり、破産宣告をされると一定の効力が発生します。
破産手続において、破産宣告(破産手続開始決定)は大変重要な意味をもちます。
そこでこの記事では、破産宣告(破産手続開始決定)について、その条件と効力を中心に解説していきたいと思います。

破産宣告(破産手続開始の決定)とは?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 「破産宣告(破産手続開始決定)」とは、破産者について破産手続きを開始する旨の裁判のことである
  • 破産宣告(破産手続開始決定)を受けるためには、3つの条件を満たすことが必要である

そもそも破産宣告(破産手続開始決定)とは、どのような意味なのでしょうか?

簡単にいうと、破産者について破産手続きを開始することを裁判所が決定することを意味します。

現行の破産法では、破産宣告のことを「破産手続開始の決定」と呼びます。
破産手続開始の決定は、字のとおり、破産者について破産手続きを開始することの決定を意味しますが、このことにより直ちに免責(借金の支払いを免除されること)が許可されるわけではありません。

破産宣告(破産手続開始の決定)の意味

「破産宣告(破産手続開始の決定)」とは、破産者について破産手続きを開始する旨の裁判のことをいいます。破産手続きは、自己破産の申し立てによりすぐに開始されるわけではなく、破産手続開始決定を受けて始めて開始されます。

破産宣告(破産手続開始決定)を受けるための条件

破産手続開始決定を受けるためには、3つの条件を満たしていることが必要になります。

1つ目の条件は、破産手続開始原因があることが必要です。
「破産手続開始原因」とは、支払不能と債務超過の2つを意味します。
「支払不能」とは、債務者の支払能力が低いことから、全ての債務について、継続的に返済を続けていくことができない状態にあることをいいます。一部の債権者だけに返済できない場合や、一時的な資金不足で返済できない場合は含まれません。

「債務超過」とは、債務者において、プラスの財産よりマイナスの財産が上回っている状態にあることをいいます。
個人が破産する場合には、「支払不能」のみが破産手続開始原因となることに対し、法人が破産する場合には、「支払不能」と「債務超過」のいずれもが破産手続開始原因になるとされています。

2つ目の条件は、破産障害事由がないことです。
「破産障害事由」とは、破産手続きを開始できなくなる事実のことをいいます。
たとえば、破産申立後に必要な予納金を納付していない場合や、破産とは別の倒産手続きが既に開始されている場合が「破産障害事由」にあたります。

3つ目の条件は、「破産手続開始」の申し立てが適法であることです。
この点は、破産を申し立てた人に申立権が認められるか、破産者に破産能力があるかなどを要素として判断されます。
破産の申立権は、債務者と債権者、法人であれば、その代表者や理事などに認められています。
また、「破産能力」とは、破産手続開始の決定を受けることができる資格のことをいい、一個人や法人には問題なく認められます。

このように、破産宣告(破産手続開始決定)を受けるためには、以上に挙げた3つの条件を満たしていることが必要になります。

破産宣告(破産手続開始決定)の効果

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 破産者の一定の財産について、管理及び処分する権利が破産管財人に専属する
  • 債権者は直接取り立てをできなくなる
  • 同時廃止の場合には、破産手続開始決定と同時に破産手続きが終了する
  • 居住が制限される場合がある

破産宣告(破産手続開始決定)がされることで、どのような効果が発生しますか?

破産宣告(破産手続開始決定)により発生する効果は、大きく分けて3つあります。

破産宣告(破産手続開始決定)がされると、一定の効果が発生しますが、主な効果として以下の4つが挙げられます。

破産財団に属する財産の管理及び処分する権利が破産管財人に専属する

破産手続きには、同時廃止と管財事件の2つの種類があります。
「同時廃止」とは、破産手続開始の決定時点において、めぼしい財産がない場合などに採られる手続きです。他方で、「管財事件」とは、破産手続開始の決定時点において、一定の財産を持っている場合などに採られる手続です。

管財事件として扱われた場合、破産宣告(破産手続開始の決定)がされると、破産者が持っている一定の財産について、その管理と処分をする権利が裁判所から選任された破産管財人に専属することになります。
そのため、破産者は自分の財産であっても、破産管財人が管理と処分をする権利を有する財産を勝手に処分することができなくなります。

