借金を滞納した場合に給料の差押がされるまでの流れを知る
ざっくりポイント
  • 借金の滞納をすると裁判を起こされたうえで給料を差押にくる
  • 給料は全額差押えられるわけではなく1/4が差押の対象になる
  • 給料の差押をする前に債務整理をすれば差押を免れることができる

目次

【Cross Talk】給料の差押がされるって本当?

まず、給料の差押についてどのようなルールになっているのかを教えてもらえますか?

給料の1/4が差押の対象になるのをまず知っておいてください。

借金の滞納により給料の差押がされる。どのようなことが起きるかとそれを防ぐための方法を知る。

貸金業者は借金の返済がされない場合には債務者の財産に差押をします。

借金の返済ができないような状態なので、差押をするようなものはないと思う方も多いと思いますが、給料は全額ではないにしても差押の対象になります。給料の差押によってどのようなことが起きるのか、それを防ぐ方法はないのか、ということについて知っておきましょう。

借金の滞納による給料差押までの流れ

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 借金を滞納してから給料が差押えられるまでの流れを知りましょう

実際に借金を滞納してから給料が差押えられるまでの流れはどのようになるのでしょうか。

督促・裁判・差押という一連の流れになります

借金の延滞から給料の差押までにはどのような流れが想定されるのでしょうか。

電話や郵便による催促

まず、借金の延滞については電話や郵便による督促が行われます。
最初の延滞については、ついうっかり忘れていた、勘違いをしていた、といったこともあるため、電話で「入金お忘れですよ」といった程度の案内がされるだけです。
2回目以降の延滞がされる頃には、支払いができなくなっていると判断されるため、電話や自宅への通知が郵送されるようになります。

それでも延滞を続けるような場合には、期限の利益を喪失する旨の通知や裁判をする予告の通知、保証会社による代位弁済による求償権取得の通知、債権回収会社や法律事務所からの督促などが行われるようになります。

裁判所からの特別送達~民事裁判

以上のような通知を無視していると、貸金業者はいよいよ民事裁判を起こします。差押は公正証書という書類がない限りいきなり行われるわけではなく、まず民事裁判あるいは民事裁判と同様のものである支払督促という裁判所の手続によって行われます。

民事裁判・支払督促が提起されると裁判所から「特別送達」という形での郵送物が送られてきます。
書留の一種になるので、ポストに入れられるのではなく、直接受け取りをすることになります。
その後、民事裁判が確定したり、支払督促で仮執行宣言が出されたりすると、いよいよ給料が差押えられることになります。

給料や財産の差押

差押は、執行裁判所という民事裁判を起こした裁判所とは別の裁判所に提起をして行われます。
前述したように、裁判所から会社に対して給料の差押についての通知がされ、会社が差押対象となる金額について債権者に支払いをしていくことになります。

借金延滞で給料差押されるときのルール

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 給料は原則として1/4が差押の対象
  • 給料と同視できる賞与(ボーナス)・退職金も差押の対象

まず、給料の差押についてどのようなルールになっているのかを教えてもらえますか?

給料の1/4が差押の対象になるのをまず知っておいてください。

まず、借金を延滞したときにできる給料の差押についてはどのようなルールになっているのかを知りましょう。

差押の上限金額は給料の1/4

そもそも、なぜ給料が差押の対象になるかというと、給料というのは労働の対価として使用者が労働者に支払うものをいい、この給料をもらう権利(債権)が財産上の価値があるものとして差押の対象になるからです。

しかし、給料はほとんどの方にとって生活に不可欠なもので、これを銀行預金などと同じように全額差押ができるものとすると、生活に大きな支障をきたします。

そのため、差押について規定している民事執行法第152条1項2号において、給料の3/4は差押をすることはできない、と規定され、1/4に関してのみ差押の対象になるとされています。

差押は借金が全額回収されるまで毎月継続して行われます。

手取りが33万円以上の部分は全額差押

上記の規定は、生活をするのに最低限必要であるための収入確保という観点から行われています。
ですので、収入が多い場合に同じ規定で制限する必要もないということになります。
そのため、同じく民事執行法第152条柱書・民事執行法施行令2条によって、給料日が毎月1回の場合には、33万円を超える部分については全額差押をすることができることになっています。

ボーナスや退職金も差押の対象

給料には、毎月の支払いのみならず、ボーナスや退職金という形で支払われるものもあります。
これらも当然ですが差押の対象になります。

差押において雇用形態は問われない

差押は何も正社員に限られず、アルバイト・パートタイム・派遣社員などの雇用形態を問わず差押の対象になります。
なお、派遣社員の場合には、派遣元から給与が払われているので、派遣元に対して差押がされることになります。

差押は完済するまで続く

この差押は、一度で終わらず、借金の全額を完済するまで続きます。
給与の1/4しか差押できないので、何十万も借り入れがある場合には一度に完済できません。
この完済が終わるまで給与が差押えられて、手取りが減った状態が続きます。

借金による給料差押は家族や会社に知られる?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 裁判がされると自宅に裁判所から書面が送られてくるので、書類を家族が開ける場合には知られる
  • 差押は会社に通知されるので会社には知られる、家族が給料の額を把握できる場合であれば家族にも知られる

