遺産相続をする場合の自己破産手続きについて確認
ざっくりポイント
  • 借金を相続したときには自己破産ではなく相続放棄をすれば良い
  • 遺産相続をする相続人の中に自己破産をする人がいる場合に、遺産分割協議でその方を0円にすると問題になる可能性がある
  • 自己破産をする人が遺産分割をした場合には手続きの変更も検討する

目次

【Cross Talk 】相続人の中に自己破産の予定者がいる場合にどうすればいいのか

先日父が亡くなり、母・私・弟の3人で相続をすることになりました。実は弟が弁護士に依頼をして自己破産をする予定なのですが、弟が相続をすると遺産がなくなってしまいますので、遺産分割協議で母と私だけで相続をしようと思っています。

そのような遺産分割協議は破産管財人による否認権の対象となることがあります。

詳しく教えてください。

遺産相続と自己破産の関係について把握しよう

借金が返済できなくなったときに利用する自己破産と遺産相続にはどのような関係があるでしょうか。
主に検討すべきなのは、借金を相続した場合と自己破産を予定している人が遺産相続をする場合です。

前者については相続放棄などの手続きがあることを知っておいてください。
後者については、自己破産をするのであれば遺産分割で相続させても差し押さえられてしまうから、と相続させないことも考えられるので、遺産分割協議で相続する分を0とすることも考えられますが、破産管財人による否認権の対象になる可能性があるので、注意が必要です。

借金を遺産相続した場合には自己破産をせずに相続放棄をすれば良い

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 借金も相続の対象となる
  • 借金を相続した場合には相続放棄・限定承認を利用する

私のケースでは関係ないと思うのですが、借金をした人が亡くなった場合には、借金は相続されて相続人が自己破産をするのでしょうか。

借金も相続をするのですが、この場合に自己破産は必要なく、相続放棄あるいは限定承認という制度の利用が考えられます。

借金を遺産相続した場合にはどうすれば良いのでしょうか。

借金も遺産相続の対象になる

前提として、借金などの債務も遺産相続の対象になることを確認しておきましょう。
相続というと、預貯金や不動産などの、プラスの資産についてイメージする方も多いと思います。
しかし、相続は包括承継といって、その方の権利や義務の一切が相続人に承継されるものなので、借金のような債務も一緒に承継されることになっています。

相続放棄によって借金を相続しなくてすむようになる

相続した借金の支払いが困難な場合があります。
この場合に、相続人は自己破産をしなければならないわけではなく、相続放棄という手段を用いることで債務を負わなくてすみます。

相続放棄というのは、相続人が行うことができる手続きで、家庭裁判所において手続きをすることによって、相続人ではなかったものと取り扱ってもらうものです。
相続人ではなかったものという扱いになるので、借金などの債務を承継しません
借金があるかどうか不明であるような場合には、限定承認という手続きを利用することで、相続した資産限りで借金などの債務も相続することもできます。

相続放棄・限定承認の注意点

相続放棄・限定承認をする場合には、

  • 原則として自己のために相続開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行う必要がある
  • 相続財産を処分してしまうなど、一定の場合に相続を承認したものとして相続放棄をすることができなくなる場合がある

以上の2点に特に注意が必要です。

詳しくは「あなたが背負う必要はありません!多額の借金を相続しても債務整理はできる!」を参照してください。

自己破産を予定している人が遺産相続をしたら?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 自己破産を予定している人が遺産相続をするケース
  • 自己破産を予定している人が遺産相続する場合に遺産分割協議には注意が必要

自己破産を予定している弟についてですが遺産分割協議には注意が必要なのですね。

弟が自己破産をするのであれば、遺産分割協議において、弟に対し遺産を与えない方がいいのではないかと考えるかもしれません。しかし、遺産を分け与えない旨の遺産分割協議をすると破産管財人による否認権の対象になる可能性があります。

次に、自己破産を予定している人が遺産相続をする場合について確認しましょう。

典型的なシチュエーションを確認

あまり頻繁に起きるケースではないので、どのようなシチュエーションなのかを確認しましょう。
ある方が借金をしていて、その返済ができなくなっていて、自己破産の依頼を検討していた、あるいは依頼した後に、被相続人が亡くなり、遺産相続が発生したような場合です。

自己破産をする人の遺産を0とする分割協議は破産管財人による否認権行使の対象となり得る

自己破産手続きを行うときに、その方に遺産を相続させると、相続した分については借金返済のために使う・あるいは自己破産手続きの中でお金に換えられてしまうことになります。

そこで、遺産分割協議で、その方に遺産を相続させないとすることを思いつく方もいらっしゃるかもしれません。

実際に、遺産相続をしていたのですが、遺産分割の具体的な手続きをしていなかった事例で、相続人の一人が、借金を返済するのが困難となり自己破産手続きをする際に、これに先立って遺産分割で自己破産をする人の相続分をなしとしたものについて、債権者が詐害行為取消権という権利を主張した事件の裁判において、債権者の主張が認められた事件があります(最高裁判決平成11年6月1日)。

詐害行為取消権とは、債務者が債権者を害することを知っていながらした一定の行為を、債権者がその行為を取り消せるとする権利のことです(民法424条1項)。
例えば、自宅を持っている債務者が、それを贈与すると資産がなくなり債権者に対する返済ができなくなることを知っていながら、自宅を第三者に贈与するようなケースが挙げられます。

自己破産手続きを申し立てると、裁判所は原則として破産管財人を選任します。破産管財人は、自己破産を申立てた人の財産の調査などを行います。破産管財人は、自己破産を申立てた人の財産が減少する行為などがあった場合に、否認権を行使することができます。否認権の対象となる行為については、破産法に類型が規定されています(破産法160条~162条)。
否認権が行使された場合には、破産管財人から、自己破産をする人の法定相続分の返還を求められることがあり得ます。
自己破産手続きを検討しているが、遺産相続の可能性がある、という方は一度弁護士に相談することをおすすめします。

債務額よりも多い遺産相続をした場合には手続きの変更を検討する

自己破産の手続きの最中に遺産相続をしたような場合、借金の額や相続した遺産の内容次第で対処方法を検討すべきことになります。
自己破産を行うためには、「支払い不能」と呼ばれる状態でなければならないので、遺産相続で支払いができることになれば、自己破産はできないことになるのです。

このような場合には、任意整理に手続きを変更して、債権者と和解をして一括で返済することも検討すべきことになります。

このあたりの判断は非常に難しいため、依頼をしている弁護士にきちんと相談をしましょう。

まとめ

このページでは、遺産相続と自己破産手続きの関係についてお伝えしました。
借金を相続した場合と、自己破産をする人が遺産相続した場合の2つのケースで注意が必要で、それぞれの具体的な対応策について確認していただきました。
対応が難しいこともありますので、早めに弁護士に相談をするようにしましょう。

この記事の監修者

弁護士 境野 秀昭
弁護士 境野 秀昭第二東京弁護士会
最適な法的サービスを目指し、ご依頼者様の声に真摯に耳を傾け、誠実に職務に取り組みます。