債権者(貸金業者など)は取り立てできなくなる

債権者は破産手続きによらなければ権利を行使できなくなるため、直接破産者から取り立てをすることができなくなります。
もっとも、実務上は、弁護士から債権者に送付する受任通知によって、債権者は債務者への直接の取り立てを行わなくなります。
債権者は取り立てができなくなることの帰結として、給料を差押えるなどの強制執行をすることもできなくなります。

同時廃止事件の場合には破産手続き開始決定と同時に破産手続きが終了する

同時廃止とは、先に見たとおり、破産手続開始の決定時点において、債権者に配当できるようなめぼしい財産がない場合に採られる手続きです。
同時廃止の場合、破産管財人を選任することなく、破産手続開始の決定と同時に破産手続きは終了することになります。

居住が制限される

管財事件として扱われた場合、破産管財人は破産者の財産を現金化して、債権者に配当することになります。そのため、破産管財人は、破産者の財産を正確に把握する必要があり、
不明な点などについて破産者に説明を求めることがあります。

破産者にはこの求めに応じなければならない義務があります。
このような義務を全うするには、破産者の居住地をきちんと把握しておかなければならないため、破産者は、裁判所の許可を受けない限り、居住地を変更することができなくなります。

破産宣告を受けるまでの期限は?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 相談から破産手続開始決定が出るまでには、早くても2ヶ月~3ヶ月かかることが多い
  • 管財事件の場合は、相談から破産手続開始決定が出るまでに、1年以上かかることもある

破産宣告を受けられるまでにどの程度の時間がかかりますか?

破産を申し立ててから破産宣告がされるまでの時間はさほどかかりませんが、破産を申し立てるまでの時間はまちまちです。

弁護士に相談をしてから、実際に破産手続開始決定を受けるまでの期間は、個別のケースによって異なります。
具体的には、債権者数や財産の有無、債務者の対応の早さなどによって、破産を申し立てるまでの時間に差が出てきます。
この点、実務においては、相談から破産の申し立てまでは早くても2ヶ月~3ヶ月かかることが一般的です。しかし、債権者数が多く、財産調査などにも一定の時間が必要になるようなケースでは、半年~1年かかることもあります。

破産を申し立ててから、破産手続開始決定が出るまでの期間は、同時廃止と管財事件とで異なりますし、各地の裁判所の運用によってもかかる期間は異なります。
同時廃止事件では3日程度、管財事件では数日~1週間程度かかることが一般的ですが、各地の裁判所の運用によりかかる期間は異なります。特に管財事件では申立てから破産手続開始決定が出るまで1ヶ月あるいはそれ以上かかる場合もあり得ます。

自己破産するためには、免責許可の決定を受ける必要がある

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産により、借金の支払義務を免除してもらうためには、免責許可の決定を受ける必要がある
  • 自己破産が申し立てられた場合、同時に、免責許可の申立てがされたものとみなされる
  • 債権者が破産を申し立てた場合、債務者は自分で免責許可を申し立てなければならない

破産宣告(破産手続開始決定)を受けられさえすれば、借金から解放されることになるのでしょうか?

借金の支払義務を免除してもらうためには、免責許可の決定を受ける必要があります。

「免責」とは、借金の支払義務を免除することをいい、免責許可の決定を受けなければ、借金の支払義務は免除されず、自己破産をした意味がなくなってしまいます。
破産法では、自己破産が申し立てられた場合には、同時に、免責許可が申し立てられたものとみなすとされています。

一方で、債権者によって破産が申し立てられた場合、債権者が債務者の免責を申し立てることまではしないため、債務者は自分で免責許可を申立てなければなりません。この場合、破産手続開始の決定が出た日から1ヶ月以内に免責許可を申し立てなければならないため、注意が必要です。

まとめ

破産宣告(破産手続開始の決定)を受けるためには、満たさなければならない3つの条件があります。
また、破産宣告(破産手続開始の決定)がされると、それに伴い、一定の効果が発生します。
自己破産を検討する場合には、少なくとも、これらの条件と効果を理解しておくことで、スムーズに手続きを進めることができるでしょう。