給料の差押って家族や会社に知られるのでしょうか

会社には確実に知られます、家族にも知られる可能性が高いと見るべきでしょう。

給料の差押は、家族や会社などに知られるのでしょうか。

家族へは書類や給料の差押で知られる

まず家族に知られるのでしょうか。
後述いたしますが、給料の差押までには、民事裁判の提起・強制執行という2つの手続きを行います。

この際に裁判所から特別送達という形で本人に直接通知がされます。
書留のような形で送られてくるものなのですが、これを家族が見るようなことがあれば、借金の延滞・給料の差押といった事態になっていることが知られます。

たとえ、家族がそういった通知を見ない場合でも、実際に給料の差押がされると、手取りの額が減ります。
家計の管理の方法にもよりますが、通常は家族が異変に気付くでしょう。

会社は第三債務者であるので知られるのが一般的

「第三債務者」というのは、差押の対象になっている債務者の債務者のことをいいます。例えば、A君がB君からお金を借りて、そのまたB君もC君からお金を借りているような場合に、A君は、C君の債務者であるB君の債務者であるため、第三債務者となります。
借金をしている貸金業者からすると、借入をしている人は債務者ですが、借入をしている人からすれば給料については、会社が債務者ということになります。

この場合の、貸金業者から見た会社のことを第三債務者と呼んでいます。

給料を差押えると、第三債務者である会社に対して裁判所から通知がされ、差押の対象となっている部分については差押を行った貸金業者に直接支払うことになります。

ですので、会社には給料の差押がされた事実が知られると認識しておきましょう。

借金を滞納したときに給料の差押をされないためには

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • なるべく早く債務整理を行えば借金を滞納しても給料の差押はされない
  • 弁護士に依頼すると給与の差押を回避できる可能性が高い

借金を延滞すると給料の差押は避けられないのでしょうか。対応策はありますか?

債務整理をすることによって避けることができます。

借金の滞納が始まった場合に給与差押を回避するためにはどのような方法があるのでしょうか。

基本的には債務整理をすることになります。

借り換え・おまとめローンの利用は基本的には難しい

借金返済を楽にする方法としてよく、利率の低い銀行から、消費者金融などへの借り入れを返済してしまう借り換えや、複数の借り入れを一度に返済してしまうおまとめローンの利用が検討されます。

しかし、これらは基本的には難しいと考えておきましょう。
まず、滞納が長期間に及び、ブラックリストとなってしまっている場合には、審査はまず下りません。
滞納をしていないがもうすぐ滞納しそう、短期の滞納をしているようなギリギリの場合でも、よっぽど返済の目処が経っていない限り、審査が下りることはありません。

そのため、借り換え・おまとめローンを利用して借金滞納からの給与差押を回避するのは基本的には難しいと言わざるをえません。

任意整理

借金滞納をした場合に給与差押を回避するためには、債務整理をするのが基本となります。
債務整理にもいくつか種類があるのですが、まだ滞納の初期段階であれば任意整理で交渉をしても利息や遅延損害金をカットしてくれる可能性が高いです。

ただし、訴訟を起こされているような場合には、まれに遅延損害金の一部を認めれば訴訟を取り下げてもらえることもありますが、訴訟が終わってしまうと強制執行で給与差押をすることで回収可能であるため、基本的には交渉には応じない可能性が高いでしょう。
この場合には、自己破産・個人再生を検討します。

個人再生

個人再生を申し立て、個人再生計画が認可されると、強制執行の取り下げをしてもらえます。
そのため、給与差押を解除すること可能です。
そのため、給与差し押えが避けられない・既に給与差し押えがされているような場合では、個人再生を利用することも検討します。

一部でも返済をする必要があるので、基本的には自己破産を申立てたほうが良いのですが、住宅ローンで住宅を購入したような場合で自宅を守りたい場合や、自己破産をすると職業制限を受けるような場合には、個人再生を利用します。
なお、住宅ローン自体の滞納を行っている場合、住宅ローン債権者は保証会社に代位弁済をするのですが、この代位弁済から6ヵ月を経過すると個人再生によって住宅ローンで購入した自宅を守れなくなるので注意が必要です。

以上のように個人再生は申し立をして個人再生計画が認可されると強制執行の取り下げが可能なので、費用をかけてまで強制執行をすることを回避できます。

自己破産

自己破産を申し立て債務が免責されると、強制執行の取り下げをしてもらえます。
そのため、給与差押を解除することが可能です。
給与差押をされそうだ、既に給与差押をされている場合で、職業制限を気にする必要がなく、住宅ローンで住宅を購入していないような場合には、借金が免責される自己破産を利用することになります。

弁護士に依頼して得れるメリット

借金滞納をしているときに弁護士に依頼すると、給与差押を回避する可能性が非常に高くなります。

任意整理で解決可能な案件であれば早急に弁護士に動いてもらって解決してもらえますし、個人再生・自己破産をする場合には給与差押をしても取り下げられるので給与差押自体が無駄であると認識してもらえるためです。
ほかにも、借金を滞納しているときに毎日のようにある督促をストップしてもらえたり、自己破産や個人再生をする場合には弁護士に依頼しないと管財事件となって余計に費用がかかることもあるので、債務整理は弁護士に依頼するメリットが大きいです。

まとめ

このページでは、借金滞納による給料の差押についてお伝えしてきました。
全額ではないにしても給料が差押対象になることと、会社に知られることを知っていただいたうえで、これを回避する方法として債務整理を利用することを知っておき、借金を滞納しそうな場合には早めに弁護士に相談をしましょう。